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サンテミリオン
通算成績18戦4勝
獲得賞金1億7,674万円
生年月日 2007.01.30(平成19年)毛色 黒鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11 | GIIアメリカジョッキークラブカップ | 中山 芝2200 | 10人気 | 北村宏司 | 2:15.7 | 上り38.3 | — | |
| 18 | GIII愛知杯 | 中京 芝2000 | 15人気 | 丸山元気 | 2:05.3 | 上り36.0 | — | |
| 8 | GIII福島記念 | 福島 芝2000 | 12人気 | 藤岡佑介 | 2:00.4 | 上り35.5 | — | |
| 7 | GII産経賞オールカマー | 中山 芝2200 | 13人気 | 三浦皇成 | 2:16.3 | 上り36.3 | — | |
| 18 | GII目黒記念 | 東京 芝2500 | 9人気 | 北村宏司 | 2:33.7 | 上り37.4 | — | |
| 6 | GII日経賞 | 中山 芝2500 | 10人気 | 北村宏司 | 2:38.7 | 上り37.1 | — | |
| 12 | GIIIダイヤモンドS | 東京 芝3400 | 11人気 | 北村宏司 | 3:38.0 | 上り35.8 | — | |
| 4 | GIIアメリカジョッキークラブカップ | 中山 芝2200 | 9人気 | 北村宏司 | 2:18.5 | 上り37.4 | 映像 | |
| 18 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 12人気 | M.デムーロ | 2:14.0 | 上り35.6 | 映像 | |
| 11 | GII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 9人気 | 三浦皇成 | 1:47.5 | 上り34.6 | — | |
| 14 | GIIIクイーンS | 札幌 芝1800 | 7人気 | 藤岡佑介 | 1:48.4 | 上り37.1 | — | |
| 9 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 5人気 | M.デムーロ | 2:14.0 | 上り35.4 | 映像 | |
| 18 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 3人気 | 藤岡佑介 | 2:00.7 | 上り35.6 | 映像 | |
| 1 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 5人気 | 横山典弘 | 2:29.9 | 上り35.3 | 映像 | |
| 1 | GIIサンスポ賞フローラS | 東京 芝2000 | 1人気 | 横山典弘 | 2:00.2 | 上り34.6 | — | |
| 3 | GIIIフラワーカップ | 中山 芝1800 | 1人気 | 横山典弘 | 1:50.7 | 上り34.8 | — | |
| 1 | 若竹賞 | 中山 芝1800 | 3人気 | 横山典弘 | 1:51.2 | 上り34.6 | — | |
| 1 | 3歳新馬 | 中山 芝2000 | 1人気 | 内田博幸 | 2:06.1 | 上り35.2 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ゼンノロブロイZenno Rob Roy | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ローミンレイチェルRoamin Rachel | マイニングMining | |
| One Smart Lady | ||
| 母モテックMoteck | ラストタイクーンLast Tycoon | トライマイベストTry My Best |
| Mill Princess | ||
| Sudaka | Garde Royale | |
| Didia Clara |
旅程 — この馬の物語
2007年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ゼンノロブロイ、母モテック。主な勝ち鞍は優駿牝馬・サンスポ賞フローラS。
ボルドーの町の名 ― 母が連れてきた一語
名は、母の生国から来た。 2007年1月30日、北海道千歳市の社台ファームに黒鹿毛の牝馬が生まれる。父はゼンノロブロイ、母はモテック。母は1995年にフランスで生まれたラストタイクーンの娘で、かの地で18戦4勝を挙げた。1998年にフロール賞(GIII)を勝ち、翌年はコリーダ賞(GIII)で3着に入っている。その母Sudakaもクレオパトル賞の勝ち馬で、母娘二代でフランスの重賞を手にした一族である。 モテックはやがて海を渡り、千歳の社台ファームで繁殖牝馬になった。半兄にサンデーサイレンス産駒のヴィクトリーモーン、半姉にアグネスタキオン産駒のライトモチーフとテクニカルランがいる。そして2007年生まれの娘に与えられたのは、母の生まれた国の地名だった。サン=テミリオン。ボルドー近郊、ドルドーニュ川の右岸に広がる町である。中世からブドウが植えられ、地下を刳り貫いて造ったモノリス――一枚岩の教会が残り、1999年にはブドウ畑を含む一帯がユネスコの世界遺産に登録された。ワインの名でもあり、土地の名でもある一語を、フランス生まれの母を持つ牝馬が背負った。 馬主は吉田照哉。生産した社台ファームの代表が、自分の牧場で生まれたこの黒鹿毛を自分の名義で走らせた。預けたのは美浦の古賀慎明厩舎――2006年に開業した、まだ若い厩舎である。 母の競走成績は、18戦4勝だった。
正月五日の新馬 ― 五か月で樫まで
この馬の競走生活は、クラシックの年の正月に始まっている。 2010年1月5日、中山の芝2000メートル、3歳新馬。内田博幸を背に1番人気に応え、2分06秒1で初戦を勝った。19日後の若竹賞では鞍上が横山典弘に替わり、3番人気ながら直線で抜け出して2勝目を挙げる。3戦目に初めての重賞、中山のフラワーカップ。単勝1.6倍の1番人気に推されたが、後ろからの競馬になって3着に終わった。勝ったのはオウケンサクラである。 陣営は桜花賞を使わなかった。1800メートルでは足りない脚を、距離で活かす。狙いはオークス一本に絞られる。4月25日、東京のサンケイスポーツ賞フローラステークス。1番人気に応えてアグネスワルツを抑え、重賞初制覇。4戦3勝で、府中の2400メートルへ向かうことになった。 手綱を預かる横山典弘は、この年の前半、異様な勢いで走っていた。4週続けて重賞を勝つ猛烈な滑り出しを見せ、5月16日にはブエナビスタでヴィクトリアマイルを制して、その年の重賞10勝目を上半期のうちに数えている。それでも、彼がまだ手にしていないクラシックがひとつだけあった。父・横山富雄が1978年にファイブホープで勝った競走――優駿牝馬である。
府中の雨 ― 鼻面を合わせて
5月23日、東京は雨だった。芝は稍重。18頭立ての大外、8枠18番。口にはリング銜がはめられていた。 ニーマルオトメがハナを主張し、内からアグネスワルツが続く。この2頭が後続を大きく離して逃げ、差が詰まり始めたのは3コーナーを過ぎてからだった。サンテミリオンは中団の後方、馬群の外にいる。 直線、まずアグネスワルツが抜け出した。濡れた芝に脚を取られ、前との差を詰めきれない馬が多いなかで、外から二つの影が伸びてくる。サンテミリオンと、その外に並んだ桜花賞馬アパパネ。二頭は並ぶようにして残り200メートルでアグネスワルツを飲み込み、そこから先は互いだけを相手にした。一度、外のアパパネが前に出たように見える。内のサンテミリオンが差し返す。鼻面を合わせたまま、二頭は決勝線へ飛び込んだ。 長い写真判定のあと、電光掲示板に灯ったのは「同着」の二文字だった。JRAのGIで1着が二頭並んだのは、これが初めてである。引き上げてきた蛯名正義と横山典弘は、笑って抱き合った。 この一戦は、いくつもの「初めて」を重ねている。横山典弘にとって初めての優駿牝馬であり、父・横山富雄の1978年に続く、この競走史上初の父子制覇でもあった。古賀慎明にとっては開業5年目にして初めてのGI。種牡馬ゼンノロブロイにとっても、産駒の初GIだった。5戦4勝、単勝380円の5番人気が、桜花賞を使わなかった馬が、桜花賞馬と樫の冠を分け合った。相手は、この年の三冠牝馬になる馬だった。
一日違い ― 古賀慎明のこと
サンテミリオンの調教師は、その日まで大きなタイトルに手が届いていなかった。 古賀慎明は1965年、千葉の生まれ。父は調教師の古賀一隆である。1991年に競馬学校の厩務員課程へ入り、翌年から美浦の飯塚好次厩舎で調教厩務員、同じ年の4月からは藤沢和雄厩舎の調教助手として長い年月を過ごした。2005年に調教師免許を取得し、2006年3月1日、20馬房で厩舎を開ける。父・一隆が定年で引退したのは、その前日の2月28日付だった。一日違いで、親子が同時に現役の調教師である時間は生まれなかった。 開業からのべ2戦目、アネモネステークスをアサヒライジングで勝って初勝利を挙げる。そのアサヒライジングは同じ年にアメリカンオークスで2着、秋には秋華賞で2着、翌年のヴィクトリアマイルでも2着と、大舞台の二番目に立ち続けた。厩舎の初重賞も、2007年のクイーンステークスで同じ馬が運んできたものである。 大きなところで、あと一歩が届かない。そういう厩舎に、開業5年目の雨の府中で、初めてのGIが来た。それも、一頭ぶんの勝利を二頭で分け合う形で。
京都のゲート ― 三番人気の最後方
秋、陣営はトライアルを使わず、秋華賞へ直行する道を選んだ。 だが本番の前に、鞍上を失う。9月26日、中山競馬場の第3競走で横山典弘が落馬し、頸髄損傷と頭蓋骨骨折の重傷を負った。騎手生命が危ぶまれるほどの怪我だった。 10月17日、京都。手綱は藤岡佑介に託される。オークスではモーニングフェイスに乗って8着だった男である。3番人気の支持を受けたが、この日のレースはゲートの中で終わっていた。扉に顔をぶつけて出遅れ、そのとき口を切って出血していたため、ハミを取ることができない。走る形にならないまま最後方を回り、勝ったアパパネから6馬身離された18着。18頭立ての、いちばん後ろだった。 11月14日のエリザベス女王杯は、ミルコ・デムーロが乗った。横山は前日13日に復帰していたが、この日は東京の武蔵野ステークスでユノゾフィーの手綱を取っている。京都には、いなかった。中団から進んだサンテミリオンは直線で伸びを欠き、スノーフェアリーの9着に終わる。 そして、これが最後になった。以後、横山典弘がこの馬の背に戻ることはない。
勝てないまま、ゲートへ ― 十三戦
2011年は8月の札幌・クイーンステークスから始まった。藤岡佑介で14着。10月の府中牝馬ステークスは三浦皇成で11着、11月のエリザベス女王杯は再びデムーロで18着。 2012年から主に手綱を取ったのは北村宏司である。オークスの日、はるか前方でハナを切っていたニーマルオトメの鞍上だった男が、こんどはこの馬の背に座った。1月のアメリカジョッキークラブカップは不良馬場の中山で、9番人気ながら好位から脚を伸ばして4着。勝ったルーラーシップから1秒2差のこの一戦が、オークス以降ではいちばん前の着順になった。 そこからは牡馬相手の長い距離が続く。2月のダイヤモンドステークスは芝3400メートルまで延ばして12着、3月の日経賞は先団から6着、5月の目黒記念は18着。秋はオールカマー7着、福島記念8着、暮れの愛知杯は18着。そして2013年1月20日、アメリカジョッキークラブカップの11着が最後の一戦になり、22日付で競走馬登録を抹消された。 18戦4勝、獲得賞金1億7674万1000円。4つの勝ち星はすべて3歳の1月から5月までに収まっていて、オークスのあとの13戦で勝ち鞍は増えていない。それでも彼女は牡馬混合の重賞にも使われ続け、3400メートルまで試され、そのたびにゲートへ入った。フランスで母モテックが残した数字と、ちょうど同じ18戦4勝だった。 そして、この馬が府中で樫を分け合った2010年、横山典弘は頭蓋骨を折りながら年間120勝を挙げ、自身初の全国リーディングジョッキーになっている。父が勝ったのと同じ競走を父と同じように勝ち、秋に頭蓋骨を折り、それでも年間の頂点に立った一年だった。
千歳の名づけ ― ボルドーを継ぐ娘たち
2013年、生まれた牧場に戻って繁殖牝馬になった。 初仔は2014年、ハービンジャーとの間の牝馬でサンジュリアン。2番仔ポムロール、3番仔フロンサック、4番仔アントルドゥメール――いずれもボルドーに実在するワイン産地の名である。9番仔にはクラレットの名がついた。イギリスでボルドーの赤ワインを指す古い呼び名だ。母がフランスから持ってきた一語は、千歳の厩で一族の姓のようになった。 サンジュリアン、ポムロール、フロンサック、キープインマインド、クラレット。五頭が、美浦の古賀慎明厩舎に入っている。初めてのGIを運んだ牝馬の子どもたちを、同じ調教師が十年ほどにわたって預かり続けたことになる。最も多く勝ち星を挙げたのは5番仔のシャドウモノリス(父ロードカナロア)で、中央から船橋へ移りながら35戦11勝を積み上げた。 2024年3月4日、繋養先の社台ファームで、病気のため息を引き取った。17歳。10番仔にあたる牡馬ツイストマインドは、同じ2024年の生まれである。 東京競馬場の芝2400メートルには、オークス馬を二頭同時に送り出した年がある。2010年5月23日、雨に濡れた決勝線を、鹿毛と黒鹿毛が鼻面を合わせてくぐった。どちらが前だったのかは、いまも決まっていない。決める必要が、そもそもなかった。ボルドーの町の名を持つ牝馬は、その一瞬を分け合ったまま、千歳の草の上に自分の名前を残していった。
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