名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

名馬録
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スーニのイメージビジュアル
スーニSuni
Suni

スーニ

通算成績43戦12勝

獲得賞金46,967万円

生年月日 2006.02.10(平成18年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
スーニの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 8人気 川島正太郎 2:09.3 上り42.2
9 JpnⅡさきたま杯 浦和 ダ1400 6人気 町田直希 1:29.2 上り39.4
10 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 5人気 川田将雅 1:29.7 上り40.7
7 JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー 園田 ダ1400 2人気 川田将雅 1:27.8 上り38.1
3 JpnⅠJBCスプリント 川崎 ダ1400 4人気 川田将雅 1:27.6 上り39.3映像
5 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 4人気 川田将雅 1:38.6 上り37.4
3 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 3人気 川田将雅 1:26.0 上り37.5
10 GIII東海TVプロキオンS 中京 ダ1400 7人気 幸英明 1:23.2 上り36.4
5 JpnⅡさきたま杯 浦和 ダ1400 3人気 川田将雅 1:28.3 上り38.5
11 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 2人気 川田将雅 1:11.9 上り36.5
4 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 1人気 川田将雅 1:29.2 上り39.2
1 JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー 園田 ダ1400 1人気 川田将雅 1:27.3 上り36.7
1 JpnⅠJBCスプリント 大井 ダ1200 1人気 川田将雅 1:10.1 上り35.5映像
1 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 3人気 川田将雅 1:10.9 上り35.8
1 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 4人気 川田将雅 1:23.8 上り36.1
8 GIIIプロキオンS 京都 ダ1400 10人気 川田将雅 1:23.3 上り36.8
3 JpnⅡさきたま杯 浦和 ダ1400 8人気 川田将雅 1:26.3 上り37.3
8 OP栗東S 京都 ダ1400 8人気 川田将雅 1:23.4 上り35.7
11 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 6人気 川田将雅 1:11.7 上り36.3
13 OPポラリスS 阪神 ダ1400 9人気 川田将雅 1:23.1 上り36.9
2 JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー 園田 ダ1400 1人気 川田将雅 1:27.1 上り38.4
7 GIIIカペラS 中山 ダ1200 7人気 川田将雅 1:10.2 上り36.8
4 JpnⅠJBCスプリント 船橋 ダ1000 2人気 川田将雅 0:59.3 上り36.7映像
5 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 2人気 川田将雅 1:11.6 上り37.4
4 JpnⅢサマーチャンピオン 佐賀 ダ1400 1人気 川田将雅 1:27.5 上り37.4
2 JpnⅢさきたま杯 浦和 ダ1400 2人気 川田将雅 1:27.0 上り38.8
2 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1400 1人気 川田将雅 1:25.6 上り36.6
1 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 1人気 川田将雅 1:12.2 上り37.0
1 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 1人気 川田将雅 1:27.7
9 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 7人気 川田将雅 1:37.4 上り37.1映像
4 GIII根岸S 東京 ダ1400 3人気 川田将雅 1:24.0 上り36.5
14 GIジャパンカップダート 阪神 ダ1800 9人気 川田将雅 1:51.4 上り38.0映像
1 JpnⅠJBCスプリント 名古屋 ダ1400 1人気 川田将雅 1:25.9 上り37.0映像
2 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 2人気 川田将雅 1:11.6 上り36.9
2 レパードS 新潟 ダ1800 3人気 川田将雅 1:50.0 上り37.6映像
6 JpnⅠジャパンダートダービー 大井 ダ2000 1人気 内田博幸 2:06.4 上り39.0
2 JpnⅡ兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 1人気 内田博幸 1:59.1 上り36.2
1 OP伏竜S 中山 ダ1800 1人気 内田博幸 1:53.8 上り37.5
12 GIIIアーリントンC 阪神 芝1600 2人気 内田博幸 1:37.0 上り36.8
1 JpnⅠ全日本2歳優駿 川崎 ダ1600 1人気 内田博幸 1:40.5 上り38.7
1 JpnⅡ兵庫ジュニアグランプリ 園田 ダ1400 1人気 内田博幸 1:28.6 上り39.6
1 2歳500万下 東京 ダ1300 1人気 内田博幸 1:18.3 上り36.7
1 2歳新馬 京都 ダ1200 1人気 内田博幸 1:12.9 上り37.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
スーニの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
SotoデヒアDehereDeputy Minister
Sister Dot
Subtle FragranceCrafty Prospector
My Red Wing
EnabruRoanokePleasant Colony
Last Bird
Satin PromiseDixieland Band
Soft as Satin
STORY

旅程 — この馬の物語

2006年生まれの鹿毛の牡馬。父Soto、母Enabru。

サルデーニャの村の名 ― 出自と血の根

2006年2月10日、アメリカ生まれ。生産者はHighclere Inc.。2008年3月、カリフォルニアで開かれたバレッツ・マーチ・セレクトセールにおいてナーヴィック・インターナショナルの名義で12万ドルの値がつき、のちに吉田和美の所有馬となって、栗東の吉田直弘厩舎へ入った。 与えられた名は、スーニ。イタリア・サルデーニャ島オリスターノ県にある、標高340メートル、人口千人あまりの小さなコムーネの名である。地中海の島の丘の村の名がなぜアメリカ生まれの鹿毛に選ばれたのか、記録は語らない。母エナブル(Enabru)にも、その母Satin Promiseにも、イタリアの気配はない。 そのエナブルは、アメリカで63戦9勝。牝馬でありながら六十を超える出走を重ねた、走り詰めの母だった。父Sotoはデヒアの産駒で、血統表に大書される名前ではない。 ただ、この馬の母系の根は、日本の競馬と深いところで繋がっていた。4代母Fanciful Miss。その娘ファンシミンは1972年に社台グループの手で日本へ渡り、社台ファーム早来で繁殖に上がる。自身の産駒は条件馬までだったが、牝系は大きく枝を広げ、ラインクラフトアドマイヤマックスソングオブウインドを送り出す名牝系「ファンシミン系」となった。 スーニは、日本の名牝系と同じ根から出て、三十六年遅れて海を渡ってきた一頭だった。

四連勝 ― 無敗の二歳王者

2008年10月12日、京都のダート1200メートル。新馬戦の鞍上は内田博幸だった。ゲートを出るなり先頭に立ち、一度も抜かせないまま、2着ピサノロダンに7馬身をつけて戻ってきた。 二戦目は11月8日、東京のダート1300メートルの500万下。ここでも逃げて1分18秒3、当時のレコードである。同じ日、同じ東京競馬場で、管理する吉田直弘はキクノサリーレで武蔵野ステークスを勝ち、2007年の開業以来はじめての重賞を手にしていた。若い厩舎の一日としては、望みうる最上のものだった。 三戦目、園田の兵庫ジュニアグランプリは単勝1.1倍に応える。そして四戦目が、川崎の全日本2歳優駿だった。 12月17日、不良馬場。大外12番から四番手を進み、3コーナーで二番手、4コーナーではもう先頭に立っていた。ゴール前は手綱を緩める余裕さえあって、2着ナサニエルに5馬身。無敗のまま、その年の二歳ダート王座に就く。吉田直弘にとっては、中央・地方を通じて初のGI級制覇だった。 内田博幸は、この年の3月に大井からJRAへ移ったばかりである。移籍一年目に宝塚記念と菊花賞を勝ち、暮れには古巣・南関東の川崎で、無敗の二歳王者を導いた。三着は船橋・川島正行厩舎のナイキハイグレード。その厩舎の名が、四年あまり先でこの馬の行き先になることを、この日、知る者はいない。

芝の一敗 ― 距離という答え

年が明け、陣営はUAEダービーへの遠征も視野に入れていたが、春の目標に選ばれたのはNHKマイルカップだった。その試走として、2009年2月28日、阪神の芝1600メートル、アーリントンカップに出走する。2番人気。結果は12着。デビューから五戦目にして、初めて負けた。 砂に戻ると、4月5日の伏竜ステークスをハナ差で勝つ。全日本2歳優駿で5馬身離したナサニエルが、今度はゴールまで並んで来た。5月6日の兵庫チャンピオンシップは単勝1.1倍でゴールデンチケットにクビ差の二着。7月8日、大井のジャパンダートダービーは1番人気で6着に沈んだ。 2000メートルは、この馬の距離ではなかった。無敗という看板は春のうちに剥がれ、代わりに輪郭がひとつ残る——スーニが本当に強いのは、砂の1200から1400までである。それを知るために、彼は三度負けなければならなかった。

鞍上、川田将雅 ― 名古屋のJpnI

2009年8月23日、新潟のレパードステークス。鞍上が替わった。川田将雅、二十三歳。前年の皐月賞をキャプテントゥーレで制してGI級の初勝利は挙げていたが、砂の全国区ではまだ無冠だった。この日は3番人気で二着。勝ったのはトランセンドである。 9月30日、大井の東京盃も二着。バンブーエールに0秒3届かない。そして11月3日、名古屋のJBCスプリントを迎える。 1番人気。好スタートから二番手につけ、3コーナーと4コーナーの中間で、逃げるポートジェネラルを捕まえにいった。外からアドマイヤスバルに被せられたが、4コーナーで振り切る。三歳で古馬を退けてのJpnI二勝目であり、川田将雅にとっては、交流重賞のはじめての勝利だった。 12月6日のジャパンカップダートは14着。この馬の居場所は、やはり短い砂の上にしかなかった。それでもこの秋、一頭の短距離馬とひとりの若い騎手は互いを見つけている。レパードステークスから2013年の黒船賞まで、川田はこの馬の背に三十二度跨ることになる。

スマートファルコンの背中

2010年は根岸ステークス4着、フェブラリーステークス9着から始まった。中央の一線級には足りない。だが3月22日、高知の黒船賞では不良馬場を四番手から進み、直線入口で先頭に立ってトーセンブライトに1馬身半差をつけた。4月7日、大井の東京スプリントでは逃げるポートジェネラルを直線で交わし、フジノウェーブの追撃をハナ差でしのぐ。 問題はその先だった。5月3日のかきつばた記念、5月26日のさきたま杯。二度とも、前を行くのはスマートファルコンである。0秒3、0秒8。追うたびに差は開いた。 8月18日のサマーチャンピオンは単勝1.1倍でスタートを決められず4着。秋は東京盃5着、船橋の1000メートルで行われたJBCスプリント4着、カペラステークス7着。暮れの兵庫ゴールドトロフィーは直線で一度先頭に立ちながら、トーセンブライトに差し返されて二着だった。 勝てないのではない。勝ち切れない。四歳の一年は、そういう一年だった。

震災の春 ― 一年四か月の沈黙

2011年、初戦に予定していた3月14日の黒船賞は、東日本大震災の影響で開催が中止になった。 仕切り直しの3月21日、阪神のポラリスステークスは13着。4月20日の東京スプリント11着、5月15日の栗東ステークス8着。6月1日のさきたま杯でようやく三着に入ったが、単勝は二十倍を超えていた。7月10日のプロキオンステークスは10番人気の8着である。 黒船賞と東京スプリントを勝った砂の重賞馬は、一年と四か月のあいだ勝ち星から遠ざかっていた。五歳。ダート短距離の勢力図は、セイクリムズンやセレスハントの名で書き換えられつつある。それでも、鞍上は替わらなかった。

佐賀、大井、園田 ― 五歳の秋

2011年8月16日、佐賀。重馬場のサマーチャンピオンに、58.5キロを背負って大外11番から出た。4番人気。三番手から二番手へ上がり、4コーナーで先頭に立つと、直線では後続が離される一方だった。2着トーホウドルチェに4馬身。1分23秒8は、従来の記録を1秒4も縮めるレコードだった。 この一勝には、鞍上にとっての意味があった。川田将雅は佐賀県鳥栖市の生まれで、曾祖父は佐賀の騎手、祖父も父も調教師という一族に育っている。地元・佐賀での重賞は、これが初めてだった。しかもこの日、同じレースには父・川田孝好の管理馬が二頭出走している。息子は中央から来た馬に乗り、父の送り出した馬たちの前を、レコードで駆け抜けた。 9月28日、大井の東京盃。道中は十番手から八番手へ。直線は最内から脚を伸ばし、粘るラブミーチャンを捉えて1馬身差。 11月3日、同じ大井のJBCスプリント。1番人気。十四頭立ての十番手で3コーナーを回り、直線は大外へ持ち出した。先に抜け出していたラブミーチャン、セイクリムズン、ダッシャーゴーゴーを一頭ずつ呑み込んで、1分10秒1。1980年の東京盃でカオルダケが刻んだ1分10秒2を三十一年ぶりに書き換える、コースレコードだった。二年ぶりのJBCスプリント制覇であり、JpnIはこれで三つ目になった。 新馬戦で一度も先頭を譲らなかった逃げ馬が、五歳の秋には後方から大外を一気に来る差し馬になっていた。走り方まで変えて、彼は戻ってきたのである。 12月28日、園田の兵庫ゴールドトロフィー。トップハンデの59.5キロを背負い、後方二番手から、先に抜け出したオオエライジンを直線半ばで捕まえた。交流重賞四連勝。この年、彼はダートグレードを四つ勝っている。

船橋へ ― 名伯楽と、血の行方

六歳になると、勝てなくなった。2012年の黒船賞は1番人気で4着、東京スプリント11着、さきたま杯5着。三つとも、勝ったのはセイクリムズンである。前の年に大井で呑み込んだ相手が、今度は先に行ってしまう。盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯5着、川崎のJBCスプリント三着、暮れの兵庫ゴールドトロフィー7着。 2013年3月19日、高知の黒船賞10着。川田将雅にとって、この馬への三十二度目で最後の騎乗になった。3月23日付でJRAの競走馬登録は抹消され、行き先は船橋・川島正行厩舎だった。 川島正行は、中央で見切りをつけられた馬をもう一度走らせることで知られた調教師である。その手腕は「川島再生工場」と呼ばれた。アジュディミツオーフリオーソ。南関東の砂を代表する馬たちを育てた男の厩舎に、七歳のスーニは入った。 浦和のさきたま杯9着。そして6月26日、大井の帝王賞。鞍上は川島正太郎、師の四男である。不良馬場の2000メートルを8番人気で10着。勝ったのはホッコータルマエだった。これが四十三戦目になった。母が海の向こうで六十三度走ったように、この馬も四十三度走ったことになる。 2014年9月7日、川島正行が呼吸不全で世を去る。六十六歳だった。所属馬は長男・川島正一の厩舎へ移り、スーニも10月1日付で登録を抹消された。四十三戦十二勝、獲得賞金4億6967万6000円。ダートグレードを九つ、うちJpnIを三つ勝った馬である。 送られた先は、北海道苫小牧のノーザンホースパークだった。4代母Fanciful Missの娘ファンシミンが1972年に渡ってきて根を張ったのと、同じ社台グループの北海道である。一つ下の半妹アンソニカも同じ吉田直弘厩舎で三戦を走り、のちに北海道で繁殖牝馬となって、この一族の日本での枝を伸ばした。そして2017年12月、川崎の全日本2歳優駿を無敗で制した馬がいる。ルヴァンスレーヴ。同じFanciful Missを根に持つ一族の、砂の王者だった。 アメリカで生まれ、地中海の島の村の名をもらい、日本の砂を四十三度走った鹿毛は、その血が四十年余り前に根を下ろした北の土地へ帰っていった。残したのは、大井の直線を大外から一気に呑み込んだ、一分十秒一である。

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