名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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サトノレーヴのイメージビジュアル
サトノレーヴSatono Reve
Satono Reve

サトノレーヴ

通算成績20戦9勝

獲得賞金83,551万円

生年月日 2019.03.22(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
サトノレーヴの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 GIジュライC ニューマーケット 芝1200 1人気 C.ルメール 1:10.20 上り0.0
2 GIQE2世ジュビリーS アスコット 芝1200 2人気 1:11.82 上り0.0
2 GIチェアマンズSP シャティン 芝1200 2人気 J.モレイラ 1:07.77 上り0.0
1 GI高松宮記念 中京 芝1200 1人気 C.ルメール 1:06.3 上り32.4映像
9 GI香港スプリント シャティン 芝1200 2人気 R.ムーア 1:08.98 上り0.0映像
4 GIスプリンターズS 中山 芝1200 1人気 J.モレイラ 1:07.2 上り33.0映像
2 GIQE2世ジュビリーS アスコット 芝1200 1人気 1:11.37 上り0.0
2 GIチェアマンズSP シャティン 芝1200 3人気 J.モレイラ 1:08.23 上り0.0
1 GI高松宮記念 中京 芝1200 2人気 J.モレイラ 1:07.9 上り33.4映像
3 GI香港スプリント シャティン 芝1200 3人気 J.モレイラ 1:08.27 上り0.0映像
7 GIスプリンターズS 中山 芝1200 1人気 D.レーン 1:07.4 上り33.8映像
1 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 2人気 D.レーン 1:07.9 上り34.0映像
1 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 2人気 浜中俊 1:08.4 上り34.6映像
1 L春雷S 中山 芝1200 1人気 J.モレイラ 1:07.1 上り33.2
4 GIII阪急杯 阪神 芝1400 4人気 小崎綾也 1:21.6 上り36.1映像
1 朱雀S 京都 芝1200 1人気 浜中俊 1:07.7 上り33.4
1 勝浦特別 中山 芝1200 1人気 浜中俊 1:07.7 上り34.0
1 3歳以上1勝クラス 函館 芝1200 1人気 浜中俊 1:12.3 上り37.0
2 長万部特別 函館 芝1200 2人気 浜中俊 1:09.7 上り35.0
1 3歳未勝利 中山 芝1600 1人気 石橋脩 1:34.6 上り35.3

血統

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サトノレーヴの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ロードカナロアLord KanaloaキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファス
レディブラッサムStorm Cat
サラトガデュー
チリエージェサクラバクシンオーSakura Bakushin Oサクラユタカオー
サクラハゴロモ
メガミゲランシェイディハイツ
モガミゲラン
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父ロードカナロア、母チリエージェ。主な勝ち鞍は高松宮記念・函館スプリントS・キーンランドカップ。

名と血 ― さくらんぼの牝系と、堀宣行の厩舎

2019年3月22日、白井牧場に生まれた鹿毛の牡馬。父はスプリント王ロードカナロア、母はチリエージェ、母の父にサクラバクシンオー。母の名はイタリア語で「さくらんぼ」、その父はさくら――短い距離を速く駆ける血を、代々受け継いできた快速の牝系である。馬主はサトミホースカンパニー、里見治のサトノの冠に、フランス語で夢を意味するレーヴを重ねた。その夢を託されたのは、美浦の堀宣行厩舎だった。 2022年4月、中山の芝1600mでデビュー。石橋脩を背に2番手を進み、直線で先頭に立つと、追い込むイワクニを半馬身しのいで初陣を飾った。この日の距離は1600m。だがこの馬の本当の戦場は、やがてもっと短く、もっと速い場所になる。母がかつて、もう一頭の快足を送り出していた、あの場所に。

兄ハクサンムーン ― 母が先に送った快足

サトノレーヴが生まれる十年前、同じチリエージェの腹から、一頭のスプリンターが世に出ていた。半兄ハクサンムーン。父はアドマイヤムーン。前へ前へと快足を飛ばす逃げ馬で、2012年の京阪杯、2013年のアイビスサマーダッシュとセントウルステークスを勝ち、その年のサマースプリントの頂点に立った。 だが、大きな舞台の女神は最後まで微笑まなかった。2013年のスプリンターズステークスで2着。そのとき前でゴールを駆け抜けたのは、のちに弟の父となるロードカナロアだった。2015年、六歳で臨んだ高松宮記念でも、あと一歩届かず2着。記録より記憶に残る快足として語り草にはなったが、GIのタイトルだけは、ついに手にできなかった。 母チリエージェが競馬に遺した、その小さな空白を、十年後、同じ母の弟が埋めにいくことになる。

回り道 ― 未勝利からの三年と、故障の空白

弟の歩みは、兄のように早くは花開かなかった。デビュー勝ちのあとは函館で身を立て、2022年夏に1勝クラス、秋に勝浦特別を制し、明けて2023年4月の朱雀ステークスを勝ってオープンの扉を開く。ここまでは順調だった。 だが、その直後に故障が襲う。長い休養。復帰は一年近くを跨いだ2024年2月の阪急杯で、結果は4着。気づけば五歳が近い。兄が駆けた重賞の舞台に、弟はまだ立てずにいた。素質を疑う者はいなかったが、時計の針だけが淡々と進んでいった。

五歳の夏 ― 重賞という名の階段

遅れてきた才能が本来の速力を現したのは2024年だった。4月、ジョアン・モレイラを背に春雷ステークスを快勝。6月の函館スプリントステークスを浜中俊とともに制し、五歳にして初めて重賞を手にする。8月にはダミアン・レーンでキーンランドカップも勝ち、夏の北海道でスプリント重賞を二つ連取した。 勢いのままGIへ向かう。だが9月のスプリンターズステークスは1番人気に応えられず7着。兄が2着に泣いたその同じ舞台で、弟もまた頂点を取りこぼした。師走の香港スプリントは3着。父ロードカナロアが5馬身差で圧勝した海の向こうの短距離戦で、子はまだ表彰台の隅にいた。頂は、見えているのに遠かった。

兄が届かなかったもの ― 二〇二五年、中京

2025年3月、高松宮記念。鞍上はジョアン・モレイラ、2番人気。直線、モレイラは前に壁を作って向かい風をしのぎ、残り250mから追い出した。抜け出したサトノレーヴは、追いすがるナムラクレアを抑えて先頭でゴールを駆け抜ける。悲願のGI初制覇だった。 それは、兄ハクサンムーンが何度挑んでも届かなかったタイトルであり、十年前に同じ母の兄が2着に沈んだ、まさにこの高松宮記念だった。母チリエージェの血が、二頭がかりで、ようやくGIの頂に立った。この年、サトノレーヴはJRA賞最優秀短距離馬に選ばれる。回り道の果てに、遅れてきた素質が、母系の悲願ごと栄冠を掴んだ。

連覇 ― 二〇二六年、レコードと落鉄

種牡馬入りの話もあった。それでも陣営は現役を一年延ばす。2026年3月、七歳になったサトノレーヴは、クリストフ・ルメールを新たな相棒に高松宮記念へ戻ってきた。中団から直線で突き抜け、レッドモンレーヴに2馬身差。勝ちタイム1分6秒3は、2016年ビッグアーサーの記録を塗り替えるレースレコードだった。 高松宮記念の連覇は、キンシャサノキセキ(2010・2011年)以来、史上2頭目。そのキンシャサノキセキを連覇させたのも、堀宣行その人である。師は自らの手で、この春の短距離王決定戦を二度、同じ馬に勝たせる離れ業を、二頭で再現してみせた。 レース後、サトノレーヴの左後肢は落鉄していた。それでもルメールは涼しい顔で言い切った。「蹄鉄なしでも勝っていました」[^1]。父ロードカナロアもかつて勝った高松宮記念で、子は父を一つ超える連覇を果たした。

出典:スポーツナビ「『メチャクチャ強い!』名手絶賛、サトノレーヴ驚異のレコードで示した『現役続行』の正解」2026年3月30日配信、https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2026033000010-spnaviow、閲覧日:2026年7月18日。

父の庭へ ― まだ見ぬ頂を追って

国内の春の頂は極めた。残るは、父だけが立った海の向こうである。ロードカナロアは香港スプリントを連覇し、日本のスプリンターとして世界最高のレーティングを受けた馬だった。その庭に、子は繰り返し挑む。 香港のチェアマンズスプリントプライズは2025年も2026年も2着。アスコットのクイーンエリザベス2世ジュビリーステークスも二年続けて2着で、ロイヤルアスコット開催のGIで連対した日本馬は、この馬が史上初めてだった。だが、あと一つが遠い。2026年7月、拠点をニューマーケットに移して臨んだジュライカップは、1番人気で先行しながら、コマンチェブレーブに屈して3着。七度目の海外GI挑戦も、悲願には届かなかった。 母チリエージェが遺した二頭――記憶に残った兄と、記録を掴んだ弟。その弟がいま、父の背中だけが立った海外の頂を見上げて、なお走り続けている。あと半馬身が、あと一つが、どうしても遠い。それでも、この馬は次の一戦へと向かっていく。

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