名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ウオッカのイメージビジュアル
ウオッカVodka
Vodka

ウオッカ

通算成績26戦10勝

獲得賞金(海外含む・概算)約133,403万円

生年月日 2004.04.04(平成16年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ウオッカの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
8 GIIマクトゥームCR3 アラブ首長国連邦 ダ2000 C.ルメール
1 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 C.ルメール 2:22.4 上り34.8映像
3 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 武豊 1:57.5 上り32.9映像
2 GII毎日王冠 東京 芝1800 1人気 武豊 1:45.5 上り33.8映像
1 GI安田記念 東京 芝1600 1人気 武豊 1:33.5 上り35.7映像
1 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 1人気 武豊 1:32.4 上り33.4映像
7 GIドバイデューティーフリー アラブ首長国連邦 芝1777 武豊 映像
5 GIIジュベルハッタ アラブ首長国連邦 芝1777 武豊
3 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 岩田康誠 2:25.7 上り34.3映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 武豊 1:57.2 上り34.4映像
2 GII毎日王冠 東京 芝1800 1人気 武豊 1:44.6 上り33.8
1 GI安田記念 東京 芝1600 2人気 岩田康誠 1:32.7 上り34.0映像
2 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 1人気 武豊 1:33.8 上り33.2映像
4 GIドバイデューティーフリー アラブ首長国連邦 芝1777 武豊 映像
6 GII京都記念 京都 芝2200 2人気 四位洋文 2:13.9 上り33.8
11 GI有馬記念 中山 芝2500 3人気 四位洋文 2:35.7 上り37.9映像
4 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 四位洋文 2:24.9 上り33.6映像
GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 四位洋文 映像
3 GI秋華賞 京都 芝2000 1人気 四位洋文 1:59.3 上り33.2映像
8 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 四位洋文 2:14.0 上り38.0映像
1 GI東京優駿 東京 芝2400 3人気 四位洋文 2:24.5 上り33.0映像
2 GI桜花賞 阪神 芝1600 1人気 四位洋文 1:33.9 上り33.6映像
1 GIIIチューリップ賞 阪神 芝1600 1人気 四位洋文 1:33.7 上り33.5映像
1 OPエルフィンS 京都 芝1600 1人気 四位洋文 1:33.7 上り34.0
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 4人気 四位洋文 1:33.1 上り34.2映像
2 黄菊賞 京都 芝1800 2人気 四位洋文 1:49.5 上り34.1
1 2歳新馬 京都 芝1600 2人気 鮫島克也 1:35.0 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ウオッカの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
タニノギムレットTanino GimletブライアンズタイムBrian's TimeRoberto
Kelley's Day
タニノクリスタルクリスタルパレスCrystal Palace
タニノシーバードTanino Sea-Bird
タニノシスタールションRousillonRiverman
ベルドリーヌBelle Dorine
エナジートウショウトウショウボーイ
コーニストウショウ

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2004年生まれの鹿毛の牝馬。父タニノギムレット、母タニノシスター。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・東京優駿・安田記念。

ギムレットより強い酒 ― 名前と血

ジンを使うカクテル、ギムレット。その名を負った父タニノギムレットの仔に、馬主の谷水雄三は当初「ジン」という名を考えた。だが語呂が悪いと自ら退け、より度数の高い蒸留酒を選ぶ。父より強くなってほしい――その願いを込めて、牝馬はウオッカと名付けられた。 2004年4月4日、鹿毛の牝馬。母タニノシスター、父はこの馬の3年前にダービーを勝ったタニノギムレット。谷水家が代々受け継ぐ「タニノ」の血である。栗東の角居勝彦が管理し、デビュー戦は2006年10月の京都・新馬戦を快勝。続く黄菊賞こそ2着に取りこぼしたが、暮れの阪神ジュベナイルフィリーズを四位洋文とともに制し、2歳牝馬の頂に立った。父より強い酒、という名の通りに。ここから、一頭の牝馬が牡馬の壁を壊しにいく物語が始まる。

桜の下の二頭 ― ダイワスカーレットという影

明けて2007年、ウオッカはエルフィンステークス、チューリップ賞と連勝し、桜花賞に1番人気で乗り込む。だがそこに、もう一頭の怪物がいた。無敗のダイワスカーレット。桜花賞はそのダイワスカーレットが抜け出し、ウオッカは1馬身半届かず2着に終わる。この日から、世代の頂を分け合う二頭の宿命が始まった。 陣営は迷う。本来なら牝馬の王道、オークスへ進む道があった。だが角居と谷水は、より長い距離より、府中のスピードを生かせるダービーへ――牡馬の頂点へ挑む道を選んだ。牝馬のダービー出走は、それ自体が賭けだった。

64年ぶり ― 牝馬のダービー

2007年5月27日、東京優駿。牝馬のダービー制覇は、戦前のヒサトモ、クリフジ以来。グレード制が敷かれてからは一頭もいない。単勝10.5倍、3番人気。人気は牝馬への疑いを映していた。 だが直線、四位洋文に導かれたウオッカは大外から伸び、2着アサクサキングスに3馬身差をつけて突き抜けた。タイムは2分24秒5。64年ぶりの夢、と府中は沸いた。戦後初、グレード制導入後初の牝馬ダービー馬。牡馬の最強世代がそろう一戦を、牝馬がねじ伏せた。四位にとってもダービー初制覇。歴史を背負った騎乗だった。

栄光のあとの長い影 ― 二〇〇七年の秋

ダービー馬の秋は、しかし苦かった。立て直しの宝塚記念は1番人気で8着。秋華賞はまたもダイワスカーレットに屈して3着。続くエリザベス女王杯は右関節の跛行で出走取消。ジャパンカップは最後方から追い込んで4着。そして暮れの有馬記念は11着――デビュー以来初めての二桁着順だった。 春に頂点を極めた馬が、半年で見えない谷を歩いていた。距離か、馬場か、馬体か。栄光のすぐ隣には、いつも説明のつかない影がある。それでも陣営はこの馬を見限らなかった。本領は、まだマイルから2000mの府中にある――そう信じて、年を越した。

二センチ ― ダイワスカーレットとの最後

2008年、ウオッカは安田記念を岩田康誠で制し、府中のマイルGIを獲る。武豊に手綱が戻った秋、運命の一戦が来た。11月2日、天皇賞(秋)。ゴール前、内のウオッカと外のダイワスカーレット、二頭の首がまったく同時に伸びる。 写真判定は13分に及んだ。掲示板に映ったのは、わずか2センチ――ハナ差でウオッカ先着。日本競馬史上屈指の名勝負と語り継がれる決着だった。そしてこれが、桜の下から続いた二頭の、最後の直接対決となる。ダイワスカーレットはこの一戦を最後にターフを去った。宿敵がいたから、この馬はここまで来られた。続くジャパンカップは、ダービー馬ディープスカイらを相手に3着。勝てなくとも、強さだけは際立っていた。

鼻血のジャパンカップ ― 二〇〇九年、最後の意地

2009年、ウオッカは円熟する。ヴィクトリアマイルを後続に大差で圧勝し、安田記念ではディープスカイを3/4馬身しのいで連覇。天皇賞(秋)はカンパニーに屈して3着に終わったが、迎えたジャパンカップで、この馬は最後の意地を見せる。 11月29日、東京2400m。早めに抜け出したウオッカに、オウケンブルースリが外から並びかける。二頭の死闘は、またも写真判定へ。結果はハナ差、ウオッカ。タイム2分22秒4。だがこの激走の最中、ウオッカは鼻出血を発症していた。痼疾馬として出走停止処分。栄光の代償は、自らの身体に刻まれた。

父より強い酒として ― 海を渡って

名手の采配すら超えて勝つ――武豊をして自らの騎乗を悔やみながら、それでも勝つのだから強いと言わしめるほど、ウオッカは格の違いで押し切る馬だった。 年明け、ドバイへ遠征。だがマクトゥームチャレンジで二度目の鼻出血が再発し、ドバイワールドカップを断念。2010年3月、登録抹消。通算26戦10勝、うちGI7勝。獲得賞金13億3403万円。牝馬がダービーを勝ち、二度の安田記念を獲り、宿敵と2センチを争った。その記憶を残して、アイルランドで繁殖牝馬となる。 2019年4月1日、英国で第3指骨の粉砕骨折と蹄葉炎により安楽死。15歳だった。父タニノギムレットより強い酒であれ――その名の願いどおり、64年ぶりの牝馬ダービー馬は、たくさんの競馬ファンの心を酔わせて、ターフを去っていった。

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