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シャイニングレイ
通算成績9戦4勝
獲得賞金1億3,561万円
生年月日 2012.05.22(平成24年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 12 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 8人気 | 北村友一 | 1:09.4 | 上り34.9 | 映像 | |
| 18 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 9人気 | 北村友一 | 1:21.2 | 上り36.1 | 映像 | |
| 1 | GIIICBC賞 | 中京 芝1200 | 2人気 | 北村友一 | 1:08.0 | 上り33.2 | 映像 | |
| 1 | OP安土城S | 京都 芝1400 | 6人気 | 北村友一 | 1:19.8 | 上り34.7 | — | |
| 14 | OP福島民報杯 | 福島 芝2000 | 3人気 | 北村友一 | 1:59.5 | 上り37.3 | — | |
| 6 | OP仁川S | 阪神 ダ2000 | 4人気 | 北村友一 | 2:05.5 | 上り38.2 | — | |
| 7 | GII報知杯弥生賞 | 中山 芝2000 | 1人気 | 川田将雅 | 2:02.9 | 上り37.2 | 映像 | |
| 1 | GIIホープフルS | 中山 芝2000 | 2人気 | 川田将雅 | 2:01.9 | 上り35.6 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 京都 芝2000 | 2人気 | 川田将雅 | 2:04.1 | 上り34.4 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | Alzao | |
| Burghclere | ||
| 母シェルズレイ | クロフネKurofune | フレンチデピュティFrench Deputy |
| ブルーアヴェニューBlue Avenue | ||
| オイスターチケット | ウイニングチケットWinning Ticket | |
| ナムラピアリス |
旅程 — この馬の物語
2012年生まれの鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母シェルズレイ。主な勝ち鞍はホープフルS・CBC賞。
牡蠣と、切符と、花環 ― 名前が繋いだ血
2012年5月22日、北海道安平町のノーザンファームで、一頭の鹿毛の牡馬が生まれた。父ディープインパクト、母シェルズレイ、母の父クロフネ。馬主はキャロットファーム、預けられたのは栗東の高野友和厩舎である。 名前の話から始めたい。母の母はオイスターチケットといい、その父が1993年の日本ダービー馬ウイニングチケットだった。牡蠣に、切符。その娘が貝殻の花環を意味するシェルズレイで、シェルズレイの全弟は「黒い貝」を名に持つブラックシェルという。海のものが少しずつ花へ近づいていく牝系だった。その四番仔に与えられたのが、シャイニングレイ。英語の「輝く」に、母の名の後半を継いだ名である。競走馬として輝かしい歴史を創ることを願って――クラブが残した由来には、そう書かれている。 母シェルズレイは中央で20戦3勝。チューリップ賞とローズステークスで2着に食い込みながら、重賞のタイトルには手が届かないまま2008年に繁殖へ上がった。管理する高野友和は2011年に開業した若い調教師で、この鹿毛がデビューする三週間前、ショウナンパンドラの秋華賞で重賞初制覇とGI初制覇を同時に手にしたばかりだった。母が届かなかった場所へ、この馬は最初の一年で手を伸ばすことになる。
中山二千の、同じ名前 ― ホープフルステークス
2014年11月9日、京都の芝2000メートル。川田将雅を背にした新馬戦を、2着に3馬身半差をつけて勝った。上がりは34秒4。次に選ばれたのは、暮れの中山だった。 この年、阪神で行われていたラジオNIKKEI杯2歳ステークスが中山の芝2000メートルへ移され、ホープフルステークスと名を改めてGIIに格上げされていた。2歳中距離路線の頂点を作り直す、その最初の一戦である。12月28日、17頭立ての2番人気。晴れ、良馬場。 1コーナーから3、4番手の好位につけ、4コーナーで前を捕まえにいくと、そのまま抜け出した。2着コメートに1馬身1/4。2分1秒9、上がり35秒6。1番人気に推されていたダノンメジャーは9着だった。デビュー2連勝での重賞制覇。馬体重510キロの2歳馬は、この日から翌春のクラシックの中心に置かれた。 もっとも「ホープフルステークス」という名は、この日が初めてではない。1988年から2013年まで、同じ中山の芝2000メートルで暮れに行われていたオープン特別が、同じ名を持っていた(JRAはそれを新しい重賞の前身とはしていない)。1992年12月、その一戦を柴田政人で勝った2歳馬の名をウイニングチケットという――この馬の、母の母の父である。そして2007年12月、同じ名の一戦でマイネルチャールズを捉えきれず2着に敗れた馬がいた。ブラックシェル――母の全弟だった。 同じ名前の、同じ中山二千。三代にわたって縁のあった一戦を、シャイニングレイは先頭で通過した。
一・九倍 ― 弥生賞で止まった時計
2015年3月8日、中山、第52回弥生賞。単勝1.9倍。皐月賞への切符を取りにきた11頭のなかで、この馬だけが別格の支持を受けていた。 だがこの日、馬は落ち着いていなかった。本馬場入場で鞍上の川田を振り落とすほど気を高ぶらせたまま、ゲートに入っている。運び自体は悪くない。曇天の稍重を、道中は2番手。前々につけて直線を向いた。 そこから、伸びなかった。上がり37秒2。中団に控えていた福永祐一のサトノクラウンに外から抜き去られ、六頭に前を譲って7着。馬体重は510キロ、増減なし。数字の上では何ひとつ欠けていなかった。ただ、勝てなかった。 この一戦が、結果として三歳という一年の、たった一度の出走になる。
二年 ― 一族が知っていた傷
弥生賞のあと、左トモの球節に不安が出た。皐月賞も日本ダービーも見送りとなり、二歳の暮れに重賞を勝った馬は春のクラシックを丸ごと欠場する。それでも秋に戻る算段は立っていた。10月4日、阪神のポートアイランドステークス。復帰戦の名前まで決まっていた。 その直前、9月16日に左前の屈腱炎が判明する。ノーザンファームしがらきへ送られ、予定は白紙になった。 屈腱炎は、この一族がすでに知っている傷だった。母の全弟ブラックシェルは、2008年の神戸新聞杯でディープスカイの2着に入った直後、右前の浅屈腱炎を発症している。全治9か月以上。三年以上をかけて復帰を目指しながら、ついに一度もゲートへ戻れないまま、2011年12月に登録を抹消された。日本ダービー3着、NHKマイルカップ2着。惜しいところまで行った馬ほど、戻れなかったときの空白は長く見える。 2015年が終わり、2016年が丸ごと過ぎた。その二年、シャイニングレイの名は出走表のどこにもなかった。
二千では制御が利かない ― 距離を捨てる
2017年3月11日、阪神・仁川ステークス。ダート2000メートル。二年ぶりのゲートだった。手綱は北村友一に替わっている。長期休養明けなのだからストレスのない競馬をしたい――北村はそう心がけて臨んだが、道中で折り合いを欠き、勝ったグレイトパールから2秒1離された6着。続く4月16日の福島民報杯も、マイネルミラノの14着に終わった。 ここで陣営は、この馬に期待されてきたものを手放す。5月28日、京都の安土城ステークス、芝1400メートル。二歳の暮れに中山二千を勝った馬にとっては、三ハロンの距離短縮だった。 16頭立ての6番人気。中距離ではかかってしまうスピードが、1400メートルでは素直な武器に変わる。3番手から抜け出し、2着トウショウピストに1馬身1/4。2年5か月ぶりの勝利だった。高野は、1400メートルでもハイペースだったと思う、そのなかで騎手が何のアクションもせずにハミを取っていた、と振り返っている。 「二千では制御が利かない」[^1]。師の言葉は、諦めではなく見立ての訂正だった。この馬の速さが本当はどこを向いていたのか、それを確かめるのに二年半かかった。
出典:デイリースポーツ「【CBC賞】シャイニングレイ完全復活へ 休養明けV「高いレベルで安定」」2017年6月29日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2017/06/29/0010323477.shtml、閲覧日:2026年7月26日。
三十三秒二 ― 雨の中京
2017年7月2日、中京、第53回CBC賞。雨だった。安土城ステークスからさらに一ハロン短い1200メートル、しかも初めての左回り。それでも18頭の2番人気に推された。1番人気はメラグラーナ。 跳び上がるように出た。3コーナーでも4コーナーでも、後方から二、三頭目という位置はほとんど動かない。前ではアクティブミノルが逃げ、セカンドテーブルが2番手で構えている。北村は待った。坂を上がりながらトップギアに入れると、そこから一気だった。 上がり3ハロン33秒2。18頭でいちばん速い数字である。逃げ込みを図るセカンドテーブルを、ゴール線でハナだけ差した。1分8秒0。ホープフルステークスから2年6か月、二つ目の重賞だった。 馬体重は530キロ。二歳の暮れより20キロ増えた体で、中山二千の勝ち馬は中京の千二を差し切っていた。レースのあと、北村の言葉は短い。「馬に感謝したいです」[^1]
出典:スポーツニッポン「【CBC賞】見事に復活!シャイニングレイが2年6カ月ぶり重賞V」2017年7月3日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2017/07/03/kiji/20170702s00004048470000c.html、閲覧日:2026年7月26日。
ただ一度のGI ― 春の終わりに
秋はスプリンターズステークスが視野に入っていた。だが脚元に不安が出て回避し、暮れの阪神カップに目標を切り替えると、18頭立ての18着。イスラボニータが勝ったレースで、最後の着順が記録に残った。 2018年3月25日、中京・高松宮記念。九行の戦績表のうち、格の欄にGIと書かれているのはこの一行しかない。二歳の暮れに勝ったホープフルステークスは2017年からGIになったが、彼が走ったときはまだGIIだった。ただ一度のGI挑戦は12着。勝ったのはファインニードルだった。 9戦4勝、獲得賞金1億3561万円。2018年4月7日、競走馬登録抹消。 引退後は乗馬になった。2023年から2026年まで、広島県東広島市の県立西条農業高等学校に、2016年のオーシャンステークスを勝ったエイシンブルズアイとともに功労馬として繋養されている。2026年3月31日、乗馬に復帰するのに伴って、功労馬繋養支援事業の助成対象からは外れた。安平で生まれた鹿毛は、瀬戸内の農業高校で三年を過ごし、いままた人を乗せる馬としての日々に戻っている。
名前の続き ― 妹と、鞍上と
シェルズレイは、この鹿毛を四番仔に、産駒を送り出し続けた。八番仔は2017年1月生まれの牝馬。同じ父ディープインパクト、同じキャロットファーム、同じ高野友和厩舎――全妹のレイパパレである。 名はやはり母から採られた。ハワイの言葉で、帽子の縁を飾る花環。兄が二歳の暮れに掴みかけ、脚に阻まれた高さへ、妹は一度も負けないまま登っていった。2021年4月4日、雨の阪神。無傷6連勝で迎えた大阪杯を逃げ切り、2着モズベッロに4馬身差、三冠馬コントレイルを3着に置いた。鞍上は川田将雅――シャイニングレイの新馬とホープフルステークスと弥生賞、三度の騎乗すべてを務めた、あの川田である。母シェルズレイは2022年9月に繁殖を退いた。 そして北村友一。2021年5月2日、阪神の第2競走で落馬し、椎体と右肩甲骨を折った。のちに背骨が八本以上折れているとわかり、復帰まで一年以上と告げられる。彼が実際にレースへ戻ったのは2022年6月11日、一年一か月ぶりのことだった。二年休んだ馬を千二のゴール板まで連れ戻した男が、こんどは自分の身体で似た長さの時間を数えたことになる。 2024年12月28日、北村はクロワデュノールでホープフルステークスを勝った。十年のあいだにGIへ昇格した、あの中山二千である。翌2025年6月1日には東京優駿も制した。シャイニングレイが向かうはずで、ついに立てなかった舞台だった。 輝かしい歴史を創ることを願って、と名づけられた馬は、九回走って四回勝ち、二つの重賞を抱えてターフを降りた。二歳の暮れに掴んだ中山の栄冠、二年の空白、そして雨の中京に刻んだ三十三秒二。願いは、名づけた者が思い描いたのとは違う形で、たしかに叶っている。
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