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サダムパテック
通算成績30戦6勝
獲得賞金4億665万円
生年月日 2008.03.30(平成20年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 12人気 | 菱田裕二 | 1:21.4 | 上り34.6 | — | |
| 11 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 17人気 | 田中勝春 | 1:32.5 | 上り34.6 | 映像 | |
| 10 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 6人気 | 田中勝春 | 1:21.2 | 上り33.8 | — | |
| 8 | GIII京成杯オータムH | 新潟 芝1600 | 6人気 | 田中勝春 | 1:33.7 | 上り33.4 | — | |
| 1 | GIIIトヨタ賞中京記念 | 中京 芝1600 | 7人気 | 田中勝春 | 1:37.1 | 上り36.1 | — | |
| 7 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 17人気 | 田中勝春 | 1:37.5 | 上り37.6 | 映像 | |
| 7 | GII中山記念 | 中山 芝1800 | 15人気 | 田中勝春 | 1:50.8 | 上り36.6 | 映像 | |
| 11 | GIIアメリカジョッキークラブカップ | 中山 芝2200 | 9人気 | 戸崎圭太 | 2:14.8 | 上り36.9 | — | |
| 8 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 5人気 | 和田竜二 | 1:21.9 | 上り34.5 | — | |
| 7 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 5人気 | 和田竜二 | 1:33.0 | 上り34.3 | 映像 | |
| 3 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 10人気 | 和田竜二 | 1:21.1 | 上り33.6 | — | |
| 13 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 8人気 | 武豊 | 1:32.4 | 上り33.6 | 映像 | |
| 7 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 3人気 | 武豊 | 1:20.9 | 上り34.0 | — | |
| 6 | GI香港マイル | 香港 芝1600 | 5人気 | 武豊 | 1:34.6 | — | 映像 | |
| 1 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 4人気 | 武豊 | 1:32.9 | 上り34.1 | 映像 | |
| 8 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 10人気 | 武豊 | 1:57.9 | 上り34.0 | 映像 | |
| 9 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ウィリアムズ | 1:32.0 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 4人気 | C.ウィリアムズ | 1:20.1 | 上り33.3 | — | |
| 13 | GIII東京新聞杯 | 東京 芝1600 | 3人気 | 岩田康誠 | 1:34.2 | 上り34.7 | — | |
| 5 | GIII京都金杯 | 京都 芝1600 | 1人気 | 岩田康誠 | 1:33.2 | 上り34.4 | — | |
| 3 | GIII鳴尾記念 | 阪神 芝1800 | 1人気 | 岩田康誠 | 1:45.7 | 上り34.1 | — | |
| 5 | GI菊花賞 | 京都 芝3000 | 7人気 | 岩田康誠 | 3:03.8 | 上り35.9 | 映像 | |
| 3 | GIIセントライト記念 | 中山 芝2200 | 1人気 | 岩田康誠 | 2:10.7 | 上り34.1 | — | |
| 7 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 2人気 | 岩田康誠 | 2:32.8 | 上り37.4 | 映像 | |
| 2 | GI皐月賞 | 東京 芝2000 | 1人気 | 岩田康誠 | 2:01.1 | 上り34.9 | 映像 | |
| 1 | GII報知杯弥生賞 | 中山 芝2000 | 1人気 | 岩田康誠 | 2:01.0 | 上り34.2 | — | |
| 4 | GI朝日杯フューチュリティステークス | 中山 芝1600 | 1人気 | C.スミヨン | 1:34.1 | 上り34.9 | 映像 | |
| 1 | GIII東京スポーツ杯2歳S | 東京 芝1800 | 1人気 | C.スミヨン | 1:47.3 | 上り33.7 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 京都 芝1600 | 1人気 | C.スミヨン | 1:34.3 | 上り34.8 | — | |
| 2 | 2歳新馬 | 京都 芝1600 | 5人気 | 柴田善臣 | 1:37.1 | 上り33.5 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父フジキセキFuji Kiseki | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ミルレーサーMillracer | Le Fabuleux | |
| Marston's Mill | ||
| 母サマーナイトシティ | エリシオHelissio | Fairy King |
| Helice | ||
| ダイアモンドシティDiamond City | Mr. Prospector | |
| Honey's Flag |
旅程 — この馬の物語
2008年生まれの鹿毛の牡馬。父フジキセキ、母サマーナイトシティ。主な勝ち鞍はマイルチャンピオンS・東京スポーツ杯2歳S・報知杯弥生賞。
時計の名 ― 二〇〇八年、白老
2008年3月30日、北海道白老町の社台コーポレーション白老ファームに、鹿毛の牡馬が生まれた。父はフジキセキ、母はサマーナイトシティ。母にとって3番仔にあたる。 母サマーナイトシティは1999年に同じ白老ファームで生まれた牝馬で、名は「夏の夜の街」に由来する。その父は、1996年の凱旋門賞を5馬身差で勝ち、翌年に社台グループが日本へ迎えたフランスのエリシオ。母の母ダイアモンドシティはミスタープロスペクター産駒で、北アメリカとイギリスを14戦5勝し、1995年に輸入されて白老に繋養された。母自身は24戦3勝で繁殖に上がっている。「シティ」の名を継いできた、アメリカ生まれの牝系である。 1歳のセレクトセールで1260万円の値がつき、大西定の所有馬となった。与えられた名は、馬主の冠名「サダム」に、スイスの時計の名を継いだもの。のちに香港へ遠征したとき、香港ジョッキークラブが登録した中国語名は「瑞士名錶」――スイスの名時計、という意味だった。 栗東の西園正都厩舎に入る。デビューから引退まで、この馬の管理者は最後まで変わらない。 2010年10月17日、京都の芝1600mの新馬戦でデビュー。鞍上は柴田善臣。5番人気ながら上がり3ハロン33秒5の脚を使い、ケイティーズジェムに0.2秒差の2着。13日後の未勝利戦はクリストフ・スミヨンに乗り替わり、1番人気に応え、福永祐一のダノンシャークを3馬身突き放して勝ち上がった。この日2着に敗れた馬とは、四年後、同じ京都のマイルでもう一度顔を合わせることになる。 11月20日、東京スポーツ杯2歳ステークス。1番人気。上がり33秒7で抜け出し、2着リフトザウイングスに0.6秒の差をつけて、重賞をひとつ手に入れた。
単勝一・八倍 ― 朝日杯の四着
12月19日、中山、朝日杯フューチュリティステークス。単勝1.8倍の1番人気だった。 道中は16頭立ての11番手。3コーナーから押し上げ、4コーナーでは勝ち馬とほとんど同じ位置で直線を向いていた。上がりは34秒9。だが、そこから前に出たのは5番人気のグランプリボスだった。2着リアルインパクト、3着リベルタスとはアタマ差、クビ差。サダムパテックは4着で、勝ち馬との差は0.2秒しかない。 父フジキセキは、1994年にこのレース――当時の朝日杯3歳ステークスを勝っている。息子は同じ中山のマイルで、クビ差だけ、その表彰台に届かなかった。
弥生賞 ― 父が走れなかった春へ
2011年3月6日、中山、報知杯弥生賞。手綱は岩田康誠に替わった。11頭立ての1番人気、単勝2.7倍。4番手を進み、上がり34秒2で抜け出して、松岡正海のプレイを半馬身抑える。7着には、この年のクラシックで二度2着に来ることになるウインバリアシオンがいた。 父フジキセキも、1995年に弥生賞を勝っている。そしてその直後、左前脚の屈腱炎が判明して引退した。皐月賞にも、ダービーにも、菊花賞にも、一度もゲートに入っていない。息子は、父が立てなかった場所へ向かうことになった。 その五日後、東北の沖で地震が起きた。
東京の皐月賞 ― 二〇一一年四月二十四日
中山競馬場は使えなくなった。3月22日、日本中央競馬会は、4月17日に中山で行うはずだった皐月賞を、4月24日に東京競馬場の芝2000mで施行すると発表する。三冠の一冠目が、府中の直線を使って争われることになった。 18頭立ての1番人気、単勝2.5倍。57kgを背負ったサダムパテックは、8番手のまま動かず直線を向いた。上がりは34秒9。悪い脚ではなかった。 しかし11番手にいた4番人気の栗毛が、34秒2で伸びてくる。オルフェーヴル。差は3馬身になった。 3着はダノンバラード。鞍上は武豊だった。サダムパテックの1馬身4分の1後ろでゴール板を過ぎたこの男が、一年半後にこの馬の背に跨ることになる。このときは、その先どうなるかを誰も知らない。
不良の府中から、三千メートルまで
5月29日、東京優駿。雨が府中の芝を不良馬場に変えていた。2番人気、単勝6.0倍。8番手で運び、4コーナーでは10番手まで下がって、上がり37秒4。7着。勝ち馬から2.3秒。 この日、直線で前を争ったのはオルフェーヴルと、弥生賞では自分の後ろにいたウインバリアシオンの二頭だった。3着ベルシャザールにはさらに7馬身の差がついている。二か月半で、順番はきれいに入れ替わっていた。 秋。9月18日のセントライト記念は1番人気で3着、勝ったのはフェイトフルウォー。10月23日の菊花賞は7番人気まで評価を落とし、京都の3000mを5着。目の前で三冠が完成した。12月の鳴尾記念も1番人気の3着。年が明けた京都金杯は1番人気で5着、東京新聞杯は13着。 ここまで、重賞で七度1番人気に推され、応えたのは東京スポーツ杯と弥生賞の二度だけだった。人気は、この馬の走りより先に決まってしまう。
距離を削る ― 京王杯スプリングカップ
2012年5月12日、東京の芝1400m。鞍上はオーストラリアのクレイグ・ウィリアムズ。4番人気。7、8番手から上がり33秒3を使い、レオプライムを4分の3馬身差で抑えた。弥生賞から1年2か月、久しぶりの勝利であり、重賞3勝目である。7着にはグランプリボスがいた。 クラシックの2000m、2400mを目指して作られてきた馬が、1400mで戻ってきた。距離を削ったところに、この馬の速さは残っていた。 3週間後の安田記念は1番人気に支持されて9着。重賞での1番人気はこれで八度になり、勝った回数は二度のままだった。 秋初戦は10月28日の天皇賞(秋)。10番人気の8着に終わる。ただしこの日、初めて武豊が跨っていた。負けたレースで、男はこの馬の性質を掴んでいた。
お久しぶりです ― 二〇一二年十一月十八日
武豊の二年半のことを、先に書いておく。2010年3月27日、阪神の毎日杯。騎乗していたザタイキが最後の1ハロンで故障して転倒し、武は頭からコースへ叩きつけられた。左鎖骨遠位端骨折、腰椎横突起骨折、右前腕裂創。全治半年と診断された。127日ぶりに実戦へ戻ったが、左肩は万全ではなかった。2010年は69勝、2011年は64勝でデビュー以来の最低を記録し、23年続いていたJRA・GIの連続勝利記録もこの年に途切れる。2012年の勝ち星は56まで落ちた。 11月18日、京都、マイルチャンピオンシップ。サダムパテックは4番人気、枠は1番。前日の大雨で芝はやや重に渋り、この日の京都は外を回った馬が伸びていた。それでも武豊は内ラチ沿いを選ぶ。同じ西園厩舎のシルポートが飛ばして逃げるのを見ながら、6、7番手。 直線、内から馬群をこじ開けて先頭に立った。外から1番人気のグランプリボスが来る。二年前の中山で先着していった相手は、いまGIを二つ持っていた。クビ差。1分32秒9。3着ドナウブルーはさらに半馬身。 審議の青ランプが一度ともり、そして消えた。馬番「1」が1着で確定すると、スタンドの拍手が一段大きくなった。 ウイナーズサークルで、武豊はこう言った。「お久しぶりです。誰よりも僕が喜んでいます」[^1] 2010年のジャパンカップ以来、2年ぶりのJRA・GI制覇だった。マイルチャンピオンシップは21回目の騎乗にして初勝利。サダムパテックにとっては7度目のGI挑戦で、初めてのタイトルだった。管理する西園正都にとっては、2010年のエーシンフォワード以来、二度目のマイルチャンピオンシップである。 12月9日、沙田。香港マイル。7番人気で6着。勝ったのはアンビシャスドラゴンだった。
出典:スポーツナビ「武豊2年ぶりGI美酒、西園師「彼は競馬界の宝物」=マイルCS」2012年11月18日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201211180002-spnavi 、閲覧日:2026年7月30日。
同じ京都で ― 二〇一三年十一月十七日
2013年は5戦して一度も勝てなかった。5月の京王杯スプリングカップは3番人気の7着。6月の安田記念はロードカナロアの前に13着。これが武豊との最後の一戦になる。 秋、手綱は和田竜二へ渡った。10月のスワンステークスでは10番人気ながら3着に食い込み、まだ終わっていないことを見せる。 そして11月17日、京都、マイルチャンピオンシップ。一年前に自分が勝った、同じ舞台である。5番人気で7着。勝ったのはトーセンラー――あの東京の皐月賞で、自分の五つ後ろ、7着に敗れていた同期だった。鞍上は武豊。この勝利が、武にとって地方交流と海外を含めたGI級競走の100勝目になった。 12月の阪神カップは8着。勝ったのはリアルインパクト。朝日杯フューチュリティステークスで、サダムパテックの前に2着で入っていた馬である。同じ世代の馬たちが、それぞれの距離とそれぞれの季節で、順に答えを出していく。その輪の中に、この馬はまだ立っていた。
五十八キロ、十三番手 ― 中京記念
2014年。1月のアメリカジョッキークラブカップは戸崎圭太を背に11着。3月の中山記念は15番人気で7着。6月の安田記念は不良馬場、単勝213.9倍の17番人気で7着まで押し上げた。数字の上では、もう誰の本命でもなかった。 7月27日、中京、トヨタ賞中京記念。58kgのトップハンデ。16頭立ての大外15番枠、7番人気。鞍上は田中勝春――三年前の東京の皐月賞で、フェイトフルウォーに乗ってこの馬の後ろにいた男である。 稍重の芝1600mは、最後の1ハロンが13秒1まで落ち込む消耗戦になった。サダムパテックは4コーナーを13番手で回り、外へ持ち出す。そこから使った上がり36秒1は、この日のメンバーで最も速い脚だった。太宰啓介のミッキードリームをハナ差、森一馬のマジェスティハーツをさらにクビ差。1番人気のフラガラッハは10着に沈んでいる。 2012年のマイルチャンピオンシップから1年8か月ぶりの勝利。通算6勝目、重賞5勝目。6歳の夏だった。
白老の続き
秋、9月の京成杯オータムハンデキャップは8着、11月のスワンステークスは10着。 11月23日、京都、マイルチャンピオンシップ。17番人気の11着。勝ったのはダノンシャークだった――四年前の秋、京都の芝1600mの未勝利戦で、サダムパテックが3馬身突き放して初めて勝ち上がったとき、2着にいた馬である。四年かけて、順番が入れ替わった。 12月27日、阪神カップ。菱田裕二を背に12番人気の11着。勝ったのはリアルインパクト。これが最後の一戦になった。2015年1月7日、競走馬登録は抹消される。30戦6勝、獲得賞金4億665万円。GIはひとつ。デビューから引退まで、西園正都の管理馬であり続けた。 引退後は優駿スタリオンステーションで種牡馬となり、2016年、韓国へ渡って済州島で繋養された。2022年9月13日、斃死により種牡馬登録が抹消される。14歳だった。 だが白老には、続きがあった。2013年5月2日、母サマーナイトシティが、ディープインパクトとの間に牝馬を産んでいる。フランス語で白夜を意味するジュールポレールと名づけられたその妹は、兄と同じ栗東・西園正都厩舎に入った。厩舎はわざわざ他の馬を移して、かつてサダムパテックが入っていた馬房に、彼女を入れたという。 2018年5月13日、東京、ヴィクトリアマイル。8番人気のジュールポレールは幸英明を背に中団から直線で外へ持ち出して伸び、リスグラシューとの写真判定を約20センチ、ハナ差で制した。西園にとって、サダムパテック以来のGI勝利だった。 スイスの時計の名を与えられた馬が、生涯でいちばん正確に時を刻んだのは、二〇一二年十一月の京都だった。一分三十二秒九。クビ差。その針の内側には、落馬から二年半かけて戻ってきた男の名前も入っている。 やがて彼が空けた馬房に妹が入り、そこからまた一つ、二十センチの決着が生まれた。白老で生まれた同じ母の血が、東京のゴール板の前で、もう一度だけ、正確に止まった。
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