名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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テイエムアンコールのイメージビジュアル
テイエムアンコールT M Encore
T M Encore

テイエムアンコール

通算成績42戦6勝

獲得賞金19,933万円

生年月日 2004.03.26(平成16年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
テイエムアンコールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
GIII鳴尾記念 阪神 芝2000 16人気 太宰啓介
16 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 14人気 大野拓弥 1:58.6 上り36.0
11 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 13人気 太宰啓介 2:00.2 上り34.1映像
13 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 17人気 川須栄彦 2:00.6 上り35.1
11 GIII小倉大賞典 小倉 芝1800 12人気 丸山元気 1:47.1 上り35.3
16 GIII中山金杯 中山 芝2000 15人気 柴田善臣 2:01.3 上り36.3
17 GIII朝日チャレンジカップ 阪神 芝1800 15人気 熊沢重文 1:47.2 上り36.0
18 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 18人気 熊沢重文 1:34.3 上り35.0映像
11 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 8人気 浜中俊 3:18.1 上り36.2映像
1 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 6人気 浜中俊 1:59.5 上り34.9
2 GII中山記念 中山 芝1800 12人気 浜中俊 1:52.5 上り38.1
7 GIII小倉大賞典 中京 芝1800 6人気 M.デムーロ 1:48.0 上り36.6
4 GIII朝日チャレンジカップ 阪神 芝2000 11人気 福永祐一 2:00.3 上り33.8
4 OP小倉日経OP 小倉 芝1800 1人気 浜中俊 1:46.0 上り34.8
16 GIII小倉記念 小倉 芝2000 3人気 石橋守 1:59.0 上り35.7
1 垂水S 阪神 芝2000 2人気 浜中俊 2:00.3 上り35.7
1 長久手特別 中京 芝1800 2人気 岩田康誠 1:46.6 上り34.9
4 小牧特別 中京 芝2000 1人気 吉田稔 2:00.3 上り34.0
2 紫野特別 京都 芝1800 5人気 横山典弘 1:47.2 上り33.5
3 蓬莱峡特別 阪神 芝1800 5人気 渡辺薫彦 1:47.6 上り34.8
4 瀬戸特別 中京 芝2000 5人気 渡辺薫彦 2:04.0 上り37.7
2 衣笠特別 京都 芝1800 8人気 和田竜二 1:47.1 上り34.6
6 北野特別 京都 芝2000 4人気 武豊 2:01.2 上り34.2
6 ムーンライトH 阪神 芝1600 5人気 武豊 1:34.6 上り33.3
1 筑後川特別 小倉 芝2000 1人気 武豊 2:01.0 上り34.6
2 青島特別 小倉 芝2000 2人気 岩田康誠 2:01.4 上り35.2
5 3歳以上500万下 阪神 芝1800 1人気 岩田康誠 1:46.5 上り35.1
5 長久手特別 中京 芝1800 4人気 池添謙一 1:48.1 上り34.1
3 鴨川特別 京都 芝2000 4人気 小牧太 1:59.7 上り35.3
7 シドニーT 京都 芝1600 16人気 小牧太 1:35.3 上り33.6
4 猪名川特別 阪神 芝2000 8人気 北村友一 2:02.9 上り36.0
15 豊明特別 中京 芝1800 7人気 津村明秀 1:49.6 上り35.1
4 栗子特別 福島 芝2000 2人気 渡辺薫彦 2:02.1 上り37.2
1 3歳以上500万下 福島 芝1800 3人気 津村明秀 1:54.2 上り39.6
10 3歳以上500万下 京都 芝2000 6人気 和田竜二 1:59.6 上り35.7
1 3歳未勝利 阪神 芝1800 2人気 和田竜二 1:47.0 上り34.7
2 3歳未勝利 小倉 芝1800 1人気 和田竜二 1:48.4 上り36.3
3 3歳未勝利 小倉 芝2000 3人気 和田竜二 2:01.9 上り37.6
7 3歳未勝利 阪神 芝2200 1人気 和田竜二 2:15.3 上り36.3
2 3歳未勝利 中京 芝2000 1人気 石橋守 2:02.5 上り34.6
2 3歳未勝利 中京 芝2000 11人気 石橋守 2:01.1 上り34.9
13 3歳未勝利 京都 芝1800 5人気 和田竜二 1:50.3 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
テイエムアンコールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
オペラハウスOpera HouseSadler's WellsNorthern Dancer
Fairy Bridge
ColorspinHigh Top
Reprocolor
スナークサクセスブライアンズタイムBrian's TimeRoberto
Kelley's Day
ニジンスキーセンチメントNijinsky SentimentNijinsky
Harrapan Seal
STORY

旅程 — この馬の物語

2004年生まれの芦毛の牡馬。父オペラハウス、母スナークサクセス。主な勝ち鞍は産経大阪杯。

アンコール

2004年3月26日、北海道三石町の坂本牧場で芦毛の牡馬が生まれた。父はオペラハウス、母はスナークサクセス。白さは母の側から来ている。母の母ニジンスキーセンチメントがアメリカ産の芦毛で、その毛色が娘に渡り、さらにこの牡馬へ渡った。 オータムセールに上場され、七百四十五万五千円で落札される。買ったのは竹園正繼。桃に緑一本輪、袖黄縦縞の勝負服を持ち、同じオペラハウスの産駒でGIを七つ勝った馬主である。テイエムオペラオー。皐月賞を獲り、四歳の年に八戦八勝を並べ、顕彰馬になった栗毛だった。 その父の産駒に、竹園はアンコールと名づけた。もう一度、と客席が叫ぶ言葉である。あの馬の再来を願っての命名だったと、のちに報じられている。 もっとも、名前のほうが先に走り出しただけで、馬はなかなか出てこなかった。競走馬として登録されてから実際にゲートへ入るまで、九か月あまりかかっている。2007年4月28日、京都の芝1800メートル、三歳未勝利。四百八十四キロは生涯でいちばん重い馬体重として記録に残った。五番人気で十三着、勝ったアドマイヤハートから二秒〇。 鞍上は和田竜二だった。テイエムオペラオーの二十六戦すべてで、あの勝負服を着ていた男である。アンコールという掛け声は、舞台がいちど終わった者にしかかからない。この馬はまだ、幕の内側にも入っていなかった。

七戦目

二戦目の中京で十一番人気の二着、三戦目の中京では一番人気で二着。阪神で一番人気を裏切ったあと、夏の小倉で三着、二着。未勝利戦での二着は三度、着差は〇秒二、〇秒〇、〇秒〇である。勝ち味に遅い、という言い方がある。 七戦目に初めて勝った。2007年9月17日、阪神の芝1800メートル。和田竜二が二番人気で導いて、ハギノジョイフルに〇秒二をつけた。翌月には福島の不良馬場で二勝目を挙げる。津村明秀が乗った。三歳の秋である。 そこから足踏みが長かった。2008年に勝ったのは一鞍だけ、8月31日の小倉、筑後川特別。武豊が一番人気で連れてきた勝利だった。武豊はその後も二度跨り、阪神のムーンライトハンデキャップと京都の北野特別でともに六着に終わっている。北野特別を勝ったのは三歳のアーネストリー――三年後に宝塚記念を勝つ馬だった。 条件クラスにいたあいだ、この馬の鞍にはさまざまな人間が座った。和田竜二、石橋守、津村明秀、渡辺薫彦、北村友一、小牧太、池添謙一、岩田康誠、武豊、横山典弘、吉田稔、福永祐一。生涯四十二回のゲートに、二十人の騎手が乗っている。最も多かったのが和田の七回だった。

五歳の夏

2009年6月14日、中京の長久手特別。岩田康誠を背に二番人気で勝つと、二週間後の6月28日、阪神の垂水ステークスも勝った。この日はじめて浜中俊がこの馬に跨っている。連勝で、五歳の夏にオープンへ上がった。 浜中俊は1988年12月生まれ。2007年の春に騎手になっている。この馬が京都の未勝利戦で十三着に敗れた、あの春である。 オープンは高かった。8月2日の小倉記念は三番人気で十六着。三週間後、小倉日経オープンでは一番人気に推されて四着。9月12日の朝日チャレンジカップは福永祐一が乗り、上がり三十三秒八を使って四着。掲示板には載る。届かない。未勝利戦のころから抱えていた、あと少しが埋まらないという癖が、そのまま格上のクラスに持ち越されていた。

不良の中山

2010年、六歳。始動は中京で行われた小倉大賞典で、ミルコ・デムーロを背に七着だった。 2月28日、中山記念。馬場は不良だった。十六頭立ての十二番人気、五十七キロ。鞍上に浜中俊が戻る。前年の秋にスリーロールスで菊花賞を勝ったばかりの、二十一歳である。トーセンクラウンから〇秒八離されはしたが、二着で終わった。オープンに上がってから、この馬がはじめて二着以内に入った一戦である。 ゴールから五週間後の阪神に、陣営はこの馬を出した。相手は、前の暮れに有馬記念を勝った馬だった。

四月四日、阪神

産経大阪杯。十二頭。 一番人気の単勝は一・二倍だった。ドリームジャーニー。前年のこのレースの勝ち馬で、そのあと宝塚記念と有馬記念を続けて勝ち、最優秀四歳以上牡馬に選ばれた馬である。残る十一頭は、その一頭が取りこぼすかどうかを競っていた。 テイエムアンコールは八枠から出て、四番手に収まった。前に三頭。急ぐ馬はいない。一・二倍はゲートを出そこね、はるか後ろにいる。 阪神の内回りに、長い直線はない。四コーナーを回ってから決勝線までは短く、その途中に坂がある。だから仕掛けどころは早い。 三コーナーから四コーナーへかけて、後ろの一頭が外を回って上がってきた。捲りである。直線を向いたとき、その馬は大外にいた。 前では、テイエムアンコールが先頭に立っていた。四番手から、前の三頭を抜いて。ゴールデンダリアが食い下がる。大外からは、一・二倍が伸びてくる。 坂。 重賞の決勝線を先頭で通過するのは、この馬にとってはじめてで、そして最後になる。 抜かれなかった。〇秒一。二着はゴールデンダリア、三着に一・二倍が入った。

三千二百メートルと、二年半

九年前の四月、同じ桃に緑一本輪が、このレースに一番人気で出て四着に敗れている。テイエムオペラオー――この馬の名の由来になった馬である。名づけ親が届かなかった一鞍を、名づけられたほうが拾った。 次は本番だった。5月2日、京都の天皇賞(春)。五十八キロ、十八頭の八番人気。好位でレースを進めて、直線で止まった。十一着。距離が長かったと、鞍上はのちに振り返っている。 そこからこの馬は、二年半、競馬場から消える。故障だった。 戻ってきたのは八歳の秋、2012年11月18日のマイルチャンピオンシップ。四年ぶりのマイル戦である。鞍上は熊沢重文。同じ桃に緑一本輪で、七年前にテイエムプリキュアを二歳女王にした男だった。十八頭の十八番人気で、十八着。 以後は七戦。朝日チャレンジカップ十七着、年が明けて中山金杯十六着――このとき手綱を取った柴田善臣は、管理する柴田政見の甥にあたる。小倉大賞典十一着、中日新聞杯十三着。 2013年3月31日、産経大阪杯。三年前に自分が勝ったレースへ十三番人気で出て、十一着だった。この日先頭でゴール板を過ぎたのはオルフェーヴル。三年前、坂の上で振り切った一・二倍の馬の、全弟である。 新潟大賞典十六着。そして6月1日、阪神の鳴尾記念。太宰啓介を背に、この馬は競走を中止した。四十二回目のゲートだった。六日後、競走馬登録が抹消される。四十二戦六勝、獲得賞金は一億九千九百三十三万六千円。重賞は、あの四月の一つきりだった。

湖の東

引退後は栗東トレーニングセンターで乗馬になった。走っていた年月より、そのあとの年月のほうが長くなる。 2023年4月には京都大学馬術部へ移った。のちに滋賀県豊郷町の大野牧場へ移り、2025年、功労馬繋養支援事業の助成対象馬になった。琵琶湖の東にある、小さな町である。 2026年5月5日、その牧場で死んだ。二十二歳だった。テイエムオペラオーが放牧地で倒れたのも、二十二歳の五月である。 訃報が伝わって三日後、中日スポーツに載った浜中俊のコラムは、その週末の騎乗馬の話に入る前に、この馬の名前から始まっている。ドリームジャーニー相手に金星を挙げられてうれしかった、とあの日を振り返り、次の天皇賞は距離が長く、そのあとは故障もあって活躍させてやれなかった、と続けたうえで、こう書いた。「僕にとって思い入れの深い馬」[^1]。あの午後、二十一歳で鞍にいた男の文章である。 アンコールは、演者が自分では決められない言葉である。もう一度と叫ぶかどうかは、いつも客席の側にある。この馬が舞台の真ん中にいたのは、阪神の坂の上の数秒だけだった。その数秒に向かって、十六年たってから声がかかった。馬が湖の東の牧場からいなくなった、そのあとで。

出典:中日スポーツ「【浜中俊コラム】ドリームジャーニー相手に大阪杯V、思い入れ深いテイエムアンコールが天国へ旅立ち ご冥福をお祈りします」2026年5月17日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1252275 、閲覧日:2026年8月1日。

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