名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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タスティエーラのイメージビジュアル
タスティエーラTastiera
Tastiera

タスティエーラ

通算成績15戦4勝

獲得賞金105,927万円

生年月日 2020.03.22(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
タスティエーラの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 GI有馬記念 中山 芝2500 8人気 松山弘平 2:32.0 上り35.7映像
7 GIジャパンカップ 東京 芝2400 6人気 D.レーン 2:21.1 上り34.4映像
8 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 2人気 D.レーン 1:59.0 上り33.0映像
1 GIクイーンエリザベス2世カップ シャティン 芝2000 2人気 D.レーン 2:00.5 映像
3 GI香港カップ シャティン 芝2000 3人気 D.レーン 映像
2 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 9人気 松山弘平 1:57.5 上り33.4映像
7 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 4人気 J.モレイラ 3:15.0 上り35.4映像
11 GI大阪杯 阪神 芝2000 1人気 松山弘平 1:58.9 上り35.4映像
6 GI有馬記念 中山 芝2500 5人気 R.ムーア 2:31.5 上り34.9映像
2 GI菊花賞 京都 芝3000 2人気 J.モレイラ 3:03.7 上り34.8映像
1 GI東京優駿 東京 芝2400 4人気 D.レーン 2:25.2 上り33.5映像
2 GI皐月賞 中山 芝2000 5人気 松山弘平 2:00.8 上り36.6映像
1 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 3人気 松山弘平 2:00.4 上り34.7映像
4 GIII共同通信杯 東京 芝1800 2人気 福永祐一 1:47.2 上り33.7映像
1 2歳新馬 東京 芝1800 1人気 R.ムーア 1:47.2 上り33.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
タスティエーラの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
サトノクラウンSatono CrownMarjuラストタイクーンLast Tycoon
Flame of Tara
ジョコンダII JiocondaRossini
La Joconde
パルティトゥーラマンハッタンカフェManhattan CafeサンデーサイレンスSunday Silence
サトルチェンジSubtle Change
フォルテピアノフレンチデピュティFrench Deputy
キョウエイフォルテ

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牡馬。父サトノクラウン、母パルティトゥーラ。主な勝ち鞍は東京優駿・QE2世C・報知弥生ディープ記念。

鍵盤の名 ― 楽譜の一族に生まれて

2020年3月22日、安平のノーザンファームに生まれた鹿毛の牡馬。父はサトノクラウン――堀宣行厩舎で香港ヴァーズと宝塚記念を制し、シャティンに日本馬の名を刻んだ名馬で、その初年度産駒にあたる。母パルティトゥーラはイタリア語で「総譜」、その母フォルテピアノは楽器そのものの名だった。母の半きょうだいには、半妹スパルティート(楽譜)に加え、バルトロメオやクリストフォリ――ピアノを生んだ職人バルトロメオ・クリストフォリの名を分け合う馬が並び、ハンマークラビア、ストリンジェンドと続く。楽譜と鍵盤と楽想で埋め尽くされた、音楽の牝系である。総譜から連想され、「鍵盤」を意味するタスティエーラと名付けられた。馬主はキャロットファーム、緑に白の二本輪の勝負服。管理は父と同じ堀宣行――同じ厩舎の扉から、一頭の楽器が世に出た。2022年11月、東京の芝1800mの新馬戦を、ライアン・ムーアを背に1番人気で勝ち上がる。譜面の最初の一音が、静かに鳴った。

松山弘平という縦糸 ― 弥生賞

明けて2023年、共同通信杯では引退を目前にした福永祐一が手綱を取り4着。その福永が調教師へと転じる春、鞍上を継いだのが松山弘平だった。3月の報知弥生ディープ記念、松山を背にタスティエーラは中山の坂を力強く上り、重賞を初めて手にする。それは父サトノクラウンにとっても、産駒が挙げた最初の重賞勝ちだった。楽譜の一族の血に、サトノクラウンの底力が溶け、若駒は一段ずつ音階を上っていく。要所でこの背にいる男の、長い縦糸の始まりでもあった。

皐月賞 ― 屈した2着

4月16日、中山の皐月賞。松山とのコンビで5番人気に推された。先行して見せ場をつくりながら、後方から大外を鮮やかに追い込んだソールオリエンスにゴール前で捉えられ、2着に屈する。上がりのかかる流れを勝ち切る最後の脚が、この日は一歩だけ足りなかった。だが二着は敗北であって、底ではない。皐月の一敗は、一か月後の東京で回収されるべき問いとして残された。

ダービー ― クビとハナのあいだで

5月28日、第90回東京優駿。ここで一つの綾が生まれる。松山には先約があり、彼が手綱を取ったのはハーツコンチェルト。タスティエーラの鞍上には、ダミアン・レーンが座った。4番人気。レーンは好位でレースを運び、直線で抜け出して先頭に立つ。追ってくるのは、外からソールオリエンスと松山のハーツコンチェルト、内からベラジオオペラ。数頭が横一線に並んだ叩き合いを、タスティエーラはクビだけ先んじて凌ぎ切った。2着ソールオリエンス、クビ差。3着ハーツコンチェルト、さらにハナ差。松山は、かつての相棒が抜け出す背を、ハナとクビの向こうから見送ることになった。レーンにとっては四度目の挑戦で掴んだダービー。堀宣行にとっては2015年のドゥラメンテ以来、二頭目のダービー馬。そして父サトノクラウンは、初年度産駒からダービー馬を送り出した。この年、タスティエーラはJRA最優秀3歳牡馬に選ばれる。

菊花賞、そして翳り

秋、ジョアン・モレイラを背に菊花賞へ。京都の3000mでも自分の競馬を貫いたが、ドゥレッツァの決め手に屈して2着。ダービー馬の二冠はならなかった。暮れの有馬記念は6着。年が明けても歯車は噛み合わない。単勝1番人気で臨んだ2024年の大阪杯は、松山とのコンビで11着に大敗。続く天皇賞(春)も、淀の長丁場で7着に沈む。ダービーの栄光から一年、勝ち鞍のないまま、この馬は影の中を歩いた。だが名馬の値打ちは、勝てない時間の歩き方にも表れる。

甦り ― シャティンの父子

転機は2024年秋の天皇賞だった。鞍上に松山が還ってくる。9番人気の低評価をあざ笑うように、府中の直線で伸びて2着。長いトンネルの出口が見えた。暮れの香港カップは3着。そして2025年4月27日、クイーンエリザベス2世カップ。レーンを背に2番人気で臨んだシャティンで、好位から4コーナーでじわりと進出し、直線で先頭に並ぶとそのまま押し切った。2着プログノーシスに1馬身半。ダービー馬が、海の外でGIを掴んだ。奇しくもそこは、父サトノクラウンが2016年の香港ヴァーズを勝った同じシャティンの芝。堀宣行の管理する馬が、父と子で香港の頂に立った。

ラストラン ― 鍵盤を置く

2025年秋、天皇賞(秋)8着、ジャパンカップ7着。数字は伸びない。12月28日の有馬記念が、引退レースと決まった。大外枠を引き当てた最後の一戦、鞍上はやはり松山だった。「引退レースの依頼を頂いてとても光栄ですし、最後をいい形で終われるよう、悔いのない騎乗をしたいと思っています」[^1]。始まりの弥生賞から、栄光に一歩届かなかった皐月、掴み取ったダービー、甦りの秋、そして幕引きまで――要所でこの背にいたのは、いつも松山弘平だった。中山を6着で駆け抜け、タスティエーラは競走生活を終える。行き先は優駿スタリオンステーション。総譜と楽器の名を継ぐ一族に生まれ、「鍵盤」と名付けられた馬は、走り終えて自らの譜面を綴る側へ回る。最初の一音を鳴らした新馬戦から、最後の一完歩まで。楽譜の一族が奏でた一曲は、たしかに府中とシャティンに響いた。

出典:中日スポーツ「【松山弘平コラム】タスティエーラと挑む有馬記念…大外枠ですが与えられた枠で全力尽くす」2025年12月28日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1185670、閲覧日:2026年7月17日。

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