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ストロングリターン
通算成績21戦7勝
獲得賞金3億1,099万円
生年月日 2006.05.26(平成18年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 8 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 2人気 | 福永祐一 | 1:33.5 | 上り34.4 | 映像 | |
| 7 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 5人気 | 福永祐一 | 1:45.5 | 上り33.8 | — | |
| 1 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 2人気 | 福永祐一 | 1:31.3 | 上り33.8 | 映像 | |
| 4 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 2人気 | 福永祐一 | 1:20.4 | 上り33.2 | — | |
| 4 | GIII富士S | 東京 芝1600 | 2人気 | 石橋脩 | 1:35.4 | 上り35.0 | — | |
| 2 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 5人気 | 石橋脩 | 1:32.0 | 上り33.8 | 映像 | |
| 1 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 4人気 | 石橋脩 | 1:20.2 | 上り33.1 | — | |
| 1 | 難波S | 阪神 芝1800 | 2人気 | 内田博幸 | 1:45.4 | 上り34.4 | — | |
| 2 | 雲雀S | 東京 芝1400 | 3人気 | F.ベリー | 1:22.5 | 上り32.7 | — | |
| 6 | GIIIエプソムカップ | 東京 芝1800 | 5人気 | 内田博幸 | 1:46.3 | 上り34.3 | — | |
| 1 | 東京クラウンP | 東京 芝1400 | 1人気 | 内田博幸 | 1:23.7 | 上り34.0 | — | |
| 1 | テレビ山梨杯 | 東京 芝1600 | 3人気 | 柴田善臣 | 1:35.2 | 上り33.5 | — | |
| 6 | アプローズ賞 | 東京 芝1600 | 1人気 | M.デムーロ | 1:34.4 | 上り33.7 | — | |
| 3 | GIIIラジオNIKKEI賞 | 福島 芝1800 | 2人気 | 内田博幸 | 1:48.5 | 上り35.6 | — | |
| 4 | OP葵S | 京都 芝1400 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:20.5 | 上り33.4 | — | |
| 1 | 3歳500万下 | 中山 芝1600 | 1人気 | 内田博幸 | 1:34.8 | 上り35.6 | — | |
| 6 | GIII毎日杯 | 阪神 芝1800 | 7人気 | 川田将雅 | 1:48.3 | 上り34.6 | — | |
| 2 | 黄梅賞 | 中山 芝1600 | 1人気 | 内田博幸 | 1:36.0 | 上り35.9 | — | |
| 3 | 3歳500万下 | 東京 芝1600 | 1人気 | 内田博幸 | 1:34.6 | 上り33.7 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 東京 芝1600 | 1人気 | 内田博幸 | 1:35.4 | 上り33.8 | — | |
| 2 | 2歳新馬 | 東京 芝1600 | 1人気 | 柴山雄一 | 1:35.4 | 上り33.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父シンボリクリスエスSymboli Kris S | Kris S. | Roberto |
| Sharp Queen | ||
| Tee Kay | Gold Meridian | |
| Tri Argo | ||
| 母コートアウトCaught Out | Smart Strike | Mr. Prospector |
| Classy 'n Smart | ||
| アザールAzhaar | Nijinsky | |
| Smart Heiress |
旅程 — この馬の物語
2006年生まれの鹿毛の牡馬。父シンボリクリスエス、母コートアウト。主な勝ち鞍は安田記念・京王杯スプリングC。
コートアウトの仔 ― 強い返しという名
2006年5月26日、北海道千歳の社台ファームに、鹿毛の牡馬が生まれた。 父は、2002年と2003年の有馬記念を連覇したシンボリクリスエス。母はアメリカ生まれのコートアウトで、その父スマートストライクは、カーリンらの活躍によって2007年と2008年に北米のリーディングサイアーに立つことになる。母の母アザールはニジンスキーの娘だった。生産した社台ファームの代表・吉田照哉が、そのまま自らの名義で走らせた。預けられたのは美浦の堀宣行厩舎で、この馬は生涯、厩舎を移らなかった。 母の名はコートアウト。英字で書けば Caught Out。その仔に与えられた名が、ストロングリターン――直訳すれば、強い返しである。 2008年10月19日、東京の芝1600m。単勝2.4倍の1番人気で迎えたデビュー戦は、しかし2着だった。先に入線したサンカルロは同じシンボリクリスエスの産駒で、のちに阪急杯と阪神カップを勝つことになる。ひとつ届かない――この馬の21戦は、その「ひとつ」を行き来する物語になっていく。 翌11月15日、東京の未勝利戦。鞍上は内田博幸。1番人気に応え、初めて勝った。
勝てない一年 ― 三歳の停滞
三歳になったこの馬は、行く先々で人気を背負った。そして、なかなか勝てなかった。 2009年2月、東京の500万下は単勝1.7倍で3着。勝ったのはレッドスパーダだった。3月、中山の黄梅賞も1番人気で2着。距離を延ばして臨んだ阪神の毎日杯は、川田将雅を鞍上に6着。4月、中山の芝1600mでようやく二つ目の勝ち鞍を拾ったが、5月の京都・葵ステークスは安藤勝己を背に1番人気で4着、7月の福島・ラジオNIKKEI賞は3着に終わる。秋、東京のアプローズ賞もまた1番人気で6着だった。 七戦して、一勝。だが着差を見れば、この年に大敗と呼べる負けは一度もない。強い返しの名を持つ馬は、まだ返し方を覚えていなかっただけである。
府中を覚える ― 二〇一〇年、そして五歳の春
四歳の2月、東京のテレビ山梨杯を柴田善臣で勝つ。5月、同じ東京の東京クラウンプレミアムを内田博幸で勝つ。二連勝で、オープンの扉が開いた。 だが6月のエプソムカップで6着に敗れると、そのまま長い休養に入る。次に走ったのは八か月後、五歳の2月、東京の雲雀ステークスだった。57.5キロを背負い、上がり32秒7という凄まじい脚を使って、それでも2着。4月、阪神の難波ステークスを内田で勝ち、ふたたびオープンへ戻ってくる。 通算七つの勝ち鞍のうち、五つが東京競馬場である。左回りの長い直線と、あの坂。この馬の脚は、府中の形をしていた。
五月十一日、大井 ― 手綱が渡る
2011年5月11日、大井競馬で内田博幸が落馬した。頸椎歯突起骨折の重傷で、この年の勝ち鞍は35にとどまることになる。デビュー二戦目からこの馬に乗り、四つの勝ち鞍を分かち合ってきた主戦は、こうして背から離れた。 三日後の5月14日、東京の京王杯スプリングカップ。急な巡り合わせで手綱を託されたのが石橋脩だった。4番人気。1分20秒2、逃げ込みを図るシルポートをハナ差で捉える。ストロングリターンにとって、初めての重賞だった。 手綱は、渡されるたびに何かを置いていく。
クビ、ひとつ ― 二〇一一年安田記念
6月5日、東京芝1600m。18頭中15頭が重賞ウィナーという一戦で、ストロングリターンは最内の1枠1番、58キロ、5番人気だった。 先に抜け出したのは三歳のリアルインパクト。大井所属のまま騎乗した戸崎圭太が好スタートから三番手につけ、残り400mでスパートして前の二頭をかわす。追いすがったストロングリターンは、届かなかった。クビ差の2着、1分32秒0。 勝った三歳馬の斤量は54キロ、こちらは58キロ。四キロの差である。そしてリアルインパクトもまた、堀宣行の管理馬だった。同じ厩舎の、二つ年下の一勝馬に、府中の直線でクビひとつ先を行かれたことになる。グレード制導入以降、三歳馬の安田記念制覇も、一勝馬の古馬GI制覇も、これが初めてだったとJRAは記録している。 秋、不良馬場の富士ステークスで4着。そこからまた、長い休みに入った。
一分三十一秒三 ― 返した一戦
2012年、六歳。初戦の京王杯スプリングカップは4着だった。この日から手綱を取ったのが福永祐一である。勝ったのはサダムパテック。 6月3日、安田記念。日本馬十六頭はすべて重賞ウィナー、うち六頭がGIホース。単勝はサダムパテックの6.6倍とストロングリターンの6.7倍が並び、票は大きく割れた。 シルポートが飛ばし、1000m通過は56秒3。福永は後方の馬群で脚を溜めていた。直線、粘るシルポートを二番手からリアルインパクトが捉えにかかり、すかさずコスモセンサーが交わす。その外から、ストロングリターンとグランプリボスが並んで伸びてきた。 食い下がるグランプリボスを退けたのは、この馬の力強い末脚のほうだった。クビ差。1分31秒3は当時のJRAレコードである。前年、クビ差で先を行かれた同じ府中の同じ距離で、この馬はクビ差を返した。直線で外へ持ち出したタイミングも、そこからの脚も、鞍上はひと言「完璧」と振り返っている[^1]。 そのクビ差2着、グランプリボスの手綱を引いていたのは内田博幸だった。1月28日に八か月ぶりの復帰を果たし、4月にはゴールドシップで皐月賞を勝った男が、かつて自分が未勝利戦から勝たせた馬に、クビ差だけ及ばなかった。5着のガルボには石橋脩が乗っていた。6着は前年の勝ち馬リアルインパクト。かつてこの馬の手綱を握った騎手たちが、それぞれ別の馬で同じ直線を走っていた。 堀宣行は、安田記念を二年続けて勝った調教師になった。
出典:日本中央競馬会「第62回 安田記念(GI)レース結果」2012年6月3日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/yasuda/result/yasuda2012.html、閲覧日:2026年7月30日。
秋と、その先の四月
秋は振るわなかった。10月の毎日王冠は7着。勝ったのは三歳のカレンブラックヒルだった。11月、京都のマイルチャンピオンシップは2番人気に推されて8着。制したのは、春に人気を分け合ったサダムパテックである。 七歳初戦の京王杯スプリングカップへ向けて調整していた2013年4月、左第一趾節種子骨を折る。全治六か月以上と診断され、そのまま復帰することなく、9月4日付で競走馬登録を抹消された。 21戦7勝、獲得賞金3億1099万5000円。頂に立ったのは一度きりだが、その一度は、府中の芝1600mに当時のレコードとして刻まれている。
返しは続く ― 血と、余生
2013年4月7日、阪神の桜花賞。2番人気の牝馬が中団のうしろから直線一気に伸び、外へ持ち出されて抜け出したアユサンをクビ差まで追い詰めて、届かなかった。レッドオーヴァル――父はディープインパクト、母はコートアウト。ストロングリターンの半妹である。彼女は翌年のスプリンターズステークスでも3着に食い込んだ。 兄がクビひとつを返した翌春、妹はクビひとつを取り逃した。この一族には、そういう差がついてまわる。 2014年からブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬となり、2017年に初年度産駒がデビューした。ペイシャルアスがカンナステークスを勝ち、ジェッシージェニーは読売レディス杯と秋桜賞、翌年に佐賀ヴィーナスカップを制した。テツがMRO金賞、クロールキックが寒菊賞と岩手のスプリングカップ、ニジイロハーピーが兵庫クイーンセレクションと東海クイーンカップとのじぎく賞、プチプラージュが金沢シンデレラカップとオパールカップ――中央のオープンから地方の各地まで、この馬の血を引く勝ち鞍は年を追って散らばっていった。 2023年かぎりで種牡馬を退き、いまは社台ブルーグラスファームで余生を送っている。2026年、二十歳。 クビ、ひとつ。彼が生涯をかけて行き来したその差は、府中の直線で一度だけ、確かに彼の側へ返ってきた。
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