名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ソングラインのイメージビジュアル
ソングラインSongline
Songline

ソングライン

通算成績17戦7勝

獲得賞金(海外含む・概算)約79,316万円

生年月日 2018.03.04(平成30年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ソングラインの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 GIBCマイル サンタアニタパー 芝1600 1人気 戸崎圭太 映像
2 GII毎日王冠 東京 芝1800 1人気 戸崎圭太 1:45.3 上り33.5映像
1 GI安田記念 東京 芝1600 4人気 戸崎圭太 1:31.4 上り33.1映像
1 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 4人気 戸崎圭太 1:32.2 上り33.2映像
10 GIII1351ターフスプリント キングアブドゥル 芝1351 1人気 C.ルメール 1:18.6 映像
5 GII産経賞セントウルS 中京 芝1200 2人気 C.ルメール 1:06.9 上り33.1映像
1 GI安田記念 東京 芝1600 4人気 池添謙一 1:32.3 上り32.9映像
5 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 2人気 池添謙一 1:32.5 上り33.2映像
1 GIII1351ターフスプリント キングアブドゥル 芝1351 2人気 C.ルメール 1:18.0 映像
15 GII阪神カップ 阪神 芝1400 1人気 池添謙一 1:21.5 上り35.4映像
1 GII富士S 東京 芝1600 1人気 池添謙一 1:33.2 上り33.9映像
3 GIII関屋記念 新潟 芝1600 1人気 池添謙一 1:32.9 上り34.0映像
2 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 7人気 池添謙一 1:31.6 上り34.3映像
15 GI桜花賞 阪神 芝1600 7人気 池添謙一 1:33.1 上り35.0映像
1 L紅梅S 中京 芝1400 1人気 C.ルメール 1:20.6 上り35.3
1 2歳未勝利 東京 芝1600 2人気 丸山元気 1:34.1 上り34.1
2 2歳新馬 東京 芝1400 1人気 D.レーン 1:23.7 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ソングラインの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キズナKizunaディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
キャットクイルCatequilStorm Cat
Pacific Princess
ルミナスパレードシンボリクリスエスSymboli Kris SKris S.
Tee Kay
ルミナスポイントアグネスタキオンAgnes Tachyon
ソニンクSoninke
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの青鹿毛の牝馬。父キズナ、母ルミナスパレード。主な勝ち鞍は安田記念・ヴィクトリアマイル・富士S。

歌の道 ― 名前と血

馬名は、オーストラリアの先住民に伝わる「歌の道(ソングライン)」に由来する。大地の起伏や水場の在り処を旋律にのせて口伝し、その歌をたどって砂漠を旅する――土地と記憶を結ぶ、目に見えない道のことだ。旅する馬にふさわしい名を、この牝馬ははじめから背負っていた。 2018年3月4日、ノーザンファーム生まれの青鹿毛。父キズナは2013年の日本ダービーを制し、その秋にはフランスへ渡って凱旋門賞の前哨戦ニエル賞を勝ち、本番の凱旋門賞でも4着に食い込んだ、海を知る一頭だった。その父はディープインパクト。母ルミナスパレードは、父にシンボリクリスエスを持つ。走ることと旅することが、血のなかで最初から結ばれていた。 馬主はサンデーレーシング、預けられたのは美浦の林徹厩舎。2020年6月、東京の芝1400mでデビューしてクールキャットの2着。半年後の11月、東京のマイル戦で初勝利を挙げた。歌の道は、府中から始まった。

桜を過ぎて ― マイルという居場所

明けて2021年、中京の紅梅ステークスをクリストフ・ルメールを背に勝ち、オープンの舞台へ進む。1番人気で桜花賞に臨んだが、阪神の芝1600mで15着と大敗した。クラシックの熱に、この馬の走りは噛み合わなかった。 立て直しは早かった。続くNHKマイルカップ、池添謙一を鞍上に迎え、直線で先頭に立つ。だが後方からただ一頭、シュネルマイスターが伸びてきて、ゴール前でハナ差だけ前に出られた。2着。一冠には届かなかったが、東京のマイルで確かな手応えを掴んだ一戦だった。先着を許したその相手の名は、この先の物語で二度、書き換えられることになる。

富士の秋 ― マイラーの輪郭

秋、新潟の関屋記念は1番人気で3着。そして富士ステークス、東京の芝1600m。池添を背に1番人気に応え、直線で先頭に立つとサトノウィザードの追撃を振り切って重賞を制した。府中のマイルは、もうこの馬の庭になりつつあった。 だが暮れの阪神カップ、芝1400mでは1番人気を裏切る15着。距離が二百縮むだけで、走りは別馬のように沈んだ。マイルを軸に、どこまで縮められ、どこから届かなくなるのか――その輪郭を、勝ち負けの振れ幅そのものが描いていた。

砂漠を越えて ― 初めてのGI

2022年、旅が海を越える。舞台はサウジアラビア、キングアブドゥルアジーズ競馬場の1351ターフスプリント。ルメールを背に、この馬はカサクリードをクビ差抑えて、砂漠の異国で白星を挙げた。 帰国後のヴィクトリアマイルは池添で5着。だが本番は三週後に控えていた。安田記念、東京の芝1600m、4番人気。スローの流れを外目で追走し、直線で長く鋭い脚を伸ばす。前のサリオスを競り落とし、内から迫るシュネルマイスターをクビ差だけ抑え込んだ。一年前のNHKマイルで先着を許した相手を、今度は差し切って、初めてのGIを手にした。 林徹厩舎と大きなレースを勝つこと――鞍上がずっと思い描いていたその願いを、池添の手綱が府中で叶えた。「ソングライン、林厩舎とG1を一緒に取りたいと思っていました」[^1]。

出典:中日スポーツ「【安田記念】池添謙一「ソングライン、林厩舎とG1を…中2週、きついローテーションでよくやってくれた」」2022年6月5日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/483925、閲覧日:2026年7月21日。

二〇二三年 ― 連覇の景色

充実の裏で、届かない扉もあった。2022年秋、スプリントへ矛先を向けたセントウルステークスは5着。明けて連覇を狙って戻ったサウジの1351ターフスプリントは、1番人気で10着に沈む。砂漠の砂は、二度は味方しなかった。 主戦が戸崎圭太に替わる。ヴィクトリアマイル、4番人気。荒れた馬場の内を突いて伸び、逃げ込むソダシをゴール寸前でアタマ差だけ捉えた。人馬の呼吸は、初手から合っていた。 三週後の安田記念。先行するジャックドールらを外から差し切り、セリフォスシュネルマイスターを抑えて、二年連続の府中のマイル王に立つ。1952・53年のスウヰイスー以来、安田記念を連覇した史上4頭目――グレード制導入後ではウオッカ以来の快挙だった。同じ年のヴィクトリアマイルと安田記念をともに制したのは、2009年のウオッカ以来のことである。その年、ソングラインはJRA賞の最優秀4歳以上牝馬と最優秀マイラーに選ばれた。

海の向こうへ ― 最後の旅

頂に立った馬に、旅の終わりが近づいていた。秋、毎日王冠は1番人気で臨んだが、エルトンバローズの2着。勝ち切れないまま、それでも陣営は最後の遠征を選ぶ。 2023年11月、アメリカ。サンタアニタパークのブリーダーズカップ・マイル。芝1600mを1番人気で走り、5着。歌の道は太平洋を越え、異国のターフで最後の一節を刻んだ。レース後に引退が発表され、12月1日、登録は抹消された。17戦7勝。父から受け継いだ旅する血のままに、この馬は世界のマイルを巡り歩いて、蹄を休めた。

北の大地へ ― 歌い継ぐ

ソングラインは、生まれ故郷のノーザンファームで繁殖牝馬となった。桜花賞の大敗から、砂漠の白星、そして安田記念の連覇まで――勝ち鞍も、取りこぼしも、すべてがマイルという一本の道の上にあった。 歌の道とは、土地の記憶を旋律に変えて次の世代へ手渡す、目に見えない継承のことだ。父キズナが海を渡って示した血は、この牝馬の脚で二年続けて府中の直線を駆け抜け、いま母となって北の大地に還った。旅の歌は、生まれてくる仔たちが、またどこかで歌い出す。

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