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サリオス
通算成績15戦5勝
獲得賞金4億9,217万円
生年月日 2017.01.23(平成29年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 取 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | ムーア | — | 映像 | |||
| 14 | GIマイルチャンピオンS | 阪神 芝1600 | 3人気 | R.ムーア | 1:33.6 | 上り34.1 | 映像 | |
| 1 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 1人気 | 松山弘平 | 1:44.1 | 上り33.8 | 映像 | |
| 3 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 8人気 | D.レーン | 1:32.3 | 上り33.0 | 映像 | |
| 15 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 4人気 | 石橋脩 | 1:08.9 | 上り35.0 | 映像 | |
| 3 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | 3人気 | D.レーン | — | 映像 | ||
| 6 | GIマイルチャンピオンS | 阪神 芝1600 | 3人気 | 松山弘平 | 1:33.1 | 上り33.7 | 映像 | |
| 8 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 3人気 | 松山弘平 | 1:32.4 | 上り33.7 | 映像 | |
| 5 | GI大阪杯 | 阪神 芝2000 | 3人気 | 松山弘平 | 2:02.7 | 上り37.7 | 映像 | |
| 5 | GIマイルチャンピオンS | 阪神 芝1600 | 2人気 | M.デムーロ | 1:32.4 | 上り33.1 | 映像 | |
| 1 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 1人気 | C.ルメール | 1:45.5 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 2人気 | D.レーン | 2:24.6 | 上り34.1 | 映像 | |
| 2 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 3人気 | D.レーン | 2:00.8 | 上り35.4 | 映像 | |
| 1 | GI朝日杯フューチュリティステークス | 阪神 芝1600 | 1人気 | R.ムーア | 1:33.0 | 上り35.4 | 映像 | |
| 1 | GIIIサウジアラビアロイヤルカップ | 東京 芝1600 | 1人気 | 石橋脩 | 1:32.7 | 上り33.1 | 映像 | |
| 1 | 2歳新馬 | 東京 芝1600 | 2人気 | D.レーン | 1:37.1 | 上り33.1 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ハーツクライHeart's Cry | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| アイリッシュダンス | トニービンTony Bin | |
| ビューパーダンスBuper Dance | ||
| 母サロミナSalomina | Lomitas | Niniski |
| La Colorada | ||
| Saldentigerin | Tiger Hill | |
| Salde |
旅程 — この馬の物語
2017年生まれの栗毛の牡馬。父ハーツクライ、母サロミナ。主な勝ち鞍は朝日フューチュリティ・サウジアラビアRC・毎日王冠。
戦の踊り ― サロミナの四番仔
2017年1月23日、北海道安平町のノーザンファームに栗毛の牡馬が生まれた。父はハーツクライ、母はサロミナ。 母はドイツの牝馬である。2012年、ケルンの未勝利戦から数えて無傷の四連勝でディアナ賞――独オークスを3馬身半差で制した。ハンブルク牝馬賞を勝った時点でオーストラリアへの売却が一度は決まりかけていたが、独オークスのあとにノーザンファーム代表の吉田勝己がそれを上回る額を提示し、その年の9月に契約が成立する。ドイツの牝系は、そうして安平の丘に移された。 名はローマ神話に由来する。戦いの踊りを発明したとされる者の名で、母サロミナからの連想だという。血と名の両方を、この馬は母から受け取っていた。 一口馬主のシルクホースクラブで総額7,000万円の募集馬となり、預けられたのは美浦の堀宣行厩舎。以後、引退までこの厩舎を出ることはない。 2019年6月2日、東京芝1600mの新馬戦。馬体重534キロの大きな体に跨がったのはダミアン・レーンだった。中団から追い出すと、逃げ粘る1番人気アブソルティスモを捉えて2馬身。2番人気の評価に、初戦で応えている。この日から三年、レーンはこの馬の最初の勝利と、いちばん惜しい二つの敗北に立ち会うことになる。
二つのレコード ― 無傷の二歳王者
10月5日、東京のサウジアラビアロイヤルカップ。鞍上は石橋脩、単勝1.5倍。四番手を追走し、直線でクラヴァシュドールとの叩き合いを制した。1分32秒7は東京芝1600mの2歳コースレコード。二戦目にして、もう重賞馬だった。 12月15日、阪神の朝日杯フューチュリティステークス。ライアン・ムーアを迎えて1番人気。逃げるビアンフェを見る三、四番手から、直線でまずその逃げ馬を交わし、食い下がるタイセイビジョンらを突き放した。着差は2馬身半。勝ち時計1分33秒0は、一昨年にダノンプレミアムが出したタイムを0秒3更新するレースレコードだった。無傷の三連勝でのGI制覇に、生産者の吉田勝己はもうクラシックに行くしかないと言い切っている。それでもムーアは、カーブで子供っぽさが出たと付け加えている。完成されているように見えて、まだ子供だった。 だが年が明け、JRA賞最優秀2歳牡馬に選ばれたのはサリオスではなかった。同じく三戦三勝、暮れのホープフルステークスを勝った牡馬――コントレイル。二つのレコードで2019年を駆け抜けた栗毛のすぐ隣に、その名はもうあった。
半馬身 ― 無人の中山
2020年4月19日、皐月賞。新型コロナウイルスの流行により、スタンドに客はいなかった。 サリオスは前哨戦を使わず、この一戦へ直行してきた。手綱は新馬戦以来のレーンに戻る。同じく直行のコントレイル、弥生賞を勝ったサトノフラッグに次ぐ3番人気だった。 前日の雨で馬場は稍重まで回復していたが、内側の傷みは残っていた。前半1000m59秒8の速い流れを、サリオスは四、五番手で追走する。一方のコントレイルは1枠1番から十二番手に置かれ、三〜四コーナーの中間からまくり気味に外へ持ち出された。 直線、二列目の内から先に抜け出したのはサリオスのほうだった。そこへ大外から伸びてきたのがコントレイルである。残り150m、二頭は併せ馬のまま後続を突き放し、完全な一騎打ちになった。 ゴール寸前で前に出たのは、外の一頭だった。着差1/2馬身。3着ガロアクリークまでは3馬身半あった。この日、二頭だけが世代の別の場所にいた。
三馬身 ― 同じ二頭、同じ順
5月31日、東京優駿。76年ぶりに観客のいないダービーだった。コントレイルが単勝1.4倍、サリオスは4.4倍の2番人気。 前半1000mは61秒7。中山とは逆に、緩い流れになった。そして役どころも逆になる。好位の内を進んだのはコントレイルのほうで、サリオスは中団のまま四コーナーを回った。 直線、コントレイルが馬場の真ん中へ持ち出される。残り300mを過ぎてその一頭がスパートすると、瞬く間に馬群から抜け出した。外から二番手に上がったサリオスは食い下がったが、差は3馬身に開いていた。 中山では先に抜け出して差され、府中では先に抜け出されて追った。それでも結果は同じだった。皐月賞の1着・2着が、ダービーでもそのまま1着・2着。同じことは1983年、ミスターシービーとメジロモンスニーの二頭にも起きている。 レース後、レーンは直線で外へ持っていかれたことが痛かったと振り返りながら、道中の折り合いは良かったと相棒の走りを認めている。そのうえで、勝った一頭について、こう言った。「いつも1頭強い馬がいますねえ」[^1]
出典:中日スポーツ・東京中日スポーツ「サリオス 皐月賞の半馬身差が3馬身差に…2戦とも騎乗のレーン「いつも1頭強い馬がいますねえ」」2020年5月31日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/65498 、閲覧日:2026年7月24日。
自分の距離 ― 秋の府中
菊花賞は使わなかった。距離適性を考えれば3000mは長いという判断で、進む道は1600mから2000mに定まる。三冠の三戦目を降りるということは、あの一頭との決着を自分から手放すということでもあった。 10月11日、毎日王冠。クリストフ・ルメールを迎えて単勝1.3倍。稍重の府中を楽な手応えのまま直線で抜け出し、2着ダイワキャグニーに3馬身差をつけた。古馬との初対戦で、重賞は三つ目になった。 11月のマイルチャンピオンシップはミルコ・デムーロに乗り替わって2番人気。後方から上がり最速の脚で追い上げたが、届いたのは5着まで。勝ったのはグランアレグリアだった。デビューから続いていた連対の記録は、六戦で止まった。
遠ざかる一着 ― 二〇二一年
四歳の一年、サリオスは一度も勝てなかった。 4月の大阪杯から松山弘平とのコンビが始まる。重馬場の阪神を三番手から進み、最内を突いて抜け出しを図ったが、直線半ばで脚が上がって5着。勝ったのはレイパパレだった。6月の安田記念を前に、堀は右トモを積極的に治療してきたと明かしていた。だが中団のやや後ろから伸びを欠いて8着。デビュー以来、初めて掲示板を外した。休養を挟んだ秋のマイルチャンピオンシップは、好スタートから三番手につけながら、最後に交わされて6着に終わった。 12月12日、初めての海外遠征。香港・沙田の香港マイル。ここでレーンが戻ってきた。最内枠から好発を決めると、三コーナーの手前ではもう先頭に立っている。控えるでも譲るでもなく、自分から流れを作りにいく競馬だった。直線でも粘り、最後に前へ出たのは連覇を果たした地元のゴールデンシックスティと、もう一頭の香港馬モアザンディスだけ。3着、日本馬では最先着だった。 勝てない一年だったが、負け方の中身は、まだ壊れていなかった。
二年ぶりの一着 ― オグリキャップ以来
五歳の初戦に選ばれたのは高松宮記念だった。中京の芝1200m、この馬にとって初めての距離である。鞍上は石橋脩――デビュー二戦目のサウジアラビアロイヤルカップで、重賞初制覇を託した男だった。重馬場を4番人気で迎えたが直線で伸びず、ナランフレグの勝った一戦で15着。初めての二桁着順だった。 6月の安田記念は馬体重を22キロ減らして臨み、8番人気。外の中団から直線で鋭く伸び、勝ったソングラインとはタイム差なしの3着まで押し上げた。手綱はレーン。新馬戦の府中から三年、この二人が並んで戦った最後のマイルだった。 10月9日、毎日王冠。松山弘平が久しぶりに戻る。出走十頭のうち四頭がGI馬という一戦で1番人気に支持された。発走の直前、隣の枠のダノンザキッドが発馬機に突進して飛び出すアクシデントがあったが、サリオスは動じなかった。中団に控え、直線で馬群を割って伸び、ジャスティンカフェを1/2馬身抑える。時計は1分44秒1、コースレコードだった。 その2着馬の鞍上は、福永祐一である。二年前の春、コントレイルの背でこの馬の前に二度出た男だった。 2020年の毎日王冠以来、およそ二年ぶりの勝利。そして1988年と89年に連覇したオグリキャップ以来、二頭目の毎日王冠二勝馬になった。松山は堀から自信を持って乗るように言われていたと明かし、こう続けている。「まだまだやれる馬です」[^1] この一族と彼の縁は、これが初めてではない。2020年の暮れ、中山の有馬記念で2着に押し上げた半姉サラキアの背にいたのも、この男である。
出典:中日スポーツ・東京中日スポーツ「これが本来の脚、サリオスが長いトンネル抜け出した!コースレコードで2年ぶりの勝利【毎日王冠】」2022年10月9日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/560448 、閲覧日:2026年7月24日。
取り消された最終便 ― 安平へ帰る
11月のマイルチャンピオンシップは14着。鞍上には、朝日杯でこの馬をGI馬にしたムーアがいた。 引退レースは12月11日の香港マイルと決まっていた。二頭の香港馬にだけ前を譲った一年前の舞台へ、もう一度。ところが前日の12月10日、左前肢にハ行が出る。出走取消。最後の一戦は、ゲートが開く前に消えた。12月21日付で競走馬登録は抹消され、15戦5勝の現役生活が終わった。 帰る先は、生まれた町だった。安平の社台スタリオンステーションで種牡馬となり、2023年から供用が始まる。初年度の種付料は150万円、集まった牝馬は176頭。翌年から料金は上がったが、その後も180頭を超える牝馬が集まっている。 血のほうは、待ってはくれない。全妹サフィラは2025年に阪神牝馬ステークスを勝った。母サロミナは、出走した産駒がことごとく勝ち上がっている。そして2026年6月20日、函館の2歳新馬戦をイモージェンという牝馬が勝ち、サリオス産駒の初勝利が記録された。その鞍上は北村友一――2020年の秋、半姉サラキアで府中牝馬ステークスを勝った男である。 二歳の暮れに二つのレコードを刻み、三歳の春に二度、同じ一頭の背中を見た。四歳は勝てず、五歳で二年ぶりに府中の一着へ戻り、最後の一戦は走らせてもらえなかった。その全部を、いま安平の丘が静かに引き受けている。中山と府中の直線で前に開いていた半馬身と三馬身は、この先、仔たちが詰めにいく。
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