名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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テイエムオペラオーのイメージビジュアル
テイエムオペラオーT.M.Opera O
T.M.Opera O

テイエムオペラオー

通算成績26戦14勝

獲得賞金183,518万円

生年月日 1996.03.13(平成8年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
テイエムオペラオーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 和田竜二 2:33.3 上り34.3映像
2 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 和田竜二 2:23.8 上り35.1映像
2 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 和田竜二 2:02.2 上り35.8映像
1 GII京都大賞典 京都 芝2400 1人気 和田竜二 2:25.0 上り34.1映像
2 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 和田竜二 2:11.9 上り35.0映像
1 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 1人気 和田竜二 3:16.2 上り35.5映像
4 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 1人気 和田竜二 1:58.7 上り35.6
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 和田竜二 2:34.1 上り36.4映像
1 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 和田竜二 2:26.1 上り35.2映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 和田竜二 1:59.9 上り35.3映像
1 GII京都大賞典 京都 芝2400 1人気 和田竜二 2:26.0 上り33.3映像
1 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 和田竜二 2:13.8 上り35.7映像
1 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 1人気 和田竜二 3:17.6 上り34.4映像
1 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 和田竜二 3:09.4 上り35.3映像
1 GII京都記念 京都 芝2200 1人気 和田竜二 2:13.8 上り34.4映像
3 GI有馬記念 中山 芝2500 5人気 和田竜二 2:37.2 上り34.9映像
2 GIIステイヤーズS 中山 芝3600 1人気 和田竜二 3:46.2 上り35.8
2 GI菊花賞 京都 芝3000 2人気 和田竜二 3:07.7 上り33.8映像
3 GII京都大賞典 京都 芝2400 3人気 和田竜二 2:24.4 上り34.3
3 GI東京優駿 東京 芝2400 3人気 和田竜二 2:25.6 上り35.3映像
1 GI皐月賞 中山 芝2000 5人気 和田竜二 2:00.7 上り35.2映像
1 GIII毎日杯 阪神 芝2000 3人気 和田竜二 2:04.1 上り36.7
1 ゆきやなぎ賞 阪神 芝2000 2人気 和田竜二 2:05.3 上り36.6
1 4歳未勝利 京都 ダ1800 1人気 和田竜二 1:55.6 上り38.3
4 4歳未勝利 京都 ダ1400 2人気 和田竜二 1:28.0 上り37.2
2 3歳新馬 京都 芝1600 1人気 和田竜二 1:36.7 上り36.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
テイエムオペラオーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
オペラハウスOpera HouseSadler's WellsNorthern Dancer
Fairy Bridge
ColorspinHigh Top
Reprocolor
ワンスウエドOnce WedBlushing GroomRed God
Runaway Bride
NouraKey to the Kingdom
River Guide
STORY

旅程 — この馬の物語

1996年生まれの栗毛の牡馬。父オペラハウス、母ワンスウエド。主な勝ち鞍は皐月賞・天皇賞・宝塚記念。

千万円の春 ― 冠名と、無名の若者

1996年、北海道浦河の杵臼牧場に生まれた栗毛。父はイギリス産の名馬オペラハウス、母はワンスウエド。1997年秋のセリで、馬主・竹園正繼が1000万円で落札する。名は、竹園が営むテイエム技研の冠名「テイエム」に、父オペラハウスの「オペラ」、そしてサラブレッドの王たれという願いの「オー」を継いだ。 この馬の鞍上に座ったのは、デビュー三年目の若い騎手だった。和田竜二。GIどころか重賞の常連でもない、まだ名のない青年が、新馬戦から引退までの全二十六戦、ただ一度も降ろされることなくこの馬の背に乗り続ける。栗東の岩元市三厩舎が預かった一頭の馬と、無名の若者。世紀末の主役になる二人は、まだ誰にも知られていなかった。

伏兵の皐月賞 ― クラシックの扉

1998年夏、京都の新馬戦は2着。明けて未勝利を勝ち上がるまでに四戦を要し、ダート戦で4着に沈んだ朝もあった。重賞の毎日杯を勝って臨んだ1999年の皐月賞、人気は5番手にすぎなかった。だがゲートが開くと、その評価は的外れだったとわかる。和田を背に中山の2000mを2分00秒7で抜け出し、伏兵がクラシックホースになった。 つづく東京優駿は3着、菊花賞はナリタトップロードに半馬身及ばず2着。三冠を一つしか獲れなかった三歳。世間はまだ、この馬を世代の一頭としか見ていなかった。本当の物語は、古馬になってから始まる。

二〇〇〇年 ― 一頭も先に行かせない

四歳の春、馬が変わった。京都記念、阪神大賞典と前哨戦を連勝し、天皇賞(春)は京都の3200mを制してGI二勝目。宝塚記念、秋初戦の京都大賞典、そして府中の天皇賞(秋)を1分59秒9で勝ち切る。ジャパンカップも2分26秒1で押し切った。 この年、テイエムオペラオーは走ったレースすべてに勝った。八戦八勝。うち天皇賞・春秋、宝塚、ジャパンカップ、有馬の五つがGI――一年に獲れるGIをほぼ獲り尽くす、史上例のない年間グランドスラムだった。二十世紀の最後を覇者として駆け抜けた馬を、人は北斗の拳の王になぞらえて「世紀末覇王」と呼んだ。

包囲網 ― 二〇〇〇年有馬記念

グランドスラムの最後の一勝は、最も苦しかった。20世紀最後の有馬記念。単勝は圧倒的な支持を集めたが、それゆえに他の騎手たちはこの一頭だけを標的にした。直線、テイエムオペラオーは馬群の真ん中で完全に閉じ込められ、前も外も壁になる。絶体絶命だった。 そこに、馬一頭分だけ隙間が開いた。「オペラオーは躊躇なく入っていった。メイショウドトウが差し返してきた時もこちらには勢いがありました」[^1]――和田はそう振り返る。中山の2500mを2分34秒1、もがき抜いた末のクビ差。岩元は「負けてもおかしくなかった。本当によく勝ってくれた。偉い馬としか言いようがありません」[^1]と漏らした。包囲を破って、馬は無敗の年を閉じた。

出典:和田竜二・岩元市三の談話=Number Web(2024年6月19日配信)、閲覧日:2026年6月25日。

七つ目の冠 ― そして連敗

五歳の春。大阪杯こそ4着に取りこぼしたが、天皇賞(春)を京都の長丁場で連覇し、GI勝利を七つに伸ばす。当時の最多タイ記録だった。だが頂は、登りきった瞬間から崩れはじめる。 宝塚記念はメイショウドトウに半馬身先着を許して2着。秋は天皇賞(秋)でアグネスデジタルに、ジャパンカップでジャングルポケットにそれぞれ2着、そして引退レースの有馬記念は5着に沈んだ。前年すべてに勝った馬が、最後の半年は一度も勝てなかった。年間無敗のあとの連敗。栄光が大きいほど、その落差は人の記憶に深く刻まれる。

二十六戦十四勝 ― 数字の意味

2002年初、テイエムオペラオーは引退した。通算二十六戦十四勝。獲得賞金は18億3518万9000円――当時、世界の競走馬で最も多く稼いだ一頭だった。GI七勝、四歳時の年間八戦全勝とGI五勝は、いずれもその後長く語り継がれる金字塔になる。 非勝利は十二度。新馬戦の2着、ダートで沈んだ未勝利戦、三冠で獲れなかった二つ、そして最後の連敗。完璧な馬ではなかった。むしろ負けの数だけを見れば、伝説と呼ぶには傷が多い。だが、勝ち続ける一頭が背負う「全馬の標的になる」という宿命を、あの有馬の包囲網を破った執念こそが証明していた。強さとは、無傷であることではない。

二〇一八年五月 ― 無名だった青年へ

引退後は種牡馬となり、やがて余生を北海道の牧場で送った。2018年5月17日、放牧中に心臓麻痺で急逝する。二十二歳だった。 かつて重賞も勝てなかった無名の若者は、この馬とともにGIを七つ勝った。そして馬が去ったあとも、和田竜二は走り続ける。オペラオー以来十七年ぶりのJRA・GIを2018年の宝塚記念で掴み、JRA通算千五百勝を超え、重賞は六十五を数えた。2025年暮れには調教師試験に合格し、二十年を超える騎手生活を全うして、今度は馬を育てる側へ回った。 「オペラオーからたくさんのものをもらいましたが、僕からは何もお返しできませんでした」[^1]――和田はかつてそう言った。けれど、本当にそうだろうか。無名の青年をひとかどの競馬人へと育て上げ、その背を借りて名手にし、ついには厩舎を構える人間にまでした。馬がくれた一頭分の出会いを、和田は長い競馬人生のすべてで受け取り、走り切ることで返してみせた。恩は、返せなかったのではない。返すのに、二十六戦よりずっと長い、一生分の時間がかかったのだ。

出典:和田竜二の談話=Number Web(2024年6月19日配信)、閲覧日:2026年6月25日。

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