名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ウォーターリヒトのイメージビジュアル
ウォーターリヒトWater Licht
Water Licht

ウォーターリヒト

通算成績20戦4勝

獲得賞金19,553万円

生年月日 2021.03.24(令和3年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ウォーターリヒトの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
13 GI安田記念 東京 芝1600 9人気 高杉吏麒 1:33.1 上り33.1映像
13 GII読売マイラーズカップ 京都 芝1600 3人気 高杉吏麒 1:32.2 上り33.2映像
3 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 3人気 高杉吏麒 1:32.3 上り33.2映像
3 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 15人気 高杉吏麒 1:31.6 上り33.0映像
9 GII富士S 東京 芝1600 5人気 菅原明良 1:32.5 上り33.0映像
7 GIII中京記念 中京 芝1600 4人気 菅原明良 1:32.7 上り33.3映像
9 GI安田記念 東京 芝1600 5人気 菅原明良 1:33.3 上り33.9映像
1 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 3人気 菅原明良 1:32.6 上り33.2映像
2 GIII京都金杯 中京 芝1600 4人気 田辺裕信 1:33.6 上り34.3映像
1 LキャピタルS 東京 芝1600 8人気 田辺裕信 1:32.3 上り33.5
1 キングカメハメハM 東京 芝1600 1人気 田辺裕信 1:33.6 上り32.8
8 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 14人気 菅原明良 1:33.4 上り34.2映像
16 GI皐月賞 中山 芝2000 17人気 幸英明 1:59.2 上り35.6映像
9 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 2人気 幸英明 1:50.3 上り33.5映像
2 GIIIきさらぎ賞 京都 芝1800 10人気 幸英明 1:46.8 上り33.8映像
3 GIII日刊スポシンザン記念 京都 芝1600 17人気 幸英明 1:34.7 上り35.2映像
1 2歳未勝利 阪神 芝2000 4人気 幸英明 2:03.7 上り36.0
3 2歳未勝利 京都 芝2000 3人気 河原田菜々 2:02.9 上り35.0
3 2歳未勝利 京都 芝2000 7人気 河原田菜々 2:01.3 上り33.8
5 2歳新馬 京都 芝2000 8人気 団野大成 2:06.4 上り35.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ウォーターリヒトの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ドレフォンDrefongGio PontiTale of the Cat
Chipeta Springs
EltimaasGhostzapper
Najecam
ウォーターピオニーヴィクトワールピサVictoire PisaネオユニヴァースNeo Universe
ホワイトウォーターアフェアWhitewater Affair
マチカネハヤテサクラバクシンオーSakura Bakushin O
ベルセゾン
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの栗毛の牡馬。父ドレフォン、母ウォーターピオニー。主な勝ち鞍は東京新聞杯。

リヒト ― 名に灯した光

リヒトとは、ドイツ語で「光」を指す。母ウォーターピオニーから継いだ冠名「ウォーター」に、その一語を重ねたとき、栗毛の牡馬の名は『水の光』になった。2021年3月24日、北海道浦河の伏木田牧場に生まれ、馬主は山岡正人。父はアメリカでブリーダーズカップ・スプリントを勝ったドレフォン、母の父はヴィクトワールピサ。血の底には、牝系マチカネハヤテが流れている。 母ウォーターピオニーの全きょうだいには、クイーンステークスを勝ったレッドアネモスがいる。同じヴィクトワールピサとマチカネハヤテの配合から出た一頭が、重賞のタイトルを掲げていた――その血を受けて、リヒトは栗東の河内洋厩舎に入った。手綱ではなく調教の任を担ったのは、騎手時代を関西随一の名手と謳われ、いまは定年を数年後に控えた河内である。この物語は、その名人の最後の日々と重なっていく。

遠回りの春

2023年10月、京都の芝2000メートルでデビューは五着。二戦、三戦と未勝利で足踏みし、四戦目の暮れ、阪神でようやく初勝利をつかむ。鞍上は幸英明。年が明けると、リヒトはいきなり重賞の渦へ飛び込んだ。 一月のシンザン記念、単勝十七番人気。評価の外に置かれたまま最後方に控え、直線でメンバー最速の上がりを繰り出して三着に伸びた。続くきさらぎ賞では、勝ったビザンチンドリームをハナ差まで追い詰めての二着。人気薄の伏兵が、確かに走る脚を隠し持っていることを、この二戦が告げていた。 だが本番の距離は、この馬に牙をむいた。スプリングステークス九着、中山の皐月賞は十六着。府中へ舞台を移したNHKマイルカップも八着。クラシックの絵の中に、リヒトの名は残らなかった。三歳の春は、遠回りのまま暮れていった。

府中の直線、名人の七年

距離を一六〇〇に絞ったリヒトは、秋にほどけた。二〇二四年秋、田辺裕信を背に一勝クラスを危なげなく勝ち、リステッドのキャピタルステークスも制して二連勝。京都金杯でも二着に粘り、オープンの水がようやく肌に合いはじめた頃、迎えたのが二〇二五年二月九日の東京新聞杯だった。 菅原明良に手綱が替わり、中団のやや後ろから運んだリヒトは、直線で外へ持ち出されると鋭く伸びた。好位から抜け出したボンドガールを、ゴール前でクビだけ差し切る。単勝三番人気、重賞初制覇。だが、この勝利の意味は、勝った馬だけのものではなかった。 管理する河内洋にとって、これは二〇一八年の平安ステークス以来、七年ぶりのJRA重賞だった。しかも定年による引退を、わずか三週間後に控えていた。「強かった。GⅢだったけど、GⅠのような声援で気持ち良かったね。これ以上の勝ちはないよ」[^1]。騎手時代を名人と呼ばれた男は、最後の府中でそう笑った。

出典:中日スポーツ「来月に定年引退する河内洋調教師、7年ぶりの重賞勝ちで見せた印象的な笑顔『今度は応援しに行きます』」2025年2月17日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1026502、閲覧日:2026年7月5日。

バトン

三月四日、河内洋は定年を迎えて厩舎を解散し、リヒトは石橋守厩舎へ移った。「これで(転厩先に)バトンタッチだね。今度は応援しに行きます。馬券でも買ってね」[^1]。名人は、託した馬を見送る側へ回った。 新しい厩舎に移った牡馬の夏は、しかし平坦ではなかった。安田記念九着、中京記念七着、富士ステークス九着。府中で光った脚は、なかなか同じ角度で差し込まない。重賞をひとつ勝った馬が、次の一勝を探して秋へ入っていく。

出典:中日スポーツ「来月に定年引退する河内洋調教師、7年ぶりの重賞勝ちで見せた印象的な笑顔『今度は応援しに行きます』」2025年2月17日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1026502、閲覧日:2026年7月5日。

京都、十五番人気の脚

二〇二五年十一月二十三日、京都のマイルチャンピオンシップ。単勝十五番人気。評価はどん底に近く、そのリヒトに初めて高杉吏麒が跨った。 淀みない流れの前半を、リヒトは内で脚を溜めた。勝ったのは一番人気ジャンタルマンタル、二着はガイアフォース。その直後、内からしぶとく食い下がって三着に粘り込んだのが、伏兵の栗毛だった。GⅠで、三着。人気を大きく裏切る一戦を、初コンビの若い騎手はこう振り返る。「流れが向いてよく頑張ってくれた。これから馬も良くなってくると思います」[^1]。名の通り、水面に光が差した一瞬だった。

出典:中日スポーツ「【マイルCS】15番人気ウォーターリヒトが大健闘の3着 初コンビの高杉は『流れが向いてよく頑張ってくれた』」2025年11月23日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1168624、閲覧日:2026年7月5日。

まだ、消えない

明けて二〇二六年、リヒトは連覇を狙って東京新聞杯へ戻ったが、今度は三着まで。マイラーズカップ十三着、六月の安田記念も十三着と、マイル王者たちの壁は厚い。二〇戦して四勝、獲得賞金は一億九千五百万円あまり。重賞のタイトルは東京新聞杯ただひとつ。だがその一勝が、一人の名人の現役最後の府中を照らしたことを思えば、勲章の数では測れない一勝だった。 リヒト――光。府中の直線で一度大きく灯り、京都で十五番人気の伏兵として瞬いたその光は、二〇二六年の夏、まだ消えていない。次にどの直線で差すのかは、誰にも分からない。その一語の名を負って、栗毛はまだターフの上にいる。

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