名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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スターリングローズのイメージビジュアル
スターリングローズSterling Rose
Sterling Rose

スターリングローズ

通算成績40戦14勝

獲得賞金55,459万円

生年月日 1997.03.20(平成9年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
スターリングローズの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 9人気 福永祐一 1:36.9 上り35.9映像
11 GIII根岸S 東京 ダ1400 2人気 福永祐一 1:25.5 上り38.5
1 GIII兵庫ゴールドトロフィー 園田 ダ1400 1人気 福永祐一 1:26.9
2 GIII全日本サラブレッドカ 笠松 ダ1400 1人気 福永祐一 1:26.3
3 GIJBCスプリント 大井 ダ1190 4人気 福永祐一 1:10.0 上り35.8映像
8 GIIIシリウスS 阪神 ダ1400 2人気 福永祐一 1:24.4 上り37.1
1 GIIIプロキオンS 阪神 ダ1400 1人気 福永祐一 1:23.0 上り36.7
1 GIIかしわ記念 船橋 ダ1600 2人気 福永祐一 1:38.2 上り37.9
2 GIIIかきつばた記念 名古屋 ダ1400 3人気 福永祐一 1:25.5
1 GIJBCスプリント 盛岡 ダ1200 1人気 福永祐一 1:11.4 映像
7 GIマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 1人気 福永祐一 1:39.8
1 GIIIシリウスS 阪神 ダ1400 1人気 和田竜二 1:22.4 上り36.5
1 GIIIプロキオンS 阪神 ダ1400 1人気 福永祐一 1:22.9 上り35.7
1 OP欅S 東京 ダ1400 1人気 四位洋文 1:22.2 上り36.0
2 GIIIかきつばた記念 名古屋 ダ1400 2人気 福永祐一 1:24.0
5 GIIIアンタレスS 京都 ダ1800 1人気 松永幹夫 1:49.4 上り37.5
1 OPコーラルS 阪神 ダ1400 2人気 福永祐一 1:22.4 上り36.5
7 GIII東京中日S杯武蔵野S 東京 ダ1600 4人気 福永祐一 1:36.0 上り37.4映像
1 夕刊フジ杯大原S 京都 ダ1400 2人気 福永祐一 1:24.2 上り37.2
3 GIIIシリウスS 阪神 ダ1400 2人気 福永祐一 1:23.8 上り36.8映像
1 涼秋S 阪神 ダ1400 1人気 福永祐一 1:23.2 上り35.9
8 OP阿蘇S 小倉 ダ1700 2人気 福永祐一 1:46.8 上り39.2
2 OPKBC杯 小倉 ダ1700 1人気 熊沢重文 1:45.4 上り37.7
1 日南特別 小倉 芝1800 2人気 福永祐一 1:49.7 上り34.8
5 雅S 京都 ダ1800 1人気 福永祐一 1:51.4 上り37.4
2 OPベテルギウスS 阪神 ダ1800 3人気 福永祐一 1:51.2 上り37.3
2 元町S 阪神 ダ1800 2人気 福永祐一 1:51.8 上り36.7
9 古都S 京都 芝1800 2人気 福永祐一 1:47.3 上り36.0
2 花園S 京都 ダ1800 3人気 福永祐一 1:51.4 上り36.9
1 愛宕特別 京都 ダ1800 1人気 福永祐一 1:51.6 上り36.3
2 夕月特別 阪神 芝2000 1人気 福永祐一 2:02.1 上り34.4
2 蓬莱峡特別 阪神 芝1600 3人気 福永祐一 1:34.9 上り35.5
12 OP駒草賞 東京 芝2000 9人気 福永祐一 2:02.9 上り36.5
13 GIIIテレビ東京杯青葉賞 東京 芝2400 5人気 蛯名正義 2:30.4 上り37.4
3 OP若草S 阪神 芝2200 4人気 安藤勝己 2:18.5 上り34.5
9 GIII毎日杯 阪神 芝2000 7人気 福永祐一 2:04.3 上り36.8
1 4歳500万下 阪神 ダ1800 1人気 福永祐一 1:52.2 上り36.9
2 飛梅賞 京都 ダ1800 4人気 福永祐一 1:53.7 上り37.9
1 4歳新馬 京都 ダ1800 1人気 福永祐一 1:57.5 上り37.5
5 4歳新馬 京都 ダ1400 1人気 福永祐一 1:28.9 上り38.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
スターリングローズの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アフリートAfleetMr. ProspectorRaise a Native
Gold Digger
Polite LadyVenetian Jester
Friendly Ways
コマーズComazDanzigNorthern Dancer
Pas de Nom
ミドルマーチMiddlemarchBuckpasser
Nice Princess
STORY

旅程 — この馬の物語

1997年生まれの栗毛の牡馬。父アフリート、母コマーズ。主な勝ち鞍はJBCスプリント・かしわ記念・シリウスS。

受胎したまま、海を渡った

1990年11月、ケンタッキーのキーンランド。せり市に、カナダ生まれの牝馬が上場された。名はコマーズ。アメリカで二度走って一度勝ち、そのまま繁殖に上がった馬である。腹には仔がいた。父はアフリート。落札額は5万5000ドル。腹の仔ごと、この牝馬は日本へ渡ることになる。 コマーズは北海道門別町の田端勝牧場——のちのタバタファーム——に入り、翌春、腹の仔を産んだ。栗毛の牝馬で、ゴールデンジャックと名づけられた。 姉は走った。栗東・北橋修二厩舎から1994年の桜花賞トライアルに出て、八番人気で勝つ。鞍上はデビュー四年目の四位洋文で、この若い騎手にとって初めての重賞だった。ゴールデンジャックはその春、オークスでも二着まで走っている。 一頭の牝馬の走りが、父を呼び寄せた。アフリートは1994年に日本へ輸入され、翌年から種牡馬として供用される。そして、もう一度コマーズに配された。 1997年3月20日、同じ牧場で栗毛の牡馬が生まれた。ゴールデンジャックの全弟である。厩舎は姉と同じ北橋、馬主も同じ協栄。ひとつだけ違ったのは、名前の決まり方だった。付けたのは血統書を書いた人間でも、馬を買った人間でもない。この馬を担当していた厩務員である。スターリングローズ。純粋な、正真正銘の薔薇、という意味だという。

姉の道

2000年1月5日、京都のダート1400メートル。新馬戦で一番人気に推され、五着に敗れた。十一日後、同じ京都の1800メートルでやり直して勝つ。 手綱はどちらも福永祐一だった。北橋厩舎に所属する二十三歳である。1996年に中京でデビューし、初騎乗初勝利からその日のうちに二連勝した男が、この馬とは生涯四十戦のうち三十四戦をともにすることになる。 二月の飛梅賞は二着。三月の五百万下は、重馬場を一番人気で勝った。ここまでダートで四戦、二勝と二着が一度。そこで陣営は芝へ向かった。姉が走った道である。 毎日杯は九着に終わった。四月の若草ステークスでは安藤勝己を背に、0.1秒差の三着まで食い下がっている。勝ったアグネスフライトは、その年の東京優駿を勝つ馬である。 青葉賞は蛯名正義が乗って十三着、2秒2差。五月の駒草賞は十二着。芝で戦えないわけではなかった。ただ、勝ち負けをする側にはいなかった。姉の道は、そこで途切れる。

二着ばかりの秋と、半年の空白

夏を休んで、九月に戻ってきた。 阪神の蓬莱峡特別で二着。夕月特別も二着。十月に京都のダート1800メートルを勝つと、翌月の花園ステークスはまた二着だった。暮れの元町ステークスとベテルギウスステークスは、どちらもタイム差なしの二着である。九月から十二月まで七戦して、勝ったのは一度きり。あと少しの位置に、いつもいた。 年が明けた一月の雅ステークスは一番人気で五着。そこから半年、姿を消す。体質が弱く、気性も定まらない馬だった。 七月二十二日、小倉の日南特別で戻ってきた。芝1800メートルを、五十七キロを背負って勝っている。八月の小倉は二着と八着。 転機は九月九日だった。阪神のダート1400メートル、涼秋ステークス。二着に0.7秒の差をつけて、一番人気に応えた。三週間後のシリウスステークスは、ブロードアピールから0.1秒差の三着。十月には五十八キロ半を背負って大原ステークスを勝っている。 月末の武蔵野ステークスでは、東京のダート1600メートルで七着に沈んだ。勝ち馬から2秒7も置いていかれた。マイルでは離され、1400メートルでは突き放す。答えは、距離の側にあった。

四百勝目

2002年3月30日、阪神のコーラルステークス。重馬場のダート1400メートルを、二着に0.8秒の差をつけて勝った。 この一勝が、福永祐一の中央通算四百勝目になる。デビューから六年だった。 四月のアンタレスステークスは京都のダート1800メートルで、一番人気の五着。以後この馬が1800メートルを走ることは、二度となかった。 五月、名古屋のかきつばた記念で二着。三週間後、東京の欅ステークスを勝つ。鞍上は四位洋文だった。八年前に姉へ初めての重賞をもたらした男が、今度は弟を連れて府中の砂を走ったことになる。 六月十六日、阪神のプロキオンステークス。単勝1.3倍に推され、二着に0.1秒の差をつけた。デビューから二年半、五歳の六月にして、これが重賞初制覇である。 秋は和田竜二が乗った。九月のシリウスステークスを五十八キロで勝ち、重賞は二つになる。ちょうど一年前には、条件戦を走っていた馬である。

盛岡、三週間

十月、盛岡。マイルチャンピオンシップ南部杯が、初めてのGIだった。一番人気に推されて、七着に敗れる。 三週間後、同じ競馬場に戻ってきた。距離は四百メートル短い。 第二回JBCスプリント。ダート1200メートル。ゲートはいちばん外だった。相手には、前の年に第一回を勝ったノボジャックがいる。2001年のフェブラリーステークスを勝ったノボトゥルーもいる。それでも一番人気はこの馬だった。三週間前に負けたばかりの馬が、である。 馬場は良。 1200メートルは、二百メートルの区切りが六つ集まってできている。この日の勝ち時計は1分11秒4だった。六つを平均11秒9で刻んだ計算になる。息を入れる場所はない。仕掛けを誤っても、やり直せる直線が残っていない距離である。 決勝線を最初に通ったのは、スターリングローズだった。二着のノボトゥルーとの差は、クビ。 福永祐一がダートのGIを勝ったのは、これが初めてである。三年半前、初めてGIを勝ったときの相棒はプリモディーネという牝馬で、舞台は桜花賞だった。その父はアフリート。砂の頂点へ連れて行ってくれた馬の父も、同じアフリートである。

五十九キロ

盛岡から十九日後の京都で、姉の初仔サイドワインダーが京阪杯を勝った。年明けの京都金杯も、この甥が勝つ。金杯の鞍上は四位洋文だった。北橋厩舎、協栄の勝負服、タバタファームの生産——同じ牝系が、二つの世代で同時に走っていた。 GIを勝った馬には、重量が積まれる。 2003年五月、名古屋のかきつばた記念。五十九キロを背負って、タイム差なしの二着だった。六月の船橋、かしわ記念では重馬場の1600メートルを四分の三馬身差で制し、統一重賞をもうひとつ手にする。その十八日後の阪神では、また五十九キロでプロキオンステークスを勝っている。連覇だった。 十月のシリウスステークスは五十九キロ半。八着に沈み、勝ち馬から1秒3離された。 十一月三日、大井。二度目のJBCスプリントは四番人気だった。最後の六百メートル——上がり三ハロンという——を35秒8で上がったが、前の二頭がハナ差を争う間に、0.3秒の差がついている。三着。 笠松の全日本サラブレッドカップは五十九キロで二着。十二月二十四日、園田の兵庫ゴールドトロフィーも五十九キロを背負い、ノボトゥルーに0.1秒差をつけて勝った。六歳の一年で重賞を三つ。五十九キロ以上を積んで走った回数は、この年だけで五度を数える。

四十戦目

2004年1月、東京の根岸ステークス。五十九キロで十一着に終わった。 二月二十二日、フェブラリーステークス。単勝45.1倍の九番人気で、枠はまたいちばん外である。最後の六百メートルを35秒9で上がり、三着に入った。勝ったアドマイヤドンとの差は0.1秒。七歳の二月、これが四十戦目だった。以後、この馬がゲートに入ることはない。十一月十日、競走馬登録が消えた。 2005年から種牡馬になる。産駒が名を残したのは中央ではなかった。福山、佐賀、門別、笠松——地方の競馬場の重賞に、子どもたちの名が並んだ。例外はアスカクリチャンで、七夕賞とアルゼンチン共和国杯を勝っている。どちらも芝の重賞である。砂の1200メートルで頂点に立った馬から、芝の2500メートルを勝つ馬が出た。その仔のクリノドラゴンが2022年に浦和記念を勝ち、直系は三代続けてグレード制の重賞に名を刻んでいる。 2018年6月8日に死んだ。二十一歳だった。 名づけたのは、この馬の世話をしていた厩務員である。意味は「正真正銘の薔薇」。姉と同じ春のクラシックに、この馬はついに間に合わなかった。咲いたのは五歳の秋、十一月の盛岡の砂の上である。遅かったが、本物だった。 北橋修二は2006年二月、定年で厩舎を畳んでいる。福永祐一が北橋厩舎に籍を置いていたのも、その月までだった。それから十七年、福永はダービーを三度勝ち、GI級の勝ち鞍を四十五まで積み上げて、2023年2月19日、東京でJRA最後の騎乗を終えた。「最高でした。最高のジョッキー人生でした」[^1]。その長い人生で最初に届いた砂の頂点は、二十一年前の盛岡にある。 三月四日の引退式には、北橋が来て花束を渡した。その日、福永は自分で指名して誘導馬に乗っている。ミツバという鹿毛で、川崎記念を勝った馬だった。母の母はゴールデンジャック。腹に仔を抱えて海を渡ったコマーズの、曾孫にあたる。 福永はその背に乗って、十七頭の先頭に立った。同じ牧場、同じ勝負服、同じ牝系である。盛岡でGIを勝った栗毛は、もういない。それでも一族は、まだ競馬場の真ん中にいた。

出典:デイリースポーツ「福永祐一「最高のジョッキー人生でした」涙のJRA最終騎乗インタビュー」2023年2月19日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2023/02/19/0016065845.shtml 、閲覧日:2026年8月3日。

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