名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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サンライズペガサスのイメージビジュアル
サンライズペガサスSunrise Pegasus
Sunrise Pegasus

サンライズペガサス

通算成績24戦6勝

獲得賞金35,374万円

生年月日 1998.04.15(平成10年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
サンライズペガサスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
7 GI有馬記念 中山 芝2500 9人気 田中勝春 2:32.7 上り35.1映像
6 GIジャパンカップ 東京 芝2400 15人気 蛯名正義 2:22.6 上り34.7映像
12 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 5人気 後藤浩輝 2:00.7 上り33.4映像
1 GII毎日王冠 東京 芝1800 9人気 後藤浩輝 1:46.5 上り33.5
5 GI宝塚記念 阪神 芝2200 7人気 松永幹夫 2:12.2 上り36.3映像
14 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 9人気 幸英明 3:17.7 上り35.4映像
1 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 1人気 幸英明 1:59.0 上り34.6
2 GIIIトヨタ賞中京記念 中京 芝2000 4人気 秋山真一郎 1:59.6 上り35.6
11 GII京都記念 京都 芝2200 12人気 幸英明 2:18.2 上り38.3
11 GIジャパンカップ 東京 芝2400 12人気 柴田善臣 2:31.3 上り37.7映像
6 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 12人気 柴田善臣 1:58.7 上り34.4映像
3 GI天皇賞(秋) 中山 芝2000 4人気 柴田善臣 1:58.6 上り34.3映像
4 GII毎日王冠 中山 芝1800 1人気 柴田善臣 1:46.5 上り33.6
5 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 4人気 安藤勝己 3:19.8 上り33.7映像
1 GII産経大阪杯 阪神 芝2000 1人気 安藤勝己 1:59.1 上り33.8
1 OP大阪城S 阪神 芝2000 1人気 安藤勝己 1:59.5 上り34.6
12 GI菊花賞 京都 芝3000 4人気 池添謙一 3:08.3 上り34.8映像
2 GII神戸新聞杯 阪神 芝2000 7人気 池添謙一 1:59.5 上り34.3
2 毎日杯玄海特別 小倉 芝2000 2人気 河内洋 2:01.4 上り36.0
1 野苺賞 阪神 芝2200 6人気 河内洋 2:13.3 上り35.9
16 GII京都新聞杯 京都 芝2000 12人気 安田康彦 2:02.9 上り37.9
11 ムーニーバレーRC賞 京都 芝2400 3人気 安田康彦 2:28.5 上り36.3
1 3歳新馬 小倉 芝1800 1人気 河内洋 1:52.4 上り37.2
2 3歳新馬 小倉 芝2000 5人気 橋本美純 2:05.1 上り36.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
サンライズペガサスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
サンデーサイレンスSunday SilenceHaloHail to Reason
Cosmah
Wishing WellUnderstanding
Mountain Flower
ヒガシブライアンブライアンズタイムBrian's TimeRoberto
Kelley's Day
アリーウインAlywinAlydar
Fleet Victress
STORY

旅程 — この馬の物語

1998年生まれの栗毛の牡馬。父サンデーサイレンス、母ヒガシブライアン。主な勝ち鞍は産経大阪杯・毎日王冠。

母のいない仔

1998年4月15日、北海道門別町のヤナガワ牧場で栗毛の牡馬が生まれた。父はサンデーサイレンス、母はヒガシブライアン。母の父にブライアンズタイムがいる。 母は、この仔を産んでまもなく死んだ。仔は乳母の乳で育っている。 母の半姉には、六勝したウェディングケーキがいた。血統表をひらくと、父の側にも母の側にも Hail to Reason という同じ名が入っている。父サンデーサイレンスの父ヘイローも、母の父ブライアンズタイムの父ロベルトも、その馬の産駒である。三代目と四代目に一つずつ、同じ血が重なる配合だった。 馬主は、福岡で水産物の加工販売を手がける会社を率いる松岡隆雄。牡馬には名前の頭に「サンライズ」を置くのが、この馬主の流儀である。その後ろに、翼を持つ馬の名がついた。 同じ年の三月、栗東で一人の男が自分の厩舎を開いていた。石坂正、四十七歳。 佐賀の生まれで、大学を出てから北海道の牧場に就職したものの続かず、しばらくアルバイトで暮らした。1978年、骨折の療養を続けていたテンポイントが死んだと知り、無性に牧場で働きたくなって競馬雑誌の求人に応募し、二十八歳で牧場に入った。厩務員から調教助手に上がり、橋口弘次郎厩舎で十五年助手を務めた。調教師の免許を手にしたのは1997年3月、十二回目の受験である。 石坂が看板を掲げた翌月に、この馬は生まれている。出会うのは、もう少し先になる。

三冠の外側

デビューは2001年2月3日、小倉の芝二千メートル。橋本美純が乗って五番人気、モニュメンタルという馬に0.1秒差の二着だった。 二週間後、同じ小倉の千八百メートルで鞍上が河内洋に替わる。一番人気に応え、1分52秒4で勝ち上がった。 春は伸びない。京都の五百万下で十一着、京都新聞杯は十二番人気の十六着で、勝ち馬から三秒以上離された。 このころ、この馬は安田伊佐夫厩舎の管理馬である。のちに同じ栗東の石坂正厩舎へ移った。翌年の春、はじめて重賞を勝ったときの調教師欄に載っているのは石坂の名前だ。 六月十六日、阪神の野苺賞を勝つ。八月には小倉の特別戦で二着。九月二十三日、条件馬のまま重賞に挑む格上挑戦で神戸新聞杯に出て、七番人気の二着に入った。勝ったのはエアエミネム。これでオープン馬になった。 十月二十一日、菊花賞。四番人気に支持され、京都の三千メートルで十二着に終わる。勝ったのはマンハッタンカフェだった。 厚い世代である。皐月賞をアグネスタキオンが、ダービーをジャングルポケットが、NHKマイルカップをクロフネが、そして菊花賞をマンハッタンカフェが勝った。三歳の一年で、この馬がその輪にいちばん近づいたのは、菊花賞のトライアルで拾った二着だった。 年内は休養に入る。

勝って、壊れた年

四歳の春、鞍上に安藤勝己を迎えた。 三月九日、阪神の大阪城ステークスを一番人気で勝つ。三週間後、同じ阪神の産経大阪杯に出走した。十四頭立て、単勝二・九倍の一番人気である。 道中で息が入らなかった。五ハロン目から11秒8、11秒8、11秒7、11秒7、11秒7と刻まれ、最後まで緩まない。この馬は四コーナーで九番手にいた。前に八頭。 そこから外へ出し、直線で全部かわした。上がり三ハロン(最後の六百メートル)は33秒8。レース全体の上がりより一秒半以上速い。二着に二馬身半をつけている。その二着は、五十九キロを背負ったエアシャカール――二年前に皐月賞と菊花賞を勝った馬だった。 重賞初制覇である。 四月二十八日、天皇賞(春)。京都の三千二百メートルを、この馬は最後方から追いかけた。五着。勝ったマンハッタンカフェとの差は0.3秒で、菊花賞では一秒一離されていた相手だった。 次は宝塚記念のはずだった。天皇賞の反動で疲れが残り、回避する。その宝塚記念を勝ったのは、皐月賞とダービーで二着に泣いた同期のダンツフレームである。 秋、鞍上が柴田善臣に替わった。 この年の東京競馬場はダービーのあと改修に入っていて、秋の開催は中山に移されている。十月六日の毎日王冠は中山の千八百メートルで行われ、一番人気のこの馬は四着だった。 三週間後、天皇賞(秋)。十八頭立ての八枠十七番、いちばん外を引いた。 二ハロン目が10秒8。前は速い。この馬は外から入って、最初のコーナーで九番手あたりにいる。三コーナーでも変わらない。四コーナーでは、五番手から八番手のかたまりの中にいた。 早く動いたぶん、最後は脚が上がった。三歳のシンボリクリスエスが1分58秒5で抜け出し、ナリタトップロードが1分58秒6でこれを追う。この馬も1分58秒6でゴール板を通過している。クビ差の三着だった。 レースのあと、右の前脚に浅屈腱炎が見つかる。 屈腱炎は、競走馬にとって最も重い故障のひとつである。腱は治りが遅く、治っても元の強さには戻りにくい。この故障で競走生活を終える馬は少なくない。

二度の、一年

一年、走らなかった。 2003年11月2日、天皇賞(秋)で戻ってくる。改修を終えた東京での復帰戦だった。一枠一番、いちばん内。十二番人気。 その日の流れは尋常ではない。ハロンタイムは12秒5、10秒9、10秒5、11秒1と刻まれ、前半四ハロンで45秒0。逃げた馬を追いかけた組は直線で軒並み止まり、レース全体の上がり三ハロンは37秒1まで落ちた。 最内で我慢して、最後だけ34秒4で伸びた。六着。勝ったシンボリクリスエスの1分58秒0はレコードで、この馬との差は0.7秒である。 四週間後のジャパンカップは重馬場の十一着。そして有馬記念の直前、故障が見つかった。屈腱炎の再発だった。 2004年、この馬は一度も出走していない。休養は吉澤ステーブルで過ごした。馬主が育成馬の多くを預けている牧場である。 2005年2月19日、京都記念。一年以上ぶりの実戦で、単勝は157倍を超えていた。十一着に終わる。 三月六日、中京記念。四番人気で二着に来る。勝ったメガスターダムもまた、屈腱炎で一年以上を失って戻ってきた馬だった。同じ穴から這い出した二頭が、中京の直線で0.1秒を争っていた。

三年ぶり

2005年4月3日、阪神競馬場。晴れ、芝は良。産経大阪杯に集まったのは九頭だけだった。 この馬が最後に勝ったのは、三年前の同じレースである。あいだに勝ち星はない。それでも単勝は一番人気だった。 ゲートが開くと、サイレントディールが先手を取る。二ハロン目の10秒4は、二千メートルの流れとしては速すぎた。前が飛ばせば、後ろは息が入る。 幸英明は動かない。四番手か、五番手。前を行く三頭の背中を見ながら、内めを回っていく。 向正面で時計が緩んだ。先頭が息を入れ、隊列が縮む。全員が同じ速さで走る区間ができる。ここで焦って脚を使えば、直線でもう一度は使えない。 三コーナーを回っても順位は動かなかった。四コーナー、幸が外へ持ち出す。 阪神の直線には坂がある。アドマイヤグルーヴが伸びあぐね、メガスターダムも伸びあぐねた。最後方でじっとしていた四歳のハーツクライが、外から一気に追い上げてくる。 それより前に、この馬が抜け出していた。 一馬身四分の一。 主催者はその日の見出しに、こう書いた。「力強く伸びたサンライズペガサス、3年ぶりの勝利に酔う」[^1] 産経大阪杯を二度勝った馬は、グレード制が敷かれる前までさかのぼっても、この馬が最初である。

出典:日本中央競馬会「レース成績データ 第49回産経大阪杯」2005年4月3日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2005/38.html 、閲覧日:2026年8月2日。

九番人気

五月一日、天皇賞(春)。京都の三千二百メートルで十四着。二千を大きく越えると、この馬の脚は最後まで持たない。 六月二十六日、宝塚記念。得意にしていた阪神である。中団から末脚に賭けたが、道中で不利を受けて五着に終わった。勝ったのはスイープトウショウである。 夏を休み、秋は毎日王冠から始めた。三年前に一番人気で敗れたレースである。今度は九番人気だった。 十月九日、東京、曇り、芝は稍重。鞍上は後藤浩輝。 コスモバルク、ダイワメジャー、バランスオブゲーム。先行したい三頭が互いの出方をうかがい、千メートルの通過は61秒2まで落ちる。遅い流れは、前にいる馬を助ける。 この馬はその流れにすっと乗った。中団の前めから三コーナーで四番手、四コーナーで二番手。直線で先頭に立つと、そこから誰にも譲らない。坂を上がり切ったところで、テレグノシスが外から迫ってきた。一馬身四分の三。 時計は1分46秒5。三年前に中山で四着に敗れたときと、同じ数字だった。 主催者はこの日の回顧をこう結んでいる。「競走馬にとって致命傷ともいわれる病を克服したことにも頭が下がりますが、衰えを感じさせないことにも感服のレースぶりでした」[^1] 七歳の秋である。

出典:日本中央競馬会「レース成績データ 第56回毎日王冠」2005年10月9日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2005/96.html 、閲覧日:2026年8月2日。

三冠馬が初めて負けた日に

十月三十日、天皇賞(秋)。八枠十六番、五番人気。道中の一ハロンが12秒9まで落ちたあと、残り六百メートルから11秒0、11秒2、11秒4へ跳ね上がった。四コーナーで七番手にいたこの馬は、その加速に半歩ずつ置いていかれる。上がりは33秒4。それでも十二着だった。 十一月二十七日、ジャパンカップ。この年の東京は一転して、レコードの出る流れになる。十五番人気のこの馬は、メンバー二位の上がりを使って六着まで押し上げた。勝ったのはアルカセットである。 十二月二十五日、有馬記念。一枠二番。 当日、騎乗する予定だった蛯名正義が第四競走で落馬して負傷し、田中勝春に乗り替わった。人気は九番目だった。 中山には十六万人が入っていた。ほとんどが一頭を見に来ている。無敗の三冠馬ディープインパクト、単勝一・三倍。 タップダンスシチーが逃げ、ふだんは追い込むはずのハーツクライが三番手につけた。春に阪神で、この馬が抑えた相手である。 七歳馬は後ろにいた。三コーナーで十一番手あたり、四コーナーで八、九番手。そのすぐ前をディープインパクトが上がっていく。 直線、ハーツクライが抜け出した。追ったディープインパクトは半馬身届かない。三冠馬の最初の黒星だった。 その二頭の後ろで、七着でゴールしている。勝ち馬との差は0.8秒。これが最後の一戦になった。 GIには十度出て、いちばん近づいたのは三年前の中山のクビ差である。

門別へ帰る

2006年1月5日、競走馬登録が抹消された。 その年からアロースタッドで種牡馬になる。2014年にいったん供用が止まり、2017年からは、生まれたヤナガワ牧場で改めて種を付けるようになった。産駒には、2010年に園田クイーンセレクションと若草賞を勝ったコロニアルペガサスがいる。2019年、引退名馬繋養展示事業の助成対象となって種牡馬を退き、同じ年の8月22日に死んだ。二十一歳だった。 石坂正はそのあと、ヴァーミリアンでGIを九つ勝ち、ジェンティルドンナで牝馬三冠を獲っている。2021年2月28日、定年で厩舎を閉じた。 十二回目の受験で、ようやく免許を取った男である。一年休ませ、再発してもう一年休ませる――そういう時間の使い方に、この人はたぶん慣れていた。 引退してからの十年あまり、この馬は種牡馬として繋養された。そして最後の数年を、生まれた牧場で過ごした。母の顔を覚えないまま門別を出ていった仔は、帰る場所だけは持っていた。

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