名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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ローマンレジェンドのイメージビジュアル
ローマンレジェンドRoman Legend
Roman Legend

ローマンレジェンド

通算成績29戦10勝

獲得賞金36,119万円

生年月日 2008.02.24(平成20年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ローマンレジェンドの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 GIIIアンタレスS 阪神 ダ1800 10人気 岩田康誠 1:51.4 上り38.0映像
9 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 13人気 内田博幸 1:34.8 上り35.3映像
6 GII東海テレビ杯東海S 中京 ダ1800 5人気 岩田康誠 1:53.5 上り37.7映像
14 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 4人気 岩田康誠 1:52.5 上り39.8映像
3 GIIIみやこS 京都 ダ1800 4人気 岩田康誠 1:47.8 上り36.3
3 GIII平安S 京都 ダ1900 5人気 岩田康誠 1:55.4 上り36.5映像
6 GIIIアンタレスS 阪神 ダ1800 3人気 岩田康誠 1:50.4 上り37.1映像
5 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 岩田康誠 1:36.6 上り35.8映像
5 GI東京大賞典 大井 ダ2000 4人気 岩田康誠 2:04.7 上り38.4
3 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 3人気 岩田康誠 1:51.2 上り36.6映像
1 GIIIエルムS 札幌 ダ1700 3人気 岩田康誠 1:41.9 上り36.2
6 GI東京大賞典 大井 ダ2000 4人気 岩田康誠 2:09.6 上り38.4
13 GIジャパンカップダート 阪神 ダ1800 2人気 岩田康誠 1:51.8 上り37.4映像
3 GIIIみやこS 京都 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:49.4 上り36.5
6 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 2人気 岩田康誠 2:05.1 上り38.6
3 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 1人気 岩田康誠 1:38.3 上り37.5
1 GI東京大賞典 大井 ダ2000 2人気 岩田康誠 2:05.9 上り38.5
4 GIジャパンカップダート 阪神 ダ1800 1人気 M.デムーロ 1:49.8 上り36.6映像
1 GIIIみやこS 京都 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:49.6 上り36.7
1 GIIIエルムS 札幌 ダ1700 1人気 岩田康誠 1:42.2 上り35.9
1 OPジュライS 中京 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:49.4 上り37.0
1 灘S 阪神 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:48.5 上り35.3
1 上賀茂S 京都 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:51.2 上り35.9
1 赤穂特別 阪神 ダ1800 1人気 川田将雅 1:54.7 上り37.5
2 3歳以上1000万下 阪神 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:53.6 上り36.9
1 3歳以上500万下 京都 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:52.6 上り36.3
1 3歳未勝利 京都 ダ1800 1人気 岩田康誠 1:53.0 上り36.7
8 3歳未勝利 京都 芝2200 3人気 藤田伸二 2:17.0 上り35.7
3 3歳新馬 京都 芝2000 1人気 鮫島良太 2:06.1 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ローマンレジェンドの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
スペシャルウィークSpecial WeekサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
キャンペンガールマルゼンスキーMaruzensky
レディーシラオキ
パーソナルレジェンドPersonal LegendAwesome AgainDeputy Minister
Primal Force
Highland LegendStorm Bird
Santella
STORY

旅程 — この馬の物語

2008年生まれの黒鹿毛の牡馬。父スペシャルウィーク、母パーソナルレジェンド。主な勝ち鞍は東京大賞典競走・エルムS・みやこS。

レジェンドの名 ― 千歳の姉と弟

2008年2月24日、北海道千歳市の社台ファームで、黒鹿毛の牡馬が生まれた。母はパーソナルレジェンド。2000年にアメリカで生まれた栗毛の牝馬で、向こうで二十五戦六勝している。三歳の夏にデルマーオークスで三着に入り、四歳でターンバックジアラームハンデキャップを勝ち、五歳の夏にはパーソナルエンサインステークスで二着まで来た。芝でもダートでも、アメリカのGIの掲示板に手が届くところまで行った牝馬である。 その母が日本で産んだ一つ上の姉が、ミラクルレジェンド。父はフジキセキで、名は父の名の一部を英語にした「ミラクル」に、母の名の一部を重ねた造語だった。姉は栗東の藤原英昭厩舎に入り、砂を走った。 弟も、同じ厩舎に入った。名はローマンレジェンド。意味は「ローマの伝説」。母から受け継いだのは、体と、名前の後ろ半分である。馬主は太田美實。勝負服は赤地に水色の一本輪、袖は黄の縦縞。のちに名義は太田珠々子へ移る。 父はスペシャルウィーク。1998年の東京優駿を勝ち、翌年に天皇賞を春秋とも制して、モンジューを迎えたジャパンカップまで勝った、芝の日本総大将である。 2011年1月5日、京都の芝2000m、三歳新馬。鞍上は鮫島良太、一番人気。上がり34秒7の脚で追い上げたが、アドマイヤパーシアの三着だった。同じ月の二十二日、未勝利戦は藤田伸二で芝2200m、八着。 芝では、届かなかった。

六馬身 ― 砂の上で

三か月の休みを挟んで、5月1日の京都に戻ってきたとき、条件が二つ変わっていた。ひとつは馬場がダートになったこと。もうひとつは、鞍上が岩田康誠になったことである。 岩田は1974年、兵庫県姫路市の生まれ。1991年に兵庫県競馬組合でデビューし、地方競馬で二千九百四十一勝を積み上げてから、2006年に中央へ移ってきた男だった。 稍重のダート1800mを1分53秒0。二着に六馬身をつけて、三戦目で初勝利を挙げた。 血の半分は、はじめからそちらを向いていた。母の父オーサムアゲインは、1998年のブリーダーズカップ・クラシックとホイットニーハンデキャップを勝ったアメリカのダート馬である。父が芝の頂点なら、母の父は砂の頂点だった。仔は、母方を選んだ。 そのあとまた半年、休んだ。11月に京都の五百万下を勝ち、12月の阪神で千万下を0秒1差の二着に取りこぼし、暮れの赤穂特別は川田将雅が乗って勝った。三歳の終わりに、三勝。この時点ではまだ、砂の条件馬の一頭にすぎない。

六連勝 ― 二〇一二年

四歳になって、勝ち方が変わった。 4月22日、京都の上賀茂ステークス。6月9日、不良馬場の阪神で灘ステークス。1分48秒5、上がり35秒3。千六百万下を二つ、いずれも一番人気に応えて連勝した。この二戦のあいだの5月27日、岩田はディープブリランテで東京優駿を勝っている。七回目の挑戦で、ダービージョッキーになった年だった。 7月15日、中京のジュライステークス。オープン初挑戦である。三番手で四コーナーを回り、直線で逃げる武豊のトウショウフリークを捕まえて、二着に六馬身。三着のナリタシルクロードは、そこからさらに八馬身後ろにいた。七か月前の千万下で、0秒1だけ先にゴールしていた相手である。時計は1分49秒4。中京のダート1800mのレコードだった。 8月25日、札幌のエルムステークス。重賞は初出走だった。相手にエスポワールシチーがいる。2009年のジャパンカップダート、2010年のフェブラリーステークス、かしわ記念を三度。GI級を通算で九つ勝つことになる七歳である。この日は59キロを課されていた。ローマンレジェンドは56キロ。四コーナーで三頭が横に並び、そこから叩き合って、クビだけ前に出た。1分42秒2。重賞初制覇である。 11月4日、京都のみやこステークス。十六頭立ての単勝1.4倍。六番手で我慢して、直線で差した。クビ差で退けた二着はニホンピロアワーズ。もうクビ差の三着に、三歳のホッコータルマエがいた。 前年の暮れの赤穂特別から数えて、六連勝。四歳の秋、この馬はダートの真ん中に立っていた。

乗れない二日間 ― 十二月二日

11月25日、東京。第32回ジャパンカップ。岩田はジェンティルドンナに乗っていた。直線でビートブラックオルフェーヴルのあいだの進路をこじ開けにかかり、オルフェーヴルに馬体をぶつけながら、ハナ差で先に入線する。二十分の審議のすえ、着順は動かなかった。ただし岩田には、強引な騎乗として次回開催二日間の騎乗停止が科された。自分の手綱が招いた罰である。 その処分にかかった二日のうちの一日が、12月2日だった。 12月2日、阪神。ジャパンカップダート。ローマンレジェンドは単勝2.3倍の一番人気に推されていた。鞍上はミルコ・デムーロ。中団で構え、四コーナーでも同じ位置にいて、直線で伸びきれずに四着。勝ったのは、四週間前のみやこステークスでクビ差退けたニホンピロアワーズだった。二着ワンダーアキュート、三着ホッコータルマエ。背後に置いてきたはずの二頭が、この日は前にいた。 六着に、半姉ミラクルレジェンドがいる。鞍上は川田将雅、十四番人気。同じ母から生まれた姉と弟が、同じ厩舎から、同じ十六頭のなかを走っていた。 一番人気に応えられなかったこと。主戦が鞍にいなかったこと。この二つは、たまたま同じ日に重なっただけである。だが二十七日後の大井で、それは一本の線になる。

大井の十二月二十九日

四週間で十三キロを落として、497キロで大井に立った。東京大賞典。特別区競馬組合が大井競馬場で施行する、地方競馬のGIである。十二頭立て、重馬場。単勝2.6倍の二番人気。一番人気は、前月のJBCクラシックを勝ったワンダーアキュートだった。 フリオーソが逃げた。ローマンレジェンドは四番手、五番手、四番手と進み、四コーナーではもう先頭のすぐ後ろに並んでいる。直線で抜け出した。二着に迫ったのは三歳のハタノヴァンクールで半馬身、そこからアタマ差の三着にワンダーアキュート。三頭が0秒1のなかにいた。2分05秒9。 岩田にとって、2012年という年はこういう年だった。5月に東京優駿を勝ってダービージョッキーになり、11月にジャパンカップを勝ち、その代償として砂の大一番を降ろされ、12月にロードカナロアで香港スプリントを勝った。そして年の最後に、地方競馬の大井へ行って、砂のGIをひとつ取り返した。 兵庫で騎手になった男が、大井でこの馬にGIを獲らせた。二十四回この背中に跨り、そのうち九回勝つことになる男である。

キングの仔たち ― 二〇一三年

翌年は、一度も勝てなかった。 5月6日、船橋のかしわ記念。一番人気で三着。6月26日、不良馬場の帝王賞は二番人気で六着。11月3日のみやこステークスも一番人気に推されて三着。12月29日の東京大賞典は六着だった。かしわ記念、帝王賞、東京大賞典――三度とも、先頭でゴールしたのはホッコータルマエである。前の年のみやこステークスでクビ差だけ退けた三歳が、四歳になっていた。この馬はのちに2016年の川崎記念で、日本競馬史上初のGI(JpnI)十勝目を挙げる。 12月1日、阪神。この日の一戦は、ジャパンカップダートという名で行われる最後のレースだった。翌年から舞台は中京へ移り、チャンピオンズカップと名を変えることが決まっている。ローマンレジェンドは単勝6.3倍の二番人気。四コーナーを十番手で回り、直線で伸びず、十三着。勝ったのは、その年の前半を条件馬として過ごしたベルシャザールだった。 彼の前を行った馬たちの父の名は、たいてい同じである。ホッコータルマエハタノヴァンクールベルシャザール。みなキングカメハメハの仔だった。キングカメハメハの父はキングマンボ、キングマンボの母がミエスク、ミエスクの母パサドーブルの母がサンタキラという。そしてローマンレジェンドの四代母も、そのサンタキラである。砂の上で彼を置き去りにしていった血は、辿ってゆくと彼自身の母系の奥に立っていた。 東京大賞典のあと、右トモの骨折が判明する。全治三か月。年が明けて、藤原英昭は「しっかり治して、また復活させたい」[^1]と言った。

出典:スポニチアネックス「ローマンレジェンド骨折」2014年1月2日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2014/01/02/kiji/K20140102007309130.html 、閲覧日:2026年7月30日。

札幌に、もう一度

戻ってきたのは七か月後、2014年7月27日だった。復帰戦に選ばれたのは、二年前に重賞初制覇を挙げた札幌のエルムステークス。不良馬場、58キロ、三番人気。六歳の夏である。 四番手から二番手へ上がり、四コーナーではクリノスターオーと馬体を並べていた。そのまま直線を二頭で走り、1分41秒9でアタマだけ前に出た。 一年七か月ぶりの勝利であり、同じ重賞の隔年制覇だった。骨を折った馬を治して連れ戻す、という言葉は、この日に果たされたことになる。 12月7日、中京。チャンピオンズカップ。五番手から押し上げ、四コーナーではクリノスターオー、ホッコータルマエと三頭で並んで直線を向いた。今度は捕まえられず、勝ったホッコータルマエから0秒2の三着。年末の東京大賞典は五着。 六歳の暮れになっても、彼はまだGIの掲示板にいた。

先頭を歩く

2015年は五戦して、勝てなかった。2月のフェブラリーステークス五着。4月のアンタレスステークス六着。5月の平安ステークス三着。11月8日のみやこステークスでは、不良馬場を1分47秒8で走り、勝ったロワジャルダンとまったく同じ時計を刻みながら三着だった。12月のチャンピオンズカップは十四着。 2016年。1月の東海ステークス六着。2月のフェブラリーステークスは内田博幸が乗って十三番人気の九着。4月16日、阪神のアンタレスステークスで十二着。これが最後の一戦になった。 4月27日付で、競走馬登録が抹消される。二十九戦十勝、獲得賞金三億六千百十九万四千円。十のうち九つの勝ち鞍で、鞍にいたのは岩田康誠だった。 一つ上の半姉ミラクルレジェンドは、二十五戦十二勝で三億三千二百四十二万円を稼ぎ、レディスプレリュードとJBCレディスクラシックを二年続けて勝っている。母パーソナルレジェンドは日本で十頭を超える仔を産んだが、稼いだ賞金を並べて上の二つに来るのが、この姉と弟である。姉は牝馬の番組を、弟は牡馬の番組を、どちらも砂で走り切った。二頭の差は、三千万円に満たない。 引退後の行き先は、京都競馬場と決まった。誘導馬である。パドックと馬場で、これから走る馬たちの前を歩く仕事だ。 四歳の秋のみやこステークスから、六歳の暮れのチャンピオンズカップまで。この馬はキングカメハメハの仔たちと同じレースを走り続けた。届いた日が幾日かあり、届かなかった日はその何倍もあった。それでも、二十九回ゲートに入って、そのうち十回は誰よりも先にゴール板を過ぎている。 大井の十二月二十九日、二分五秒九。三頭が0秒1のなかにいて、いちばん前にいたのが赤と水色の勝負服だった。ゴール板の前に、この馬より前を走っている馬はいなかった。 先頭を歩くのは、はじめてではない。

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