名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ヤマニンサルバムのイメージビジュアル
ヤマニンサルバムYamanin Salvum
Yamanin Salvum

ヤマニンサルバム

通算成績24戦7勝

獲得賞金2591万円

生年月日 2019.04.09(令和元年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ヤマニンサルバムの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
16 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 16人気 小崎綾也 1:33.1 上り34.5映像
4 GII毎日王冠 東京 芝1800 9人気 三浦皇成 1:45.3 上り33.4映像
1 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 7人気 斎藤新 2:00.1 上り34.4映像
10 GII金鯱賞 中京 芝2000 3人気 三浦皇成 2:00.0 上り36.8映像
1 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 2人気 三浦皇成 1:58.8 上り34.2映像
1 LオクトーバーS 東京 芝2000 4人気 三浦皇成 1:58.0 上り34.6
10 GII札幌記念 札幌 芝2000 15人気 吉田隼人 2:04.0 上り38.2映像
11 GIII函館記念 函館 芝2000 11人気 横山和生 2:02.2 上り37.2映像
6 GIIIエプソムカップ 東京 芝1800 9人気 三浦皇成 1:45.9 上り35.2映像
7 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 6人気 浜中俊 2:06.3 上り38.2映像
7 GII金鯱賞 中京 芝2000 4人気 浜中俊 2:00.5 上り35.1映像
3 L白富士S 東京 芝2000 3人気 浜中俊 1:58.7 上り33.8
1 寿S 中京 芝2000 1人気 浜中俊 2:00.2 上り34.1
1 名古屋日刊スポーツ杯 中京 芝2000 1人気 浜中俊 1:59.5 上り34.0
3 武田尾特別 阪神 芝1800 3人気 鮫島克駿 1:47.1 上り33.2
2 筑後川特別 小倉 芝1800 1人気 坂井瑠星 1:47.7 上り36.2
3 宮崎特別 小倉 芝1800 1人気 藤岡康太 1:47.6 上り33.7
2 白河特別 福島 芝1800 3人気 戸崎圭太 1:49.5 上り36.4
1 3歳以上1勝クラス 中京 芝1600 3人気 鮫島克駿 1:34.8 上り33.5
1 3歳未勝利 中京 芝1400 3人気 浜中俊 1:21.4 上り35.4
3 3歳未勝利 福島 芝1200 1人気 亀田温心 1:10.8 上り35.8
4 3歳未勝利 小倉 芝1200 1人気 鮫島克駿 1:08.8 上り34.6
2 3歳未勝利 小倉 芝1200 4人気 松若風馬 1:10.0 上り35.6
2 3歳新馬 小倉 芝1200 8人気 鮫島克駿 1:10.2 上り35.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ヤマニンサルバムの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
イスラボニータIsla BonitaフジキセキFuji KisekiサンデーサイレンスSunday Silence
ミルレーサーMillracer
イスラコジーンIsla CozzeneCozzene
Isla Mujeres
ヤマニンエマイユホワイトマズルWhite MuzzleダンシングブレーヴDancing Brave
Fair of the Furze
ヤマニンザナドゥトニービンTony Bin
ワンオブアクラインOne of a Klein
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛の牡馬。父イスラボニータ、母ヤマニンエマイユ。主な勝ち鞍は中日新聞杯・新潟大賞典。

即興演奏 ― 名の由来と血

ヤマニンサルバム。冠名の「ヤマニン」に、ラテン語で即興演奏を意味する語を重ねた名である。 北海道新冠町の錦岡牧場が長く守ってきた「ヤマニン」の一族に、その黒鹿毛は生まれた。血筋は名門である。4代母バーリーエヴンを共通の祖とする米国十号族の牝系には、牝馬三冠のスティルインラブ、オークスを制したローブデコルテ(両者はいとこ同士)がいる。ヤマニンサルバムの3代母ワンオブアクラインは、そのバーリーエヴンにダンチヒが配された牝馬で、一族の日本へ渡った枝にあたる。父は2014年の皐月賞馬イスラボニータフジキセキからサンデーサイレンスへ遡る父系に、名牝系の底力を重ねた配合だった。 だが、血の格がそのまま走りを約束するわけではない。2019年4月9日に生まれたこの馬は、素質を静かに抱えたまま、ずいぶんと遅い出発点に立つことになる。

五戦目の白星 ― 遅い出発

デビューは2022年1月30日、小倉の芝1200m。8番人気の低評価で2着に粘ったが、勝ち切れない。続く未勝利戦も勝ち味に遠く、短距離のスピード勝負では分が悪かった。 浅見秀一の定年に伴い、厩舎は中村直也へと移る。距離を芝1400mに延ばした5月15日、5戦目にしてようやく初勝利を挙げた。舞台は左回りの中京だった。翌月には同じ中京の芝1600mを連勝し、夏を越えて距離が延びるほど手応えは増していく。暮れの名古屋日刊スポーツ杯、明けて2023年の寿Sと、2000mのオープン戦を連勝。遅れてきた馬は、ようやく自分の間合いを見つけつつあった。

自在を探して ― 二〇二三年の迷い

重賞の壁は厚かった。白富士Sで3着に好走したものの、金鯱賞、新潟大賞典、エプソムカップ、函館記念、札幌記念と、重賞では掲示板に届かない競馬が続く。逃げるのか、控えるのか――脚質を定めきれないまま、勝ち味に遠い一年の前半だった。 転機は秋の東京に訪れた。10月のオクトーバーS(リステッド)で、三浦皇成を背に好位から抜け出し、9か月ぶりの白星を掴む。ここでもコースは左回りの東京。掛かる気性を御しつつ流れに乗る形が、ようやく板についてきた。即興で流れを読む――名のとおりの走りが、少しずつ輪郭を帯びていた。

師走の中京 ― 重賞初制覇

2023年12月9日、中日新聞杯。舞台はまたも左回りの中京・芝2000m。2番人気に支持されたヤマニンサルバムは、好位の内でじっと脚をためた。三浦皇成はハナにこだわらなかった。前走で掴んだこの馬のリズムを信じ、折り合いをつけて運ぶ。直線で外へ持ち出すと鋭く伸び、大外から追い込む13番人気ハヤヤッコを、3/4馬身しのいで先頭でゴールした。 重賞初制覇。三浦皇成にとっても、中日新聞杯は初めての勝利だった。5戦目の未勝利勝ちから1年半あまり、遅れてきた4歳馬は、ついに重賞のゴール板を先頭で通過した。

七つの白星、すべて左回り

2024年5月5日、新潟大賞典。大外枠から出たヤマニンサルバムは、2コーナーを過ぎたあたりで気持ちよく先頭に立った。番手で力むよりは、と鞍上の斎藤新は判断する。スローの単騎逃げに持ち込むと、直線で2番手のキングズパレスを際どく抑え、ハナ差で重賞2勝目を掴んだ。 「自在性があるのでまだまだ活躍できると思います」[^1]。斎藤の言葉どおり、この馬は逃げても差しても走れた。そして、この勝利で通算7勝――そのすべてが、東京・中京・新潟という左回りのコースだった。右回りでは影をひそめ、左に回ると一変する。即興演奏の名を持つ馬の、それが確かな一つの型だった。 秋の毎日王冠では、9番人気ながら上がり33秒4の脚で4着に食い込み、古馬GIIの一線級を相手に見せ場をつくってみせた。

出典:東京スポーツ「【新潟大賞典結果&コメント】ヤマニンサルバムが逃げ切り!斎藤新「自在性があるのでまだまだ活躍できると思います」」2024年5月5日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/44849、閲覧日:2026年7月18日。

左回りの馬 ― その後

毎日王冠を最後に、ヤマニンサルバムは長く戦列を離れた。次に姿を見せたのは、1年4か月後――2026年2月10日の東京新聞杯である。得意の左回りで、3歳以来となる1600m。復帰の舞台は、この馬らしい条件で整えられた。だが久々の一戦は16着に沈んだ。 2月18日、JRAの競走馬登録は抹消された。次にどこで走るのかは、まだ決まっていない。 残したのは、2つの重賞と、すべてが左回りだった7つの白星。米国十号族の名門牝系に、遅れてきた黒鹿毛が確かに書き足した1行である。左に回れば、この馬はいつだって前へ出た――その一事だけは、記録の中でこれからも変わらない。

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