名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ヤマニンアンプリメのイメージビジュアル
ヤマニンアンプリメYamanin Imprime
Yamanin Imprime

ヤマニンアンプリメ

通算成績35戦9勝

獲得賞金23,398万円

生年月日 2014.04.05(平成26年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ヤマニンアンプリメの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 14人気 横山武史 1:35.6 上り36.4映像
6 GIII根岸S 東京 ダ1400 14人気 武豊 1:22.8 上り35.6映像
7 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 6人気 川田将雅 1:11.5 上り36.8
4 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 2人気 川田将雅 1:26.8 上り38.4
3 GIIIプロキオンS 阪神 ダ1400 9人気 武豊 1:22.2 上り35.8映像
8 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 2人気 武豊 1:12.2 上り36.5
1 JpnⅠJBCレディスクラシック 浦和 ダ1400 3人気 武豊 1:24.5 上り36.9映像
3 JpnⅢテレ玉杯オーバルスプリント 浦和 ダ1400 1人気 岩田康誠 1:25.9 上り37.4
1 JpnⅢクラスターカップ 盛岡 ダ1200 2人気 岩田康誠 1:09.1 上り34.1
1 JpnⅢ北海道スプリントカップ 門別 ダ1200 1人気 岩田康誠 1:11.5 上り36.4
2 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1400 1人気 鮫島良太 1:25.6 上り37.2
2 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 3人気 鮫島良太 1:26.6 上り37.0
1 OP大和S 京都 ダ1200 3人気 鮫島良太 1:10.7 上り35.5
7 GIII根岸S 東京 ダ1400 11人気 内田博幸 1:24.5 上り36.2映像
1 門松S 京都 ダ1200 1人気 岩田康誠 1:11.2 上り35.6
2 御影S 阪神 ダ1400 3人気 岩田康誠 1:23.6 上り36.0
4 貴船S 京都 ダ1400 2人気 鮫島良太 1:23.7 上り36.2
2 藤森S 京都 ダ1200 5人気 鮫島良太 1:11.4 上り35.3
3 大阪スポーツ杯 阪神 ダ1400 5人気 鮫島良太 1:22.4 上り36.2
4 安芸S 阪神 ダ1400 4人気 鮫島良太 1:24.2 上り36.1
3 JpnⅢマリーンカップ 船橋 ダ1600 4人気 鮫島良太 1:41.4 上り37.5
4 OPコーラルS 阪神 ダ1400 9人気 鮫島良太 1:23.6 上り36.6
7 OP大和S 京都 ダ1200 2人気 鮫島良太 1:11.6 上り35.9
1 山科S 京都 ダ1200 3人気 鮫島良太 1:12.3 上り35.4
1 高砂特別 阪神 ダ1200 9人気 鮫島良太 1:11.5 上り35.9
7 3歳以上1000万下 京都 ダ1200 6人気 国分恭介 1:12.2 上り36.2
6 円山特別 京都 ダ1200 10人気 国分恭介 1:12.4 上り35.9
1 3歳以上500万下 札幌 ダ1000 7人気 国分恭介 0:58.7 上り35.2
10 OP忘れな草賞 阪神 芝2000 8人気 小牧太 2:11.3 上り43.3
4 3歳500万下 阪神 ダ1400 9人気 国分恭介 1:25.7 上り37.7
1 3歳未勝利 京都 ダ1400 4人気 小牧太 1:24.9 上り37.7
4 3歳未勝利 京都 ダ1400 12人気 幸英明 1:26.4 上り38.3
5 2歳未勝利 阪神 ダ1400 9人気 松若風馬 1:25.0 上り37.1
11 2歳未勝利 阪神 ダ1800 9人気 松若風馬 1:56.9 上り40.6
2歳新馬 阪神 ダ1800 9人気 岩田康誠

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ヤマニンアンプリメの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
シニスターミニスターSinister MinisterOld TriesteA.P. Indy
Lovlier Linda
Sweet MinisterThe Prime Minister
Sweet Blue
ヤマニンエリプスサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ヤマニンペニーNijinsky
Lower Lights
STORY

旅程 — この馬の物語

2014年生まれの鹿毛の牝馬。父シニスターミニスター、母ヤマニンエリプス。

刷る、という名 ― 母の十八歳の仔

2014年4月5日、北海道浦河町の荻伏で、廣田伉助のもとに鹿毛の牝馬が生まれた。冠名のヤマニンは、馬主・土井肇の一族が営む牧場の屋号「やまにんべん」を縮めたもの。その下に付いた固有の名は、フランス語で「印刷する」を意味する語から採られている。刷る、という名前だった。 母ヤマニンエリプスは1996年生まれ。父はサンデーサイレンスという良血でありながら、中央で33戦して2勝。四年走って重賞には届かず、繁殖に上がってからは十二頭の仔を残した。ヤマニンアンプリメは、その母が十八歳の年に産んだ娘である。兄姉には栗東の厩舎に入った馬もいれば、高知や水沢、笠松、川崎、大井へ渡った馬もいた。母の仔で重賞を勝つことになるのは、結局この一頭だけだった。

幻の三冠馬 ― 伯父の脚

血の記憶は、もう一代さかのぼったところにある。母ヤマニンエリプスの半兄に、ヤマニングローバルという牡馬がいた。父は三冠馬ミスターシービー。1989年9月、阪神の新馬戦を武豊で勝ち、黄菊賞を勝ち、単枠指定されたデイリー杯3歳ステークスまで無傷の三連勝。ところが入線した直後、右前第一種子骨を複雑骨折していた。管理した浅見国一は、よその厩舎であれば助からなかったほどの重傷だったと後年振り返っている。割れた骨を二本のボルトで繋ぐ手術が行われ、一年余の休養を強いられた。まだ二十歳だった武豊は、こう言った。「来年のGIを4つ損した」[^1]。クラシック三冠と有馬記念——失われたと数えられたのは、その四つである。 復帰したヤマニングローバルはアルゼンチン共和国杯と目黒記念を勝ったが、GIには届かないまま、幻の三冠馬と呼ばれて現役を終えた。種牡馬としても十二頭を残しただけで役目を退き、新冠の錦岡牧場で当て馬をしながら余生を送る。息を引き取ったのは2016年9月6日。その血を引く牝馬が阪神のゲートに入るのは、二十五日後のことだった。

出典:市丸博司編『サラブレッド怪物伝説・平成版』廣済堂文庫、1997年、220頁。

走り出す前に終わった一戦

2016年10月1日、阪神のダート1800m。栗東・中村均厩舎からデビューし、鞍上は岩田康誠。九番人気という評価のまま、スタートを切った直後に歩行の異常が出て、競走中止となった。最初の一戦は、走り出す前に終わっている。 立て直して暮れに二戦、11着と5着。年が明けても勝ち上がれず、五戦目——2017年2月12日、京都のダート1400mで小牧太を背に、ようやく初勝利を挙げた。 春に一度だけ、芝を試している。四月の忘れな草賞、阪神の芝2000m。10着、勝ち馬から7秒0。上がりは43秒3を要した。この一戦を最後に、生涯二度と芝は走っていない。居場所はダートの短いところにある——答えは、はっきり出た。 夏の札幌、ダート1000mを国分恭介で勝って2勝目。秋に京都で二度取りこぼしたあと、12月の高砂特別を、初めて手綱を取った鮫島良太で3勝目とした。

惜敗の年輪 ― 二〇一八年

2018年1月、京都の山科ステークスを勝ってオープン入り。ここから一年、勝ち星が止まった。翌月の大和ステークス7着、コーラルステークス4着。四月には船橋のマリーンカップで初めて交流重賞に挑み、アンジュデジールの3着。惜敗が続くうちに準オープンへ降級し、夏の安芸ステークスはタイム差なしの4着、秋の藤森ステークスはコパノキッキングにタイム差なしの2着、暮れの御影ステークスも2着。届きそうで届かない着順が積み重なり、この年の勝ち鞍は年頭の一つきりだった。 潮目が変わったのは翌年の正月である。2019年1月5日の門松ステークスを、岩田康誠で1番人気に応えて勝ち、再びオープンの籍を取り戻す。東京へ遠征した根岸ステークスは7着に沈んだが、2月17日、京都の大和ステークス。前年に7着した同じ舞台を、鮫島良太で今度は勝ち切った。

師の退官、弟子の開業

その大和ステークスが、中村均にとってこの馬を送り出す最後の一戦になった。1978年に厩舎を開き、トウカイローマンで優駿牝馬を、ビートブラックで天皇賞(春)を勝った栗東の調教師は、2019年2月28日付で定年を迎える。 翌3月1日、その厩舎を引き継ぐ形で開業したのが長谷川浩大だった。1983年生まれ。2003年に中村均厩舎の所属騎手としてデビューし、九年半で三千九百七十九回騎乗して二百十三勝。2012年に鞍を降りてからは、同じ厩舎で調教助手として馬を作り続けた。2018年暮れに調教師試験に受かり、年明けに免許を得て、師が去った翌日に自分の看板を掲げる。ヤマニンアンプリメは、そのまま新しい厩舎の管理馬になった。 転厩後の初戦は3月21日、高知の黒船賞。鮫島良太で1枠1番から運び、サクセスエナジーとの決着はタイム差なしの2着。5月1日、名古屋のかきつばた記念は1番人気に推されながら、ゴールドクイーンに0秒5差の2着。重賞のあと一歩手前で、二度続けて足が止まった。

門別と盛岡 ― 五歳の重賞

2019年6月6日、門別のダート1200m、北海道スプリントカップ。鞍上が岩田康誠に替わり、1番人気に支持された。道中は三番手を追走し、直線で鋭く伸びて0秒6差の快勝。二十六戦目、五歳にしての重賞初制覇である。開業から三か月余りの長谷川浩大にとっても、これが最初の重賞だった。 八月十二日、盛岡のクラスターカップ。今度は中団から運び、直線で外へ持ち出すと、先に抜け出していたヒロシゲゴールドを捉えて差し切った。上がり三ハロンは34秒1。九月、浦和のオーバルスプリントは1番人気に応えられず3着に終わったが、この牝馬が交流重賞の主役の側に立っていることは、もう数字が示していた。

浦和、十一月四日

2019年のJBCは、浦和競馬場で初めて開かれた。三つのJpnIが一日に並ぶその日、レディスクラシックの舞台はダート1400m、馬場は重。ヤマニンアンプリメは3番人気だった。鞍上は武豊。 向正面でポジションを押し上げ、最後の直線で前を捉えにいく。逃げ粘っていたのはゴールドクイーン——半年前のかきつばた記念で、1番人気の自分の前でゴールした相手である。二馬身差をつけて先に決勝線を通過し、勝ち時計は1分24秒5。母が残した十二頭のうち、JpnIのタイトルを持ち帰ったのは、この一頭だけだった。 長谷川浩大は、開業一年目でJpnIを勝つ調教師になった。武豊はこの一勝で、当時施行されていた地方のGI・JpnIをすべて勝った最初の騎手になる。三十年前、まだ二十歳だった彼が「四つ損した」と嘆いたのは、この牝馬の伯父の脚だった。失われた四つが戻ったわけではない。ただ、同じ牝系の馬が、三十年越しにひとつの区切りを彼のもとへ運んできた。

七歳の二月まで

2020年、六歳。四月の大井、東京スプリントは2番人気で8着。休養を挟んで臨んだ七月のプロキオンステークスでは、九番人気の低い評価をくつがえしてサンライズノヴァの3着に食い込んだ。佐賀のサマーチャンピオン4着、大井の東京盃7着。勝てないまま、この年を終える。 2021年、七歳。1月31日の根岸ステークスは武豊で6着。そして2月21日、東京のダート1600m、フェブラリーステークス。中央のGIに挑んだのは、三十五戦のなかでこの一度きりだった。十四番人気の10着。勝ったのはカフェファラオで、ヤマニンアンプリメの手綱は横山武史が取っていた。 その五日後、2月26日付で競走馬登録は抹消される。通算三十五戦九勝、獲得賞金2億3398万6000円。中央で六勝、地方で三勝。走り出す前に止まった牝馬が、四年あまりかけて積み上げた数字だった。

刷り直す ― 新冠の草

引退したヤマニンアンプリメは、北海道新冠町、錦岡牧場の新和育成牧場で繁殖牝馬になった。伯父ヤマニングローバルが最後の日々を過ごしたのも、同じ錦岡牧場だった。 初仔は2022年生まれの牝馬ヤマニンレセディ。父はエピファネイア。栗東・長谷川浩大厩舎——JpnIをともに獲った調教師のもとで、すでに二勝を挙げて走っている。二番仔は2024年生まれのヤマニンアルセド、父ホークビル。こちらも同じ厩舎にいる。2026年には、ルヴァンスレーヴを父とする牡の当歳が生まれた。 母が十八歳の年に産んだ娘は、いま自分の仔を送り出す側にいる。ゲートを出た直後に止まり、五歳でようやく重賞に手が届き、浦和の千四百メートルまでたどり着いた脚が、新冠の草を踏んでいる。刷る、という名を与えられた牝馬は、次の版を組んでいる。

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