名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ウィルソンテソーロのイメージビジュアル
ウィルソンテソーロWilson Tesoro
Wilson Tesoro

ウィルソンテソーロ

通算成績30戦10勝

獲得賞金111,000万円

生年月日 2019.02.25(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ウィルソンテソーロの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
2 JpnⅠさきたま杯 浦和 ダ1400 1人気 川田将雅 1:25.6 上り35.9映像
1 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 3人気 川田将雅 1:38.6 上り37.6映像
2 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 3人気 川田将雅 1:35.5 上り35.7映像
2 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 2人気 川田将雅 1:50.2 上り36.8映像
5 JpnⅠJBCクラシック 船橋 ダ1800 2人気 川田将雅 1:54.2 上り40.8映像
1 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 4人気 川田将雅 1:34.3 上り35.6
5 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 2人気 川田将雅 2:04.1 上り38.6映像
7 GIドバイワールドカップ メイダン ダ2000 5人気 川田将雅 映像
4 GIサウジカップ キングアブドゥル ダ1800 7人気 川田将雅 映像
2 GI東京大賞典 大井 ダ2000 2人気 川田将雅 2:05.2 上り36.6映像
2 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 2人気 川田将雅 1:50.1 上り36.2映像
1 JpnⅠJBCクラシック 佐賀 ダ2000 1人気 川田将雅 2:08.0 上り37.1映像
2 GIIIコリアカップ ソウル ダ1800 1人気 川田将雅 1:52.7 映像
2 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 1人気 川田将雅 2:07.2 上り38.0映像
4 GIドバイワールドカップ メイダン ダ2000 7人気 原優介 映像
8 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 2人気 松山弘平 1:36.6 上り38.5映像
2 GI東京大賞典 大井 ダ2000 6人気 原優介 2:07.4 上り37.9映像
2 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 12人気 原優介 1:50.8 上り36.6映像
5 JpnⅠJBCクラシック 大井 ダ2000 3人気 菅原明良 2:06.9 上り39.4映像
1 JpnⅢ白山大賞典 金沢 ダ2100 1人気 川田将雅 2:11.0 上り35.9
1 JpnⅢマーキュリーカップ 盛岡 ダ2000 1人気 川田将雅 2:01.8 上り36.6
1 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1500 2人気 川田将雅 1:31.1 上り36.2
5 OP名古屋城S 中京 ダ1800 1人気 鮫島克駿 1:51.1 上り37.1
1 招福S 中山 ダ1800 1人気 戸崎圭太 1:52.3 上り37.4
1 3歳以上2勝クラス 東京 ダ1600 1人気 戸崎圭太 1:36.6 上り36.1
1 3歳以上1勝クラス 東京 ダ1600 1人気 戸崎圭太 1:36.5 上り35.5
1 3歳未勝利 新潟 ダ1800 4人気 戸崎圭太 1:51.8 上り37.0
13 3歳未勝利 福島 芝1800 2人気 戸崎圭太 1:51.3 上り37.4
7 3歳未勝利 東京 芝2400 3人気 戸崎圭太 2:27.9 上り36.2
6 2歳新馬 新潟 芝1800 6人気 三浦皇成 1:49.3 上り36.2

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ウィルソンテソーロの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キタサンブラックKitasan BlackブラックタイドサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
シュガーハートサクラバクシンオーSakura Bakushin O
オトメゴコロ
チェストケローズUncle MoIndian Charlie
Playa Maya
Deputy's DelightフレンチデピュティFrench Deputy
Bishop's Delight
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父キタサンブラック、母チェストケローズ。

「伝説の新馬戦」― キタサンブラックの、もう一頭の息子

2021年8月28日、新潟の芝1800m。2歳新馬のそのゲートは、のちに「伝説の新馬戦」と呼ばれることになる。勝ったのは、ルメールを背にしたイクイノックス。2着に6馬身の差をつけ、やがて世界の頂へ駆け上がっていく怪物だった。3着には、この年の阪神ジュベナイルフィリーズを制するサークルオブライフ。三浦皇成が手綱を取ったこの鹿毛は、6着だった。 ウィルソンテソーロ。父は、イクイノックスと同じキタサンブラックである。芝で盾を連取した英雄から、同じ日に、二頭の息子が競馬人生を始めていた。視線を集めたのは、むろんイクイノックスのほうだ。ウィルソンテソーロはレース後に左前脚の骨折が判明し、長い休養に入る。復帰しても芝では二度続けて着外に沈み、進む道は自然と、父の走らなかった砂へ向いていった。

母の忘れ形見 ― 名と、砂の血

血の設計図は、父と母でまるで違う方角を指していた。父キタサンブラックは芝の申し子。だが母チェストケローズは、了徳寺健二がアメリカのセリで買った牝馬で、その父はダートの名種牡馬アンクルモ、母の父はフレンチデピュティ。砂に強い血が、母の側にだけ流れていた。 そのチェストケローズは、ウィルソンテソーロを産んだあと、蹄葉炎でこの世を去る。残した産駒は、この一頭きり。了徳寺が北海道に拓いたリョーケンファームの、一期生でもあった。「テソーロ」はこの馬主が全馬に冠する名で、スペイン語で「宝」を意味する——この馬だけに込めた願いではない。それでも、母がたった一頭を遺して逝ったことを思えば、その符合には胸を突かれる。もう一つの「ウィルソン」は、人名に由来するとだけ伝わっている。 砂の適性は、戸崎圭太とともに開いた。芝で行き場を失った2022年8月、新潟のダート1800mで初勝利を挙げると、東京で二つ、暮れの中山・招福ステークスで一つ。ダートに替わってから、この馬は四つ続けて勝った。母が遺した血が、ようやく自分の場所を見つけていた。

川田将雅、手綱を取る

2023年5月、名古屋のかきつばた記念。ここから、一人の騎手がこの馬の背に長く座ることになる。川田将雅である。2番人気に応えて差し切り、重賞初制覇。続く盛岡のマーキュリーカップ、金沢の白山大賞典と、地方交流のJpnⅢを三つ立て続けに勝った。 砂に居場所を得た馬と、腕っこきの騎手。地方の小回りを苦にせず、どの競馬場でも堅実に前へ出る。中央の大レースへ挑む足場は、この夏、静かに固まっていった。

十二番人気の銀 ― 原優介の激走

秋、主戦の川田が離れる期間があった。初のJpnⅠ挑戦となった大井のJBCクラシックは、川田が海外遠征で乗れず菅原明良が跨って5着。暮れの中央GI、チャンピオンズカップの鞍上は、当時23歳の原優介だった。 2023年12月3日、中京。単勝12番人気。スタートで出遅れ、馬群の後方から、しかし原優介はまっすぐに追い込んだ。逃げるレモンポップをゴール前で1馬身4分の1まで詰め、2着。3連単は190万円を超え、その年のダート界を揺らす大波乱になった。年末の東京大賞典でも、原優介とのコンビで2着に食い込む。 ただ、上り坂ばかりではない。年が明けたフェブラリーステークスは2番人気で8着に沈み、遠征したドバイワールドカップは4着。銀メダルと黒星が、代わる代わる差し込まれた。この馬の物語は、勝ち切れなさと隣り合わせで進んでいく。

佐賀の涙 ― 悲願のビッグタイトル

2024年6月、帝王賞。1番人気に推されながら、また2着。悔しさを溜めて臨んだのが、その秋の佐賀だった。 11月4日、JBCクラシック。川田を背に1番人気で応え、直線で後続を突き放すと、2着に4馬身の差をつけて完勝する。JpnⅠ——GI級のタイトルは、これが初めてだった。佐賀は、川田将雅の故郷である。地元の砂で摑んだ大レースに、鞍上は涙をこらえきれなかった。「本当に騎手冥利に尽きるなと」[^1]。馬主の了徳寺は「私が北海道に作った牧場の第一期生なのです」と、感慨を隠さなかった。 芝で盾を連取した父から生まれた馬が、砂の頂に立った。あの伝説の新馬戦で背中を見せられた側の息子が、父とは違う土俵で、初めて自分の名を大きく刻んだ夜だった。

出典:東京スポーツ「【JBCクラシック】川田将雅が地元・佐賀で涙の凱旋V ウィルソンテソーロ戴冠『本当に騎手冥利に尽きるなと』」2024年11月4日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/51284、閲覧日:2026年7月19日。

銀の帝王 ― 届かぬ中央の頂

悲願を果たしても、中央のGIだけは、あと一歩が縮まらなかった。 JBC制覇の翌月、チャンピオンズカップ。1番人気で挑んだが、引退を控えたレモンポップの連覇を、ハナ差で許す。王者の花道を飾らせたのは、またこの馬だった。暮れの東京大賞典も2着。年が明けると世界へ出て、サウジカップは4着、ドバイワールドカップは7着。砂のグローバルな最前線で、地力は示しても、届かない。夏の帝王賞は5着に敗れ、勝ち鞍から遠ざかる時間もあった。 中央のビッグタイトルには手が届かず、それでも掲示板の上位から外れない。銀を重ねながら走り続ける姿に、いつしか「善戦」以上の凄みが宿りはじめていた。

盛岡の再起、なお続く銀

2025年10月、盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯。距離をマイルに絞ったこの一戦で、馬は甦った。4番人気ながら好位から抜け出し、2着に4馬身差をつけて圧勝。1年ぶりのGI級2勝目だった。川田は、この馬には1600mが一番合うと、かねて手応えを口にしていた。 だが、銀の縁はなお切れない。暮れのチャンピオンズカップは、ダブルハートボンドに首の上げ下げでわずかに及ばず2着。中京のこの舞台は、2023年から三年続けての2着になった。年明けのフェブラリーステークスも、連覇を狙うコスタノヴァに半馬身。大レースでの2着は、これで数えるのも切ないほど積み上がっていた。それでも、崩れない。最前線に居続けること自体が、この馬の非凡だった。

かしわの差し切り、旅はいま

2026年5月5日、船橋のかしわ記念。3番人気。直線で先に抜け出した1番人気ミッキーファイトを、ゴール前できっちり捉え、クビ差差し切った。JpnⅠは、これで三つ目。芝の頂を極めた父の血は、こうして砂でもうひとつ、大きなタイトルを増やしていた。 6月、浦和のさきたま杯。キャリアで初めての1400mに1番人気で臨んだが、道中で接触して最後方まで下げ、上がり2位の脚で外から追い込んでも、前を捉えきれずに2着。「勝たせてあげたいところではありましたけれど、力は示してくれました」[^1]。川田の言葉は、この馬のこれまでをそのまま言い当てているようだった。 母が一頭だけ遺した忘れ形見は、いまも現役の砂を走っている。伝説の新馬戦で背中を追った日から、勝ち切れない夜を数えきれないほどくぐり、それでも大レースの前列に立ち続けてきた。銀の重みを知る馬の物語は、まだ次の一戦へと続いている。

出典:デイリースポーツ「【地方競馬】さきたま杯 ウィルソンテソーロは追い込み届かず2着」2026年6月24日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/06/24/0020514409.shtml、閲覧日:2026年7月19日。

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