名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ウインブライトのイメージビジュアル
ウインブライトWin Bright
Win Bright

ウインブライト

通算成績24戦9勝

獲得賞金8130万円

生年月日 2014.05.12(平成26年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ウインブライトの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
2 GI香港カップ シャティン 芝2000 3人気 松岡正海 映像
10 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 12人気 松岡正海 1:59.4 上り34.5映像
7 GII中山記念 中山 芝1800 3人気 F.ミナリク 1:47.2 上り34.5映像
1 GI香港カップ シャティン 芝2000 1人気 松岡正海 2:00.5 映像
8 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 12人気 松岡正海 1:57.3 上り34.8映像
9 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 2人気 松岡正海 2:13.5 上り35.1映像
1 GIクイーンエリザベス2世カップ シャティン 芝2000 4人気 松岡正海 1:58.8 映像
1 GII中山記念 中山 芝1800 5人気 松岡正海 1:45.5 上り33.7映像
1 GIII中山金杯 中山 芝2000 3人気 松岡正海 1:59.2 上り34.9映像
9 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 14人気 松岡正海 1:33.7 上り34.5映像
10 GIII富士S 東京 芝1600 10人気 松岡正海 1:32.5 上り34.4映像
12 GI大阪杯 阪神 芝2000 9人気 松岡正海 1:59.7 上り35.4映像
1 GII中山記念 中山 芝1800 2人気 松岡正海 1:47.6 上り34.9映像
2 GIII中山金杯 中山 芝2000 2人気 松岡正海 1:59.8 上り34.8映像
1 GIII福島記念 福島 芝2000 2人気 松岡正海 2:00.2 上り35.3映像
10 GII毎日王冠 東京 芝1800 9人気 松岡正海 1:46.2 上り33.7映像
15 GI東京優駿 東京 芝2400 12人気 松岡正海 2:28.4 上り34.8映像
8 GI皐月賞 中山 芝2000 6人気 松岡正海 1:58.3 上り34.5映像
1 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 5人気 松岡正海 1:48.4 上り35.5映像
1 若竹賞 中山 芝1800 1人気 松岡正海 1:48.3 上り34.7
2 ひいらぎ賞 中山 芝1600 4人気 松岡正海 1:35.0 上り34.9
1 2歳未勝利 東京 芝1800 4人気 松岡正海 1:49.2 上り34.6
5 2歳未勝利 福島 芝1800 2人気 内田博幸 1:51.4 上り36.9
6 2歳新馬 東京 芝1800 1人気 松岡正海 1:51.6 上り35.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ウインブライトの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ステイゴールドStay GoldサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ゴールデンサッシュディクタスDictus
ダイナサッシュ
サマーエタニティアドマイヤコジーンCozzene
アドマイヤマカディ
オールフォーゲランジェイドロバリーJade Robbery
ミスゲラン

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2014年生まれの芦毛の牡馬。父ステイゴールド、母サマーエタニティ。主な勝ち鞍はQE2世C・香港C・フジTVスプリングS。

新冠の芦毛、姉の弟

2014年5月12日、北海道新冠町のコスモヴューファームで芦毛の牡馬が生まれた。父ステイゴールド、母サマーエタニティ、母の父アドマイヤコジーン。芦毛は母と、その父から来ている。 一口馬主法人のウインレーシングクラブが、総額3200万円――1口8万円を400口に割って募集した。冠名に「輝かしい」を足して、ウインブライト。顔には眉のような模様があり、のちにそれでも覚えられる馬になる。 1歳上に全姉がいた。ウインファビラスという。2015年に新潟2歳ステークスで2着、暮れの阪神ジュベナイルフィリーズでも2着に入った牝馬である。その主戦を務めていたのが、松岡正海だった。 母系をさかのぼると5代母のミスブゼンに行き着く。1950年代にオーストラリアとニュージーランドから輸入された、いわゆる豪サラの一頭だ。その子孫は長く日本の競馬に散らばっている。優駿牝馬を勝ったコスモドリーム、短距離のハクサンムーン、近年では高松宮記念を連覇したサトノレーヴ。牝系番号は18号族。 預けられたのは美浦の畠山吉宏厩舎。坂路で好時計を出し、陣営の期待は高かった。 2016年6月26日、東京の芝1800m。松岡を背にデビューしたが、直線で伸びを欠いて6着。翌月、福島の未勝利戦は内田博幸に乗り替わって5着。単勝1番人気と2番人気で、どちらも期待を裏切った。 夏は北海道で過ごした。戻ってきた11月12日、東京の未勝利戦を三度目にして勝ち上がる。12月のひいらぎ賞は2着。2歳の四戦で、勝ったのは一度きりだった。 それでも松岡は、この馬はGIを勝てる、と早くから口にしていた。

中山の芝1800

2017年1月21日、中山の若竹賞。1番人気に応え、4コーナーから長く脚を使って2勝目を挙げた。中山の芝1800mを走ったのは、これが初めてである。 3月19日、同じ中山の同じ1800mでスプリングステークス。5番人気。コーナーで積極的に押し上げていき、直線半ばで先頭に立つと、アウトライアーズら後続の追撃を抑えて重賞初制覇を果たした。ただし馬体重は前走から12キロ減っている。松岡は勝ったあとで、若竹賞のときのほうが具合の良さを感じる部分もあった、と正直に話した。 春のクラシックは、二戦とも8枠17番を引いた。4月16日の皐月賞は8着。勝ったのはアルアイン。5月28日の東京優駿は15着で、勝ったのはレイデオロ。同世代の頂は遠かった。 秋は10月8日の毎日王冠で10着と叩き、11月12日の福島記念へ。2番人気で、スズカデヴィアスをわずかにしのいで重賞2勝目を挙げた。3歳の終わりに、重賞を二つ持っていた。

GI馬を三頭抜いた日

2018年1月6日、中山金杯。2番人気で、セダブリランテスに0秒差まで詰め寄りながら2着に敗れた。 2月25日、中山記念。GI馬が三頭そろった一戦で、ペルシアンナイトに次ぐ2番人気。中山の芝1800mはここまで二戦二勝、この馬の庭である。逃げ粘るマルターズアポジーを直線で捉え、ゴール前で差し返してきたアエロリットをクビ差退けて、重賞3勝目。中山1800は三戦三勝になった。 勢いに乗って4月1日の大阪杯へ向かったが、3コーナーで急にペースが上がると付いていけず、12着に沈んだ。一年後、畠山はこのときのことを振り返っている。中山記念を勝ったあとに、これはいけるだろうと大阪杯へ向かったところ全然動きが悪く、かわいそうなことをした。冬からずっと放牧に出さずに在厩させていて、大丈夫だと思ったのがよくなかったのかもしれない――と。 回復は遅れた。秋は10月20日の富士ステークスで10着、11月18日のマイルチャンピオンシップで9着。4歳の暮れ、重賞を三つ勝った馬は、まだGIを一つも持っていなかった。

折れた腕

2019年1月5日、中山金杯。トップハンデの58キロを背負い、直線で外から差し切ってステイフーリッシュを退けた。重賞4勝目、そのうち三つが中山である。 その翌日だった。1月6日、中山競馬場のパドックで、松岡は騎乗予定の馬に蹴られて右腕の尺骨を折る。自然に治るのを待てば三か月かかる骨折だった。松岡は骨にプレートを埋める手術を選び、一か月で現場へ戻ってくる。中山記念の2週前から乗りたいから、というのがその理由だった。 2月24日、中山記念。5番人気。四番手の好位で運び、直線でラッキーライラックをクビ差だけ捉えて、連覇を果たした。この日の中山にはディアドラステルヴィオエポカドーロスワーヴリチャードラッキーライラックがそろい、2着から6着までがGIホースという一戦だった。 中山記念を勝てば大阪杯への優先出走権がついてくる。陣営はそれを使わなかった。前年の失敗を踏まえ、レース間隔の空く香港のクイーンエリザベス2世カップを選んだのである。中山記念の時点で香港挑戦を明言し、招待されることを前提にして放牧へ出した。リスグラシューディアドラエポカドーロが先に招待馬として発表され、連絡を待つあいだ、陣営はやきもきしていたという。

なぜ、松岡なのか

香港ジョッキークラブが開いたレース前の記者会見で、畠山はこう問われた。 「なぜ鞍上はルメール騎手や武豊騎手ではなく、松岡騎手なのか?」[^1] 近年の日本馬の海外遠征では、ここ一番の手綱を海外に実績のある騎手へ託すことが珍しくない。帯同するスタッフにしても、通訳やレーシングマネージャーを含めた陣容を組むのが標準になっていた。ウインブライトの一行は、畠山厩舎のスタッフと、追い切りに駆けつける松岡が中心だった。 2019年4月28日、シャティンの芝2000m。最内の1番ゲートから、やや立ち遅れて出た。外から一気に前へ入られ、後ろへ押し込められる危険のあるスタートである。しかし前に入ったパキスタンスターが先行馬を追いかけていったため道が塞がらず、松岡が軽く促すと、ハイペースの逃げ馬から離れた内の好位にすっと収まった。 直線を向いて手応えは十分。一瞬前が壁になりかけたが、残り300mでグロリアスフォーエバーの外に進路を見つけると、躊躇なく潜り込ませた。残り100mで先頭。外から並びかけてきた地元のエグザルタントと、日本のリスグラシューを3/4馬身抑えて、ゴールへ飛び込んだ。松岡は鞍上で大きく手を掲げた。 勝ち時計1分58秒81は、このコースで初めての1分58秒台であり、レコードだった。松岡にとっては2009年の天皇賞(春)をマイネルキッツで勝って以来、十年ぶりのGIである。ステイゴールド産駒としても、初めての海外国際GI制覇だった。 3着に敗れたリスグラシューの矢作芳人は、チームジャパンとして勝ち馬を褒めたい、と言った。6着に終わったディアドラの武豊は、ウインブライトが勝って日本の馬の強さを示すことができたと思う、と話した。会見での問いには、レースが答えていた。

出典:JRA「レース結果・回顧:2019年クイーンエリザベスⅡ世カップ」、https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/race/2019hkch/2019qe2/kaiko.html、閲覧日:2026年7月26日。

アーモンドアイのいない香港カップ

秋は9月22日のオールカマーから始めた。2番人気に推されながら直線でずるずると後退し、10頭立ての9着。松岡は2200mという距離を敗因に挙げ、畠山は美浦のウッドコースが夏場に閉鎖されていたこともあって負荷のかけ方が足りなかったかもしれない、と状態面に触れた。10月27日の天皇賞(秋)は8着。勝ったのはアーモンドアイである。 12月8日、再びシャティンへ。香港カップにはアーモンドアイの名も挙がっていたが回避となり、ウインブライトが唯一の出走日本馬になった。週の間、香港のメディアが振ってくる話題は、アーモンドアイがいなくなった香港カップを惜しむ枕詞から始まった。この日、香港国際競走に騎乗する日本人騎手も、松岡ひとりだった。 8頭立ての大外8番枠。シャティンの芝2000mで外枠は不利とされ、頭数が少ないぶんその差はかえって大きくなる。ゲートが開くと少し外へよれて一歩目が遅れた。松岡は躊躇せず馬を前へ促す。1コーナーでは五頭ぶん外を回されたが、2コーナーに入る前に、逃げるタイムワープとグロリアスフォーエバーのすぐ後ろ、マジックワンドの外へ、やや強引に入り込んだ。 道中は二頭ずつが縦に四つ並ぶ形。タイムワープは飛ばさず、ほぼ1ハロン12秒で流れる。4コーナーで隊列が凝縮し、直線へ入った。ウインブライトは前のグロリアスフォーエバーを壁に使い、内のマジックワンドに出しどころを与えないようにしながら、前の二頭をかわしにかかる。外から並びかけてきたライズハイを振り切った残り150m、今度は内から、狭いところを縫ってマジックワンドが一気に差を詰めてきた。二頭はもつれるようにゴールへ飛び込む。わずかにウインブライトだった。短アタマ差。 勝ち時計2分00秒52はレースレコード。場内にアナウンスが流れた。 「日本にとってファンタスティックデー再び、ステイゴールドの仔、ウインブライト!」[^1] 同じ年にクイーンエリザベス2世カップと香港カップの両方を勝った馬は、外国調教馬では初めてだった。地元の香港馬を含めても、2005年のヴェンジャンスオブレイン、2014年のデザインズオンロームに次ぐ三頭目である。 父ステイゴールドが生涯でただ一つ勝ったGIは、2001年、五十戦目の引退レースとなった香港ヴァーズだった。場所は、同じ沙田である。 この年の走りで、ウインブライトは2019年のJRA賞最優秀4歳以上牡馬に選ばれた。274票のうち136票。国内のGIは、まだ一つも勝っていなかった。

出典:JRA「レース結果・回顧:2019年香港カップ」、https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/race/2019hkir/cup/kaiko.html、閲覧日:2026年7月26日。

左足

2020年2月8日、東京競馬場の第6競走。松岡の乗るゴールドミッションが故障して転倒し、松岡も落馬した。診断は左大腿骨骨折だった。 3月1日、三連覇のかかった中山記念に、ウインブライトはF.ミナリクを背に出走した。3番人気。見せ場なく7着。勝ったのはダノンキングリーである。松岡以外の騎手がこの馬に乗ったのは、2016年7月の未勝利戦以来、これが二度目だった。 春はそこで止まった。新型コロナウイルスの流行でクイーンエリザベス2世カップの連覇は断念となり、さらに左前肢に蟻洞を発症する。態勢が整ったのは秋である。 10月、松岡が戦列に戻った。11月1日の天皇賞(秋)でコンビが復活し、結果は10着。勝ったのは前年と同じ、アーモンドアイだった。 そして12月13日、シャティン。引退レースは、連覇のかかった香港カップになった。四番手を追走して直線で先頭に並びかけたが、外からノームコアに交わされて3/4馬身差の2着。3着はマジカル。松岡は、いいポジションが取れてこの馬のスタイルを貫くことができた、とても納得できる最高の競馬だった、と振り返っている。 12月23日、競走馬登録を抹消。24戦9勝。中山では10戦して5勝、2着が2回だった。 松岡はこの騎乗を最後に、ふたたび休養へ入る。左足の状態が思わしくなかった。三度の手術を経て、次にレースへ戻ったのは2021年11月6日、328日ぶりのことである。二人が最後に組んだ一戦は、騎手にとっては、そこから始まる長い空白の入口でもあった。

中山1800、二〇二五年三月

2021年、ウインブライトは新冠町のビッグレッドファームで種牡馬になった。初年度の種付け料は120万円。80頭を超える牝馬が集まった。生まれた牧場も、種牡馬として立った牧場も、同じ新冠にある。そしてビッグレッドファームは、2001年に父ステイゴールドのシンジケートが組まれたとき、大口の株主として名を連ねた三つの組織のひとつでもあった。 2025年3月16日、中山の芝1800m、重馬場。スプリングステークス。12頭立ての7番人気に推された牡馬が2着に入った。勝ったピコチャンブラックとは、同じ時計だった。名をフクノブルーレイクという。父はウインブライト、初年度産駒の一頭である。 鞍上は、松岡正海だった。 八年前、父がこの同じ中山の1800mで重賞初制覇を挙げたとき、乗っていたのも同じ男である。松岡はその翌月、2025年4月19日に中央通算900勝へ到達した。フクノブルーレイクはその後も走り続け、2026年5月の新潟大賞典で3着に入っている。 ウインブライトが挙げた9勝は、すべて松岡との組み合わせによるものだ。国内のGIには六度出走して、一度も勝てなかった。勝ったGIは二つとも、海の向こうの右回り2000mだった。 なぜ松岡騎手なのか――沙田で投げられたその問いに、この馬は生涯をかけて答え続けた。中山で四つの重賞を、シャティンで二つのGIを。そして種牡馬になったあとも、同じ中山の同じ1800mで、同じ男を背にした息子が、ゴール板まで答えを届けにきた。

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