名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

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スターズオンアースのイメージビジュアル
スターズオンアースStars on Earth
Stars on Earth

スターズオンアース

通算成績15戦3勝

獲得賞金84,946万円

生年月日 2019.02.27(令和元年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
スターズオンアースの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
14 GI有馬記念 中山 芝2500 8人気 川田将雅 2:33.6 上り36.7映像
7 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 川田将雅 2:26.1 上り33.8映像
8 GIドバイシーマクラシック メイダン 芝2410 3人気 L.デットーリ 映像
2 GI有馬記念 中山 芝2500 7人気 C.ルメール 2:31.0 上り34.8映像
3 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 W.ビュイック 2:22.6 上り34.0映像
3 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 1:32.3 上り33.6映像
2 GI大阪杯 阪神 芝2000 1人気 C.ルメール 1:57.4 上り34.4映像
3 GI秋華賞 阪神 芝2000 1人気 C.ルメール 1:58.7 上り33.5映像
1 GI優駿牝馬 東京 芝2400 3人気 C.ルメール 2:23.9 上り33.7映像
1 GI桜花賞 阪神 芝1600 7人気 川田将雅 1:32.9 上り33.5映像
2 GIIIデイリー杯クイーンカップ 東京 芝1600 1人気 横山武史 1:34.2 上り34.2映像
2 GIIIフェアリーS 中山 芝1600 1人気 石橋脩 1:35.3 上り35.1映像
3 赤松賞 東京 芝1600 1人気 石橋脩 1:34.3 上り33.8
1 2歳未勝利 東京 芝1800 1人気 石橋脩 1:47.3 上り33.9
2 2歳新馬 新潟 芝1800 2人気 石橋脩 1:51.3 上り32.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
スターズオンアースの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ドゥラメンテDuramenteキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
アドマイヤグルーヴAdmire GrooveサンデーサイレンスSunday Silence
エアグルーヴAir Groove
サザンスターズSouthern StarsSmart StrikeMr. Prospector
Classy 'n Smart
スタセリタStacelitaMonsun
Soignee
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ドゥラメンテ、母サザンスターズ。主な勝ち鞍は桜花賞・優駿牝馬。

地球上の星 ― 名前と血

母の名はサザンスターズ、南天の星。その娘に、人は「地球上の星(スターズオンアース)」と名づけた。空に散る星ではなく、この地を駆ける星、と。 2019年2月27日生まれの黒鹿毛。牝系を遡れば、祖母スタセリタは仏オークス(ディアヌ賞)をはじめ欧州でGIを六つ勝った女傑で、その血からは阪神ジュベナイルフィリーズとオークスを制した叔母ソウルスターリング、アルテミスステークスのシェーングランツが出ている。府中の芝2400mを勝つ牝馬の系譜が、母の側に静かに流れていた。 父は皐月賞・東京優駿の二冠馬ドゥラメンテ。四角で外へ膨らみながら世代を薙ぎ倒すような決め脚で世代を制した名馬である。だが、その父はもういない――スターズオンアースが2021年8月1日、新潟の新馬戦にデビューし(鞍上・石橋脩、2着)、その走りを世に見せてからわずか一月後、8月31日にドゥラメンテは急性大腸炎で世を去った。九歳だった。父は、この娘が何者になるかを知らないまま逝った。二冠の血が、二冠の血を継いで、地上に残された。

二着の少女 ― 勝ちきれない日々

デビューは2着。続く未勝利戦(2021年10月、東京・芝1800m)を石橋脩とともに快勝してひとつ勝ち上がると、そこから先が長かった。暮れの赤松賞は1番人気で3着、明けて2022年、フェアリーステークスは1番人気で2着、デイリー杯クイーンカップも1番人気で2着。鋭い差し脚はいつも上位に食い込むのに、あと少しが届かない。人気を背負っては半馬身、クビ差の後ろでゴールする――勝ち味に遅い、惜敗の少女だった。 それでも末脚は本物だった。上がり最速で伸びてくる脚は、距離が延び、直線が長くなるほど生きる。桜の季節、この差し脚がひとつだけ、決定的な仕事をする番が来る。

桜、ハナ差 ― 二〇二二年四月十日

桜花賞。7番人気だった。鞍上は川田将雅。前走まで手綱を取っていた石橋脩でも横山武史でもなく、この一戦から乗り替わった男である。 中団の馬群で脚をため、直線、前が壁になった。川田はインを捨てず、眼前の二頭の間へ馬体をこじ入れる。狭い隙間を割って、スターズオンアースが伸びた。逃げ粘るウォーターナビレラを、最後の一完歩で捉える。ハナ差。半馬身差の3着にナムラクレア。写真判定の末に掲示されたのは、キャリアで初めての「1着」だった。惜敗続きに、ようやく終止符が打たれた。 「彼女の気持ちの強さが最後で前に出ることにつながったと思います」[^1]。狭い進路で他馬と接触しながら、それでも前へ出ようとしたのは馬の芯の強さだ――川田は勝利を、この牝馬の気性に返した。

出典:JRA公式「【桜花賞2022勝利騎手インタビュー】川田将雅騎手(スターズオンアース)」2022年4月10日配信、https://www.youtube.com/watch?v=oHfWjMVCk1Q 、閲覧日:2026年7月19日。

府中の大外 ― 二冠

オークス。桜花賞を勝った川田は、この日は別の馬アートハウスに騎乗するため鞍を降り、手綱はクリストフ・ルメールへと渡っていた。 好スタートから中団の外に構えると、4コーナーで大外へ持ち出す。府中の長い直線、外を回して一気。しぶとく伸びて残り100mで先頭に立ち、スタニングローズを1馬身4分の1退けた。桜花賞・優駿牝馬――牝馬二冠。 血が呼応していた。母系の叔母ソウルスターリングも、五年前に同じ府中の2400mを勝っている。祖母スタセリタから流れる牝系が、二頭目のオークス馬を送り出した。そして父ドゥラメンテもまた二冠馬だった。逝った父と、地上に残った娘が、同じ「二冠」という言葉で結ばれた瞬間だった。

三冠の壁 ― 惜敗の女王

秋。三冠のかかった秋華賞は、1番人気で3着に敗れた。オークスで下したはずのスタニングローズが先着し、2着ナミュールとはハナ差。あと二つ着順がほしかった。牝馬三冠は、指の間からこぼれ落ちた。 翌2023年、古馬になっても走りは一線級のままだった。大阪杯は1番人気で2着、ジャックドールにハナ差。ヴィクトリアマイルは1番人気で3着、マイル女王ソングラインの前に屈す。ジャパンカップは、世代を超えた怪物イクイノックスの3着(鞍上・ビュイック)。どのGIでも上位を外さない。外さないのに、二冠のあと、彼女は一度も勝てなかった。惜敗の少女は、惜敗の女王になっていた。 勝ちきれないことは、弱さではない。最強の馬たちがそろう舞台で、常にその背中へ届く位置にい続けること――それ自体が、並の強さではなかった。

あと半馬身 ― 二〇二三年有馬記念

2023年暮れの中山。7番人気の低い評価をものともせず、ルメールを背にスターズオンアースは自分の競馬をした。直線、前をゆくドウデュースを追い詰める。届かない。半馬身。またも2着だった。 だがこの半馬身は、負けの中でいちばん美しい負けだった。牡馬混合の年末のグランプリで、単勝7番人気の牝馬が、勝ち馬の首筋まで詰め寄ったのだ。マイペースで運べた――ルメールはそう振り返った。あと半馬身が、この牝馬にはいつも遠かった。勝てないのに、誰よりも上位の常連であり続ける。その矛盾こそが、この馬の輪郭だった。

地上へ還る星 ― ラストラン

2024年。春はドバイへ渡り、シーマクラシックを8着(主戦ルメールの落馬により、鞍上はデットーリ)。秋、ジャパンカップは7着。その手綱には、二年半ぶりに川田が戻っていた。桜の日にこの馬を初めて勝たせた男が、最後の日々に帰ってきたのだ。 そして12月22日、中山の有馬記念。14着。それが最後のレースになった。25日、引退と繁殖入りが発表される。通算15戦3勝。勝ったGIは桜花賞とオークスの二つだけ、二冠のあとは一つも勝てなかった。けれど成績表に並ぶ「2」と「3」の連なりは、彼女がどれほど長く頂の淵に立ち続けたかの記録でもある。 最初の戴冠を届けた鞍上に送られて、地球上の星は競馬場を去った。走り終えた星は、空へは帰らなかった。この地に留まり、祖母スタセリタから母サザンスターズへ、そして自らへと流れてきた牝系の血を、今度は自分が次へ渡す番になる。新しい光を灯すその日を、北の大地で待てばいい。

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