名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

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スタニングローズのイメージビジュアル
スタニングローズStunning Rose
Stunning Rose

スタニングローズ

通算成績18戦6勝

獲得賞金42,621万円

生年月日 2019.01.18(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
スタニングローズの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
8 GI有馬記念 中山 芝2500 9人気 R.ムーア 2:32.4 上り35.5映像
1 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 3人気 C.デムーロ 2:11.1 上り34.0映像
6 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 9人気 北村友一 1:47.6 上り35.3映像
9 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 5人気 西村淳也 1:32.6 上り35.5映像
8 GI大阪杯 阪神 芝2000 6人気 西村淳也 1:58.7 上り35.5映像
12 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 7人気 坂井瑠星 1:33.0 上り33.4映像
5 GII中山記念 中山 芝1800 3人気 吉田隼人 1:47.3 上り35.4映像
14 GIエリザベス女王杯 阪神 芝2200 2人気 坂井瑠星 2:15.5 上り38.2映像
1 GI秋華賞 阪神 芝2000 3人気 坂井瑠星 1:58.6 上り34.3映像
1 GIII紫苑S 中山 芝2000 1人気 坂井瑠星 1:59.9 上り35.0
2 GI優駿牝馬 東京 芝2400 10人気 D.レーン 2:24.1 上り34.4映像
1 GIIIフラワーカップ 中山 芝1800 2人気 川田将雅 1:48.5 上り35.0映像
1 こぶし賞 阪神 芝1600 1人気 坂井瑠星 1:36.9 上り33.4
5 GIIデイリー杯2歳S 阪神 芝1600 4人気 吉田隼人 1:35.6 上り34.2映像
3 GIIIサウジアラビアロイヤルカップ 東京 芝1600 3人気 戸崎圭太 1:36.5 上り33.2映像
5 GIII新潟2歳S 新潟 芝1600 5人気 松山弘平 1:34.3 上り32.9映像
1 2歳未勝利 阪神 芝1600 1人気 川田将雅 1:35.2 上り35.4
2 2歳新馬 中京 芝1400 1人気 吉田隼人 1:23.3 上り35.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
スタニングローズの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キングカメハメハKing KamehamehaKingmamboMr. Prospector
Miesque
マンファスManfathラストタイクーンLast Tycoon
Pilot Bird
ローザブランカクロフネKurofuneフレンチデピュティFrench Deputy
ブルーアヴェニューBlue Avenue
ローズバドサンデーサイレンスSunday Silence
ロゼカラー
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牝馬。父キングカメハメハ、母ローザブランカ。主な勝ち鞍は秋華賞・エリザベス女王杯・フラワーC。

「魅力的な薔薇」― 名前と、忘れ物の血

「魅力的な薔薇」――その名のとおり、この牝馬は一族の名を継いで生まれた。2019年1月18日、ノーザンファーム生まれの鹿毛。父はキングカメハメハ、母はローザブランカ。母の父にクロフネ、その血をさかのぼると、1993年にフランスから渡ってきた一頭の繁殖牝馬ローザネイに行き着く。競馬ファンが薔薇一族と呼ぶ牝系である。 一族は、大きな舞台にあと一歩届かない血でもあった。曽祖母ロゼカラーは秋華賞で3着。祖母ローズバドに至っては、オークスも秋華賞もエリザベス女王杯も、すべて2着で終えている。一族が手にしたGIは、叔父にあたるローズキングダムの朝日杯フューチュリティステークスとジャパンカップだけ。牝馬のタイトルは、まだ一つも無かった。祖母たちが取りこぼしてきた“忘れ物”を、この薔薇が掴みにいく。手綱を託されたのは、まだGIを勝てずにいた若手・坂井瑠星。馬主はサンデーレーシング、育てるのは栗東の高野友和。名にふさわしい大輪になれるか――その答えは、これからの一戦一戦が決めていく。

蕾のころ ― デビューからフラワーカップ

2021年6月、中京の芝1400m。1番人気に応えられず、デビュー戦は逃げた相手を捉えきれずに2着。だが二十日後の未勝利戦を川田将雅とあっさり勝ち上がると、夏から秋にかけて重賞へ挑んでいく。新潟2歳ステークス5着、サウジアラビアロイヤルカップ3着、デイリー杯2歳ステークス5着――勝ちきれないまま、2歳の秋は過ぎた。 明けて3歳、こぶし賞で初めて坂井瑠星を背に連勝の口火を切ると、続くフラワーカップ、中山の芝1800mで川田とともに抜け出した。このとき薔薇一族に、十年ぶりの重賞がもたらされる。ローズキングダムが京都大賞典を勝って以来途絶えていた、一族の勲章だった。蕾は、ようやくほころびはじめていた。

母の轍 ― オークスの二着

桜花賞には間に合わなかった。だが府中のオークスで、薔薇は下馬評をくつがえしてみせる。2022年5月22日、鞍上はレーン。10番人気という低い評価をものともせず、直線で長くいい脚を使い、勝ったスターズオンアースからわずか1馬身1/4差の2着に食い込んだ。 勝ったのは、桜花賞を制していた二冠牝馬。頂には届かなかった。けれど、この2着には既視感があった。祖母ローズバドもまた、二十一年前の同じオークスを2着で終えている。栄光の一歩手前で銀に泣く――薔薇一族の宿命が、また一度くり返されたようにも見えた。だが、この孫娘は祖母と同じ轍で終わらない。次の頂で、その銀を金に変えることになる。

忘れ物を掴む ― 二〇二二年秋華賞

2022年10月16日、阪神の芝2000m。紫苑ステークスを1番人気で制して臨んだ秋華賞で、スタニングローズは3番人気に推された。1番人気は、二冠牝馬スターズオンアース。三冠のかかる女王を、薔薇が迎え撃つ構図だった。 坂井は好位を進んだ。直線、内から力強く抜け出すと、追いすがるナミュールも、外から伸びる二冠牝馬も、もう届かない。スターズオンアースの三冠を阻み、薔薇一族はついに、牝馬のGIを史上はじめて手にした。曽祖母が3着に敗れ、祖母が2着に泣いた秋華賞。その“忘れ物”を、孫娘がようやく拾い上げたのである。 坂井瑠星にとっては、28度目のGI挑戦での初制覇だった。検量室の前で、若き主戦を育てた師匠・矢作芳人が目頭を押さえる。「よくここまで育ってくれた」[^1]。名を継いだ薔薇と、一人前になった騎手。二つの“はじめて”が、同じ一日に重なっていた。

出典:中日スポーツ「【秋華賞】坂井瑠星「最高です」28度目の挑戦、スタニングローズで待望のG1初制覇に師匠の矢作師も目頭覆う」2022年10月16日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/564736 、閲覧日:2026年7月19日。

長い冬 ― 勝てない二年

だが、頂に立った直後から歯車が狂いはじめる。 秋華賞のわずか四週間後、エリザベス女王杯。2番人気に支持されながら、残り800mで手応えが怪しくなり、直線はまるで伸びずに14着。年が明けても復調の兆しは見えず、中山記念5着、ヴィクトリアマイル12着。坂井を背にしたこの一戦を最後に、コンビは解かれた。若い主戦を初のGIへ導いた薔薇は、その手綱を別の騎手へと渡していく。 さらに左前脚の腱周囲炎が、長い休養を強いた。戦列に戻った2024年も、大阪杯8着、ヴィクトリアマイル9着、クイーンステークス6着。鞍上は西村淳也、北村友一と替わり、勝ち星は遠いままだった。秋華賞から数えて、二年。薔薇は、長い冬のなかにいた。

二年ぶりの盛り ― 二〇二四年エリザベス女王杯

2024年11月10日、京都のエリザベス女王杯。3番人気。鞍上には、この年GIを勝つために来日しながら2着続きに歯噛みしていたC.デムーロが座った。 デムーロは好位でじっとためた。四コーナーを手応えよく回り、直線で先行勢を捉えると、力強く二馬身突き抜ける。2着に12番人気ラヴェルを従えての完勝。秋華賞以来、二年ぶりのGI制覇だった。「すごくファンタスティックな脚」[^1]――勝った騎手は、その末脚をそう讃えた。 この勝利にも、一族の記憶が重なっていた。祖母ローズバドがかつて2着に泣いた、そのエリザベス女王杯である。オークスの銀を秋華賞の金に変えた薔薇は、もう一つの“忘れ物”まで、二年越しに拾い上げてみせた。

出典:東スポ競馬「【エリザベス女王杯結果&コメント】スタニングローズ復活 Cデムーロ「すごくファンタスティックな脚」」2024年11月10日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/51538 、閲覧日:2026年7月19日。

薔薇は咲きつづける ― 引退、そして母へ

暮れの有馬記念、ムーアを背に中山の2500mへ向かい、8着でゴールを終えた。これがラストランとなる。12月、登録を抹消。競走馬としての旅は、18戦6勝、獲得賞金4億2621万円という数字とともに幕を閉じた。 その年の暮れ、スタニングローズはJRA賞最優秀4歳以上牝馬に選ばれる。秋華賞とエリザベス女王杯――祖母たちが二着に泣いた二つのGIを、一頭で掴んでみせた牝馬への栄誉だった。 いま、この薔薇はノーザンファームで母になっている。初めての相手に選ばれたのは、同じ2019年生まれの怪物イクイノックス。2026年1月26日、二頭のあいだに牝の仔が生まれた。祖母から母へ、母から娘へ――取りこぼしを拾い、栄光を継いできた血に、また新しい蕾がひとつ加わった。薔薇は、これからも咲きつづける。

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