名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

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ヨーホーレイクのイメージビジュアル
ヨーホーレイクYoho Lake
Yoho Lake

ヨーホーレイク

通算成績18戦5勝

獲得賞金34,678万円

生年月日 2018.03.19(平成30年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ヨーホーレイクの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
7 GI大阪杯 阪神 芝2000 11人気 西村淳也 1:58.1 上り35.0映像
7 GII京都記念 京都 芝2200 4人気 T.ハマーハンセン 2:13.3 上り33.6映像
14 GIジャパンカップ 東京 芝2400 12人気 岩田望来 2:22.7 上り35.4映像
3 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 4人気 岩田望来 2:10.7 上り34.2映像
17 GI宝塚記念 阪神 芝2200 5人気 岩田望来 2:14.4 上り38.9映像
3 GI大阪杯 阪神 芝2000 8人気 岩田望来 1:56.5 上り33.5映像
1 GII京都記念 京都 芝2200 5人気 岩田望来 2:15.7 上り34.2映像
7 GII毎日王冠 東京 芝1800 3人気 岩田望来 1:45.4 上り33.4映像
1 GIII鳴尾記念 京都 芝2000 1人気 岩田望来 1:57.2 上り33.9映像
3 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 2人気 荻野極 2:00.3 上り33.5映像
3 GII金鯱賞 中京 芝2000 6人気 藤岡康太 1:58.5 上り35.4映像
1 GII日経新春杯 中京 芝2200 3人気 川田将雅 2:11.7 上り34.4映像
7 GI東京優駿 東京 芝2400 6人気 川田将雅 2:23.1 上り33.8映像
5 GI皐月賞 中山 芝2000 11人気 岩田望来 2:01.2 上り36.6映像
2 GIIIきさらぎ賞 中京 芝2000 2人気 武豊 2:01.0 上り34.9映像
3 GIホープフルS 中山 芝2000 4人気 武豊 2:03.1 上り36.4映像
1 紫菊賞 京都 芝2000 1人気 福永祐一 2:04.6 上り34.9
1 2歳新馬 阪神 芝1800 1人気 武豊 1:51.4 上り35.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ヨーホーレイクの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
クロウキャニオンフレンチデピュティFrench DeputyDeputy Minister
Mitterand
クロカミCaerleon
ミルドMilde
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母クロウキャニオン。主な勝ち鞍は日経新春杯・鳴尾記念・京都記念。

カナディアンロッキーの湖 ― 名前と血

馬名は、カナダはブリティッシュコロンビア、カナディアンロッキーの奥にたたずむ湖の名から採られた。ヨーホーレイク。針葉樹の影を映して静まりかえる、遠い北の水面。その名がやがて二年の空白の底で凍りつき、もう一度溶けて動きだすことになるとは、名づけたときには誰も知らない。 父はディープインパクト、母はクロウキャニオン。中央一勝の身だった母クロウキャニオンは、ディープインパクトとの配合で驚くべき仕事をした繁殖牝馬である。全兄にレパードステークスを制したボレアス、弥生賞を勝ったカミノタサハラ。ヨーホーレイクは、同じ父と母から生まれた三頭目の重賞勝ち馬だった。祖母クロカミは京王杯オータムハンデキャップと府中牝馬ステークスを勝った牝馬で、一族には確かな走る血が通っている。 栗東・友道康夫厩舎。二〇二〇年七月、阪神の芝千八百メートル。新馬戦の鞍上は武豊だった。単勝一番人気に応えて危なげなく勝ち上がり、大器の名にふさわしい一歩を刻む。旅は、北の湖のように静かな水面から始まった。

大器の春 ― 二〇二〇〜二一

続く京都の紫菊賞を福永祐一とともに完勝し、二歳のうちにオープンの扉を開けた。年末のホープフルステークスは武豊を背に、勝ち馬を追って三着。明けて二〇二一年、きさらぎ賞でも武豊とコンビを組み、僅差の二着に食い下がった。世代の上位にいることは、もう疑いようがなかった。 だがクラシックの壁は厚い。皐月賞は岩田望来に手綱が渡り、十一番人気の低評価をはねのけて五着に粘る。ダービーは川田将雅を背に七着。府中の長い直線で上位には届かなかったが、二千四百メートルをこなす下地は見せた。三歳の春、頂点にこそ立てなかったものの、この馬はまだ何も終えてはいなかった。

頂点と、断たれた脚 ― 日経新春杯

二〇二二年一月、中京の日経新春杯。四歳になったヨーホーレイクは川田将雅とともに中団に控え、直線で一番人気ステラヴェローチェとの追い比べに持ち込んだ。並びかけられても譲らず、前に出たままゴールへ雪崩れ込む。待望の重賞初制覇。ここから古馬の頂点へ――誰もがそう思った。 だが、勝利の代償のように、脚が悲鳴をあげていた。レース後、屈腱炎の発症が判明する。腱の故障は、かつて「不治の病」とまで言われたもの。数えきれない名馬が、この一語とともにターフを去ってきた。上り調子の四歳馬に、競馬は最も残酷な形で幕を引いた。次にこの馬が競馬場へ戻るまで、二年二か月が必要になる。

二年二か月 ― 復帰と喪失

屈腱炎からの復帰は、時間との我慢比べだ。焦れば再発し、緩めれば動きが鈍る。牧場で気の遠くなるような日々を積み重ね、ヨーホーレイクは二〇二四年三月、中京の金鯱賞でようやくゲートに戻ってきた。二年二か月ぶりの実戦。鞍上は藤岡康太だった。 好位の三番手につけ、直線でしぶとく粘って三着。ブランクを感じさせない走りに、スタンドはどよめいた。長い夜が明けようとしていた。だが、その一か月後――藤岡康太は、別のレースの落馬事故でこの世を去った。三十五歳。父は調教師の藤岡健一、兄は元騎手で調教師の藤岡佑介。復活の第一歩を託した手綱が、これほど早く永遠に失われるとは、誰にも受け止めきれなかった。深い悲しみのなかで、それでもヨーホーレイクの旅だけは、止まらずに続いていく。

再会 ― 鳴尾記念

二〇二四年六月、京都の鳴尾記念。ヨーホーレイクの手綱は岩田望来に託された。三歳の皐月賞以来、久しぶりに戻ってきた鞍上である。かつて十一番人気の馬を五着に持ってきた若手は、いまや脂の乗った主戦として、深い傷を負って帰ってきた馬と再会した。 一番人気に支持されたこの日、岩田望来は先団のうしろでじっと脚をため、直線で抜け出す。ゴール前で並びかけたボッケリーニをアタマ差だけ抑え込み、約二年五か月ぶりの勝利をもぎ取った。屈腱炎という深い傷を越えての重賞二勝目。それでも鞍上は「休みながらですけど、もっと上を目指せる」[^1]と、まだ先を見据えて言った。再会したふたりの物語は、ここからが本番だった。

出典:東京スポーツ(東スポ競馬)「【鳴尾記念結果&コメント】ヨーホーレイクが重賞2勝目 岩田望「休みながらですけど、もっと上を目指せる」」2024年6月1日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/45794、閲覧日:2026年7月21日。

もう一度、頂へ ― 京都記念

二〇二五年二月、京都記念。七歳になったヨーホーレイクが、五番人気で舞台に立つ。数字だけを見れば下り坂の馬齢だが、休養が長かったぶん、脚元にも気持ちにも新しさが残っていた。稍重の馬場、道中は中団。折り合いに気を配りながら、岩田望来は内のポジションを丁寧に守る。 直線、前が壁になりかけた刹那、馬群を割って鋭く抜け出した。三/四馬身差の快勝、重賞三勝目。「折り合いさえつけばと思っていた」[^1]――鞍上の言葉は、この馬の危うさと確かさを同時に言い当てていた。屈腱炎を克服した七歳が、いちばん強いレースをしてみせた春だった。続く大阪杯では、名だたるGI級を相手に三着まで押し上げる。頂の一つ手前、GIの舞台でも通用することを、この馬は自らの脚で証明してみせた。

出典:中日スポーツ「【京都記念】屈腱炎克服!5番人気のヨーホーレイクが重賞3勝目、岩田望「折り合いさえつけばと思っていた」」2025年2月16日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1026094、閲覧日:2026年7月21日。

乗馬への道 ― 別れ

その後のヨーホーレイクは、GIの舞台をひたむきに叩き続けた。宝塚記念、オールカマー、ジャパンカップ、そして二年つづけての大阪杯。鋭く伸びた一戦もあれば、大きく崩れた日もあった。頂の栄冠には手が届かなかったが、屈腱炎という「不治の病」を背負ったまま、八歳までGI戦線で戦い抜いた事実そのものが、この馬の非凡だった。 二〇二六年四月、大阪杯を最後に、ヨーホーレイクは競走馬登録を抹消された。次に向かう先は競馬学校――若い騎手の卵たちを乗せる、乗馬としての第二の馬生である。かつて二年の空白に沈み、それでも北の湖の水面のように静かに戻ってきた馬が、こんどは人を乗せ、育てる側にまわる。ボレアス、カミノタサハラ、そしてヨーホーレイク。同じ父と母が三度も重賞の舞台へ送り出した血は、こうしてカナディアンロッキーの湖の名とともに、次の世代の手綱のなかへ受け継がれていく。

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