名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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シンリョクカのイメージビジュアル
シンリョクカShinryokuka
Shinryokuka

シンリョクカ

通算成績17戦2勝

獲得賞金13,188万円

生年月日 2020.01.24(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
シンリョクカの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
13 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 11人気 木幡初也 2:12.2 上り36.0映像
4 GIII新潟記念 新潟 芝2000 8人気 木幡初也 1:58.2 上り33.2映像
6 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 14人気 木幡初也 1:32.3 上り34.2映像
5 GIII福島牝馬S 福島 芝1800 5人気 木幡初也 1:46.7 上り34.5映像
6 L白富士S 東京 芝2000 3人気 木幡初也 1:59.7 上り34.3
12 GIII中山金杯 中山 芝2000 3人気 木幡初也 1:58.9 上り35.5映像
4 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 6人気 木幡初也 2:11.6 上り34.6映像
1 GIII新潟記念 新潟 芝2000 8人気 木幡初也 1:58.0 上り34.4映像
GIII福島牝馬S 福島 芝1800 3人気 木幡初也 映像
3 GIII中山牝馬S 中山 芝1800 6人気 木幡初也 1:49.1 上り35.9映像
10 GII日経新春杯 京都 芝2400 7人気 木幡初也 2:25.3 上り37.7映像
9 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 12人気 木幡初也 2:13.1 上り34.7映像
10 GII府中牝馬ステークス 東京 芝1800 3人気 吉田豊 1:46.9 上り33.7映像
5 GI優駿牝馬 東京 芝2400 7人気 吉田豊 2:24.4 上り35.1映像
6 GI桜花賞 阪神 芝1600 9人気 吉田豊 1:32.7 上り33.8映像
2 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 12人気 木幡初也 1:33.5 上り35.9映像
1 2歳新馬 東京 芝1600 4人気 吉田豊 1:36.6 上り33.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
シンリョクカの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
サトノダイヤモンドSatono DiamondディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
マルペンサMalpensaOrpen
Marsella
レイカーラキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
カーラパワーCarla PowerCaerleon
Jabali
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牝馬。父サトノダイヤモンド、母レイカーラ。主な勝ち鞍は新潟記念。

心力歌 ― 名と血

馬主・由井健太郎は、母校である成蹊学園で唱和される歌から名を採った。「心力歌」――しんりょくか。小学校から大学まで、その校歌の一節に流れ、成蹊の教育精神を表す言葉だという。心の力を歌う、という名。奇しくもそれは、この牝馬が生涯をかけて証明することになる資質そのものだった。 2020年1月24日、下河辺牧場に生まれた鹿毛。父サトノダイヤモンドは2016年の菊花賞と有馬記念を制した中距離の雄で、その父はディープインパクト。母レイカーラは2013年のターコイズステークスを勝ち、その半兄には2014年のマイルチャンピオンシップを制したダノンシャーク――GIを勝った伯父がいる。半姉インターミッションもアネモネステークスの勝ち馬だ。牝系は決して地味ではない。派手な良血というより、粘りと勝負根性を静かに伝える一族だった。

二戦目の伏兵 ― 阪神ジュベナイルフィリーズ

2022年10月、東京の芝1600m。吉田豊を背にした新馬戦を4番人気で勝ち上がった。もっとも、体は細く、絞ればすぐに減ってしまう華奢な牝馬だった。 わずか二戦目で、陣営が選んだ舞台は2歳女王を決める阪神ジュベナイルフィリーズ。鞍上は木幡初也、単勝12番人気の伏兵評価だった。それでも道中をおっつけながら食らいつき、直線では内の狭い間を割ってしぶとく伸びる。ほとんど後続を寄せつけずに抜け出していったのは、のちに無敗の三冠牝馬となるリバティアイランド。その背だけを追って、シンリョクカは2着に粘り込んだ。木幡は、二戦目でGIのペースについていけるか気がかりだったと胸をなでおろした。細い馬体でこの一戦を走り切ったことの意味は大きい。調教師の竹内正洋は、この華奢な2歳牝馬の将来をこう見ていた。「クラシックを狙っていけるような馬ですね」[^1]。

出典:中日スポーツ「【阪神JF】波乱12番人気シンリョクカ2着激走 キャリア2戦目「クラシック狙っていける馬」」2022年12月11日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/599114、閲覧日:2026年7月18日。

春は咲かず ― 桜、樫、そして再会

期待を背負って向かった2023年の春。桜花賞は吉田豊とのコンビで6着、優駿牝馬(オークス)は東京2400mで5着。掲示板は外さないが、あと一歩、頂の景色には届かない。夏を越え、府中牝馬ステークスは10着、暮れのエリザベス女王杯は9着と、勝ち星から遠ざかっていく。クラシックを狙えると言われた素質は、なかなか花を咲かせなかった。 そのエリザベス女王杯から、手綱は再び木幡初也に託された。2歳のあの日、伏兵の背でたった一度だけ夢を見た男が、勝てない日々の只中にいる馬のもとへ戻ってきた。派手な良血でもなく、クラシックの主役にもなれなかった。それでも二人は、もう一度組み直した。

福島の三コーナー ― 転倒

2024年、歯車はなお噛み合わない。日経新春杯10着。だが3月の中山牝馬ステークスで3着に食い込み、復調の兆しを見せる。そして迎えた4月の福島牝馬ステークス、3番人気。 その日、レースは中盤で暗転した。3コーナー、前を行く馬に接触してシンリョクカは転倒し、競走を中止する。後続のライトクオンタムも巻き込まれ、その鞍上・吉田隼人は病院へ運ばれた。木幡も右腕を負傷した。芝に投げ出された馬体――転倒は、華奢な牝馬にとって決して小さな事故ではない。 幸い、シンリョクカは競走に戻れる体で立ち直った。だが物語は、この三コーナーで途切れてもおかしくはなかった。

新潟記念 ― ド根性の一冠

五か月後の2024年9月1日、新潟の芝2000m。8番人気。転倒から立ち直ったばかりの馬に、大きな期待は集まっていなかった。 この日の木幡は迷わなかった。道中は2番手につけ、直線で先頭に立つ。残り、最後方から鋭く追い込んできたのはセレシオン。二頭が並んでゴール板を駆け抜ける。凌いだ差は、ハナ――。 重賞初制覇。そしてそれは、2014年にデビューして11年目、木幡初也にとっても初めての重賞タイトルだった。伏兵の背で始まった縁が、勝てない春を越え、福島の転倒を越えて、ようやく一つの冠に結実した。レース後、木幡はこの馬の芯をひとことで言い当てた。「負けん気と根性が一番いいところ」[^1]。 心の力を歌う、という名前だった。その名が、走りそのもので証明された一日だった。

出典:東スポ競馬「【新潟記念結果&コメント】波乱!8番人気シンリョクカV 木幡初也「負けん気と根性が一番いいところ」」2024年9月1日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/48782、閲覧日:2026年7月18日。

緑を継ぐ ― ターフを去って

勢いは続いた。同年11月のエリザベス女王杯では4着。京都の2200mで、GIの舞台でも堂々と渡り合ってみせた。 だが2025年は、長い停滞の年になった。中山金杯12着、白富士ステークス6着、ヴィクトリアマイル6着。連覇を狙った新潟記念は4着。秋のエリザベス女王杯13着を最後に、11月20日、JRA競走馬登録を抹消された。17戦2勝、獲得賞金1億3188万円。細い体で、2歳女王決定戦から古馬のGIまで駆け抜けた四年だった。 いま、シンリョクカは生まれ故郷の下河辺牧場で繁殖牝馬となっている。GIを勝った伯父ダノンシャークの血、ターコイズを勝った母レイカーラの血、そして自らが走りで示した負けん気――心力歌の名が伝えるものを、次はその仔に託していく。派手な良血ではなかった。クラシックの主役にもなれなかった。それでも、心の力ひとつで一つの冠をもぎ取った牝馬が、確かにいた。

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