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ワンダーアキュート
通算成績48戦13勝
獲得賞金8億7,630万円
生年月日 2006.03.14(平成18年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 6人気 | 和田竜二 | 2:04.5 | 上り38.9 | — | |
| 6 | GIチャンピオンズカップ | 中京 ダ1800 | 14人気 | 和田竜二 | 1:50.9 | 上り37.6 | 映像 | |
| 3 | JpnⅠマイルチャンピオンシップ | 盛岡 ダ1600 | 2人気 | 和田竜二 | 1:37.1 | 上り38.6 | — | |
| 8 | JpnⅠ帝王賞 | 大井 ダ2000 | 3人気 | 和田竜二 | 2:05.0 | 上り40.6 | — | |
| 1 | JpnⅠかしわ記念 | 船橋 ダ1600 | 4人気 | 和田竜二 | 1:37.4 | 上り37.1 | — | |
| 9 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 10人気 | F.ベリー | 1:36.8 | 上り36.4 | 映像 | |
| 7 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 3人気 | 武豊 | 2:04.9 | 上り38.6 | — | |
| 5 | GIチャンピオンズカップ | 中京 ダ1800 | 5人気 | 武豊 | 1:51.5 | 上り35.9 | 映像 | |
| 3 | JpnⅠJBCクラシック | 盛岡 ダ2000 | 2人気 | 武豊 | 2:01.4 | 上り35.9 | 映像 | |
| 1 | JpnⅠ帝王賞 | 大井 ダ2000 | 3人気 | 武豊 | 2:03.5 | 上り35.8 | — | |
| 3 | JpnⅠかしわ記念 | 船橋 ダ1600 | 1人気 | 武豊 | 1:39.6 | 上り37.0 | — | |
| 6 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 5人気 | 武豊 | 1:36.5 | 上り35.2 | 映像 | |
| 2 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 2人気 | 武豊 | 2:06.9 | 上り36.3 | — | |
| 2 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 6人気 | 武豊 | 1:50.4 | 上り35.9 | 映像 | |
| 2 | JpnⅠJBCクラシック | 金沢 ダ2100 | 2人気 | 武豊 | 2:13.0 | 上り37.0 | 映像 | |
| 1 | JpnⅡ日本テレビ盃 | 船橋 ダ1800 | 1人気 | 武豊 | 1:50.3 | 上り37.0 | — | |
| 3 | JpnⅠ帝王賞 | 大井 ダ2000 | 4人気 | 武豊 | 2:03.5 | 上り37.3 | — | |
| 3 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 7人気 | 和田竜二 | 1:35.3 | 上り35.9 | 映像 | |
| 2 | JpnⅠ川崎記念 | 川崎 ダ2100 | 1人気 | 和田竜二 | 2:15.5 | 上り37.3 | — | |
| 3 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 1人気 | 和田竜二 | 2:06.0 | 上り38.4 | — | |
| 2 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 3人気 | 和田竜二 | 1:49.4 | 上り36.4 | 映像 | |
| 1 | JpnⅠJBCクラシック | 川崎 ダ2100 | 5人気 | 和田竜二 | 2:12.5 | 上り38.6 | 映像 | |
| 10 | GII東海S | 京都 ダ1900 | 1人気 | 和田竜二 | 1:57.3 | 上り37.1 | — | |
| 4 | JpnⅡダイオライト記念 | 船橋 ダ2400 | 1人気 | 和田竜二 | 2:35.0 | 上り41.2 | — | |
| 3 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 2人気 | 和田竜二 | 1:35.8 | 上り36.4 | 映像 | |
| 2 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 3人気 | 和田竜二 | 2:01.8 | 上り38.0 | — | |
| 2 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 5人気 | 和田竜二 | 1:50.9 | 上り36.8 | 映像 | |
| 4 | GIIIみやこS | 京都 ダ1800 | 2人気 | 和田竜二 | 1:49.2 | 上り37.1 | — | |
| 1 | GII東海S | 京都 ダ1900 | 2人気 | 和田竜二 | 1:53.7 | 上り35.1 | — | |
| 2 | GIIIアンタレスS | 京都 ダ1800 | 1人気 | 和田竜二 | 1:48.4 | 上り35.8 | — | |
| 2 | JpnⅢ名古屋大賞典 | 名古屋 ダ1900 | 2人気 | 和田竜二 | 1:58.8 | 上り38.1 | — | |
| 1 | OP仁川S | 阪神 ダ2000 | 1人気 | 和田竜二 | 2:03.7 | 上り36.8 | — | |
| 2 | OPアルデバランS | 京都 ダ1900 | 2人気 | 和田竜二 | 1:58.0 | 上り36.8 | — | |
| 10 | GI東京大賞典 | 大井 ダ2000 | 4人気 | 和田竜二 | 2:03.8 | 上り40.5 | — | |
| 1 | OPベテルギウスS | 阪神 ダ2000 | 1人気 | 和田竜二 | 2:03.3 | 上り37.0 | — | |
| 6 | GIIIみやこS | 京都 ダ1800 | 7人気 | 和田竜二 | 1:50.5 | 上り37.1 | 映像 | |
| 6 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 3人気 | 和田竜二 | 1:51.1 | 上り37.9 | 映像 | |
| 1 | GIII東京中日S杯武蔵野S | 東京 ダ1600 | 5人気 | 安藤勝己 | 1:35.5 | 上り36.7 | — | |
| 1 | GIIIシリウスS | 阪神 ダ2000 | 3人気 | 和田竜二 | 2:04.5 | 上り36.8 | — | |
| 1 | オークランドRCT | 阪神 ダ1800 | 3人気 | 和田竜二 | 1:51.6 | 上り37.1 | — | |
| 5 | レパードS | 新潟 ダ1800 | 8人気 | 小牧太 | 1:51.9 | 上り38.7 | 映像 | |
| 5 | JpnⅠジャパンダートダービー | 大井 ダ2000 | 5人気 | 小牧太 | 2:06.1 | 上り38.9 | — | |
| 1 | あおぎりS | 中京 ダ1700 | 9人気 | 和田竜二 | 1:45.1 | 上り35.6 | — | |
| 10 | GIIテレビ東京杯青葉賞 | 東京 芝2400 | 16人気 | 後藤浩輝 | 2:27.8 | 上り36.0 | — | |
| 1 | 3歳500万下 | 阪神 ダ1800 | 7人気 | 小牧太 | 1:52.6 | 上り37.1 | — | |
| 6 | 3歳500万下 | 阪神 ダ1800 | 6人気 | 小林徹弥 | 1:54.1 | 上り37.9 | — | |
| 7 | 3歳500万下 | 京都 ダ1800 | 8人気 | 小林徹弥 | 1:52.4 | 上り37.0 | — | |
| 1 | 3歳新馬 | 京都 ダ1800 | 7人気 | 小林徹弥 | 1:55.2 | 上り38.4 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父カリズマティックCharismatic | Summer Squall | Storm Bird |
| Weekend Surprise | ||
| Bali Babe | Drone | |
| Polynesian Charm | ||
| 母ワンダーヘリテージ | Pleasant Tap | Pleasant Colony |
| Never Knock | ||
| Casa Petrone | Petrone | |
| Grand Tania |
旅程 — この馬の物語
2006年生まれの鹿毛の牡馬。父カリズマティック、母ワンダーヘリテージ。主な勝ち鞍はシリウスS・東京中日S杯武蔵野S・東海S。
三石の血 ― 遅れて来る一族
2006年3月14日、北海道三石町。フクダファームで鹿毛の牡馬が生まれた。三石町という自治体の名は、その十七日後に消えている。静内町と合併して新ひだか町になった。生まれた場所の名前が変わるところから、この馬の暦は始まっている。 馬主は山本信行。冠名の「ワンダー」に足されたのは、英語のacute――鋭い、という語だった。 父はカリズマティック。1996年、ケンタッキーの生まれである。二歳の6月にハリウッドパークでデビューして六着、初勝利は六戦目、三歳の二月にはクレーミング競走にまで出ていた。それが4月のレキシントンステークスをレコードで勝つと、5月のケンタッキーダービーをクビ差で、二週間後のプリークネスステークスを一馬身半差で制した。三冠のかかったベルモントステークスは三着。ゴールの前後で左前脚の管骨と種子骨を折っており、鞍上のクリス・アントレーはゴールを過ぎるとすぐに下馬して、折れた脚を両手で支え続けた。競走生活は十七戦五勝で終わり、その年のエクリプス賞年度代表馬に選ばれた。2002年の秋に日本へ売られ、翌年から日本軽種馬協会の静内種馬場で種牡馬になっている。 母はワンダーヘリテージ。1995年生まれの黒鹿毛で、アメリカから日本へ渡ってきた。その父はプレザントタップ。 そして半兄がいた。ワンダースピード、2002年生まれ、父はキンググローリアス。デビューは二歳の八月で、初勝利までに十戦かかっている。オープン入りしたのは五歳の春、重賞を初めて勝ったのは六歳のアンタレスステークスだった。四十六戦十二勝。東海ステークス、平安ステークス、名古屋グランプリを二度。遅れて来て、長く走った。 血は、そういうふうに流れていた。
同じ三月に生まれた三頭
2009年1月24日、京都のダート千八百、三歳新馬。十四頭立ての七番人気で、鞍上は小林徹弥。重馬場を一分五十五秒二で走り、初出走で初勝利を挙げた。 そこから二戦は七着と六着。3月22日、阪神の五百万下を小牧太で勝ち上がると、陣営はまだ東京優駿を見ていた。5月2日、東京の青葉賞、芝二千四百。十八頭の十六番人気で十着。後藤浩輝が乗ったこの一戦が、生涯で唯一の芝になる。残りの四十七戦は、すべて砂の上にある。 6月14日、中京のあおぎりステークス。ここで初めて和田竜二が跨った。九番人気。二番手から進み、上がり三十五秒六を使って、一番人気のスタッドジェルランをクビ差だけ抑えて三勝目。テイエムオペラオーでGIを七つ勝った男である。ただし2001年の天皇賞・春を最後に、大きなタイトルからは八年遠ざかっていた。 7月8日、大井。ジャパンダートダービー、五番人気で五着。勝ったのはテスタマッタだった。8月23日、新潟。この年に新設されたレパードステークスは八番人気で五着。勝ったのはトランセンドだった。 三頭は、同じ年の同じ月に生まれている。トランセンドが3月9日、ワンダーアキュートが3月14日、テスタマッタが3月19日。五日ずつ間が空いているだけだ。この夏、先を行っていたのは前後の二頭のほうだった。
兄と弟 ― 三歳の秋に、重賞を二つ
9月13日、阪神のオークランドレーシングクラブトロフィーを勝って四勝目。 10月3日、阪神のシリウスステークス。ダート二千のハンデ戦のゲートに、同じ勝負服が二つ入った。一番人気は七歳のワンダースピードで五十八キロ半、三番人気はまだ三歳の弟で五十四キロ。兄弟のあいだには四キロ半の開きがあった。 弟は四番手を進み、四コーナーで三番手に上がって、上がり三十六秒八。二着に三馬身をつけた。兄は五着だった。ワンダーアキュートの重賞初制覇である。調教師の佐藤正雄が初めて重賞を手にしたのは2001年、川村禎彦厩舎から移ってきたタマモストロングのかしわ記念だった。 一か月後、11月7日の東京、武蔵野ステークス。鞍上は安藤勝己――四十八戦のうち、この一度きりのコンビだった。五番人気のワンダーアキュートはゲートを出るなり先頭に立ち、三コーナーも四コーナーも先頭のまま、一分三十五秒五で押し切った。二着に一馬身四分の三。同じ十六頭のなかで、この年の二月にフェブラリーステークスを勝ったサクセスブロッケンが十着、トランセンドが六着、テスタマッタが十一着に終わっている。 三歳で、古馬の重賞を二つ。年内はもう一戦、12月6日のジャパンカップダートに三番人気で出て六着。三歳の一年で、十二回ゲートに入った。
十一か月、そして三・五センチ
その暮れから、時間が止まる。次にゲートへ入るのは2010年11月7日、京都のみやこステークスだった。十一か月が空いている。四歳のこの年、走れたのは三度だけである。 みやこステークスは七番人気で六着、勝ったのはトランセンドだった。12月11日のベテルギウスステークスを一番人気で勝って七勝目。12月29日、初めての東京大賞典は四番人気の十着で、勝ったスマートファルコンから三秒四離された。 明けて五歳。この春は二着が三度あった。2月のアルデバランステークス、3月の名古屋大賞典はエスポワールシチーの二着、4月のアンタレスステークスはゴルトブリッツの二着。そのあいだ、3月の仁川ステークスは一番人気に応えて勝っている。 そして5月22日、京都の東海ステークス。不良馬場を三番手で追走し、三コーナーでいったん七番手まで下げてから、四コーナーで二番手へ押し上げた。上がり三十五秒一。逃げるランフォルセを最後に捉えて、重賞三勝目。兄が二年前に勝ったのと、同じ競走だった。 秋。11月のみやこステークスは四着。12月4日、阪神のジャパンカップダート。ゲートが開いた直後に大きくつまずき、十六頭の十一番手まで下がった。三コーナーでは十三番手にいる。そこから使った上がり三十六秒八は、この日いちばん速い脚だった。二着。前で逃げ切ったのはトランセンドで、差は二馬身。三着のエスポワールシチーとはハナ差だった。 12月29日、大井の東京大賞典。三番人気。逃げるスマートファルコンのすぐ後ろにつけ、直線で並びかけ、二千メートルを同じ二分一秒八で走って、それでも前には出られなかった。着差は三・五センチと報じられている。 年が明けた二月、フェブラリーステークスの追い切りを終えた和田は、この馬がタイトルを獲れる高さまで来ていると言い、真っ向勝負でぶつかるつもりだと話した。
三度目の正直 ― 二〇一二年十一月五日、川崎
2012年2月19日、東京のフェブラリーステークス。二番人気で、中団から直線に向いて前に迫ったが、後方から追い込んできたテスタマッタとシルクフォーチュンに先を越されて三着。大一番では、またしても、あと一歩が届かなかった。 3月のダイオライト記念は一番人気で四着。5月19日の東海ステークスも一番人気で十着。そこから半年、休みに入る。骨瘤で休ませた、とのちに佐藤は語っている。 11月5日、川崎。JBCクラシック、ダート二千百。単勝十・五倍の五番人気だった。 十三頭。マグニフィカが逃げ、トランセンドが二番手、ワンダーアキュートは三番手を進んだ。二周目の三コーナー手前で、ソリタリーキングとシビルウォーが外から抜いていって五番手に下がる。それでも和田は動かない。左回りで外へ膨れる癖のある馬だから、馬群の内で我慢させていた。四コーナーの出口で、ようやく手綱が動いた。 上がり三十八秒六。この日、二番目に速い脚が三十九秒六だったから、まるまる一秒違う脚だった。二着シビルウォーに五馬身。三着が一番人気のトランセンド、五着がテスタマッタ。三月に五日違いで生まれた三頭が、六歳の秋に一着、三着、五着で並んだ。 ウイニングランを終えてコースから戻るとき、和田は馬の首筋に頬を寄せ、右手でぽんと叩いた。前日に京都でJRA通算八百勝を挙げたばかりの三十五歳にとって、GI級の勝利は2001年の天皇賞・春以来、十一年ぶりだった。 「忘れかけていた味。やっぱりG1を勝つのはいいね」[^1] 佐藤正雄は、三度目の正直だ、と言った。開業十四年目にして、初めてのGI級である。 12月2日のジャパンカップダートは三番人気で二着、勝ったのはニホンピロアワーズ。12月29日の東京大賞典では単勝一・八倍の一番人気に推されて、三着に敗れた。
出典:スポーツニッポン「【JBCクラシック】ワンダーアキュート 5馬身ちぎった初G1」2012年11月6日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2012/11/06/kiji/K20121106004492680.html 、閲覧日:2026年8月1日。
一度も三着を外さなかった年
2013年、ワンダーアキュートは七回ゲートに入り、一度も三着を外さなかった。そして一着になったのは、そのうちの一度だけだった。 1月30日、川崎記念。単勝一・三倍でハタノヴァンクールの二着。 2月17日、フェブラリーステークス。七番人気でグレープブランデーの三着。 6月26日、大井の帝王賞。ここから鞍上が武豊に替わる。不良馬場を四つの角すべて先頭で回り、最後にホッコータルマエとニホンピロアワーズに交わされて三着。 9月23日、船橋の日本テレビ盃。五十八キロを背負って二番手を進み、逃げるソリタリーキングをクビ差だけ捉えた。重賞五勝目。 11月4日、金沢のJBCクラシック。二番人気で、粘るホッコータルマエをかわし切れずに二着。 12月1日、阪神のジャパンカップダート。十番手から上がり三十五秒九を使い、ベルシャザールにクビ差の二着。この競走で二着になるのは、三年続けてだった。 12月29日、東京大賞典。ホッコータルマエの二着。 七歳。三着以内を外さないという強さが、その年は一度しか一着にならなかった。
八歳の帝王
2014年2月23日、フェブラリーステークス六着。勝ったのは十六番人気のコパノリッキーだった。5月5日、船橋のかしわ記念は一番人気に推されて三着、勝ったのはまたコパノリッキー。 6月25日、大井。帝王賞、不良馬場。ニホンピロアワーズが逃げ、コパノリッキーが二番手、ワンダーアキュートは三番手にいた。一コーナーから四コーナーまで、四つの角をすべて三番手で回った。直線で前の二頭を捉え、上がり三十五秒八。二着コパノリッキーに二馬身。八歳での、二つ目のJpnIだった。 11月3日、盛岡のJBCクラシック。佐藤正雄が生まれた岩手である。二番人気で三着。JBCクラシックという競走に、この馬は2012年に一着、2013年に二着、2014年に三着で並んだことになる。 12月の中京・チャンピオンズカップは五着、暮れの東京大賞典は七着。八歳の一年は、そこで終わった。
九歳の五月
2015年2月22日、東京のフェブラリーステークス。鞍上はF.ベリー、十番人気で九着。九歳の春、この馬の単勝を買う人は少なくなっていた。 5月5日、船橋。かしわ記念、ダート千六百。和田竜二が二年三か月ぶりに手綱を取った。四番人気、単勝十八倍四分である。 十頭立て。セイントメモリーが逃げ、ベストウォーリアが二番手、ハッピースプリントが三番手につけた。ワンダーアキュートは六番手にいる。三コーナーで四番手、四コーナーで三番手。直線を向くと、前の二頭を抜き去った。一分三十七秒四、二着ベストウォーリアに一馬身。四着には武豊のクリソライトがいた。 九歳でのGI級制覇は、日本の競馬で初めてのことだった。 三年前に川崎で十一年ぶりのタイトルを運んできた馬が、いったん別の鞍上に預けられ、そして戻ってきた和田に、もう一つを渡した。
六度目の大井、そして南相馬
6月の帝王賞は八着。10月、盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯はベストウォーリアの三着。12月、中京のチャンピオンズカップは十四番人気で六着。 12月29日、大井の東京大賞典。2010年から数えて、六年続けてこの馬は年の暮れを大井で迎えていた。九歳、六番人気。三番手から進んで三着。四着は武豊のコパノリッキーで、クビ差だけ後ろにいた。 四十八戦目だった。四十八戦十三勝、獲得賞金八億七千六百三十万円あまり。中央のGIは、ついに勝てなかった――ジャパンカップダートで三年続けて二着に泣き、フェブラリーステークスでは二度三着に終わった。そのかわり、地方の砂で三つのJpnIを獲った。GIとJpnIには二十七回出走して、そのうち十八回は三着以内に入っている。 「ここまでよく頑張ったよ」[^1]。そう言った佐藤正雄は、二年後の2018年2月に定年で調教師を引退した。開業十四年目に初めてのGI級を運んできたのも、そのあとに二つ足したのも、この馬だった。 同じ三月に生まれた三頭のうち、トランセンドは2013年の初めに、テスタマッタは2014年の二月に競走馬をやめている。いちばん長く走ったのは、真ん中に生まれた馬だった。 2016年1月6日付で競走馬登録を抹消し、新ひだか町のアロースタッドで種牡馬になった。同じ牧場には、三年前に来たトランセンドがいた。父カリズマティックはその2016年の種付けを最後に日本を離れてケンタッキーのオールドフレンズへ帰り、翌2017年2月19日の朝、牧場のなかで亡くなっているのが見つかっている。産駒からは、2023年に園田の新春賞を勝ったアキュートガールが出た。2024年10月11日付で種牡馬を退き、日高町のヴェルサイユリゾートファームへ移って功労馬になった。 2026年、ドバイのメイダン競馬場でUAEダービーを勝った三歳馬がいる。ワンダーディーン。父はディーマジェスティ、母はワンダーシエンプロ、その母の父がワンダーアキュートである。ワンダーの冠名は、孫の代でも砂の上を走っていた。 そして同じ年の5月23日、二十歳になったワンダーアキュートは福島県南相馬市にいた。相馬野馬追。牧場は本州に初めての拠点を開く構想を持っていて、東日本大震災から十五年のその年、復興の一助になればとこの馬の参加を志願したのだという。浪江町の標葉郷から、だいだい色の飾りをつけて出陣した。甲冑をまとった牧場代表を背に、騎馬武者の行列に加わっている。初めての場所、大勢の人、爆竹の音。それでも最後まで落ち着いていたと、牧場は伝えた。 その三か月前、和田竜二が鞍を降りている。2026年2月28日、三十年の騎手生活を終えて調教師になった。彼が2022年に始めたYouTubeのチャンネルは、引退した競走馬を訪ねて回るためのものだった。 三歳の秋に古馬の重賞を二つ勝ち、九歳の五月に船橋で最後のタイトルを獲った。二〇一〇年からの六年、暮れになると、この馬はいつも大井にいた。長く走るというのは、たぶんそういうことだ。遅れて咲き、長く走る一族の、いちばん遠くまで行った一頭である。
出典:スポーツニッポン「9歳馬ワンダーアキュート、現役引退で種牡馬入り」2015年12月31日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2015/12/31/kiji/K20151231011781580.html 、閲覧日:2026年8月1日。
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