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ローブデコルテ
通算成績18戦3勝
獲得賞金2億967万円
生年月日 2004.04.28(平成16年)毛色 芦毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10 | GIII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 11人気 | 津村明秀 | 1:46.3 | 上り34.3 | — | |
| 7 | OPポートアイランドS | 阪神 芝1600 | 2人気 | 四位洋文 | 1:35.8 | 上り34.7 | — | |
| 3 | OPNSTOP | 新潟 芝1400 | 2人気 | 福永祐一 | 1:21.1 | 上り34.7 | — | |
| 14 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 7人気 | 福永祐一 | 1:35.1 | 上り34.6 | 映像 | |
| 6 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1400 | 3人気 | 福永祐一 | 1:22.2 | 上り34.7 | — | |
| 3 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 6人気 | 福永祐一 | 1:21.1 | 上り34.7 | — | |
| 5 | GIII京都牝馬S | 京都 芝1600 | 11人気 | 福永祐一 | 1:36.7 | 上り34.7 | — | |
| 11 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 6人気 | 福永祐一 | 2:13.0 | 上り34.7 | 映像 | |
| 10 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 4人気 | 福永祐一 | 1:59.9 | 上り33.9 | 映像 | |
| 5 | GIアメリカンオークス | アメリカ 芝2000 | 岩田康誠 | 2:02.1 | — | 映像 | ||
| 1 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 5人気 | 福永祐一 | 2:25.3 | 上り34.7 | 映像 | |
| 4 | GI桜花賞 | 阪神 芝1600 | 9人気 | 福永祐一 | 1:34.5 | 上り33.5 | 映像 | |
| 5 | GIIIチューリップ賞 | 阪神 芝1600 | 3人気 | 武豊 | 1:34.8 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | OP紅梅S | 京都 芝1400 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:22.5 | 上り35.7 | — | |
| 4 | GI阪神ジュベナイルフィリーズ | 阪神 芝1600 | 6人気 | 福永祐一 | 1:33.8 | 上り34.5 | 映像 | |
| 2 | 2歳500万下 | 京都 芝1600 | 2人気 | 安藤勝己 | 1:35.6 | 上り35.5 | — | |
| 2 | OPコスモス賞 | 札幌 芝1800 | 6人気 | 安藤勝己 | 1:49.0 | 上り36.1 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 函館 芝1800 | 3人気 | 安藤勝己 | 1:56.5 | 上り36.4 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父Cozzene | Caro | フォルティノ |
| Chambord | ||
| Ride the Trails | Prince John | |
| Wildwook | ||
| 母Color of Gold | Seeking the Gold | Mr. Prospector |
| Con Game | ||
| Sulemeif | Northern Dancer | |
| Barely Even |
旅程 — この馬の物語
2004年生まれの芦毛の牝馬。父Cozzene、母Color of Gold。主な勝ち鞍は優駿牝馬。
京しげきの厩舎
2006年7月23日、函館競馬場の芝1800メートル。9頭立ての2歳新馬戦を、3番人気の芦毛の牝馬が0.2秒差で抜け出した。鞍上は安藤勝己。アメリカで生まれ、父はCozzene、母はColor of Gold。名はローブデコルテ——フランス語で、襟を大きく開けた女性の礼装をいう。 管理していたのは栗東の松元茂樹だった。日本大学に在学していたころ、「京しげき」の芸名で歌手デビューしている。レコードは売れなかった。卒業後も六本木で弾き語りを続けたが、芽は出なかった。調教師だった父・正雄の「競馬の世界へ来い」[^1]という言葉に従い、1974年、その父の厩舎で厩務員になる。長く調教助手を務め、1992年に調教師免許を取り、翌年に自分の厩舎を開いた。歌をあきらめて厩舎に入った日から、19年が経っていた。 2001年と2002年の中山大障害を連覇し、2002年のスプリンターズステークスと翌年の高松宮記念をビリーヴで勝っている。ビリーヴの馬主は前田幸治。水色に赤い十字襷というその勝負服を、松元厩舎はビリーヴの背でも見ていた。ローブデコルテも、同じ色を着て走ることになる。
出典:スポーツニッポン「松元師、歌手から転向「運」に恵まれた」2019年1月30日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2019/01/30/kiji/20190129s00004048321000c.html 、閲覧日:2026年8月1日。
三強の外側
秋の札幌でコスモス賞2着、11月の京都では500万下を同タイムの2着。ここまで3戦の手綱はすべて安藤勝己が取っている。12月の阪神ジュベナイルフィリーズで初めて福永祐一が乗り、6番人気で4着。勝ったのはウオッカだった。 年が明けて紅梅ステークスを1番人気で快勝し、2勝目。チューリップ賞は武豊を背に5着で、勝ったのはまたウオッカ。そして桜花賞——単勝10倍を切ったのは、ウオッカ、アストンマーチャン、そしてチューリップ賞でウオッカに競り負けたダイワスカーレットの3頭だけで、残る15頭はすべて30倍以上だった。9番人気のローブデコルテは、その15頭の側にいた。 福永に手綱が戻ったこの日、彼女はスタートで後手を踏んだ。それでも上がり3ハロン33秒5はメンバー最速に並ぶ数字で、3着カタマチボタンからハナ差の4着まで追い上げている。勝ったのはダイワスカーレット。順位はまだ下にあったが、負けの中身は変わり始めていた。
開いてまだ五度目の門
オークスに外国産馬が出走できるようになったのは2003年、枠は最大2頭だった。2007年5月20日の東京競馬場は、その門が開かれてまだ5度目のオークスである。 桜花賞を勝ったダイワスカーレットは熱発で回避し、2着のウオッカは日本ダービーへ向かった。1、2着馬を欠いた18頭は人気が割れ、単勝万馬券が1頭も出ない混戦になる。フローラステークスを差し切ったベッラレイアが1番人気、ローブデコルテは5番人気だった。 福永祐一は前走の宿題をそのまま持ち込んだ。「とにかくスタートにだけは気をつけた」[^1]。ゲートを決めた彼女は好位勢のすぐ後ろに収まり、6番手から早めに動いたベッラレイアを目標に置く。坂上でベッラレイアが堂々と先頭に立ち、その直後からローブデコルテが迫った。坂を上り切ったところでスピードに乗ると、追い込んできたラブカーナを振り切り、ゴールでハナだけ前に出た。 2分25秒3。1990年にエイシンサニーが出した2分26秒1を17年ぶりに塗り替えるレースレコードだった。外国産馬がクラシックを勝ったのは、これが史上初めてである。芦毛のオークス馬も、彼女が最初だった。 福永にとってはオークス3勝目。松元茂樹にとっては、開業15年目にして初めてのクラシック制覇だった。
出典:日本中央競馬会「第68回 優駿牝馬(オークス)」レース結果、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/oaks/result/oaks2007.html 、閲覧日:2026年8月1日。
祖母の名
母Color of Goldの母はSulemeif。1980年生まれ、父はNorthern Dancer。この牝馬には、日本の競馬史に名を残したもう一頭の孫娘がいる。娘ブラダマンテが産んだスティルインラブ——2003年に牝馬三冠を制した馬である。ローブデコルテにとっては従姉にあたり、その半兄で1996年のラジオたんぱ賞を勝ったビッグバイアモンは従兄になる。 同じ祖母から、日本の三冠牝馬と、クラシックを勝った最初の外国産馬が出た。ただ、二頭がターフで顔を合わせることはなかった。スティルインラブは2007年2月に初仔を産み、7月に小腸捻転を起こして二度の開腹手術を受け、8月2日の朝に息を引き取っている。ローブデコルテが府中で樫の女王になった、その74日後だった。 スティルインラブが遺した唯一の産駒ジューダは、前田幸治の所有馬として競走生活を送った。従姉の忘れ形見は、いとこと同じ勝負服を着て走ったことになる。
乗れなかった男
7月7日、ハリウッドパーク競馬場のアメリカンオークス。2年前の同じレースを、福永祐一はシーザリオで勝っている。日本で生産・調教された馬による、アメリカのG1初制覇だった。日本のオークスを勝った牝馬を連れて同じ舞台へ——道筋は二年前をそっくりなぞっていた。 だが福永は騎乗停止で乗れなかった。手綱は、同じ時期にアメリカへ遠征していた岩田康誠に渡る。 9頭立て。ローブデコルテはスタートで後手を踏み、直線で追い上げたものの、勝ったPanty Raidから0.6秒差の5着までだった。しかもレース中に鼻出血を発症し、日米の双方から1か月の出走停止を科される。彼女が日本の外で走ったのは、生涯でこの一度きりである。
序列は戻る
帰国した夏、日本の競馬は馬インフルエンザで揺れていた。予定していたローズステークスを回避し、秋華賞へ直行する。京都の大外18番、4番人気。上がり33秒9で伸びたが10着。先頭でゴールを駆け抜けたのはダイワスカーレットだった。 11月のエリザベス女王杯は6番人気の11着。勝ったのは、やはりダイワスカーレット。 オークスの一日を挟んで、世代の序列は元のかたちに戻っていた。あの府中の2400メートルを最後に、ローブデコルテは一度も勝てないまま現役を終えることになる。
五十八キロ
4歳になった彼女の鞍には、重い数字が乗るようになる。2008年2月の京都牝馬ステークスは58キロ。重馬場の1600メートルを11番人気の5着。3月の阪急杯は56キロで、ローレルゲレイロから0.4秒差の3着に粘った。4月の阪神牝馬ステークスは57キロで6着、5月のヴィクトリアマイルは7番人気の14着。 夏を越し、負担重量が54キロに戻った8月の新潟で久しぶりに2番人気の支持を受け、NSTオープンを0.1秒差の3着。10月のポートアイランドステークスは四位洋文が乗って7着、19日の府中牝馬ステークスは津村明秀を背に11番人気の10着だった。それが最後の一戦になる。10月30日、競走馬登録抹消。18戦3勝。 その2008年、福永祐一もGIをひとつも勝てなかった。2001年から続いていた7年連続のGI級競走制覇は、ローブデコルテのオークスが最後の一勝である。彼が次にGIを手にするのは2010年の阪神ジュベナイルフィリーズ、レーヴディソールでのことだった。あの一日を頂点にして、人も馬もしばらく勝利から遠ざかった。
新冠にたどり着く
繁殖入りの地は、前田幸治が1984年に北海道新冠町へ開いた牧場だった。日本一美しい牧場を作ろうという志で始めたのだと本人は語っている。その土地は、のちにノースヒルズと呼ばれる。アメリカで生まれ、函館でデビューし、府中で樫の女王になった馬は、そこを終の住処にした。 初年度はアグネスタキオンと配合され、2010年に母と同じ芦毛の牝馬スイートメドゥーサが生まれた。デビュー戦を1番人気で快勝したものの、続く2戦は発走直後に外へ逃避して競走中止となり、矯正は難しいと判断されて引退している。2011年のマンハッタンカフェの仔は生後まもなく死に、2012年は不受胎。2013年、ディープインパクトを父とする牝馬エレーデが生まれた。 2014年3月19日、ハーツクライの仔を産む最中に膀胱が破裂し、ローブデコルテは死んだ。10歳。仔も助からず、彼女が残したのは2頭だけになった。その2頭はどちらも新冠で繁殖牝馬になり、2015年に生まれた仔から2026年に生まれた仔まで、母の血を毎年のように送り出している。牧場で過ごした時間のほうが、ターフにいた時間より長い。 オークスから7週間後の7月8日、阪神の2歳新馬戦を、新冠のノースヒルズマネジメントで生まれた鹿毛の牡馬が勝っている。勝った直後に名義が前田幸治へ移った馬——アーネストリーである。4年後に宝塚記念を制するその馬と、ローブデコルテは同じ牧場と同じ勝負服を分け合った。ただし向きは逆だった。あちらは新冠に生まれて世へ出ていき、こちらは海を渡ってきて新冠に行き着いた。 松元茂樹は2019年2月、定年で調教師を退いた。「今後は何をするかは未定だが馬の社会から飛び出したい。ギターや料理など趣味として、いろいろな習い言をかじってみたい」[^1]。父の厩舎に入った日から、45年が経っていた。歌を捨てた男が競馬で受け取ったものの中に、樫の女王が一頭いる。
出典:スポーツニッポン「松元師、歌手から転向「運」に恵まれた」2019年1月30日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2019/01/30/kiji/20190129s00004048321000c.html 、閲覧日:2026年8月1日。
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