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シングンマイケル
通算成績24戦6勝
獲得賞金2億2,348万円
生年月日 2014.04.13(平成26年)毛色 鹿毛性 セン
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 中 | JGⅠ中山グランドジャンプ | 中山 障4250 | 2人気 | 金子光希 | — | 映像 | ||
| 2 | 阪神スプリングJ | 阪神 障3900 | 2人気 | 金子光希 | 4:20.5 | 上り13.4 | — | |
| 1 | JGⅠ中山大障害 | 中山 障4100 | 2人気 | 金子光希 | 4:38.9 | 上り13.6 | 映像 | |
| 1 | JGⅡ東京ハイジャンプ | 東京 障3110 | 3人気 | 金子光希 | 3:28.1 | 上り13.4 | — | |
| 1 | 東京ジャンプS | 東京 障3110 | 3人気 | 石神深一 | 3:29.4 | 上り13.5 | — | |
| 3 | 障害4歳以上OP | 新潟 障3290 | 1人気 | 金子光希 | 3:36.8 | 上り13.2 | — | |
| 2 | OPペガサスジャンプS | 中山 障3350 | 3人気 | 金子光希 | 3:43.6 | 上り13.3 | — | |
| 1 | 障害4歳以上OP | 中京 障3330 | 1人気 | 金子光希 | 3:37.5 | 上り13.1 | — | |
| 2 | 障害3歳以上OP | 中京 障3300 | 3人気 | 金子光希 | 3:37.6 | 上り13.2 | — | |
| 1 | 障害3歳以上OP | 福島 障3350 | 5人気 | 金子光希 | 3:40.5 | 上り13.2 | — | |
| 4 | 障害3歳以上OP | 新潟 障2850 | 1人気 | 金子光希 | 3:05.4 | 上り13.0 | — | |
| 2 | 障害3歳以上OP | 福島 障2750 | 2人気 | 金子光希 | 3:03.6 | 上り13.4 | — | |
| 4 | OP三木ホースランドJS | 阪神 障3140 | 2人気 | 金子光希 | 3:32.7 | 上り13.5 | — | |
| 1 | 障害4歳以上未勝利 | 中京 障3000 | 1人気 | 金子光希 | 3:20.7 | 上り13.4 | — | |
| 3 | 障害4歳以上未勝利 | 中京 障3000 | 7人気 | 金子光希 | 3:19.7 | 上り13.3 | — | |
| 5 | 障害3歳以上未勝利 | 中京 障3000 | 7人気 | 金子光希 | 3:24.2 | 上り13.6 | — | |
| 8 | 3歳未勝利 | 新潟 芝2400 | 3人気 | 武士沢友治 | 2:27.1 | 上り36.5 | — | |
| 7 | 3歳未勝利 | 新潟 芝1800 | 4人気 | 武士沢友治 | 1:48.4 | 上り33.9 | — | |
| 2 | 3歳未勝利 | 福島 芝2000 | 2人気 | 武士沢友治 | 2:01.7 | 上り36.8 | — | |
| 2 | 3歳未勝利 | 福島 芝2000 | 2人気 | 武士沢友治 | 2:01.2 | 上り35.8 | — | |
| 6 | 3歳未勝利 | 東京 芝1800 | 3人気 | 武士沢友治 | 1:49.4 | 上り35.8 | — | |
| 4 | 3歳未勝利 | 東京 芝2000 | 3人気 | 武士沢友治 | 2:05.4 | 上り34.6 | — | |
| 10 | 3歳未勝利 | 東京 芝1600 | 2人気 | 武士沢友治 | 1:36.2 | 上り35.5 | — | |
| 2 | 3歳新馬 | 東京 芝1800 | 8人気 | 武士沢友治 | 1:49.3 | 上り34.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父シングンオペラ | オペラハウスOpera House | Sadler's Wells |
| Colorspin | ||
| タケノハナミ | ハードツービート | |
| ヒカルカマタ | ||
| 母ジェヴォーナ | トウカイテイオーTokai Teio | シンボリルドルフSymboli Rudolf |
| トウカイナチュラル | ||
| タケノデュムカ | クリエイターCreator | |
| デュカイナDukayna |
旅程 — この馬の物語
2014年生まれの鹿毛のせん馬。父シングンオペラ、母ジェヴォーナ。
一九八五年、ローズステークスの十二番人気
1985年10月13日、京都の芝2000m。単勝12番人気のタケノハナミは、調教師・藤原敏文の指示どおり岩元市三を鞍上に先手を取りにいき、逃げる桜花賞馬エルプスを半馬身だけ抑えて凌ぎ切った。ローズステークス。この牝馬が、シングンマイケルの父の母である。 タケノハナミは伊坂重昭の名義で走り、のちに息子の伊坂重憲へ名義が移った。伊坂は神奈川でパチンコホールを営む実業家で、勝負服は青に桃の星散らし、冠名は「シングン」。この牝馬に八頭の仔を産ませ、うち三番仔のテンショウメイジンは、のちに美浦の高市圭二の管理馬になっている。1997年、テンショウメイジンは中山大障害(春)を走り、ポレールの5着に入った。 そして八番仔が、1998年に生まれたシングンオペラだった。船橋の岡林光浩厩舎でデビューして2戦目に勝ち、4戦目から中央の交流競走に挑み、やがて高市厩舎へ移る。共同通信杯でジャングルポケットの4着、青葉賞5着、アルゼンチン共和国杯3着。掲示板を外さない馬でありながら、2勝目は挙げられなかった。
死ななかった父
2002年4月の条件戦で13着に敗れたあと、シングンオペラの両前脚に腱の断裂が見つかった。競走能力の喪失。一時は安楽死処分も検討されたが、伊坂の願いで一年におよぶ療養に入り、この馬は生き延びた。16戦1勝、重賞は未勝利。2003年から生まれ故郷の沖田牧場でプライベート種牡馬となる。 年に一頭か二頭。それが、重賞を勝っていない種牡馬に許された生産のペースだった。JRAに登録されたシングンオペラ産駒17頭のうち、15頭までを高市が管理している。走らせる馬がいないから育てるのではなく、この血を残すと決めた人間が二人いて、その二人が長いあいだ、同じ方向に手をかけ続けていた。
新冠の四月、平地では届かなかった
2014年4月13日、北海道新冠町のヒカル牧場で、その数少ない産駒の一頭が生まれた。鹿毛の牡。のちに去勢され、騸馬として走ることになる。父と同じ二文字を戴いて、シングンマイケルと名づけられた。 2017年1月29日、東京の芝1800m。武士沢友治を背に8番人気でデビューし、勝ち馬インシュラーの0秒1後ろで2着に入る。以降7戦、7月の福島で二度続けて2着まで来たが、勝ち星には手が届かない。8月20日、新潟の芝2400mの未勝利戦8着。ここまでの平地8戦で、一度も先頭でゴール板を過ぎることなく、この馬は障害へ向かった。
二〇〇〇年組の騎手
同じ年の12月16日、中京の障害3歳以上未勝利。鞍上が金子光希に替わった。7番人気の5着。以後、シングンマイケルが跳んだレースのほとんどで、この男が背中にいる。 金子光希は1982年3月10日、千葉県の生まれ。2000年に美浦・矢野進厩舎で騎手免許を取った。デビュー時に48キロだった体重が増えるにつれ、2002年から障害に騎乗機会を求めるようになり、2013年3月1日付で平地免許の更新をやめて障害限定の騎手になる。重賞初制覇は2015年の新潟ジャンプステークス、8番人気のティリアンパープル。デビュー15年目のことだった。 2018年3月11日、中京。1番人気に推されたシングンマイケルが、障害に転じて3戦目で初勝利を挙げる。三木ホースランドパークジャンプステークスは4着、以降も福島で2着、新潟で4着、福島で1着、中京で2着。派手ではないが、掲示板を外さない馬になっていた。
父の名に、初めての重賞
2019年2月2日、中京の障害オープンを1番人気で快勝。3月23日のペガサスジャンプステークスは道中でロスがありながら、マイネルプロンプトの2着に粘った。5月4日、新潟のオープンは1番人気で3着。 その春、父が死んでいる。2019年3月、シングンオペラは種牡馬生活の途中で世を去った。腱を断ってから十七年近く、重賞タイトルはひとつも持たないままだった。 6月22日、東京ジャンプステークス。この一戦だけ、鞍上は石神深一だった。好位を追走し、最終障害を飛び越えたところで先頭に立つと、マイネルプロンプトに半馬身。重賞初挑戦での初制覇である。重賞を勝てずに引退し、重賞を勝てずに死んだ父の名前に、息子が三か月遅れで最初のタイトルを持ち帰った。 10月15日、東京ハイジャンプ。金子が戻った背中で2番手を進み、直線で抜け出すと、メイショウダッサイの追撃をクビ差で振り切る。重賞は二つになった。
十二月二十一日
2019年12月21日、中山の大生垣。中山大障害、障4100m。15頭立ての2番人気。好位で運び、直線で抜け出して、4分38秒9でゴール板を過ぎた。ブライトクォーツの追撃は届かない。J・GI初挑戦での戴冠であり、この年の重賞三連勝でもあった。 鞍上の金子にとっても、初めてのJ・GIだった。彼が最初にJ・GIに乗ったのは2002年12月21日、五回中山七日十レース、ユーワブレイヴで9着。十七年後の同じ日付、同じ開催日、同じ番組で、今度は先頭で戻ってきた。 レース後、金子は「折れそうになる心を鼓舞して」[^1]と語った。そして、次はオジュウチョウサンに挑みたい、と続けている。
出典:中日スポーツ「シングンマイケルが中山大障害V…J・G1初勝利 金子騎手「折れそうになる心を鼓舞」」2019年12月21日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/34083 、閲覧日:2026年7月26日。
壇上に、師はいなかった
2019年度のJRA賞最優秀障害馬に、シングンマイケルが選ばれた。有効票274票のうち175票。2位のオジュウチョウサンに80票の差をつけている。一度も同じレースを走ったことのない相手を、票の上で上回った。 2020年1月27日、都内での授賞式。壇上に高市圭二の姿はなかった。2017年に後腹膜脂肪肉腫と診断されており、この式を欠席していた。代わりに立った伊坂は、自分と高市の二十数年来の執念がこの馬に乗り移ったのだろう、という意味のことを語っている。タケノハナミがローズステークスを勝った秋から数えれば、三十五年が経っていた。 それから一か月足らずの2月17日、高市は茨城県土浦市の病院で亡くなった。64歳。1978年に騎手免許を取って702戦25勝、1990年に鞍を下り、1996年に調教師免許を得て翌春に初勝利。ファストフレンドで帝王賞と東京大賞典を勝った男だった。 翌18日付で、シングンマイケルは同じ美浦の大江原哲厩舎へ移る。大江原もまた、1971年のデビューから1996年の引退まで、主に障害を乗り続けた元騎手である。
四月十八日、最終障害
3月14日、阪神スプリングジャンプ。新しい厩舎での初戦であり、オジュウチョウサンとの初対戦でもあった。オジュウチョウサンは4分19秒1のレコードで駆け抜け、シングンマイケルは9馬身離された2着。その背中に乗っていたのは石神深一――前年6月、この馬に初めての重賞を運んだ男である。 4月18日、中山グランドジャンプ。1999年に中山大障害(春)から名前を変えた、あの春の大障害だった。二十三年前に父の半兄テンショウメイジンが5着に走った番組へ、その甥が2番人気で戻ってきたことになる。不良馬場、11頭立ての1枠1番、斤量63キロ。 最終障害の飛越で、シングンマイケルは転倒した。頸椎関節脱臼。起き上がることはできなかった。6歳。落ちた金子は頸椎捻挫と診断された。 そのレースを勝ったのはオジュウチョウサンで、同一重賞5連覇はJRA史上初だった。2着メイショウダッサイ、3着ブライトクォーツ。前年の秋にクビ差で退けた馬と、前年の暮れに最後まで前を譲らなかった馬が、その日は先に戻ってきた。
残ったもの
父方の祖母タケノハナミは2008年に26歳で死に、父シングンオペラは2019年3月に死んだ。母ジェヴォーナの母タケノデュムカと、2000年の桜花賞馬チアズグレイスの母チアズフラワーは、ともに輸入牝馬デュカイナの娘である。ジェヴォーナとチアズグレイスはいとこ同士で、チアズグレイスの全弟が共同通信杯と毎日杯を勝ったチアズシュタルクにあたる。母方にも重賞の血は流れていたが、この馬が自分の場所を見つけたのは、平地ではなく生垣の向こうだった。 騸馬だったから、競馬において彼が残せるものは初めから血ではなかった。残ったのは24戦6勝という数字と、中山大障害の勝ち馬として番組表に刻まれた一行である。 中山の障害コースには、いまも大生垣がある。十二月の暮れ、そこを越えていく十数頭のうちの一頭が、四分半をかけて先頭で戻ってくる。2019年のその一頭は、重賞を知らないまま死んだ父の名を半分だけ背負っていた。三十五年をかけて同じ血を追った馬主と、その血をほとんど独りで預かり続けた調教師と、二十年目の障害騎手。三人がそろって同じ背中の上にいた時間は、たったひと冬しかない。それでも、そろっていた。
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