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ステルヴィオ
通算成績21戦4勝
獲得賞金3億5,244万円
生年月日 2015.01.15(平成27年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 8 | GIII京都金杯 | 中京 芝1600 | 9人気 | 和田竜二 | 1:33.4 | 上り34.5 | 映像 | |
| 5 | GIIMBS賞スワンS | 阪神 芝1400 | 6人気 | 和田竜二 | 1:21.0 | 上り34.7 | 映像 | |
| 7 | GIII京成杯オータムH | 中山 芝1600 | 8人気 | 横山武史 | 1:32.4 | 上り34.9 | 映像 | |
| 10 | GIII根岸S | 東京 ダ1400 | 3人気 | 横山武史 | 1:23.1 | 上り35.7 | 映像 | |
| 12 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 2人気 | 池添謙一 | 1:20.8 | 上り34.6 | 映像 | |
| 2 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 3人気 | 池添謙一 | 1:21.4 | 上り34.3 | 映像 | |
| 2 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 4人気 | 川田将雅 | 1:20.0 | 上り33.0 | 映像 | |
| 9 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 7人気 | 丸山元気 | 1:09.3 | 上り34.1 | 映像 | |
| 5 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 4人気 | 丸山元気 | 1:20.5 | 上り34.2 | 映像 | |
| 8 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 5人気 | D.レーン | 1:31.3 | 上り32.6 | 映像 | |
| 14 | GI大阪杯 | 阪神 芝2000 | 6人気 | 丸山元気 | 2:02.5 | 上り36.7 | 映像 | |
| 3 | GII中山記念 | 中山 芝1800 | 2人気 | 丸山元気 | 1:45.5 | 上り33.5 | 映像 | |
| 1 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 5人気 | W.ビュイック | 1:33.3 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 3人気 | C.ルメール | 1:44.7 | 上り33.2 | 映像 | |
| 8 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 6人気 | C.ルメール | 2:24.0 | 上り33.9 | 映像 | |
| 4 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 2人気 | C.ルメール | 2:01.4 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | GIIフジTVスプリングS | 中山 芝1800 | 1人気 | C.ルメール | 1:48.1 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GI朝日杯フューチュリティステークス | 阪神 芝1600 | 3人気 | C.デムーロ | 1:33.9 | 上り33.8 | 映像 | |
| 2 | GIIIサウジアラビアロイヤルカップ | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:33.3 | 上り33.5 | 映像 | |
| 1 | OPコスモス賞 | 札幌 芝1800 | 1人気 | C.ルメール | 1:51.3 | 上り35.8 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 東京 芝1600 | 2人気 | C.ルメール | 1:34.8 | 上り34.2 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ロードカナロアLord Kanaloa | キングカメハメハKing Kamehameha | Kingmambo |
| マンファスManfath | ||
| レディブラッサム | Storm Cat | |
| サラトガデューSaratoga Dew | ||
| 母ラルケット | ファルブラヴFalbrav | Fairy King |
| Gift of the Night | ||
| アズサユミ | サンデーサイレンスSunday Silence | |
| ファーストクラス |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2015年生まれの鹿毛の牡馬。父ロードカナロア、母ラルケット。主な勝ち鞍はマイルチャンピオンS・フジTVスプリングS。
弓の名から、イタリアの地図へ ― 二〇一五年一月十五日
2015年1月15日、北海道勇払郡安平町のノーザンファームで、鹿毛の牡馬が生まれた。父はロードカナロア。2013年限りで現役を退き、前年から種牡馬になったばかりの短距離王の、初年度産駒の第一号である。 母はラルケット。2005年生まれの青鹿毛で、中央で22戦4勝、2008年のクイーンカップで3着に入っている。欧字名はL'Archetto――イタリア語で、小さな弓、あるいは弦楽器の弓を指す語だ。そのまた母はアズサユミ。梓の丸木で作られた、日本の古い弓の名である。母から娘へ、弓の名が言葉を替えて渡っていた。 母系をさらに遡ると、4代母にスイートコンコルドがいる。1978年、シンボリ牧場でパーソロンとスイートルナのあいだに生まれた牝馬である。その3年後、同じ父と同じ母から生まれた弟が、無敗の三冠馬シンボリルドルフだった。 一口馬主法人のサンデーサラブレッドクラブが、総額4000万円――1口100万円の40口――で募集した。ノーザンファーム早来で育成され、美浦の木村哲也厩舎へ入厩した。育成を担当した厩舎が預かった同期のなかでは、一番早い入厩だったという。木村は2011年6月の開業。2015年のフラワーカップで重賞は勝っていたが、GIはまだ勝っていなかった。 与えられた名は、ステルヴィオ。イタリア北部、アルプスの一角に広がる国立公園の名である。登録された馬名の意味は「イタリア北部にある国立公園の名。母、兄名からの連想」。母の名がイタリア語で、三歳上の兄はボルゲーゼ。ラルケットの仔たちの名には、カルナローリ、グランパラディーゾ、ステルナティーアと、イタリアの言葉と土地が並ぶ。日本の武具の名で始まった牝系は、ラルケットの代でイタリア語になり、その仔たちの代でイタリアの地図の上へ移っていた。
三馬身半 ― 二〇一七年、ダノンプレミアムの背中
2017年6月4日、東京の芝1600メートル。デビュー戦の鞍上はクリストフ・ルメール。2番人気に推され、1分34秒8で勝ち上がった。前日に組まれていた古馬500万下・国分寺特別の勝ち時計との差は、わずか0秒2しかない。ロードカナロア産駒によるJRA初勝利でもあった。 8月12日、札幌のコスモス賞。重馬場に戸惑い、ゴール前でミスマンマミーアに詰め寄られたが、クビ差凌いで2連勝。ルメールは、距離が延びても対応できるし、良馬場ならもっといい脚を使えるはずだ、と語っている。 10月7日、東京のサウジアラビアロイヤルカップ。1番人気。後方からメンバー最速の上がり3ハロン33秒5で追い込んだが、先に抜け出したダノンプレミアムに1馬身3/4届かず2着だった。 12月17日、阪神の朝日杯フューチュリティステークス。ルメールは同じレースに出走するタワーオブロンドンに乗ることが決まっており、手綱はクリスチャン・デムーロに渡った。3番人気。中団の後ろから直線の大外を追い込む。だがデビューから三戦を無敗で駆け抜けてきたダノンプレミアムは、3馬身半先を悠々とゴールへ運んでいた。ルメールのタワーオブロンドンは、さらにクビ差うしろの3着である。 デムーロは、少し距離が短かったかもしれない、これから距離を延ばしていけばGIでもやれると思う、と振り返った。二歳の暮れに置かれたこの見立ては、結局のところ2400メートルまで試したのち、もとの1600メートルへ戻ってきたところで当たることになる。
ハナ差と、その先 ― 二〇一八年春
2018年3月18日、中山の芝1800メートル、スプリングステークス。1番人気。先行勢に有利な流れのなかを中団で待ち、直線で上がり3ハロン34秒1の脚を使った。2番手から抜け出して粘り込みを図るエポカドーロを、ゴール寸前でハナ差だけ捉える。重賞初制覇だった。 「ゴール直後は負けたと思いました」[^1] ルメールはそう言い、休み明けでも重賞を勝てたこと、この馬の瞬発力の強さ、そして体の緩さが取れて以前より前の位置を取れるようになったことを挙げた。2000メートルでも大丈夫だ、あと200メートル延びても行ける、とも。 4月15日、皐月賞。大本命と目されたダノンプレミアムが回避し、人気はワグネリアン、ステルヴィオの順になった。芝は稍重。三頭が先を争って1000メートル通過59秒2の速いラップが刻まれる。ステルヴィオはスタートから行き脚がつかず、後方に置かれた。直線でメンバー最速タイの34秒8を繰り出したが、届いたのは4着まで。3着ジェネラーレウーノとはクビ差、5着キタノコマンドールにはハナ差先着している。勝ったのは、ひと月前にハナ差だけ届いたエポカドーロだった。あのとき半馬身に満たない差で前へ出た相手が、今度ははっきりと先にいた。 5月27日、東京優駿。15番ゲート。6番人気。後方で脚を溜めて直線に勝負をかけたが、前との差は詰まりきらず8着。勝ち馬ワグネリアンとは0秒4差である。この日もエポカドーロは前にいて、残り50メートルまで先頭を守り、2着に粘った。十二万を超える観衆が、東京競馬場にいた。
出典:スポーツナビ「G前強襲ステルヴィオ、打倒ダノン名乗り ルメール成長実感「2000mでも行ける」」2018年3月18日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201803180008-spnavi 、閲覧日:2026年7月25日。
京都、アタマ差 ― 重かった扉
秋は10月7日の毎日王冠から始まった。3番人気。逃げたアエロリットが押し切り、上位を先行馬が占める前残りの一戦になったなかで、一頭だけ後方から上がり33秒2で追い込んで2着に食い込んだ。ここまで八戦、そのうち七戦の鞍上はルメールだった。 陣営は天皇賞(秋)へは向かわず、マイルチャンピオンシップに照準を定める。そしてルメールは、その年の安田記念を勝っていたモズアスコットに騎乗することが決まっていた。二歳の六月からこの馬を作ってきた男は、当日、別の背中の上にいることになる。 代わりに手綱を取ったのは、短期免許で来日していたウィリアム・ビュイックだった。木村哲也は外国人騎手の身元引受を率先して引き受ける調教師で、ビュイックもその一人である。ビュイックにとっては2014年以来、四年ぶりの日本での騎乗だった。 11月18日、京都競馬場、芝1600メートル外回り。晴、良馬場。出走18頭のうち17頭が重賞ウィナーで、そのうち7頭がGI馬という組み合わせである。 1番枠からスムーズにゲートを出た。これまでのように後方で待つのではなく、先行勢を見る4、5番手の最内で無理なく折り合う。隊列を先導するのは、毎日王冠でこの馬の前を走り切ったアエロリットである。直線、前年の覇者で連覇のかかるペルシアンナイトとともに、馬群の内から抜け出した。並んだまま追い比べになり、それを競り落とす。1分33秒3、アタマ差。四度目のGI挑戦にして、初めての戴冠である。単勝870円、5番人気だった。 「作戦やポジションよりも、馬を完ぺきに仕上げた厩舎の力のおかげです」[^1] ビュイックにとって、JRAのGI初制覇。そして木村哲也にとっても、これが初めてのGIだった。2011年6月の開業から七年、2013年のエリザベス女王杯を皮切りに、十六度目の挑戦である。検量室の前でノーザンファーム代表の吉田勝己に迎えられ、木村は人目もはばからず泣いた。 「重かった扉が開きました」[^2] 三歳の秋、通算九戦目。獲得賞金は2億7773万円になった。この年、木村は自己最多の48勝を挙げ、JRA賞の最高勝率調教師と優秀技術調教師をダブル受賞している。 その日、1番人気に推されたモズアスコットは13着だった。二歳の六月からこの馬を七度導いた男の勝負服は、京都の直線の、少しうしろにあった。
出典:スポーツナビ「ステルヴィオ変身これが世界トップの腕 外国騎手旋風止まず6週連続のGI勝利」2018年11月18日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201811180002-spnavi 、閲覧日:2026年7月25日。/スポーツ報知「【マイルCS】木村調教師16回目のJRA・G1挑戦で悲願「重かった扉が開きました」」2018年11月18日配信、閲覧日:2026年7月25日。
一六〇〇を離れて ― 二〇一九〜二〇二〇
四歳の始動戦は2019年2月24日の中山記念。ルメールは同じレースのディアドラを選び、この馬には丸山元気が新たに乗ることになった。丸山とは、続く大阪杯とのセットで組まれたコンビである。2番人気。上がり最速の33秒5で追い上げたが、急坂で脚色が並んでしまい、ウインブライト、ラッキーライラックに続く3着だった。 3月31日、大阪杯。GI馬が8頭も顔を揃えた一戦で6番人気。好位を取ったものの直線で完全に脚色が衰え、14着。丸山は、いい位置は取れたが最後の止まり方は距離のせいではないか、と振り返っている。 6月2日、安田記念。ダミアン・レーンを迎えたが、スタートでやや出負けした。直線、外から生涯で最も速い上がり3ハロン32秒6を繰り出す。それでも8着だった。同世代のアーモンドアイとダノンプレミアムの二強対決に注目が集まったこの日、勝ったのはインディチャンプである。 秋はスプリンターズステークスを予定していた。ところが直前の追い切りで右目に外傷を負い、回避。年内の予定は白紙になった。 九か月ぶりの実戦は2020年3月1日、阪神の阪急杯。1400メートルで5着。四週間後の高松宮記念は、生涯で唯一の1200メートル戦だった。重馬場の中京で9着。詰めれば詰めるだけ速くなる馬ではなかった。 だが1400メートルには、確かに合っていた。5月16日の京王杯スプリングカップは川田将雅を背に、好位から上がり33秒0で伸びてダノンスマッシュに1馬身1/4差の2着。夏のキーンランドカップは熱発で見送られ、四か月半ぶりとなった10月31日、京都のスワンステークスでは池添謙一と組み、逃げ切ったカツジに1馬身差の2着。二戦続けての2着である。三戦続けて1400メートルを使った末の12月26日、阪神カップは2番人気に推されながら12着に終わった。
新ひだかの丘で ― 名を継ぐものたち
2021年1月31日、東京の根岸ステークス。生涯で唯一のダート戦だった。3番人気に支持されたが10着。2月16日、社台ホースクリニックで喉鳴りの手術を受けている。 7月29日付で、木村が調教停止処分を受けたことにともない、木村厩舎の管理馬は同じ美浦の岩戸孝樹厩舎へ移された。ステルヴィオもその一頭である。手術明け、七か月ぶりの実戦となった9月12日の京成杯オータムハンデキャップは7着。10月30日、阪神のスワンステークスは後方から伸びて5着だった。11月1日付で、木村厩舎に戻っている。 2022年1月5日、京都金杯。京都競馬場の改修工事のため、この年も中京での開催だった。58キロを背負って9番人気の8着。これが最後の一戦になる。 その後、左前脚に繋靭帯炎を発症した。5月14日の京王杯スプリングカップでの復帰を目指して調整が進められていたが、炎症が再発する。関係者の協議を経て引退が決まり、5月11日付で競走馬登録が抹消された。21戦4勝、獲得賞金3億5244万円。当初は乗馬として繋養される予定だった。それが変わったのは6月4日である。北海道新ひだか町のアロースタッドが、2023年から種牡馬として繋養すると発表した。 この馬の下には、同じ父と母から二頭の牝馬が生まれている。2019年生まれのステルナティーアは、2021年のサウジアラビアロイヤルカップで2着に入った。四年前、兄が1番人気で走って同じ着順に終わった、同じ東京のマイルである。2020年生まれのウンブライルは、2023年のNHKマイルカップで2着、翌年の阪神牝馬ステークスでも2着に入り、18戦して1億5665万円を稼いだ。二頭とも、木村哲也厩舎の管理馬だった。 弓の名から始まってイタリアの地図へ渡ったこの一族は、大きな舞台のゴール前で、幾度もあと一歩に泣いている。母ラルケットはクイーンカップ3着。妹たちはGIとGIIとGIIIのゴール前で2着に終わった。ステルヴィオ自身も、生涯で五度2着に敗れている。ラルケットの仔たちのなかで、GIのゴール線を先頭で越えたのはこの馬だけである。2018年11月18日、京都のアタマ差。 木村哲也がその日に開けた扉の先から、厩舎はのちにイクイノックス、ジオグリフ、チェルヴィニア、レガレイラを送り出した。最初にその扉を押したのは、五番人気の三歳馬だった。 新ひだかの丘に、いまその馬がいる。2026年度の種付料は、受胎確認後80万円。2024年生まれの初年度産駒は、2026年、門別や大井、福島のゲートに立ちはじめた。7月までに11頭が走り、そのうちの1頭が、もう勝ち上がっている。 二十一回ゲートに入り、四回勝った。そのうちの一回が、十八頭のうち十七頭までが重賞勝ち馬だった京都の直線である。重かった扉は、この馬が押した。
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