名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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シルバーステートのイメージビジュアル
シルバーステートSilver State
Silver State

シルバーステート

通算成績5戦4勝

獲得賞金5,158万円

生年月日 2013.05.02(平成25年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
シルバーステートの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 垂水S 阪神 芝1800 1人気 福永祐一 1:44.5 上り33.5
1 オーストラリアT 京都 芝1800 1人気 福永祐一 1:48.4 上り33.3
1 紫菊賞 京都 芝2000 1人気 福永祐一 2:01.2 上り32.7
1 2歳未勝利 中京 芝1600 1人気 福永祐一 1:34.7 上り35.2
2 2歳新馬 中京 芝1600 1人気 福永祐一 1:39.9 上り34.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
シルバーステートの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
シルヴァースカヤSilverskayaSilver HawkRoberto
Gris Vitesse
BoubskaiaNiniski
Frenetique

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2013年生まれの青鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母シルヴァースカヤ。

銀の州 ― 名と血

2013年5月2日、北海道安平町のノーザンファーム。父ディープインパクト、母シルヴァースカヤの間に、青鹿毛の牡馬が生まれた。 名は母から来ている。シルヴァースカヤ——フランスでG3を二つ勝ち、2004年の凱旋門賞にも駒を進めた牝馬である。その銀の響きを継いで、仔にはシルバーステートと名がついた。意味は「銀の州」。銀鉱で栄えたアメリカ・ネバダ州の愛称を、母名からの連想でそのまま与えられた名だった。 血の周りは賑やかだった。母が日本へ来る前にドイツで産んだ半兄セヴィルは、ガリレオ産駒として豪州に渡り、2013年のG1ザメトロポリタンを勝っている。近親には2006年の京都記念を制したシックスセンス、のちに2021年のスプリングステークスを勝つヴィクティファルス。一口馬主法人のG1レーシングは、この馬を「シルヴァースカヤの13」として総額1億円で募集した。 栗東・藤原英昭厩舎に入った馬は、デビュー前の調教で早くも人の目を奪う。手綱を取った福永祐一が、一戦も走らないうちから言い切った。「ダービーを狙える馬が出てきた」[^1] 2015年の夏。まだ何ひとつ証明していない馬に、そういう言葉が先についた。

出典:日刊スポーツ「福永「ダービー狙える」シルバーステート/新馬戦」2015年7月8日配信、http://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=1503596&year=2015&month=7&day=8 、閲覧日:2026年7月26日。

アタマ差 ― 二〇一五年七月十一日

7月11日、中京の芝1600m。1番人気に推されたデビュー戦で、シルバーステートは好位から抜け出しにかかった。先頭に立ったところへ、中団から外に持ち出した一頭が併せてくる。競り合いはゴール前でアタマ差。差し切ったのはアドマイヤリード——二年後の春にヴィクトリアマイルを勝つことになる牝馬だった。 これが、生涯でただ一度の敗戦になる。 中1週で臨んだ未勝利戦は、終始持ったままの5馬身差だった。勝ち時計1分34秒7。同じ日、同じ中京の芝1600mで行われた中京2歳ステークスの勝ち時計が1分36秒0だから、上の条件の馬たちより1秒3も速い。 2歳の夏に、この馬はもう時計の桁をひとつ違えていた。

三十二秒七 ― 淀の秋

夏を休み、10月17日の京都・紫菊賞で復帰する。馬体重は14キロ増え、陣営が太め残りを認めるほどの造りだった。それでも単勝は1.1倍。人気のほうが馬の状態を待たなかった。 レースは呆気なかった。好位につけ、直線で軽く仕掛けられただけで先頭に立ち、最後は福永が手綱を抑えている。それで上がり3ハロンは32秒7。2000mを走り終えた馬が出す数字ではなかった。 2連勝。次はクラシックだった。年が明けたら共同通信杯へ——福永の落馬負傷のため、この一戦はクリストフ・ルメールとのコンビで向かうことまで決まっていた。

左前 ― 消えた春

2016年1月21日、発表があった。左前脚屈腱炎。長期休養は避けられなかった。 共同通信杯の三週間あまり前だった。皐月賞も、ダービーも、菊花賞も、この馬のいない場所で行われた。「ダービーを狙える馬」と言われた馬は、府中の二千四百に一度も立たないまま、三歳の一年を一度も走らずに終える。 その一年、出馬表にこの馬の名が載ることはなかった。いつ戻れるのかは、誰にも分からなかった。

一年七か月 ― 帰還の二戦

2017年5月20日、京都のオーストラリアトロフィー。紫菊賞から1年7か月ぶりのレースだった。その六日前、府中では新馬戦でこの馬を差し切ったアドマイヤリードが、ヴィクトリアマイルの勝ち馬になっている。二年で、あの日の二頭の距離はそこまで開いていた。 ゲートが開くと、福永は今度はハナを切った。先頭のまま直線を向き、上がり33秒3で3馬身差。1000万下を勝ち上がるのに、鞭は一度も要らなかった。 一か月後の6月24日、阪神の垂水ステークス。同じように逃げ、直線は流したまま。それでも勝ち時計は1分44秒5——阪神芝1800mのコースレコードに並ぶ数字だった。2着とは0秒2。 4連勝。勝った四戦は、いずれも持ったままだった。この馬はまだ、底を見せていない。

八月三十日 ― 右前

秋は毎日王冠から始動する予定だった。四歳の秋、ようやく重賞の舞台へ向かおうとしていた。 8月30日、追い切りのあとに右前脚の違和感が出た。精密検査の結果は、屈腱炎。今度は右前だった。復帰には一年以上を要するとされ、当初こそ再起を目指す方針が発表されたが、11月22日、引退が決まる。12月1日付で競走馬登録は抹消された。 通算5戦4勝。重賞に一度も出走しないまま、シルバーステートのターフの時間は終わった。 それでも産地の評価は下がらなかった。北海道新冠町の優駿スタリオンステーションへの繋養が決まると、リース形式のシンジケートは即日満口。初年度から191頭の繁殖牝馬が集まった。重賞未勝利の種牡馬に、である。優駿は種牡馬パンフレットで、この馬を「幻の最強馬」と呼んだ。

銀の血 ― 父になった大器

同じ配合から生まれた全弟がいる。2015年生まれのヘンリーバローズ。2017年7月16日、中京の新馬戦で上がり32秒8の脚を繰り出しながらハナ差の2着に敗れ、9月30日の未勝利戦を勝った。クラシック候補と騒がれたが、脚部不安で二戦しか走れず、2019年に登録を抹消して種牡馬になった。兄が五戦、弟が二戦。シルヴァースカヤの仔たちは、走った時間の短さまで似てしまった。 その弟をハナ差で退けた新馬戦の勝ち馬を、ワグネリアンという。翌2018年の日本ダービーを、福永祐一を鞍上に迎えて勝った馬である。19回目の挑戦での初戴冠だった。そして2021年、福永はシャフリヤールで再び府中の二千四百を制する。管理していたのは、藤原英昭。あの日「ダービーを狙える馬が出てきた」と言った男と、その言葉が生まれた厩舎は、六年かけて、別の馬を連れて府中の頂に立った。 血のほうも、待っていた。2021年6月13日の中京。初年度産駒メリトクラシーが新馬戦を勝ち、父にJRA初勝利をもたらす。鞍上は福永祐一だった。同じ年の11月にはウォーターナビレラがファンタジーステークスを制し、初年度産駒はデビューの年に重賞へ届く。翌春、この牝馬は桜花賞で2着に入った。以後、セイウンハーデス、エエヤン、リカンカブールラヴァンダアスクナイスショー——父が立てなかった重賞の表彰台に、仔たちが次々と上がっていった。 コントレイルで無敗の三冠を勝ち、ダービーを通算3勝し、やがて騎手を退いて調教師になった福永は、それでも評価を変えなかった。「排気量の大きさでいうと、今まで乗った馬のなかで間違いなく一番で、その評価はコントレイルと出会った今でも変わりません」[^1] 新冠の展示会には、いまも銀の名を持つ青鹿毛が引かれてくる。走った時間は五戦ぶん、合わせて九分に満たない。その九分足らずが、名手のなかではいまも一番のままでいる。

出典:JRA-VAN「関係者インタビュー Vol.02 福永祐一騎手「すべてはその馬の“最高”にたどり着くために」」2021年4月2日配信、https://jra-van.jp/fun/interview/0202.html 、閲覧日:2026年7月26日。

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