名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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ローブティサージュのイメージビジュアル
ローブティサージュRobe Tissage
Robe Tissage

ローブティサージュ

通算成績20戦3勝

獲得賞金17,231万円

生年月日 2010.01.28(平成22年)毛色 青毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ローブティサージュの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
GII毎日放送賞スワンS 京都 芝1400 11人気 福永祐一
7 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 5人気 三浦皇成 1:08.9 上り34.4
15 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 3人気 三浦皇成 1:09.5 上り36.0映像
17 GI高松宮記念 中京 芝1200 9人気 池添謙一 1:10.4 上り35.6映像
3 GIII阪急杯 阪神 芝1400 9人気 池添謙一 1:23.8 上り36.3映像
14 GIII京阪杯 京都 芝1200 4人気 三浦皇成 1:09.4 上り33.8
11 GIスプリンターズS 新潟 芝1200 7人気 秋山真一郎 1:09.1 上り34.4映像
1 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 3人気 三浦皇成 1:09.0 上り34.4
2 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 6人気 三浦皇成 1:08.5 上り34.0
11 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 15人気 横山典弘 1:32.9 上り34.3映像
3 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1400 9人気 A.シュタルケ 1:20.3 上り34.2
7 GIII京都牝馬S 京都 芝1600 9人気 岩田康誠 1:33.6 上り34.7
11 GI秋華賞 京都 芝2000 5人気 岩田康誠 1:59.1 上り34.9映像
6 GII関西TVローズS 阪神 芝1800 5人気 岩田康誠 1:48.1 上り37.1
9 GI優駿牝馬 東京 芝2400 7人気 岩田康誠 2:26.7 上り35.6映像
5 GI桜花賞 阪神 芝1600 8人気 秋山真一郎 1:35.6 上り36.2映像
9 GIIIチューリップ賞 阪神 芝1600 2人気 秋山真一郎 1:36.0 上り34.8
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 5人気 秋山真一郎 1:34.2 上り35.9映像
2 GIIIKBSファンタジーS 京都 芝1400 4人気 秋山真一郎 1:21.3 上り34.2
1 2歳新馬 函館 芝1800 2人気 秋山真一郎 1:53.2 上り35.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ローブティサージュの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ウォーエンブレムWar EmblemOur EmblemMr. Prospector
Personal Ensign
Sweetest LadyLord at War
Sweetest Roman
プチノワールSingspielIn the Wings In The Wings
Glorious Song
リッチアフェアーRich AffairMachiavellian
Much Too Risky
STORY

旅程 — この馬の物語

2010年生まれの青毛の牝馬。父ウォーエンブレム、母プチノワール。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・キーンランドC。

黒い衣 ― 安平の青毛

2010年1月28日、北海道安平町のノーザンファームで青毛の牝馬が生まれた。父ウォーエンブレム、母プチノワール。 母も同じ牧場の生まれで、やはり青毛だった。ただ、一度もゲートに入らないまま繁殖牝馬になっている。その母――この牝馬の祖母リッチアフェアーもまた青毛で、イギリスから輸入された牝馬である。黒い衣を代々まとってきた牝系だった。名は、フランス語でドレスを紡ぐという意味で付けられている。 一族はすでに日本の頂を踏んでいた。祖母リッチアフェアーには全姉がいる。同じマキャベリアンとMuch Too Riskyのあいだに生まれたホワイトウォーターアフェアで、その仔が皐月賞・有馬記念・ドバイワールドカップを勝ったヴィクトワールピサである。同じ母からは、安田記念のアサクサデンエン、小倉記念のスウィフトカレントも出た。母プチノワールとヴィクトワールピサは、母同士が全姉妹――いとこの間柄になる。 馬主はシルクレーシング、預けられたのは栗東の須貝尚介厩舎。この馬は引退の日まで、この厩舎の管理馬だった。 2012年7月15日、函館の芝1800メートル。10頭立ての2番人気で、道中は後方にいた。直線で上がり35秒8を使って差し切り、2着のアドマイヤゼファーに0秒2をつけた。鞍上は秋山真一郎である。 秋山は滋賀の生まれで、父の忠一も元JRAの騎手だった。1997年に栗東の野村彰彦厩舎からデビューし、2年目にカネトシガバナーで神戸新聞杯を勝って重賞初制覇を果たす。以後は毎年、JRAの重賞を勝ち続けた。それでもGIだけが遠かった。壁が崩れたのはこの新馬戦の二か月前――2012年5月6日、カレンブラックヒルでNHKマイルカップを勝ったときで、デビュー16年目、GIは55回目の騎乗だった。 待つことを知っている男が、黒い二歳牝馬の背にいた。

五番人気、一枠一番 ― 二歳女王

11月10日、京都のファンタジーステークス。およそ四か月ぶりの実戦で4番人気。大外から末脚を伸ばして先行勢をまとめて交わしたが、好位からすんなり抜け出したサウンドリアーナには届かず、0秒5差の2着だった。 12月9日、阪神。晴れ、芝は良。18頭立ての阪神ジュベナイルフィリーズ。1番人気は同じ須貝厩舎のコレクターアイテムで、アルテミスステークスをレコードで勝ってきた馬である。ローブティサージュは単勝8.1倍の5番人気、枠は1枠1番だった。 タガノミューチャンが引っ張って1000メートル通過57秒8。速い流れの中を、1番枠から出たこの馬は中団の内につけた。コーナーで距離をロスせず、先行勢を射程に入れて直線を向く。前がバラけたところへ、左の鞭に応えて伸びた。直線に向いたときの感触を、秋山はこう語っている。「手応えはいい。スペースがあれば抜けられる」[^1] 2番手から抜け出したクロフネサプライズが懸命に抵抗し、内からはレッドセシリアが追い込んできた。その競り合いを制して、先頭でゴール板を通過する。1分34秒2、2着とはクビ差、3着もクビ差。1番人気のコレクターアイテムは4着だった。単勝810円、馬連は3万5990円がついている。 三戦目、初めての重賞タイトルがGIだった。秋山にとってはGIの2勝目、須貝尚介にとっても、このレースは初めての勝利である。ゴールドシップで皐月賞と菊花賞を勝っていた須貝の、その年三つめのGIでもあった。年末、この牝馬はJRA賞最優秀2歳牝馬に選ばれる。 クビ差の3着に追い込んできたレッドセシリアの鞍上は、三浦皇成だった。

出典:日本中央競馬会「第64回 阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)レース結果」(レース回顧・谷川善久)2012年12月9日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/hjf/result/hjf2012.html 、閲覧日:2026年7月30日。

桜は咲かず ― 三歳の五戦

明けて3月2日、チューリップ賞。2番人気に推されて9着。勝ったのは、暮れにクビ差で退けたクロフネサプライズだった。 4月7日、桜花賞。8番人気。直線で一度は先頭に立ちそうな位置まで進み、そこから伸びを欠いて5着。勝ったアユサンは阪神ジュベナイルフィリーズで7着だった馬で、2着にはレッドオーヴァルが入った。0秒6差である。 5月19日、オークス。鞍上は岩田康誠に替わり、9着。勝ったメイショウマンボは、あの阪神で10着だった馬だった。秋はローズステークスが重馬場の6着、秋華賞は11着。京都で先頭を駆け抜けたのも、またメイショウマンボである。 二歳の暮れに自分の後ろでゴールした馬たちが、順に世代の頂へ登っていった。三歳の五戦で掲示板に載ったのは、桜花賞の5着だけだった。

距離を詰める ― 四歳の春

2014年1月25日、京都牝馬ステークスは7着。陣営は距離を詰めた。4月12日、阪神牝馬ステークスの1400メートル。シュタルケを背に9番人気で3着、勝ったスマートレイアーとはタイム差なしだった。 この日11着に沈んだヴィルシーナは、一か月後の府中で史上初のヴィクトリアマイル連覇を果たす。ローブティサージュはその同じレースを15番人気で走った。鞍上は横山典弘、結果は11着。3着に入ったのはストレイトガールである。 五月の府中を終えて、北海道へ向かった。6月22日、函館スプリントステークス。初めての1200メートルで、手綱は三浦皇成に渡った。6番人気。勝ったガルボとタイム差なしの2着に届いている。1番人気に推されたストレイトガールは、直線で前がふさがって11着だった。 マイルの女王として出発した馬の居場所が、短い距離のほうに見えはじめていた。

札幌の直線 ― 一年八か月

8月31日、札幌の芝1200メートル、キーンランドカップ。3番人気。 直線は接戦になった。並んだ相手はレッドオーヴァル――前の年の桜花賞で、自分の前でゴールした馬である。タイム差なしの決着を制した。1分9秒0。阪神ジュベナイルフィリーズから一年八か月ぶりの勝利で、生涯三つめの勝ち鞍だった。 三浦皇成は、デビューした2008年に91勝を挙げて新人の年間最多勝記録を塗り替えた騎手である。それでもこの時点で、JRAのGIは勝っていない。初めて勝つのは十年以上あとの2025年、スプリンターズステークスでのことになる。二歳女王の背で掴んだ札幌の重賞は、その長い道の途中にあった。 10月5日、スプリンターズステークス。中山競馬場の改修工事のため、12年ぶりに新潟で行われた秋の短距離王決定戦である。1枠2番、7番人気。手綱を取ったのは、一年半ぶりの秋山真一郎だった。勝ったのは13番人気のスノードラゴンで、2着ストレイトガール、3着レッドオーヴァル。ローブティサージュは11着。 秋山がこの馬に乗ったのは、これが最後になった。

扉の前で ― 二か月の空白

11月30日、京都の京阪杯。4番人気。 発走前、ゲートに入るのを嫌がったこの馬に、誘導する発走委員が鞭を繰り返し使った。その場面は中継に映り、議論を呼んだ。枠入り不良と判定されて発走は4分遅れ、レース後には発走調教再審査が課される。走った結果は14着だった。 それから二か月あまり、この馬はゲートに入れなかった。扉への恐れが残ったと伝えられ、新聞や競馬雑誌が誘導のあり方を取り上げた。 競走馬は、走ることより先に扉をくぐることを覚える。鉄の箱の中で静かに待ち、開いた瞬間に出ていく。その約束がほどけると、どれだけ走れても競馬にならない。 2015年3月1日、阪神の不良馬場。三か月ぶりのゲートを、この馬はくぐった。阪急杯、9番人気、鞍上は池添謙一。勝ったダイワマッジョーレとタイム差なしの3着。馬体重は462キロ、二歳の暮れに女王になった日より二十キロ重かった。

直線で終わる ― 二〇一五年十月

3月29日、中京の高松宮記念は9番人気で17着。稍重の芝を制したのはエアロヴェロシティで、1番人気のストレイトガールも13着に沈んだ一戦だった。6月21日の函館スプリントステークスは3番人気の15着、8月30日のキーンランドカップは5番人気の7着。走るたびに単勝の上位へ推されながら、脚は戻らなかった。 10月31日、京都のスワンステークス。11番人気、鞍上は福永祐一。 最後の直線で他馬が斜行して接触し、福永は落馬した。ローブティサージュは競走中止――20回のゲートのうち、着順のつかなかった唯一の一戦である。 福永はこの年121勝でリーディングの首位を走っていた。右肩鎖関節脱臼と右鎖骨剥離骨折と診断され、精密検査で右肩のじん帯断裂と右胸骨の骨折も判明する。復帰は翌年の2月になった。 11月9日、所属するクラブが引退を発表し、11日付で競走馬登録が抹消された。20戦3勝、獲得賞金1億7231万6000円。五歳の秋、二歳女王はターフを去った。

織り継ぐ ― 安平へ帰る

引退後は生まれた牧場に戻り、繁殖牝馬になった。 初仔は2017年生まれの牡、父オルフェーヴル。リアンティサージュと名づけられ、母と同じ須貝尚介厩舎から出走して14戦4勝、3勝クラスのフリーウェイステークスを勝っている。二番仔は父ハーツクライのレゾンドゥスリール、三番仔は父ディープインパクトの青鹿毛の牝馬ローブエリタージュ。以下、ロードカナロアのロキエ、キズナのラトラース、エピファネイアのサンシュエール――名は「ローブ」と「ティサージュ」を分け合いながら続いている。母プチノワールも安平で産み続け、この牝馬の弟妹は十を超えた。 デビュー戦を勝ったあと、この馬は一度も条件戦を走っていない。残る19戦はすべて重賞で、そのうち7つがGIだった。二歳の12月、その頂のいちばん高いところに一度立っている。 秋山真一郎は2024年2月に騎手を引退し、翌2025年3月、栗東で調教師として厩舎を開いた。1997年から2024年まで、彼が掴んだGIは三つで、そのうちの一つがこの牝馬である。三浦皇成は2025年9月、デビューから十八年、127回目のGI騎乗でJRAのGIを初めて勝った。 黒い衣を紡ぐ、という名前だった。阪神の1枠1番で速い流れを我慢し、前が開いた一瞬に伸びて織り上げた一枚。その糸は、いまも安平で継がれている。

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