名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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サトノダイヤモンドのイメージビジュアル
サトノダイヤモンドSatono Diamond
Satono Diamond

サトノダイヤモンド

通算成績18戦8勝

獲得賞金86,624万円

生年月日 2013.01.30(平成25年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
サトノダイヤモンドの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 GI有馬記念 中山 芝2500 6人気 B.アヴドゥラ 2:32.8 上り36.2映像
6 GIジャパンカップ 東京 芝2400 3人気 J.モレイラ 2:21.9 上り34.7映像
1 GII京都大賞典 京都 芝2400 2人気 川田将雅 2:25.4 上り34.1映像
6 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 C.ルメール 2:12.4 上り36.6映像
7 GI大阪杯 阪神 芝2000 3人気 戸崎圭太 1:59.2 上り34.5映像
3 GII金鯱賞 中京 芝2000 2人気 C.ルメール 2:01.9 上り33.7映像
15 GI凱旋門賞 シャンティイ 芝2400 2人気 C.ルメール 映像
4 GIIフォワ賞 シャンティイ 芝2400 2人気 C.ルメール 2:36.4 映像
3 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 2人気 C.ルメール 3:12.7 上り35.0映像
1 GII阪神大賞典 阪神 芝3000 1人気 C.ルメール 3:02.6 上り35.4映像
1 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 C.ルメール 2:32.6 上り35.5映像
1 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 C.ルメール 3:03.3 上り34.1映像
1 GII神戸新聞杯 阪神 芝2400 1人気 C.ルメール 2:25.7 上り34.2
2 GI東京優駿 東京 芝2400 2人気 C.ルメール 2:24.0 上り33.4映像
3 GI皐月賞 中山 芝2000 1人気 C.ルメール 1:58.3 上り34.8映像
1 GIIIきさらぎ賞 京都 芝1800 1人気 C.ルメール 1:46.9 上り34.2映像
1 2歳500万下 阪神 芝2000 1人気 C.ルメール 2:03.8 上り33.9
1 2歳新馬 京都 芝2000 1人気 C.ルメール 2:03.8 上り34.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
サトノダイヤモンドの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
マルペンサMalpensaOrpenLure
Bonita Francita
MarsellaサザンヘイローSouthern Halo
Riviere
STORY

旅程 — この馬の物語

2013年生まれの鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母マルペンサ。主な勝ち鞍は菊花賞・有馬記念・きさらぎ賞。

額の星 ― 名前と血

宝石の名を、その額の星から採った。サトノダイヤモンド。 2013年1月30日、ノーザンファームに生まれた鹿毛。冠名の「サトノ」は馬主・里見治のもの、「ダイヤモンド」は、額に浮かぶ流星の形から連想された。 父は、あの三冠馬ディープインパクト。母マルペンサはアルゼンチンでGIを三つ勝った女傑で、そのうち二つは八馬身、九馬身という常識外れの差での楽勝だった。異国の底力と、日本近代競馬の結晶――血だけを見れば、これほど恵まれた良血もそういない。2011年、吉田勝己がこの牝馬を買い、日本の地で仔を産ませた。 手綱を託されたのは、日本に根を下ろした名手クリストフ・ルメール。育てるのは栗東の池江泰寿――かつてオルフェーヴルを率い、凱旋門賞に二年続けて挑んでは、いずれも2着に泣いた男だった。まだ誰も知らない。この良血が、いつか同じ舞台へ向かうことを。

京都の秋、三連勝

2015年11月8日、京都の芝2000メートル。雨を吸った重馬場の新馬戦を、2馬身半差で勝ち上がる。手綱を取ったのは、この年の3月に日本の通年免許を取得したばかりのクリストフ・ルメールだった。暮れの阪神で連勝し、年が明けたきさらぎ賞は後続に3馬身半の差をつけて重賞初制覇。デビューから3連勝、単勝はいずれも1番人気である。 急がず、乱れず、抜け出せば突き放す。完成された若駒は瞬く間にクラシックの本命候補へ押し上げられた。そして新馬戦の朝に始まった人馬の旅は、このあと淀の歓喜からシャンティイの泥まで、ほとんどの道のりを共にすることになる。

八センチ ― 二〇一六年の春

初めての敗戦は、中山で待っていた。きさらぎ賞から直行した皐月賞。単勝2.7倍の1番人気に推されながら、直線でリオンディーズの斜行に煽られて勢いを削がれ、レースレコードで駆けた8番人気ディーマジェスティの3着に敗れる。それでも陣営に悲壮感はなかった。目標は初めから、府中に置かれていた。 5月29日、東京優駿。中団やや前で運び、直線、先行するエアスピネルへマカヒキと並んで襲いかかる。二頭はもつれるようにゴールへ飛び込んだ。写真判定の末、前にいたのはマカヒキ。その差、わずか8センチ。上がり33秒4の豪脚は、ハナだけ届かなかった。しかもレース後、向正面で左後肢の蹄鉄を落としていたことが分かる。よりによってダービーの日に——里見は自らの馬運を嘆き、温厚で知られる池江は、傍らの物を思わず蹴り飛ばしたという。 ルメールだけは悲観していなかった。負けはしたが、この馬も相当に良い馬だと分かった、と。それでも傷んだ蹄を前に、その年の凱旋門賞挑戦の夢はいったん仕舞われ、目標は秋、京都の3000メートルへ移った。

二十六年目の一冠 ― 菊花賞

夏を無事に越し、神戸新聞杯をクビ差で制して淀へ向かう。10月23日、菊花賞。皐月賞馬ディーマジェスティとの対戦成績は1勝1敗、世代の決着戦と目された3000メートルで、単勝2.3倍の1番人気に推された。 二度も不運に泣かされた馬である。ルメールは馬群に閉じ込められない外めの位置を選び、3コーナー過ぎから徐々に進出。直線で先頭に立つと、あとは突き放す一方だった。2馬身半差の完勝。追い込んだレインボーラインが2着に入った。——馬主歴26年目、里見治が初めて手にしたGIタイトルだった。ルメールにとっても日本のクラシック初制覇であり、ディープインパクト産駒にとっても初めての菊花賞。三つの「初めて」が、一つのゴール板の上に重なった。 口取りへ戻ってきた名手は、しばらく馬を撫でて、馬を降りるとき涙を流していた。その姿を見た里見が振り返る。「ハグをする時に“本当に勝ったんだ”という思いが……」[^1]。四半世紀の重さが、淀の直線でようやく解けた。

出典:競馬ラボ「里見治オーナー 菊花賞でGⅠ初勝利記念・独占インタビュー! 第1章:菊花賞で悲願達成のとき オーナーの心境や如何に」2016年11月17日配信、https://www.keibalab.jp/column/specialtalk/vol_35_1/、閲覧日:2026年7月19日。

残り百メートル ― 有馬記念

堰は、切れれば一気だった。菊花賞からのふた月で、サトノクラウンが香港ヴァーズを、サトノアレスが朝日杯フューチュリティステークスを勝ち、冠名は立て続けに大きなタイトルと結ばれ始める。そして12月25日、有馬記念。相手は、この年の天皇賞(春)とジャパンカップを制した現役最強の古馬キタサンブラック。それでも中山のファンが1番人気に推したのは、3歳のサトノダイヤモンドだった。 中団で脚をため、3コーナー過ぎから外を進出。先頭で押し切りを図るキタサンブラックとの差を、直線、一完歩ずつ削っていく。残り100メートル、二つの影が重なる。ゴール寸前、クビだけ前に出たのは3歳馬の方だった。ルメールにとって有馬記念は、2005年にハーツクライディープインパクトの無敗を止めて以来、11年ぶり2勝目——今度は、そのディープインパクトの仔の背中だった。 この年のJRA賞最優秀3歳牡馬。そしてレースの直後、里見と池江は翌年の凱旋門賞挑戦を決断する。年明けのJRA賞授賞式で、池江は阪神大賞典から天皇賞(春)を経てフランスへ渡るローテーションを正式に発表した。

シャンティイの雨 ― 凱旋門賞

2017年春、阪神大賞典をシュヴァルグランに1馬身半差で完勝して始動する。だが天皇賞(春)は、キタサンブラックが3分12秒5のレコードで駆け抜け、3着まで。淀に借りを残したまま、夏の終わり、馬はフランスへ渡った。 前哨戦のフォワ賞は4着。そして10月1日——ロンシャン改修のためシャンティイで代替開催された凱旋門賞は、雨に祟られた。深く水を含んだ重馬場。2番人気に推されたサトノダイヤモンドは、池江の目にはテンから走りにくそうに映り、見せ場のないまま15着に沈む。勝ったのは英国の3歳牝馬エネイブルだった。 「悔しくて情けない気持ちでいっぱいです」[^1]。そう肩を落とした池江は、それでも、懲りずに挑み続けたいと前を向いた。父ディープインパクトも果たせなかった夢は、その仔にもまだ遠かった。

出典:デイリースポーツ「【凱旋門賞】サトノダイヤモンド輝けず 15着惨敗…欧州の重馬場に泣いた」2017年10月3日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2017/10/03/0010609311.shtml、閲覧日:2026年7月19日。

デビューの地で ― 京都大賞典

帰国後、歯車はなかなか噛み合わなかった。2018年、復帰初戦の金鯱賞は3着。大阪杯は7着に沈み、1番人気に推された宝塚記念も6着。かつて最後の一完歩で前に出たはずの脚が、直線で伸びきらない。 夏の休養を挟み、陣営が秋の始動戦に選んだのは京都大賞典だった。初めてコンビを組む川田将雅は、道中を後方でじっと我慢させ、直線、残り300メートルで先に抜け出す。レッドジェノヴァの追撃を半馬身しのいで押し切った。前年の阪神大賞典以来、1年半余りぶりの勝利。舞台は京都——3年前の秋、初めて走り、初めて勝った、デビューの地である。 だが上り坂はそこまでだった。ジャパンカップは、アーモンドアイが世界レコードを刻んだその日に6着。既に引退と種牡馬入りが決まっていた暮れの有馬記念も6着に終わり、12月26日、競走馬登録を抹消。18戦8勝、獲得賞金8億6624万円。旅の終わりは、二年前にクビ差の歓喜を刻んだ、あの中山だった。

原石の行方 ― 父として

2019年から社台スタリオンステーションで種牡馬となり、2024年からは日高のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに繋養されている。産駒からは、サトノグランツが京都新聞杯と神戸新聞杯を、シンリョクカが新潟記念を、オールナットがチャレンジカップを勝った。シンリョクカは、12番人気で挑んだ阪神ジュベナイルフィリーズで、のちの三冠牝馬リバティアイランドの2着に食い下がった娘である。 血の物語は、産駒だけのものではない。母マルペンサは、息子が菊花賞を勝つ半年前——2016年の春に急死していた。残された仔は、サトノダイヤモンドを含めてわずかに4頭。6勝を挙げた半妹リナーテも、勝ち星に恵まれなかった半妹マルケッサも繁殖に入り、マルケッサは2022年のホープフルステークスを制するドゥラエレーデを産んだ。全弟サトノジェネシスは、4戦3勝のまま脚部不安に泣いて種牡馬となった。アルゼンチンから渡った血は、短い歳月のうちに、確かにこの国へ根を張ったのである。 そして里見治の緑の勝負服は、あの菊花賞を境に、いくつもの大レースの表彰台に立つようになった。最初の扉を開けたのは、この馬である。二十六年待った男と、涙を流した名手と、8センチの悔しさと、残り100メートルの歓喜。日高の空の下、その額にはいまも、小さな流星がダイヤモンドの形のまま光っている。

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