名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ソールオリエンスのイメージビジュアル
ソールオリエンスSol Oriens
Sol Oriens

ソールオリエンス

通算成績16戦3勝

獲得賞金58,166万円

生年月日 2020.04.04(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ソールオリエンスの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
14 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 12人気 丹内祐次 1:59.3 上り32.9映像
6 GI宝塚記念 阪神 芝2200 8人気 松山弘平 2:12.1 上り35.2映像
10 GI大阪杯 阪神 芝2000 11人気 松山弘平 1:56.9 上り33.5映像
5 GII京都記念 京都 芝2200 2人気 川田将雅 2:16.1 上り34.1映像
14 GIジャパンカップ 東京 芝2400 9人気 横山武史 2:27.7 上り35.2映像
7 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 7人気 横山武史 1:57.7 上り33.3映像
2 GI宝塚記念 京都 芝2200 7人気 横山武史 2:12.3 上り34.0映像
7 GI大阪杯 阪神 芝2000 5人気 横山武史 1:58.7 上り35.1映像
4 GII中山記念 中山 芝1800 1人気 田辺裕信 1:48.6 上り36.4映像
8 GI有馬記念 中山 芝2500 4人気 川田将雅 2:31.6 上り34.8映像
3 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 横山武史 3:04.0 上り35.1映像
2 GII朝日セントライト記念 中山 芝2200 1人気 横山武史 2:11.7 上り34.0映像
2 GI東京優駿 東京 芝2400 1人気 横山武史 2:25.2 上り33.3映像
1 GI皐月賞 中山 芝2000 2人気 横山武史 2:00.6 上り35.5映像
1 GIII京成杯 中山 芝2000 2人気 横山武史 2:02.2 上り34.5映像
1 2歳新馬 東京 芝1800 1人気 戸崎圭太 1:50.8 上り33.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ソールオリエンスの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キタサンブラックKitasan BlackブラックタイドサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
シュガーハートサクラバクシンオーSakura Bakushin O
オトメゴコロ
スキアMotivatorMontjeu
Out West
Light QuestQuest for Fame
Gleam of Light

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牡馬。父キタサンブラック、母スキア。主な勝ち鞍は皐月賞・京成杯。

「朝日」の名 ― 名前と血

父の名は、黒だった。キタサンブラック。その仔に、朝日の名がついた。ソールオリエンス――ラテン語で「朝日」、日の昇るさまを意味する。黒の血から生まれた、夜明けの馬である。 2020年4月4日、社台ファーム生まれの鹿毛。母スキアはフランスで重賞を勝った仏3勝馬で、その父モティヴェーターは英ダービー馬。一族は華やかだった。半兄にはディープインパクト産駒で富士ステークスを制したヴァンドギャルド、半妹には後にアルテミスステークスを勝つフィロステファニがいる。ヨーロッパの重厚な牝系に、日本の頂点を極めた父の血が差した配合だった。 馬主は社台レースホース、預けられたのは美浦の手塚貴久。そして――父キタサンブラックは現役時代、皐月賞にだけは手が届かなかった。2015年、3着。中山の2000mは、あの雑草の英雄が唯一登れなかった山だった。その山を、朝日の名を持つ息子が引き継ぐことになる。

戸崎の発進、二代の横山 ― 起点

2022年11月13日、東京の芝1800m。戸崎圭太を背に単勝1番人気に応えたが、勝ち方は辛かった。レーベンスティールとの追い比べを、クビ差でしのいでの初勝利。手塚貴久が正直焦ったと振り返るほどの薄氷だった。だが、その辛勝は素質の乏しさではなく、余力を残した幼さの裏返しでもあった。 明けて2023年1月、京成杯。ここから手綱を取ったのが横山武史である。中山の2000mを差し切って重賞初制覇――この一戦で、一頭と一人の旅が始まった。 縁は、血の側にもあった。父キタサンブラックの現役最終盤、2015年の有馬記念で手綱を握っていたのは横山典弘。その息子の武史が、いま父の仔に跨っている。二代の横山が、二代の黒の血に寄り添う。この旅がどこまで昇るのか、まだ答えは出ていない。

泥の中山、大外一気 ― 皐月賞

2023年4月16日、皐月賞。中山は雨に濡れ、馬場は重。時計のかかる泥の中で、ソールオリエンスは2番人気に推されながら、道中は最後方に近い十七番手にいた。行き脚がつかず、思うように位置が取れない。それでも横山は焦らず、馬のリズムに委ねて勝負どころを待った。 四コーナーから大外へ持ち出すと、そこで景色が変わる。前をゆく馬たちを、外から一頭ずつ呑み込んでいく。先に抜け出したタスティエーラを直線半ばで捉え、突き放して1馬身1/4差。最後方付近からの差し切りは、1993年のナリタタイシンを上回る、皐月賞史上最大の逆転劇だった。勝ち時計2分00秒6。 父が唯一勝てなかった中山の2000mを、息子が獲った。キタサンブラック産駒、初のクラシック制覇。黒の血に、朝日が昇った瞬間だった。

二百メートルの壁 ― ダービー

皐月賞馬は、無敗のまま府中へ向かった。二冠と、無敗の栄冠がかかる。単勝1.8倍、堂々の1番人気だった。 だが横山武史にとって、東京の2400mは古い傷のある舞台でもあった。二年前、エフフォーリアで臨んだダービーを、ハナ差の2着で失っている。その記憶の上に、もう一度立った。 レースは、残り200mを切ったところでタスティエーラが先に抜け出した。ソールオリエンスは外から鋭く伸びたが、前との差はわずかに詰まりきらない。クビ差の2着。無敗の二冠は、あと一完歩のところで指をすり抜けた。皐月賞で自らが差し切った相手に、今度はダービー馬として差し返される。府中の直線は、若い騎手の傷を、もう一度そっと開いた。

淀で止まった脚 ― 三冠の終わり

秋、最後の一冠へ。前哨戦のセントライト記念を2着にまとめ、菊花賞は1番人気に支持された。京都の3000m、皐月賞馬が本命に立つのは当然の評価だった。 だが淀の長い直線で、いつもの末脚が伸びきらない。残り200mを切ったあたりで脚が上がり、勝ったドゥレッツァから離された3着。距離か、消耗か――理由はどうあれ、三冠のうち手にできたのは、春の泥の一冠だけだった。 暮れの有馬記念は川田将雅に手綱が替わり、8着。新馬から菊花賞までの六戦、一度も掲示板を外したことのなかった成績表が、ここで初めて着外へ弾かれた。頂の翌年から、長い問いが始まろうとしていた。

もう一度の末脚 ― 二〇二四年宝塚記念

2024年、勝ち星は遠かった。1番人気で臨んだ中山記念は4着、大阪杯は7着。皐月賞の鮮烈な末脚は、どこかへ仕舞い込まれたように見えた。 それが、6月の宝塚記念で一度だけ帰ってくる。7番人気まで評価を落として迎えた京都の2200m。道悪のなか、ソールオリエンスは後方に構え、直線で大外から上がり最速級の脚を伸ばした。勝ったブローザホーンには届かなかったが、突っ込んできた2着は、確かにあの中山の泥を差し切った脚と同じものだった。 だが、その灯は続かなかった。秋の天皇賞は7着、ジャパンカップは14着の大敗。取り戻したはずの手応えは、また指の間を抜けていった。

朝日は、また昇る ― 別れと血

2025年、ソールオリエンスはとうとう勝ち鞍に届かなかった。京都記念5着、大阪杯10着、宝塚記念6着。そして11月2日の天皇賞・秋、丹内祐次を背にした14着が、最後の一戦になった。 皐月賞から二年半、十三戦。一度も勝てないまま、それでも大阪杯、宝塚記念、天皇賞と、GIの一線級が集う舞台に立ち続けた。皐月賞馬とは、そういう場所で走ることを求められる肩書きである。逃げず、そのすべてに応えた。 同じ2025年の秋、半妹フィロステファニがアルテミスステークスを二戦二勝で制し、一族の才を閃かせた直後に屈腱炎で引退した。眩しく、そして短い光だった。血は、いつも祈りと不安を同じだけ孕んでいる。 12月、ソールオリエンスの現役引退が発表され、登録が抹消された。次はブリーダーズ・スタリオン・ステーションで、種牡馬としての生が始まる。父が唯一届かなかった皐月賞を獲った息子は、今度は自らが父になる。 16戦3勝。派手な晩年ではなかった。だが、雨の中山で泥をかき分け、最後方から一気に空を割ったあの数分は、皐月賞の歴史がある限り消えない。朝日の名を持つ馬は、一度、確かに競馬場の空へ昇った。そしてその血は、また別の朝を待っている。

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