名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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シュネルマイスターのイメージビジュアル
シュネルマイスターSchnell Meister
Schnell Meister

シュネルマイスター

通算成績17戦5勝

獲得賞金53,227万円

生年月日 2018.03.23(平成30年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
シュネルマイスターの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
7 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 1人気 C.ルメール 1:32.9 上り33.4映像
3 GII毎日王冠 東京 芝1800 2人気 C.ルメール 1:45.3 上り33.3映像
3 GI安田記念 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 1:31.6 上り32.8映像
1 GII読売マイラーズカップ 京都 芝1600 1人気 C.ルメール 1:31.5 上り32.9映像
4 GII中山記念 中山 芝1800 4人気 T.バシュロ 1:47.3 上り34.9映像
9 GI香港マイル シャティン 芝1600 3人気 C.ルメール 映像
5 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 1人気 C.ルメール 1:32.8 上り33.5映像
9 GIスプリンターズS 中山 芝1200 3人気 横山武史 1:08.3 上り34.4映像
2 GI安田記念 東京 芝1600 2人気 C.ルメール 1:32.3 上り32.9映像
8 GIドバイターフ メイダン 芝1800 1人気 C.ルメール 映像
2 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 2人気 横山武史 1:32.7 上り32.9映像
1 GII毎日王冠 東京 芝1800 1人気 C.ルメール 1:44.8 上り33.0映像
3 GI安田記念 東京 芝1600 4人気 横山武史 1:31.8 上り33.4映像
1 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 2人気 C.ルメール 1:31.6 上り34.0映像
2 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 2人気 C.ルメール 2:02.2 上り34.5映像
1 ひいらぎ賞 中山 芝1600 1人気 C.ルメール 1:35.8 上り35.4
1 2歳新馬 札幌 芝1500 1人気 横山武史 1:30.5 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
シュネルマイスターの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
KingmanInvincible SpiritGreen Desert
Rafha
ZendaZamindar
Hope
セリエンホルデSoldier HollowIn the Wings In The Wings
Island Race
SaldenehreHighest Honor
Salde
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの鹿毛の牡馬。父Kingman、母セリエンホルデ。主な勝ち鞍はNHKマイルC・毎日王冠・読売マイラーズC。

「速さの名匠」という名 ― ドイツの血

シュネルマイスター。ドイツ語で「速い」を意味するシュネルに、「名匠」を意味するマイスターを継いだ名だ。速さの職人。生まれた国の言葉で、走るための資質をそのまま名に負わされた馬だった。 2018年3月23日、ドイツ生まれの鹿毛。父キングマンは、欧州の一マイルを席巻した名マイラー。母セリエンホルデは、独オークスを勝った女傑である。母の血が根を張るのはドイツのSライン。近親には独オークス馬サロミナ――のちに日本でサリオスとサラキアを産む牝馬――が名を連ね、ヨーロッパの重厚な芝を勝ち抜いてきた一族の器量が、この鹿毛の背にも宿っていた。 その血を日本へ運んだのは、サンデーサラブレッドクラブ。預けられたのは美浦・手塚貴久厩舎。そして手綱の多くを託されることになるのが、日本に骨を埋めた名手クリストフ・ルメールだった。海を渡ってきたドイツの速さと、その速さに惚れ込んでいく騎手の物語が、ここから始まる。

札幌の新馬、そしてマイルへ

2020年9月5日、札幌。芝1500メートルの新馬戦で、単勝1番人気に応えて危なげなく勝ち上がった。鞍上は横山武史。まだ二十代前半の若い手綱が、この馬の最初の一勝を引き寄せた。 明けて2021年、報知弥生賞ディープインパクト記念。中山の2000メートルで、シュネルマイスターはタイトルホルダーに屈して2着に終わる。皐月賞への優先出走権は手にした。だが陣営は、クラシックの王道へは向かわなかった。父も母の一族も、真価を示したのは長い距離ではない。この馬の速さが最も澄んで響くのは、一マイル――その見立てに従い、矛先はNHKマイルカップへと定められた。距離を選ぶことは、自分が何者かを選ぶことでもあった。

ハナ差の戴冠 ― NHKマイルカップ

2021年5月9日、東京・芝1600メートル。手綱はルメールに替わっていた。2番人気。 エンジンのかかりは遅い馬だった。中団でじっと機を計り、直線、外へ持ち出す。前ではソングラインが先に抜け出し、完全に突き放したかに見えた。そこからだった。シュネルマイスターは一完歩ごとに差を詰め、坂を上がってなお脚は衰えず、ゴールの寸前、ソングラインをハナ差だけ捕らえてみせた。3着には1番人気グレナディアガーズ。 外国産馬がNHKマイルカップを制すのは、2001年のクロフネ以来、二十年ぶり。そしてドイツ産の馬が日本の管理下でJRAの大レースを勝つのは、これが初めてだった。海を渡ってきた速さの名匠が、三歳の春に最初の冠を戴いた。この日ハナ差で退けたソングラインの名は、しかし、この先も何度もこの物語に戻ってくることになる。

三歳、古馬の頂へ

戴冠の一か月後、安田記念。三歳で古馬の一線級に挑み、横山武史とともに3着に食い込んだ。世代を越えても通用する――その手応えを胸に、秋を迎える。 10月の毎日王冠。後方でルメールは微動だにしなかった。前で先に抜け出したのは、その年の春に安田記念を制した古馬マイル王ダノンキングリー。並の三歳馬なら、そこで勝負は決まっていた。だがシュネルマイスターは坂を上がってから鋭く伸び、ゴールの瞬間、わずかに前に出た。三歳が、現役最強格の一頭を差し切った一戦だった。 続くマイルチャンピオンシップ。舞台には、引退を表明した女王グランアレグリアがいた。シュネルマイスターは中団から馬群を割ってなお伸び、激しい2着争いを制する。だが女王の背中までは4分の3馬身。頂には手が届きかけ、そして届かなかった。それでも三歳秋、この馬は確かに日本のマイルの最上位に列していた。

越えられぬ初夏 ― 府中とソングライン

四歳、初めて海を渡る。ドバイターフに1番人気で臨んだが、メイダンの夜に伸びを欠いて8着。異国の芝は、この馬の速さを素直に受け止めてはくれなかった。 帰国して、また初夏の府中に立つ。安田記念。一年前、NHKマイルでハナ差だけ前に出た相手――ソングラインが、今度は前にいた。同じ1600メートルで、今度はクビ差、届かなかった。勝ち負けの向きが、ちょうど一年で入れ替わっていた。 秋も、噛み合わなかった。慣れないスプリンターズステークスの1200メートルは忙しく9着、1番人気に推されたマイルチャンピオンシップは5着、暮れの香港マイルも9着。負けたのではない、勝ち切れなかった。1番人気の重圧を背負い続けながら、あと一歩の距離を詰められないまま、四歳という年が過ぎていった。

名手、還る ― 復活と最後の府中

五歳の春、中山記念は4着。歯車はまだ噛み合わない。だが読売マイラーズカップで、ルメールとのコンビが京都のマイルを1番人気で快勝すると、およそ二年ぶりに重賞のタイトルが戻ってきた。速さの名匠は、まだ錆びていなかった。 そして三たび、初夏の府中。安田記念。1番人気に支持された。二年前は3着、一年前は2着。今度こそ――そう待つ声は多かった。だが直線、また前を行っていたのはソングラインだった。ソングラインが抜け、セリフォスが続き、シュネルマイスターは3着。三年続けて、この馬は東京のマイルで馬券の内には入り、そして一度も勝てなかった。初夏の府中だけが、最後まで越えられない壁として残った。

同じ世代とともに

2023年11月19日、京都のマイルチャンピオンシップ。1番人気。だが、この日は伸びなかった。7着。それが、シュネルマイスターの最後のレースになった。 11月30日、競走馬登録は抹消された。17戦5勝。頂の冠はNHKマイルカップの一つきり、しかしその下には、古馬の王を差し切った毎日王冠があり、女王に次いだマイルチャンピオンシップがあり、府中の壁に三度挑んだ初夏があった。1番人気に幾度も推されたのは、この馬が示し続けた格の証だった。 この秋、ソングラインもまた現役を退いた。NHKマイルでハナ差、安田記念で二度――同じ世代のマイルで、幾度も鼻面を並べた好敵手が、示し合わせたように同じ季節に去っていく。ルメールとの長い旅も、ここで終わった。 北海道・安平の社台スタリオンステーション。速さの名匠は、いまは走らない。ドイツから運ばれてきた母の血を、今度は伝える側に立っている。牧場の朝の光の中で、その鹿毛は、府中で越えられなかった一段のことを、もう思い出しはしないだろう。

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