名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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シュガークンのイメージビジュアル
シュガークンSugar Kun
Sugar Kun

シュガークン

通算成績7戦3勝

獲得賞金7,414万円

生年月日 2021.03.05(令和3年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
シュガークンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
17 GI宝塚記念 阪神 芝2200 17人気 吉村誠之助 2:15.3 上り38.0映像
15 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 2人気 武豊 2:00.1 上り35.2映像
7 GI東京優駿 東京 芝2400 8人気 武豊 2:25.2 上り34.7映像
1 GIIテレビ東京杯青葉賞 東京 芝2400 2人気 武豊 2:24.2 上り33.9映像
1 大寒桜賞 中京 芝2200 1人気 武豊 2:17.4 上り35.6
1 3歳未勝利 阪神 芝2000 1人気 武豊 2:02.8 上り34.5
2 3歳新馬 京都 芝1600 1人気 武豊 1:37.0 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
シュガークンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ドゥラメンテDuramenteキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
アドマイヤグルーヴAdmire GrooveサンデーサイレンスSunday Silence
エアグルーヴAir Groove
シュガーハートサクラバクシンオーSakura Bakushin Oサクラユタカオー
サクラハゴロモ
オトメゴコロジャッジアンジェルーチJudge Angelucci
テイズリーTizly
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ドゥラメンテ、母シュガーハート。主な勝ち鞍はテレビ東京杯青葉賞。

シュガーの名 ― 兄はキタサンブラック

名の半分は、母から受け継いだ。 2021年3月5日、北海道日高町のヤナガワ牧場に、父ドゥラメンテ、母シュガーハートの黒鹿毛が生まれた。母シュガーハートの父はスプリンターのサクラバクシンオー。長い距離を走る配合とは見えないこの牝馬は、かつて一頭の名馬を産んでいる――わずか三百五十万円で引き取られ、GIを七つ勝ち、いまや顕彰馬となったキタサンブラックである。シュガークンは、その半弟にあたる。 馬主は辻子依旦、育てるのは栗東の清水久詞。そして手綱を託されたのが、兄キタサンブラックを古馬の頂へと導いた武豊だった。「シュガー」は母シュガーハートから、「クン」はフィンランドの言葉から採られたという。同じ母の血を分けた弟が、同じ名手を背に、兄の走った府中の2400mを目指す。物語は、大きすぎる兄の影と、ひとりの騎手を道しるべにして始まった。

三連勝 ― 名手とともに駆け上がる

デビューは2024年2月4日、京都の芝1600m。1番人気に支持されながら、新馬戦は惜しくも2着に敗れた。だが弟は、そこから一息に階段を駆け上がる。 2月の未勝利戦を武豊とともに完勝すると、中京の大寒桜賞も1番人気で連勝。迎えた4月27日、東京優駿への優先出走権がかかる青葉賞(GII)。最内で折り合って6番手を進んだシュガークンは、直線で内から外へ持ち出すと、しぶとく前を追い詰め、残り50mで先頭に立つ。そこへ7番人気ショウナンラプンタが後方から急襲したが、アタマ差で振り切った。デビューから三連勝、重賞初制覇。かつて兄の背にあった名手は、ゴール後に弟をこう語る。「兄は偉大すぎるのでね」[^1]。それでも、この馬が一戦ごとに変わっていくことを、武豊は肌で感じ取っていた。

出典:テレ東スポーツ「【青葉賞】キタサンブラックの弟 シュガークンV!武豊騎手『兄は偉大すぎる。(ダービーに)なんとか間に合った』」2024年4月27日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2024/04/033749.html、閲覧日:2026年7月16日。

府中の2400m ― 兄が敗れた舞台へ

青葉賞の勝利で、シュガークンはダービーの切符を手にした。大きな休みも故障もなくクラシックに間に合ったことを、武豊は素直に喜んだ。 2024年5月26日、東京優駿。8番人気での挑戦だった。九年前、兄キタサンブラックはこの同じ府中の2400mを14着に敗れ、真価を示すのは秋を待たねばならなかった舞台である。弟は7着。勝ち馬から離されはしたが、大観衆のクラシックで大きく崩れることなく走り切った。血の証明はまだ途上――この三歳の春が、長い物語の入口になるはずだった。

止まった時計 ― 左前浅屈腱炎

だが、その秋は来なかった。 2024年9月15日、シュガークンに左前浅屈腱炎が見つかる。療養期間は未定と発表された。屈腱炎は競走馬にとって最も重い故障のひとつで、癒えるまでに長い時間を要し、そのままターフへ戻れない馬も少なくない。三連勝で駆け上がった三歳の春から一転、若い黒鹿毛は競馬場を離れ、長い療養の日々へ沈んだ。ダービーの7着を最後に、シュガークンの成績表は、二年近く止まったままになる。

二年ぶりの新潟 ― 復帰

止まっていた時計が再び動いたのは、2026年5月16日だった。新潟大賞典(GIII)、芝2000m。鞍上は、待っていた武豊。屈腱炎を乗り越えての、およそ二年ぶりの実戦である。単勝2番人気――ファンは、この馬がまだ走れることを信じていた。 好スタートから2番手につけ、直線ではいったん先頭にも立った。かつての手ごたえは、確かに戻っていた。だが長いブランクは、最後の直線で牙をむく。伸びは半ばで鈍り、シュガークンはずるずると後退して15着、最下位に沈んだ。武豊は、さすがのスピードは見せてくれた、直線の半ばまでは光るものがあった、しかし休み明けの分だけ最後が続かなかった、と振り返った。復活の物語は、勝利という形では書けなかった。

交差する血 ― 宝塚記念、そして

三週間後、シュガークンは阪神の宝塚記念(GI)へ向かった。だが、デビューから全戦で手綱を執ってきた武豊の姿は、その背になかった。名手は前年の覇者メイショウタバルを選び、シュガークンの鞍上には、清水厩舎で普段から調教に跨る吉村誠之助が座った。 雨に濡れた不良馬場の阪神。武豊とメイショウタバルは、この舞台で史上三頭目の連覇を果たす。二着に粘ったのはクロワデュノール――半兄キタサンブラックが遺した仔であり、シュガークンには甥にあたる馬だった。同じ母から流れ出た血が勝ち負けの最前線で交わっていたその同じレースで、シュガークンは17着に終わる。 兄は顕彰馬、その仔はGIの表舞台に立つ。名だたる血の連なりのなかで、シュガークンもまた、東京の2400mに自らの一勝を刻んだ一頭だ。兄の名手とともに三連勝で駆け上がった、あの青葉賞の頂を。そして屈腱炎という深い谷を越え、もう一度ゲートに戻ってきた。宝塚記念のあと、シュガークンは放牧に出された。時計はまた、静かに動き始めている。母から継いだ名を背負って、再びターフに立つ日を待ちながら。

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