名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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レーヴディソールのイメージビジュアル
レーヴディソールReve d'Essor
Reve d'Essor

レーヴディソール

通算成績6戦4勝

獲得賞金15,493万円

生年月日 2008.04.08(平成20年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
レーヴディソールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GIII愛知杯 小倉 芝2000 1人気 福永祐一 1:59.7 上り34.6
11 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 3人気 福永祐一 2:12.9 上り35.2映像
1 GIIIチューリップ賞 阪神 芝1600 1人気 福永祐一 1:34.5 上り33.6
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 1人気 福永祐一 1:35.7 上り33.9映像
1 GIIデイリー杯2歳S 京都 芝1600 1人気 福永祐一 1:33.6 上り33.7
1 2歳新馬 札幌 芝1500 1人気 中舘英二 1:32.3 上り34.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
レーヴディソールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アグネスタキオンAgnes TachyonサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
アグネスフローラロイヤルスキー
アグネスレディー
レーヴドスカーReve d'OscarHighest HonorKenmare
High River
NumidieバイアモンBaillamont
Yamuna
STORY

旅程 — この馬の物語

2008年生まれの芦毛の牝馬。父アグネスタキオン、母レーヴドスカー。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・デイリー杯2歳S・チューリップ賞。

夢という名の一族

母の名を、レーヴドスカーという。フランス語で「オスカーの夢」。1997年にフランスで生まれ、未勝利のまま挑んだ2000年のサンタラリ賞をいきなり勝ち、ヴェルメイユ賞、オペラ賞、イタリアのジョッキークラブ大賞と二着を重ね、その年の暮れには日本まで遠征してジャパンカップを走った。テイエムオペラオーの七着。通算十戦一勝、その一勝がG1だった。 引退後はイギリスで繁殖牝馬となり、初仔を産んだのち日本へ渡って、北海道のノーザンファームに繋養された。産まれた仔の多くに「レーヴ」——夢の名が与えられた。愛の夢=レーヴダムール。夢のあとに=アプレザンレーヴ。東洋の夢=レーヴドリアン。星の夢=レーヴデトワール。 だがこの一族の夢は、たびたび途中で断ち切られた。イギリスで産まれた初仔リーガルシルクは、一度も走らないまま2004年に死んだ。三番仔レーヴダムールは新馬勝ちから阪神ジュベナイルフィリーズへ直行してトールポピーの二着に食い込みながら、蹄を痛めて長期休養に入り、調教を再開した矢先の2008年暮れ、骨盤骨折による内出血で急死する。生涯二戦だった。四番仔アプレザンレーヴは2009年の青葉賞を制して日本ダービーで五着に入ったが、屈腱炎を発症して三歳のうちに競走馬をやめた。五番仔レーヴドリアンはきさらぎ賞二着、菊花賞四着。二番仔ナイアガラが二十八戦を走ってすみれステークスを勝ったほかは、誰ひとり十戦にすら届いていない。 2008年4月8日、その母が六番目に産んだのは芦毛の牝馬だった。父はアグネスタキオン。四戦四勝で皐月賞を制した直後に屈腱炎をきたし、無敗のまま種牡馬になった馬である。 馬名は、レーヴディソール。飛翔の夢、という意味だった。 預けられたのは、姉レーヴダムールと兄レーヴドリアンを管理した栗東の松田博資。同じノーザンファームの生産、同じサンデーレーシングの所有で、当時この厩舎には牝馬二冠のブエナビスタがいた。芦毛の牝馬は、牧場にいる頃からその名と比べられていた。

札幌の初陣、そして秋の別れ

2010年9月11日、札幌の芝1500m。鞍上は中舘英二だった。単勝1.4倍の一番人気に応え、中団から抜け出してノーザンリバーに一馬身四分の一差をつける。 もっとも松田は、デビュー前からこの馬の手綱を別の男に約束していた。新馬戦を前に、福永祐一へこう告げていたという。「今週札幌でデビューする馬をよく見ておけ。こっちに帰ってきたらお前を乗せるから。」[^1] 10月16日、京都のデイリー杯2歳ステークス。十二頭立ての紅一点で、牡馬十一頭を相手に単勝2.4倍の一番人気に推された。スタートで出遅れて後方に置かれたが、最終コーナーで大外に持ち出すと、逃げるクリーンエコロジー、抜け出しにかかったメイショウナルト、同じく後方から迫るアドマイヤサガスを、外からまとめて差し切った。牝馬の優勝は1996年のシーキングザパール以来十四年ぶりだった。 その同じ秋、福永は兄レーヴドリアンの手綱も取っている。神戸新聞杯で五着、菊花賞で四着。淀の三千メートルを四番目に駆け抜けたその兄は、十一月、腸捻転に伴う盲腸破裂で予後不良と診断され、三歳で世を去った。 妹のGI初挑戦は、その一か月後に控えていた。

出典:『優駿』2011年4月号 66頁(日本中央競馬会)。フリー百科事典『ウィキペディア』「レーヴディソール」経由で確認、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%AB、閲覧日:2026年7月30日。

芦毛のワンツースリー

2010年12月12日、阪神ジュベナイルフィリーズ。十八頭立てのフルゲートには、ダンスインザムードの仔で二戦二勝のダンスファンタジア、札幌2歳ステークス二着のアヴェンチュラ、芙蓉ステークスでオルフェーヴルを負かしてきたホエールキャプチャが揃った。それでも単勝は1.6倍だった。 また出遅れた。中団の後ろでスローペースに折り合い、直線で外へ持ち出す。内で粘るホエールキャプチャとライステラスを、半馬身だけ捉えた。 決勝線を先頭で通過した馬も、二着も、三着も、すべて芦毛だった。グレード制が導入された1984年以降、上位三頭が芦毛で占められたのはこれが初めてである。 無敗の三連勝でGI。松田は2008年のブエナビスタ以来、福永は2002年のピースオブワールド以来となる、二度目の阪神ジュベナイルフィリーズだった。暮れのJRA賞では、投じられた285票のすべてが最優秀2歳牝馬の欄にこの馬の名を書いた。

壊さないための設計

年が明け、クラシックへ向かう始動の直前に、福永はこの馬をこう評している。おとなしくて乗りやすい、瞬間的にスッと動くタイプではないが、一度エンジンがかかると伸び続ける、こういう牝馬には乗ったことがない——そして最後にこう続けた。「無事にいけばすごい馬になると思います。」[^1] 彼が同時に考えていたのは、勝ち方の設計だった。この馬の末脚は強烈だが、後方から一気に追い込む競馬は身体への負担が大きい。かつて手綱を取ったラインクラフトで、フィリーズレビューを後方から追い込んで勝った直後に疲れが出て、獣医師から負担の小さい競馬を勧められたことがある。忠告どおり好位から抜け出して桜花賞を勝ち、その脚を残したままNHKマイルカップまで連勝した経験が、福永にはあった。ブエナビスタのように長く走り続ける馬になってほしい。だから若いうちは、あの末脚を封じておこうと考えていた。 3月5日、チューリップ賞。単勝1.1倍、単勝の支持率は81.4パーセントに達し、2005年の菊花賞でディープインパクトが集めた79.0パーセントを上回った。中団後方から大外を回って、ライステラスに四馬身。走破時計は、過去十年ではウオッカダイワスカーレットが叩き合った2007年に次ぐ速さだった。この日、重賞で初めてJRAプラス10が適用され、単勝の配当は110円になった。 四戦四勝。桜花賞まで、あと五週間だった。

出典:『優駿』2011年4月号 66-67頁(日本中央競馬会)。フリー百科事典『ウィキペディア』「レーヴディソール」経由で確認、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%AB、閲覧日:2026年7月30日。

三月三十日

桜花賞の一週前追い切りを終えた3月30日、右前脚に異状が見つかった。右橈骨遠位端骨折。日本中央競馬会がその日のうちに発表し、全治は半年以上と伝えられた。桜花賞の最有力と目されていた馬が、レースの十一日前に消えた。 4月2日に栗東を退厩し、苫小牧の社台ホースクラシックで骨片を除去する手術を受けて放牧に出る。 4月10日の桜花賞は混戦になり、二番人気のマルセリーナが勝った。ディープインパクト初年度産駒による初のGI制覇であり、そのマルセリーナもまた松田博資の管理馬だった。同じ厩舎の桜が、空いた椅子に座ったことになる。二着はホエールキャプチャ。阪神ジュベナイルフィリーズで半馬身だけ届かなかった馬が、そこにいた。 無事にいけば、と福永は言っていた。その前提が、五週間ももたなかった。

八か月の空白のあとで

その間に、世代は先へ進んだ。ホエールキャプチャは桜花賞二着、オークス三着、秋華賞三着と三冠すべてで掲示板を外さず、アヴェンチュラは秋華賞を勝った。彼女がいないまま、2011年の牝馬クラシックは終わった。 10月5日、栗東に帰厩。追い切りを二本消化しただけで、11月13日のエリザベス女王杯に出走する。前年の覇者スノーフェアリー、秋華賞を勝ったばかりのアヴェンチュラに次ぐ三番人気、単勝7.3倍。八か月ぶりの実戦だった。 結果は十一着。連覇を果たしたスノーフェアリーから1.3秒。四戦四勝の馬が、初めて負けた。同じレースを四着で終えたのは、あの日半馬身だけ先着を許した相手、ホエールキャプチャだった。 一か月後の12月18日、暮れの小倉で行われた愛知杯。単勝1.7倍の一番人気に推され、後方から追い込んだが、フミノイマージン、ブロードストリート、コスモネモシンに先着を許して四着。勝ち馬とは0.3秒の差だった。 これが、レーヴディソールの走った最後のレースになる。

安平に残るもの

2012年1月5日の京都金杯で古馬初戦を迎える予定だった。しかし右後肢の飛節に不安が出て回避し、やがて右前脚の剥離骨折が判明する。手術は行われたが復帰は断念され、2月29日付で競走馬登録が抹消された。六戦四勝、獲得賞金1億5493万3000円。四つの勝利はすべて一番人気に応えたもので、二着も三着も一度もない。二度骨を折って、四歳の春を前に去った。 生まれた牧場へ戻り、繁殖牝馬になる。初仔アラバスター(父ハービンジャー)は、調教師人生の終盤にさしかかった松田博資の厩舎に入り、新馬戦を勝った。母レーヴドスカーは2017年に繁殖を退き、その後も同じノーザンファームでリードホースを務めていると伝えられる。四つ下の弟レーヴミストラルは、兄アプレザンレーヴと同じ青葉賞を勝ち、日経新春杯も制して種牡馬になった。夢の名を継ぐ一族は、途切れそうになりながら続いていく。 そして2024年3月25日、安平でまた一頭が生まれた。父リオンディーズ、母レーヴディソール。エクラドリオンと名づけられたその鹿毛の牡馬は、美浦の中舘英二厩舎に在籍している。2010年9月の札幌で、彼女の初陣の手綱を取った男である。のちに調教師となった彼のもとで、その馬はまだ一度も走っていない。 飛翔の夢という名を負った馬は、四つ勝ったところで脚を折り、六戦で去った。だがその名は、安平の放牧地でいまも更新され続けている。

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