名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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スターアニスのイメージビジュアル
スターアニスStar Anise
Star Anise

スターアニス

通算成績6戦3勝

獲得賞金25,302万円

生年月日 2023.02.04(令和5年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
スターアニスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 GI優駿牝馬 東京 芝2400 1人気 松山弘平 2:26.4 上り34.3映像
1 GI桜花賞 阪神 芝1600 1人気 松山弘平 1:31.5 上り33.7映像
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 2人気 松山弘平 1:32.6 上り34.5映像
2 GIII中京2歳S 中京 芝1400 1人気 松山弘平 1:19.4 上り34.3映像
1 2歳未勝利 小倉 芝1200 4人気 松山弘平 1:08.0 上り34.7
5 2歳新馬 小倉 芝1200 3人気 松山弘平 1:10.2 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
スターアニスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ドレフォンDrefongGio PontiTale of the Cat
Chipeta Springs
EltimaasGhostzapper
Najecam
エピセアロームダイワメジャーDaiwa MajorサンデーサイレンスSunday Silence
スカーレットブーケ
ラタフィアCozzene
Sakura Fabulous
STORY

旅程 — この馬の物語

2023年生まれの栗毛の牝馬。父ドレフォン、母エピセアローム。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・桜花賞。

香りの名 ― 八角と桜の血

スターアニス。中国原産の香辛料、八角のことだ。星の形をしたその実は、料理にひと欠片落とすだけで場の匂いを変える。母はエピセアローム――フランス語で「スパイシーな香り」。全兄はバルサムノート、半姉はシトラスノート。香りの名で結ばれた一族に生まれた牝馬に、最も個性の強い八角の名がついた。 2023年2月4日、ノーザンファームに生まれた栗毛。父はアメリカのスプリント王ドレフォン、母の父はダイワメジャー。父も母も、速さで身を立てた血だ。母エピセアローム自身、セントウルステークスと小倉2歳ステークスを勝った快速馬だった。そして三代母サクラファビュラスの半弟には、天皇賞・有馬記念を制した名馬サクラローレルがいる。桜の名門牝系の末に、いずれ桜の季節を駆けることになる一頭。手綱を握るのは、デビューからこれまでただ一人――松山弘平である。

小倉の夏 ― 黒星から始まる

2025年6月29日、小倉。デビュー戦は3番人気で5着。速い血のはずが、初陣はあっさりと取りこぼした。だが二週間後の未勝利戦、同じ小倉の芝1200mで、彼女は後続を七馬身ちぎって圧勝する。一度の黒星が、まるで助走だったかのように。 続く中京2歳ステークスでは牡馬を相手に2着。勝ち切れはしなかったが、短い距離で見せる加速は本物だった。新馬・未勝利・オープン――松山弘平はこの夏、まだタイトルを持たない栗毛の二歳馬の背で、確かな手応えを掴んでいた。秋を越え、暮れの大舞台で、その手応えはタイトルになる。

二歳女王 ― 母の雪辱

2025年12月14日、阪神ジュベナイルフィリーズ。2歳牝馬の頂を決めるGIに、スターアニスは2番人気で臨んだ。混戦と評された一戦を、彼女は直線で抜け出して制す。これがGI初制覇――重賞すら勝っていなかった馬の、初めてのタイトルがいきなり最高峰だった。 十四年前、同じ阪神ジュベナイルフィリーズの舞台に、母エピセアロームが立っていた。結果は8着。母が届かなかった頂に、娘が立った。母娘二代の夢が、ひとつ繋がった瞬間だった。松山弘平は短く言った。「本当に強かった」[^1]。年が明け、スターアニスは最優秀2歳牝馬に選ばれる。香りの一族から、初めての女王が生まれた。

出典:スポーツニッポン「阪神JF スターアニスがV」2025年12月14日配信、閲覧日:2026年6月25日。

桜の女王 ― 松山弘平の春

2026年4月12日、桜花賞。2歳女王は1番人気に推された。松山弘平は中団で折り合い、直線で外へ持ち出すと、ためた脚で堂々と抜け出す。2着に2馬身半――危なげない完勝で、阪神ジュベナイルフィリーズからのGI2連勝を決めた。「絶対に勝つんだという気持ちでした」[^1]。馬上の名手は、二歳女王として負けられない一戦を、力でねじ伏せてみせた。 松山にとって桜花賞は2勝目。一度目は2020年、のちに無敗の三冠牝馬となるデアリングタクトだった。それから六年、彼はまた桜の女王の背にいた。しかも翌週、皐月賞をロブチェンで制す。桜花賞から皐月賞への二週連続クラシック制覇は、日本人騎手では武豊以来三十三年ぶりの快挙だった[^2]。スターアニスは、一人の名手の絶頂の春のまんなかにいた。

出典:サンケイスポーツ「スターアニス2馬身半差の圧勝」2026年4月12日配信、閲覧日:2026年6月25日。/東京スポーツ「松山弘平が桜花賞→皐月賞の2週連続クラシック制覇」2026年4月配信、閲覧日:2026年6月25日。

府中の壁 ― 二四〇〇mという影

2026年5月24日、優駿牝馬。桜の女王は当然のように1番人気を背負い、東京の2400mに向かった。好スタート。だが、いつもと違った。スタンド前からの発走に気が入りすぎたのか、道中でハミを抜き、前向きさが先に立つ。松山が懸命に抑えても折り合いはつかず、ポジションはじりじり下がっていく。直線、一度は反応したものの脚は続かず、12着。桜花賞馬のまさかの大敗だった。 「距離は持つと思っていた」[^1]と松山は唇を噛んだ。「前向きさが勝ってしまって、最後まで持たせられなかった。申し訳ない」[^1]。高野友和調教師も「今までに経験したことのないペース。ずっとハミが抜けなくて、どうしようもなかった」[^1]と振り返る。父ドレフォン、母エピセアローム――速さで鳴らした一族の血は、マイルまでは女王を運んだが、府中の2400mはあまりに遠かった。栄光の裏に、血の射程という影が、はっきりと差した。

出典:東京スポーツ「スターアニスまさかの12着」2026年5月24日配信、閲覧日:2026年6月25日。

香りは消えない

通算6戦3勝。勝った三つのうち二つがGI――阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞。2歳女王にして、桜の女王。母が8着に泣いた舞台で雪辱を果たし、サクラの名門牝系に久々の大輪を咲かせた。府中で味わった一敗は、能力の否定ではない。速さの血が描ける距離の、正直な輪郭だっただけだ。 八角は、料理が冷めても香りを残す。スターアニスもまだ、ターフを去ってはいない。マイルから中距離、彼女の間合いに戻れば、あの加速はまた誰かを置き去りにするだろう。その背にはきっと、デビュー戦の5着からすべてを共にしてきた松山弘平がいる。香りの一族が生んだ初めての女王の物語は、まだ途中だ。

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