名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ソダシのイメージビジュアル
ソダシSodashi
Sodashi

ソダシ

通算成績16戦7勝

獲得賞金62,923万円

生年月日 2018.03.08(平成30年)毛色 白毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ソダシの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
7 GI安田記念 東京 芝1600 2人気 川田将雅 1:32.0 上り34.2映像
2 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 3人気 D.レーン 1:32.2 上り33.6映像
3 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 2人気 吉田隼人 1:32.8 上り33.8映像
2 GII府中牝馬ステークス 東京 芝1800 1人気 吉田隼人 1:44.5 上り33.8映像
5 GII札幌記念 札幌 芝2000 1人気 吉田隼人 2:01.8 上り37.5映像
1 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 4人気 吉田隼人 1:32.2 上り33.4映像
3 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 吉田隼人 1:34.3 上り34.9映像
12 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 2人気 吉田隼人 1:52.0 上り38.3映像
10 GI秋華賞 阪神 芝2000 1人気 吉田隼人 2:02.1 上り37.3映像
1 GII札幌記念 札幌 芝2000 2人気 吉田隼人 1:59.5 上り35.4映像
8 GI優駿牝馬 東京 芝2400 1人気 吉田隼人 2:25.1 上り35.1映像
1 GI桜花賞 阪神 芝1600 2人気 吉田隼人 1:31.1 上り33.8映像
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 1人気 吉田隼人 1:33.1 上り34.2映像
1 GIIIアルテミスS 東京 芝1600 1人気 吉田隼人 1:34.9 上り33.9映像
1 GIII札幌2歳S 札幌 芝1800 2人気 吉田隼人 1:48.2 上り36.7映像
1 2歳新馬 函館 芝1800 3人気 吉田隼人 1:50.4 上り35.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ソダシの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
クロフネKurofuneフレンチデピュティFrench DeputyDeputy Minister
Mitterand
ブルーアヴェニューBlue AvenueClassic Go Go
Eliza Blue
ブチコキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
シラユキヒメサンデーサイレンスSunday Silence
ウェイブウインドWave Wind
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの白毛の牝馬。父クロフネ、母ブチコ。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・桜花賞・ヴィクトリアマイル。

白い一族 ― 名と血

サンスクリットで「純粋、輝き」を意味するのだと、その名は登録されている。ソダシ。純白の馬体に、言葉のほうが後から寄り添ったような名だった。 白毛は、サラブレッドでもとりわけ稀な毛色である。その源をたどると、一頭の牝馬に行き着く。1996年生まれのシラユキヒメ――父にサンデーサイレンスを持ちながら未勝利に終わった白い牝馬が、日高の血にひとすじの白を灯した。その娘には、ダートのJpnIIを三勝したユキチャンがおり、そしてもう一頭、キングカメハメハを父に持つ白毛のブチコがいた。中央で四勝を挙げたこのブチコに、芝からダートへ転じてジャパンカップダートをレコードで制した芦毛のクロフネが配された。生まれたのが、雪のように白いこの牝馬である。 馬主は金子真人ホールディングス、生産はノーザンファーム、預けられたのは栗東の須貝尚介。そして手綱を託されたのが吉田隼人だった。白い一族が、まだGIの舞台を知らなかった頃の話である。

函館の新馬から、二歳の女王へ

2020年7月12日、函館の芝1800m。三番人気の新馬戦を危なげなく勝ち上がると、白い馬体はそのまま北の夏を駆け抜けた。九月の札幌2歳ステークス、十月の東京・アルテミスステークス。連勝で駆け上がるその過程で、白毛の馬が芝の重賞を勝つという、前例のない光景が生まれていた。 暮れの阪神ジュベナイルフィリーズ。二歳牝馬の頂点を決めるGIで、ソダシは一番人気に応える。だが決着は際どかった。残り二百mで先頭へ抜け出したところへ、後方からサトノレイナスが矢のように伸びてくる。ゴール寸前で一度は交わされかけ、そこからもう一度差し返して、白い鼻面がわずか七センチだけ前に出た。ハナ差。白毛馬による、史上初のGI制覇だった。この年の最優秀二歳牝馬に、記者投票の満票で選ばれる。無敗のまま、年を越えた。

白い桜 ― 無傷のクラシック

2021年4月11日、桜花賞。デビューから四か月ぶりの実戦、それでも一番人気は譲らなかった。相手は、あの阪神ジュベナイルフィリーズで七センチまで迫ったサトノレイナス。今度こそ、と後方から追ってくる。 直線半ば、ソダシは自ら先頭に立った。内で脚を伸ばし、外から迫るレイナスをクビだけ抑え込んでゴールへ。時計は一分三十一秒一、桜花賞のコースレコード。無傷の五連勝で、白毛馬が史上初めてクラシックの栄冠を手にした。 阪神の桜が、白く咲いた。二歳の暮れに七センチ差で退けた宿敵を、春にはクビ差でもう一度抑える。同じ相手に二度、際どく、しかし確かに先着してみせた。白い馬体は、もはや競馬場のアイドルだった。

距離の壁と、歯の血 ― 三歳の翳り

だが、無敗は永遠ではない。五月のオークス、東京の2400m。一番人気に推されながら、ソダシは八着に沈んだ。道中で力み、慣れない長い距離にスタミナを削られた末の初黒星。須貝は前半の折り合いを、鞍上の吉田は距離そのものを、それぞれ敗因に挙げた。 マイルの本質へ戻すように、夏は札幌へ。八月の札幌記念で、三歳牝馬の身ながら古馬の一線級を相手に、二番手から抜け出して押し切った。世代を越えて通用することを、白い馬体は自ら証明する。 しかし秋、翳りはもう一度差す。十月の秋華賞、単勝一番人気。だがゲートで口をぶつけたのか、レース後に前歯がぐらつき、口から血がにじんでいた。十着。のちに抜歯を要したその一戦は、順風の中に紛れ込んだ、小さな、しかし確かな綻びだった。

黒い砂へ ― 父の血をたどる遠征

クロフネは、芝からダートへ転じて圧倒的な強さを見せ、ジャパンカップダートをレコードで制した名馬だった。その血が呼んだのか、陣営は白い牝馬を砂の舞台へ送り出す。 十二月のチャンピオンズカップ、中京ダート1800m。ソダシはスタートから先頭に立ち、逃げてレースを作った。だが最後の直線で捉えられ、十二着。砂は甘くなかった。 それでも翌春、二月のフェブラリーステークスでは三着に粘る。芝のGI女王が、ダートのマイルGIで掲示板に食い込んだのだ。勝ちきれはしなかったが、父から受け継いだ砂への適性は、確かにこの馬にも流れていた。

返り咲き ― 二度目の府中

デビューから、手綱はずっと吉田隼人が握っていた。函館の新馬戦から、勝った日も負けた日も、二頭は同じゲートをくぐり続けてきた。 2022年5月15日、ヴィクトリアマイル。三戦勝ち星から遠ざかり、単勝は四番人気まで下がっていた。だが府中の直線で、ソダシは甦る。四番手から内へ切れ込み、鋭く伸びて残り百mで先頭へ。二馬身の差をつけて、九か月ぶりの白星を白い馬体で飾った。GI三勝目である。 ゴールの瞬間、吉田は右手を突き上げた。長く負けを分かち合ってきた相棒が、もう一度いちばん高いところへ戻ってきた――その拳が、どんな言葉よりも雄弁だった。

白の継承 ― ラストランと、その先

甦った女王にも、時計の針は進む。夏の札幌記念は五着、秋の府中牝馬ステークスはゴール寸前で交わされて二着、暮れのマイルチャンピオンシップは大外から伸びたセリフォスに屈して三着。得意の芝マイルで、五戦目にして初めて後塵を拝した。 吉田隼人とともにしたのは、ここまでの十四戦だった。翌2023年、ヴィクトリアマイルの連覇を狙った一戦はレーンが手綱を取り、ソングラインに差されて二着。ラストランとなった六月の安田記念は川田将雅を背に七着に終わる。通算十六戦七勝。純白のアイドルは、脚部不安を理由に、二〇二三年十月一日をもってターフを去った。 その引退が発表された日、ひとつの符合が起きていた。同じ秋、全妹のママコチャ――同じ父クロフネ、同じ母ブチコから生まれた鹿毛の妹が、スプリンターズステークスを鼻差で制し、白い姉に続いてGIの女王になっていたのだ。姉から妹へ、ちょうどよくバトンが渡る。金子オーナーがそう語ったのだと、須貝は明かした。 シラユキヒメに始まった白い血は、ソダシで初めてGIとクラシックの頂に届き、妹の代でもう一つの頂を加えた。ノーザンファームの空港牧場で繁殖牝馬となったソダシは、2025年の冬、一頭の牝馬を産んだ。相手は、あのイクイノックス。白い一族の旅は、次の世代へと受け継がれていく。

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