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ショウナンアデラ
通算成績7戦3勝
獲得賞金8,417万円
生年月日 2012.02.10(平成24年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 16 | GIIIダービー卿チャレンジトロフィー | 中山 芝1600 | 9人気 | 蛯名正義 | 1:35.8 | 上り35.4 | 映像 | |
| 6 | OP福島テレビOP | 福島 芝1800 | 3人気 | 蛯名正義 | 1:48.3 | 上り36.1 | — | |
| 16 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 11人気 | 蛯名正義 | 1:34.3 | 上り35.6 | 映像 | |
| 1 | GI阪神ジュベナイルフィリーズ | 阪神 芝1600 | 5人気 | 蛯名正義 | 1:34.4 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | からまつ賞 | 東京 芝1400 | 1人気 | 蛯名正義 | 1:22.2 | 上り34.1 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 東京 芝1600 | 1人気 | 蛯名正義 | 1:36.0 | 上り34.7 | — | |
| 2 | 2歳新馬 | 新潟 芝1600 | 1人気 | 蛯名正義 | 1:37.3 | 上り33.5 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | Alzao | |
| Burghclere | ||
| 母オールウェイズウィリングAlways Willing | Elusive Quality | Gone West |
| Touch of Greatness | ||
| Always Loyal | Zilzal | |
| Balbonella |
旅程 — この馬の物語
2012年生まれの鹿毛の牝馬。父ディープインパクト、母オールウェイズウィリング。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF。
一年を空けて ― 日高で待たれた仔
2010年、北海道日高町の下河辺牧場が、アメリカから一頭の牝馬を買った。オールウェイズウィリング。父イルーシヴクオリティ、現役時代は米国で3戦1勝。日本に着いたとき、腹にはアメリカで受胎したハードスパンの仔がいた。 その初仔を日高で産んだあと、牧場はその年の種付けを見送っている。空胎のまま一年が過ぎ、翌2011年、日本での最初の種付け相手に選ばれたのがディープインパクトだった。2012年2月10日、2番仔となる鹿毛の牝馬が生まれる。待って、選んで、授かった一頭である。生産者は後に、体の線の綺麗な馬で、歩かせたときの姿がとりわけ良かったと語っている。 母の母はオールウェイズロイヤル。1997年のプール・デッセ・デ・プーリッシュ——フランスの1000ギニーを勝った牝馬で、シャンティイのクリスティアーヌ・ヘッドが管理し、フレディ・ヘッドが乗った。デビューから3連勝でその頂に届き、そのあとは三度走って一度も勝てないまま3歳限りで競走をやめている。生涯6戦3勝。曾祖母バルボネラは1986年のロベールパパン賞を勝ち、生涯20戦9勝を挙げた牝馬で、その息子——つまりオールウェイズロイヤルの半兄がアナバーである。1996年にジュライカップとモーリス・ド・ゲスト賞を続けて勝ち、その年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれた。速さの濃い一族だった。 「ショウナン」の冠名で知られる国本哲秀が2番仔を所有し、冠名に人名の「アデラ」を継いだ競走馬名が与えられた。厩舎は美浦の二ノ宮敬宇。手綱を託されたのは蛯名正義で、以後この馬に跨がるのは、最初から最後まで彼ひとりになる。
脚もとと相談しながら ― 三つ勝つまで
2014年8月3日、新潟の芝1600メートル。18頭立ての1番人気に推されてゲートを出た。好位を進んで直線で先頭に立ったが、大外から追い込んできたナヴィオンにゴール手前で並ばれ、クビ差だけ足りない。1分37秒3、上がり3ハロンは33秒5。先に抜け出した側が、それだけの脚を使って負けた一戦だった。 二戦目からは間違えなかった。10月12日、東京の未勝利戦を3番手から抜け出して1馬身1/4差。11月22日、東京のからまつ賞は芝1400メートルで、逃げた馬を3/4馬身だけ差し切った。どちらも1番人気に応えている。 しかし陣営が繰り返し口にしたのは、強さではなく脚元だった。丈夫ではない、脚もとと相談しながらの調整なのだと蛯名は言い、二ノ宮も、この馬にはまだきつい調教を課していないと認めていた。厩舎の調教助手の言い方がいちばん率直だった——連勝はしているが、乗っている人間としてはこんなものじゃないという気持ちがある、この馬にはもう一つ上のギアがある。 負荷をかけないまま三つ勝った。かけた先に何があるのかは、まだ分からなかった。
十六番 ― 十二月十四日、阪神
12月14日、阪神の芝1600メートル、晴の良馬場。第66回阪神ジュベナイルフィリーズの1番人気は新馬を勝ったばかりのロカ、2番人気は札幌2歳ステークス3着・アルテミスステークス2着のレッツゴードンキ、3番人気は2戦2勝のコートシャルマン、4番人気はアルテミスステークスを勝ったココロノアイだった。ショウナンアデラは5番人気で、8枠16番。 スタートで後手を踏んだ。大外の枠から出て、馬群の内、13番手。直線に向いても前後左右をふさがれている。そこで中団を進んでいたレッツゴードンキの背後を取り、その馬が切り拓いた進路をそのまま辿った。残り200メートルで外へ持ち出し、ようやく自分の道ができる。追い出したのは残り100メートル付近だった。 先に抜け出していたレッツゴードンキを、ゴール前で半馬身だけ捉える。1分34秒4、上がり3ハロン34秒0。三連勝でのGI初制覇であり、重賞初制覇でもあった。 美浦の関東馬がこの競走を勝つのは2009年のアパパネ以来で、蛯名にとってもその年以来の阪神ジュベナイルフィリーズだった。国本哲秀は2004年のショウナンパントル以来、二ノ宮は2012年のエリザベス女王杯(レインボーダリア)以来のJRA・GI5勝目。生産した下河辺牧場は、前月のマイルチャンピオンシップ(ダノンシャーク)に続く二か月連続のJRA・GIだった。 年が明けて、この馬はJRA賞最優秀2歳牝馬に選ばれる。285票、満票だった。
凱旋門賞という言葉
翌週、蛯名正義は同じ阪神の芝1600メートルで、朝日杯フューチュリティステークスをダノンプラチナで勝った。一年の2歳JRA・GIを二つとも同じ騎手が持っていったのは、2002年の福永祐一に次いで二人目である。 この鞍上と厩舎の組み合わせが持っていた記憶は、国内だけのものではなかった。1999年、エルコンドルパサーでサンクルー大賞を勝ち、その秋の凱旋門賞で2着。2010年にはナカヤマフェスタでフォワ賞と凱旋門賞をいずれも2着している。当時、日本調教馬が凱旋門賞で届いた最高の着順は2着であり、二ノ宮敬宇と蛯名正義は、その2着を二度経験していた。 そこへ、ディープインパクトの娘が、強い調教を課されないまま2歳の頂に立った。Number Web には、この馬は凱旋門賞を勝つだろうか、と問う島田明宏の一文が載った。父が届かなかった場所の名が、四戦目を終えたばかりの牝馬に、もう向けられていた。 陣営が立てた春の予定は、桜花賞への直行だった。
馬の温泉 ― 走らなかった二年
2015年3月、右前脚の第三中手骨を骨折した。全治6か月以上。桜花賞への直行は、その一報で消える。 春から夏にかけて、この馬は福島県いわき市にある競走馬総合研究所常磐支所の温泉で過ごした。7月に帰厩し、秋はローズステークスから秋華賞へ、と道筋が引き直される。ところがローズステークス直前の最終追い切りで左前の球節に捻挫が見つかって回避。精密検査が明らかにしたのは、左前脚管骨の骨折と、また6か月という数字だった。二度目の温泉である。 その年の4月、彼女が入れなかった桜花賞のゲートからは、阪神で半馬身抑えたレッツゴードンキが出て、2着に4馬身の差をつけて勝った。 2016年3月15日、ようやく帰厩。5月15日のヴィクトリアマイルが復帰戦になった。阪神ジュベナイルフィリーズから、中517日。11番人気で16着、勝ったストレイトガールから2秒8の差がついた。その4週間前には、同じ厩舎のディーマジェスティが蛯名を背に皐月賞を勝っている。人も厩舎も止まってはいなかった。止まっていたのは、この馬の時間のほうだった。 夏、電気治療を受けながら福島テレビオープンへ向かう。追い切りのあと、蛯名は「2歳の良かった頃のように順調にいかず、なかなか戻ってきません」[^1]と言い、仕上がりを6分ほどと見ていた。7月24日、9頭立ての3番人気で6着。レース後には、連勝していた頃の弾むような走りではなかった、と振り返っている。 9月、左前脚の靱帯に幹細胞の移植手術を受け、その年はもう走らなかった。
出典:競馬ラボ「ショウナンアデラ復活へ慎重 蛯名「細心の注意を払って調整」…福島テレビOP」2016年7月20日配信、https://www.keibalab.jp/topics/30843/、閲覧日:2026年7月27日。
四月二十日
2017年4月1日、中山の芝1600メートル、稍重。ダービー卿チャレンジトロフィーが、8か月ぶりのゲートになった。9番人気、斤量53キロ。16頭の16着で、勝ったロジチャリスから1秒1。上がりは35秒4だった。 陣営は続けて福島牝馬ステークスに登録し、追い切りもこなしている。だがレースを目前にして、また脚部不安が出た。回避が決まり、そのまま競走馬をやめることになる。4月20日付でJRAの競走馬登録が抹消された。 二ノ宮敬宇は、脚元さえ無事ならすごい馬になっていたと思う、と振り返り、これまであんなに軽い走りをする馬はいなかった、と続けている。二年余り前に厩舎の人間が語っていた、もう一つ上のギア。それを入れる機会は、ついに訪れなかった。 7戦3勝。生涯に得た8417万5000円のうち6500万円は、あの阪神の一日の本賞金である。そして7回のゲートすべてに、蛯名正義がいた。乗り替わりは一度もなかった。
海を渡る ― 血のつづき
引退後、この馬は北海道日高町のクローバーファームに入り、まず体を立て直した。国本哲秀が引き続き所有し、繁殖牝馬になる。 2017年10月、イギリスへ渡った。相手はフランケル。2019年2月2日、かの地で初仔の牡馬が生まれる。翌年の相手はロアリングライオン——4歳で急逝し、一世代しか産駒を残せなかった馬で、彼と交配されたGI級競走の優勝牝馬は世界に8頭しかいない。ショウナンアデラはその一頭になった。受胎したまま2019年9月に帰国し、2020年4月20日、登別の青藍牧場で2番仔の牝馬を産んでいる。3番仔の父はロードカナロアだった。 初仔にはショウナンハクラクの名が付いた。2022年1月15日、中京の芝1400メートル、3歳未勝利。この牡馬が勝って、母の産駒初勝利になる。母が三つ目の勝利を挙げた阪神の午後から、七年と一か月が経っていた。 母は海を越えて日高に来て、一年を空けてこの馬を授かった。娘は海を越えてイギリスへ行き、仔を連れて帰ってきた。競走馬として走ったのは7回きりで、脚元は最後まで彼女に味方しなかった。勝ち時計としてGIの欄に残ったのは、1分34秒4のひとつだけである。それでも、阪神の直線で外へ持ち出されてからゴールまでの200メートルには、この馬が何を持っていたのかが、そっくり収まっている。
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