名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ホエールキャプチャのイメージビジュアル
ホエールキャプチャWhale Capture
Whale Capture

ホエールキャプチャ

通算成績30戦7勝

獲得賞金53,231万円

生年月日 2008.02.24(平成20年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ホエールキャプチャの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1400 5人気 蛯名正義 1:21.9 上り34.6映像
5 GII阪神カップ 阪神 芝1400 9人気 蛯名正義 1:21.0 上り34.4
15 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 11人気 蛯名正義 2:13.7 上り34.8映像
3 GII府中牝馬S 東京 芝1800 2人気 蛯名正義 1:45.9 上り34.2映像
3 GII札幌記念 札幌 芝2000 7人気 蛯名正義 2:00.0 上り36.4映像
15 GI安田記念 東京 芝1600 7人気 蛯名正義 1:38.7 上り38.5映像
4 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 2人気 蛯名正義 1:32.4 上り33.7映像
1 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 8人気 蛯名正義 1:33.2 上り34.3
6 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 4人気 蛯名正義 2:17.1 上り34.4映像
1 GII府中牝馬S 東京 芝1800 4人気 蛯名正義 1:48.8 上り32.6
14 GII札幌記念 函館 芝2000 9人気 蛯名正義 2:11.9 上り43.5映像
2 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 12人気 蛯名正義 1:32.4 上り33.4映像
14 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1400 6人気 蛯名正義 1:22.6 上り35.0
13 クイーン賞 船橋 ダ1800 3人気 蛯名正義 1:56.2 上り40.6
10 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 3人気 横山典弘 2:17.4 上り36.8映像
11 GII府中牝馬S 東京 芝1800 2人気 横山典弘 1:46.1 上り34.0
14 GI宝塚記念 阪神 芝2200 11人気 横山典弘 2:15.1 上り39.1映像
1 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 4人気 横山典弘 1:32.4 上り33.8映像
5 GIII中山牝馬S 中山 芝1800 2人気 横山典弘 1:51.0 上り36.7
4 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 6人気 池添謙一 2:12.0 上り35.1映像
3 GI秋華賞 京都 芝2000 1人気 池添謙一 1:58.6 上り34.7映像
1 GII関西TVローズS 阪神 芝1800 1人気 池添謙一 1:48.1 上り33.8
3 GI優駿牝馬 東京 芝2400 2人気 池添謙一 2:25.7 上り34.0映像
2 GI桜花賞 阪神 芝1600 1人気 池添謙一 1:34.0 上り34.3映像
1 GIIIデイリー杯クイーンカップ 東京 芝1600 2人気 池添謙一 1:35.4 上り34.7
2 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 4人気 池添謙一 1:35.8 上り34.1映像
3 GIIIKBSファンタジーS 京都 芝1400 5人気 武豊 1:22.3 上り34.6
1 OP芙蓉S 中山 芝1600 5人気 松岡正海 1:35.3 上り34.8
1 2歳未勝利 函館 芝1200 2人気 横山典弘 1:12.4 上り35.5
2 2歳新馬 函館 芝1200 4人気 横山典弘 1:11.4 上り35.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ホエールキャプチャの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
クロフネKurofuneフレンチデピュティFrench DeputyDeputy Minister
Mitterand
ブルーアヴェニューBlue AvenueClassic Go Go
Eliza Blue
グローバルピースサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
エミネントガールNashwan
タレンティドガール
STORY

旅程 — この馬の物語

2008年生まれの芦毛の牝馬。父クロフネ、母グローバルピース。主な勝ち鞍はヴィクトリアマイル・デイリー杯クイーンC・関西TVローズS。

銚子の医師と、黒船の子

千葉県銚子市。国内屈指の水揚げ量を誇る漁港の街で、内科医の嶋田賢は医療法人積仁会・島田総合病院の理事長を務めていた。1937年1月22日生まれ。戦後に七期にわたって銚子市長を務めた嶋田隆の長男で、東京慈恵会医科大学に学び、1985年から病院の院長兼理事長を担った人である。競馬の馬主資格を取ったのは1979年だった。 その彼が、北海道新ひだか町の千代田牧場で一頭の牝馬を選んだ。父はクロフネ、母はグローバルピース。芦毛だった。 名づけたのは彼の友人である。鯨、そして捕獲。ホエールキャプチャ。銚子という港町と、父の名——ペリーが黒船を率いて日本へ来た理由のひとつが、捕鯨船の寄港地を確保することだった——その二つを、一本の線で結んだ命名だった。 「牧場で気に入って自分で選んだ馬なので格別です」[^1] のちに彼は、この馬をそう語ることになる。 預けられたのは美浦の田中清隆厩舎。田中もまた銚子の生まれだった。銚子商業を出て銚子信用金庫に入ったが、小柄で敏捷なことを見込んだ上司に騎手を勧められ、中山・野平省三厩舎に入門する。1975年に免許を取り、鞍上で過ごしたのは十五年。重賞は1976年のステイヤーズステークス、ホッカイノーブルでの一勝きりだった。1990年に鞍を降りてその年のうちに開業し、1997年のシンコウウインディでフェブラリーステークスを勝ってGI初制覇、翌年グルメフロンティアで連覇し、2001年にはレディパステルで優駿牝馬を勝っている。 同じ港町から出た医師と調教師のあいだに、鯨を捕るという名の芦毛が置かれた。

出典:スポーツニッポン「【ヴィクトリアM】オーナー笑顔「ようやく届いた」」2012年5月14日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2012/05/14/kiji/K20120514003245860.html、閲覧日:2026年7月30日。

才媛と、その血

血のほうも、この牧場に長く根を張っていた。 曾祖母をタレンティドガールという。1984年4月27日、静内の千代田牧場生まれ。千代田牧場は生産と所有を兼ねるオーナーブリーダーで、この牝馬も飯田政子の勝負服で走った。1987年の優駿牝馬では、圧倒的一番人気に応えたマックスビューティの三着に食い込む。そして同じ年の11月15日、京都のエリザベス女王杯。四番人気だったこの牝馬は、直線で先頭に立ったマックスビューティを外から差し切り、重賞初制覇をGI優勝で飾る。十一戦四勝。その名は馬主の夭折した娘にちなんで「才媛」の意で付けられており、この日はちょうどその十三回忌にあたっていた。 同じ母チヨダマサコから出た半兄が、ニッポーテイオーである。その秋、兄は天皇賞(秋)とマイルチャンピオンシップを勝った。一か月のうちに、兄妹あわせてGIを三つ。 タレンティドガールは生まれた牧場で繁殖に上がり、ヨーロッパへ渡ってナシュワンやソヴィエトスターと交配された。不受胎が続いたが、英国で産んだ二番仔エミネントガールは生産者の欄もT・イイダで、やがて日本へ帰った。その娘がグローバルピースである。五戦一勝の、目立たない牝馬だった。牝系をさかのぼれば、輸入基礎牝馬ビューチフルドリーマー——千代田牧場そのものの基礎牝系に行き着く。 そのグローバルピースにクロフネを配する。千代田牧場は、この組み合わせを何年も繰り返した。2007年のドリームセーリング、2008年のホエールキャプチャ、2010年のグローバルハート、2014年のカウントオンイット、2015年のパクスアメリカーナ、2016年のパイオニアプライド、2017年のモルタル——すべて同じ父と母を持つきょうだいである。 2008年11月13日、タレンティドガールは老衰のため二十四歳で死んだ。その年の2月24日に同じ静内で生まれた芦毛の牝馬は、まだ一度も競馬場を見ていなかった。

中山の、八頭立て

2010年7月3日、函館の芝1200m。横山典弘を背にした四番人気の新馬は、直線で差しにかかったが、ジョーアカリンに0秒2届かず二着だった。二週間後の未勝利戦は同じ舞台、同じ鞍上で、今度は差し切って初勝利。 三戦目が、中山のオープン特別・芙蓉ステークスである。10月3日、八頭立て。単勝11.1倍の五番人気で、鞍上は松岡正海に替わっていた。一番人気に推された牡馬の背には、池添謙一がいた。 この日の彼女は、逃げた。四つのコーナーをすべて先頭で回り、直線で並びかけてきた一番人気を、クビだけ抑えて凌ぎ切る。1分35秒3。上がり三ハロンは相手のほうが速く、それでも届かなかった。 抑えられたその牡馬の名を、オルフェーヴルという。翌年に皐月賞、東京優駿、菊花賞、有馬記念を勝つ馬である。 一か月後の京都、ファンタジーステークス。武豊が乗り、十七頭立ての最後方から直線だけで追い込んで、上がり34秒6。ハナ、ハナの三着だった。勝ったマルモセーラも、彼女と同じクロフネの娘である。 12月12日、阪神ジュベナイルフィリーズ。池添謙一が初めて手綱を取った。四番人気。内で粘ったが、外へ持ち出された無敗の一番人気に半馬身だけ捉えられて二着。決勝線を最初に過ぎた三頭——レーヴディソール、ホエールキャプチャ、ライステラス——はいずれも芦毛で、グレード制が導入された1984年以降、上位三頭が芦毛で占められたのはこれが初めてだった。

一番人気を背負う

年が明けて2011年2月12日、東京のクイーンカップ。稍重の芝1600mを、池添は六番手から運んだ。直線で力強く抜け出し、マイネイサベルに四分の三馬身。重賞初制覇である。1979年に馬主資格を取った嶋田賢にとっても、初めての重賞だった。 4月10日、阪神。桜花賞。 最有力と見られていたレーヴディソールが一週前追い切りのあとに右前脚の骨折と分かり、十一日前に姿を消していた。押し出されるように、この馬が自身初の一番人気になる。単勝3.1倍、八枠十六番。 後方に置いて、大外を回した。直線で伸びた。だが内で脚を溜めていたマルセリーナが馬群の隙間から弾け、逃げ粘るフォーエバーマークを交わして先に抜け出している。上がりは34秒3、勝ち馬とまったく同じ。四分の三馬身、届かない。 5月22日、東京。優駿牝馬。発走の直前になって雨脚が強まった。 桜花賞馬マルセリーナが単勝2.2倍の一番人気、この馬が3.0倍の二番人気。ここまで七戦して、一度も三着より下に落ちたことがなかった。 六枠十二番。発馬で後手を踏んで後方に置かれたが、直線は馬群の間隙を割って伸びた。上がり34秒0は、十八頭の誰よりも速い。だが前では、逃げたピュアブリーゼが粘り、中団から抜け出したエリンコートがそれを一完歩ずつ詰めていた。 2分25秒7。一着も二着も三着も、同じ時計だった。エリンコートからクビ、ピュアブリーゼからハナ。三着である。 GIで二着、二着、三着。

淀に届かない

秋は9月18日、阪神のローズステークスから始まった。ここで運び方が変わる。池添は二番手に付け、四コーナーも三番手で回った。直線で先に抜け出し、外から33秒3の脚で来たマイネイサベルをクビだけ凌ぐ。1分48秒1。一番人気に応えた、七か月ぶりの一着だった。 10月16日、京都の秋華賞。稍重。単勝2.2倍の一番人気。枠は六枠十二番である。 大逃げが刻んだ前半1000mは58秒3。二番人気のアヴェンチュラが三コーナーから早々に動いて直線入口で先頭に立ち、そのまま押し切った。この馬は外から差してきたが、一馬身四分の一、さらに一馬身四分の一の三着。内の馬場が良いのは分かっていたが十二番枠では入れなかった、枠順と立ち回りの差だ、と池添は振り返っている。 11月13日、同じ京都のエリザベス女王杯。六番人気。二枠三番から二番手を追走し、四つのコーナーをすべて二番手で回った。直線でいったんは先頭に立つ。そこへ前年の覇者スノーフェアリーが中団から上がり33秒8で伸び、好位で脚をためていたアヴェンチュラアパパネにも交わされた。四着。勝ち馬から0秒4だった。 曾祖母がGIを勝ったのが、この競走である。彼女はこのあと三年続けて同じ淀のエリザベス女王杯に出走し、ついに一度も勝てなかった。 デビューから十一戦。一着が四回、二着が三回、三着が三回、四着が一回。掲示板を外したことは、まだ一度もない。

一分三十二秒四

四歳初戦、3月11日の中山牝馬ステークスから、鞍上が横山典弘に替わった。函館の新馬戦と未勝利戦で乗った男である。重馬場、五十五・五キロ、二番人気。逃げるレディアルバローザを二番手でマークしたが直線で伸びず、五着に終わった。 5月13日、東京。ヴィクトリアマイル。 この日までの十二戦、彼女は一度も掲示板を外していない。しかしGIでは、阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞が二着、優駿牝馬と秋華賞が三着、エリザベス女王杯が四着。あと一歩の踏ん張りが、この馬にとって最大にして唯一の課題だった。 十八頭立て、単勝7.2倍の四番人気。一番人気は牝馬三冠を含むGI五勝のアパパネで、その鞍上は蛯名正義だった。 ペースは速くならない、前が有利だ——そう読んだ横山は、逃げるクィーンズバーンと外のドナウブルーを見る三番手の内へ馬を導き、じっと折り合わせた。四コーナーを回って周囲がスパート態勢に移っても慌てない。一頭になるとフワフワしてしまう馬だ——だから府中の坂は馬なりのまま駆け上がらせ、そこでようやくシフトを入れた。 1分32秒4、上がり33秒8。粘るドナウブルーに二分の一馬身、三着に田辺裕信のマルセリーナ、五着にアパパネ。十三戦目にして、初めてのGIだった。 田中清隆にとって、この競走は初勝利。横山典弘には2010年のブエナビスタ以来の二勝目。そして嶋田賢にとっては、馬主になって初めてのGIである。 「耐えて耐えてようやく届いたという感じ」[^1] 七十五歳のオーナーはそう言い、四コーナーで勝ったと思った、やっぱり典ちゃんだね、と鞍上を称えた。記念写真には、後援会が作った大漁旗が並んだ。国内屈指の水揚げ量を誇る港町から来た馬の、初めての優勝写真だった。

出典:スポーツニッポン「【ヴィクトリアM】オーナー笑顔「ようやく届いた」」2012年5月14日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2012/05/14/kiji/K20120514003245860.html、閲覧日:2026年7月30日。

同じ時計、違う順番

6月24日、阪神。宝塚記念に、十六頭中ただ一頭の牝馬として出走した。十一番人気。好位の外を追走したが伸びを欠き、十四着。勝ち馬から4秒2。 勝ったのはオルフェーヴルだった。二年前の秋、中山の八頭立てでクビだけ先にゴール板を過ぎたあの馬が、三冠を獲り、この日は池添謙一を背にグランプリを制していた。 そこから一年余り、勝てなかった。秋の府中牝馬ステークスは十七番枠から十一着、重馬場のエリザベス女王杯は十着、初めての地方遠征となった船橋のクイーン賞は十三着。この船橋から、手綱は蛯名正義に替わっている。田中清隆が勝負どころで起用してきた騎手だった。翌春の阪神牝馬ステークスも十四着に沈む。 2013年5月12日、東京。ヴィクトリアマイル。前年の覇者が、十二番人気だった。 今度は中団にいた。直線、二番手に控えていたヴィルシーナが抜け出しにかかり、好位のマイネイサベルがそれを交わす。そこへ、馬群を割ってこの馬が来た。外から並びかけると、ヴィルシーナがもうひと踏ん張りを繰り出す。 写真判定。ハナ差。 1分32秒4。一年前と、百分の一秒まで同じ時計だった。同じ数字で、去年は一着、今年は二着である。上がりは33秒4、前年より速かった。 先着したヴィルシーナは、桜花賞も優駿牝馬も秋華賞もエリザベス女王杯も二着だった馬である。あと一歩に泣き続けた二頭が、東京のマイルの決勝線で並んだ。鼻先を先に出したのは、それまで四度、二着でGIを終えてきたほうだった。 8月、札幌競馬場の改築工事のため函館で行われた札幌記念は、重馬場で十四着。だが10月14日、東京の府中牝馬ステークス。四番人気。逃げるコスモネモシンの後ろ、三番手から進み、四コーナーで二番手に上がって、残り二百メートルで抜け出した。上がり32秒6でドナウブルーに二分の一馬身。ヴィクトリアマイル以来、一年五か月ぶりの勝利である。翌月のエリザベス女王杯は、重馬場で六着だった。

五十七キロの東京

2014年2月17日、東京新聞杯。重馬場。牡馬混合の重賞で走った実績がないと見られ、八番人気だった。背負う斤量は五十七キロ。クラレント、ショウナンマイティ、サクラゴスペルといった牡馬と並ぶ、この日の最高重量である。 八番手から運び、直線で伸びた。二着のエキストラエンドに一馬身。四着に一番人気のコディーノ、十着に二番人気のショウナンマイティ、十一着には前年のヴィクトリアマイルで彼女をハナ差で退けたヴィルシーナがいた。重賞五勝目、六歳の二月だった。 5月18日、ヴィクトリアマイル。二番人気。この日は復調したヴィルシーナが果敢にハナを奪ってそのまま押し切り、史上初の連覇を果たす。外から食い下がったこの馬は、メイショウマンボストレイトガールに続く四着だった。 時計は、1分32秒4。三年続けて、同じ数字である。一着、二着、四着。この年は二着から五着までの四頭がそろって1分32秒4で走り抜けており、彼女はそのうちの三番目にいた。 6月の安田記念は不良馬場で十五着。8月の札幌記念では、六歳の牝馬が五十五キロで、勝ったハープスターから0秒9の三着に踏みとどまっている。二着は横山典弘のゴールドシップだった。10月の府中牝馬ステークスも三着。11月のエリザベス女王杯は十五着、暮れの阪神カップは五着。 2015年4月11日、阪神牝馬ステークス。七歳。後方から上がり34秒6を使ったが九着だった。 ヴィクトリアマイルへ向けて調整されていた最中に左前脚の不安が出て、出走は見送られ、そのまま引退が決まる。5月8日、競走馬登録抹消。三十戦七勝、獲得賞金五億三千二百三十一万六千円。

静内へ戻る

生まれた千代田牧場へ帰り、繁殖牝馬になった。 引退から間もなく、社台スタリオンステーションでオルフェーヴルを種付けしたことが伝わった。二歳の秋、中山の八頭立てでクビだけ先にゴール板を過ぎた、あの馬である。その仔——2016年生まれの芦毛の牡馬アルママは、セレクトセールでビッグレッドファームに一億七千万円で落札された。以後、キングカメハメハオルフェーヴルロードカナロアキズナエピファネイアサートゥルナーリア。2026年にはソットサスの仔、芦毛の牝馬が生まれている。重賞を勝った産駒は、まだいない。 同じ配合から出た全弟パクスアメリカーナは2019年の京都金杯を勝ち、いまは新ひだか町のレックススタッドで種牡馬をしている。全兄ドリームセーリングは平地を三十五戦走ったのち障害に転じ、九歳になった2016年に京都ジャンプステークスを勝った。曾祖母タレンティドガールの曾孫にあたる重賞勝ち馬は、この三頭。いずれも同じ父と母を持つ、同じ牧場で生まれたきょうだいである。 田中清隆は2022年2月28日、定年で調教師を引退した。その翌日、美浦で新しい厩舎が開いている。蛯名正義の厩舎である。2021年2月に鞍を降り、中央で2541勝、JRAのGIを二十六勝挙げた男は、同じ日に引退する藤沢和雄厩舎から馬三十三頭とスタッフ九人を引き継いだ。開業時のスタッフは十人。残る一人は、田中清隆厩舎でホエールキャプチャを担当していた人だった。2026年6月15日、蛯名正義は騎手部門の顕彰者に選ばれている。史上八人目だった。 その三か月前、2026年3月10日、嶋田賢が肺炎のため亡くなった。八十九歳。銚子で内科の外来を晩年まで担当し、2016年にはディーマジェスティで皐月賞を勝って、馬主として初めてのクラシックを手にしていた。 三十戦のうち、掲示板を外したのは十回だけである。二着が四回、三着が五回。GIでは五度あと一歩で決勝線を過ぎ、六度目に、東京のマイルで先頭に立った。曾祖母が勝った淀の秋には四度挑んで、一度も届かなかった。 鯨を捕るという名を与えられた芦毛の牝馬は、静内へ帰って、いま十八歳になった。

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