名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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レジネッタのイメージビジュアル
レジネッタReginetta
Reginetta

レジネッタ

通算成績28戦4勝

獲得賞金27,390万円

生年月日 2005.05.11(平成17年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
レジネッタの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 GIII愛知杯 小倉 芝2000 14人気 中舘英二 2:00.5 上り35.1
11 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 13人気 幸英明 2:14.2 上り35.3映像
4 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 7人気 池添謙一 1:47.9 上り34.6
15 GIIIマーメイドS 阪神 芝2000 8人気 岩田康誠 2:02.0 上り37.5
1 GIII福島牝馬S 福島 芝1800 5人気 中舘英二 1:48.9 上り35.7
5 GIII中山牝馬S 中山 芝1800 11人気 吉田豊 1:47.8 上り34.2
6 GIII京都牝馬S 京都 芝1600 8人気 四位洋文 1:36.8 上り34.2
8 OPニューイヤーS 中山 芝1600 3人気 後藤浩輝 1:33.9 上り36.1
5 OPターコイズS 中山 芝1600 2人気 三浦皇成 1:33.5 上り34.4
9 OPアンドロメダS 京都 芝2000 6人気 岩田康誠 2:01.4 上り35.2
3 GIII府中牝馬S 東京 芝1800 11人気 後藤浩輝 1:45.1 上り34.3
11 OPポートアイランドS 阪神 芝1600 6人気 池添謙一 1:34.4 上り34.7
10 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 3人気 四位洋文 1:48.8 上り35.3
9 GIII函館記念 札幌 芝2000 7人気 小牧太 2:01.3 上り35.7
16 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 5人気 小牧太 1:34.6 上り34.8映像
5 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1400 8人気 小牧太 1:22.2 上り34.5
12 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 7人気 小牧太 2:13.5 上り35.2映像
8 GI秋華賞 京都 芝2000 2人気 小牧太 1:58.9 上り34.8映像
3 GII関西TVローズS 阪神 芝1800 1人気 小牧太 1:47.4 上り35.6
2 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 1人気 小牧太 1:48.4 上り35.0
3 GI優駿牝馬 東京 芝2400 5人気 小牧太 2:29.0 上り35.2映像
1 GI桜花賞 阪神 芝1600 12人気 小牧太 1:34.4 上り34.5映像
3 GIIフィリーズレビュー 阪神 芝1400 4人気 小牧太 1:22.5 上り35.2
3 OPエルフィンS 京都 芝1600 2人気 池添謙一 1:36.9 上り34.3
6 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 7人気 武豊 1:34.3 上り35.9映像
1 2歳500万下 京都 芝1600 8人気 池添謙一 1:35.4 上り33.7
1 2歳未勝利 札幌 芝1200 2人気 池添謙一 1:12.1 上り36.2
10 2歳新馬 札幌 芝1200 1人気 池添謙一 1:12.5 上り38.1

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
レジネッタの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
フレンチデピュティFrench DeputyDeputy MinisterVice Regent
Mint Copy
MitterandHold Your Peace
Laredo Lass
アスペンリーフサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
マクダヴィアMocdaviaブラッシングジョンBlushing John
Northern Aspen
STORY

旅程 — この馬の物語

2005年生まれの鹿毛の牝馬。父フレンチデピュティ、母アスペンリーフ。主な勝ち鞍は桜花賞・福島牝馬S。

若い女王 ― 名と血

2005年5月11日、北海道新冠町の追分ファームに一頭の鹿毛の牝馬が生まれた。父はフレンチデピュティ、母はアスペンリーフ、母の父にサンデーサイレンス。馬主は社台レースホース。与えられた名は、イタリア語で「若い女王」を意味するレジネッタだった。 母アスペンリーフは、中山のダートで一つ勝っただけの、生涯四戦しか走らなかった牝馬である。だがその背後に控える血は重い。祖母マクダヴィアはアメリカから輸入された基礎牝馬で、その母ノーザンアスペンはゲイムリーステークスの勝ち馬。さらにその母――レジネッタから見て四代母にあたるフォールアスペンは、北米で屈指の繁殖牝馬として鳴らした一頭だった。プリークネスステークスを勝ったティンバーカントリー、パリ大賞典のフォートウッド、ジュライカップのハマス、そして仔にドバイミレニアムを送り出したコロラドダンサー。日本で京都大賞典を勝ったツルマルツヨシも、同じ一族から出ている。 四戦一勝の母から、女王の名を持つ娘が生まれた。名乗るだけの根拠は、血の底のほうに静かに眠っていた。

札幌の千二百 ― 池添とともに

管理したのは栗東の浅見秀一。レジネッタは引退までこの厩舎を離れることがなかった。 デビューは2007年9月9日、札幌の芝1200m。手綱は池添謙一。単勝2.3倍の1番人気に推されたが、ハナを切って先頭に立ちながら直線で後退し、勝ち馬から0.8秒差の10着に沈んだ。同じ月の29日、同じ札幌の同じ距離で行われた未勝利戦を勝って初勝利。11月には京都の芝1600mへ舞台を移し、九頭立ての八番人気という低い評価のまま連勝する。上がり三ハロンは33秒7だった。短い芝から長い芝へ、逃げから差しへ。二戦のあいだに、この馬は自分の走り方を見つけていた。 暮れの阪神ジュベナイルフィリーズには武豊が乗った。池添が同じレースでトールポピーを選んだためである。道中は前めに構え、直線で一度は先頭に立ったが、後続に次々と交わされて6着。そして二歳女王の座は、池添の乗るトールポピーのものになった。

四十八度目 ― 園田から来た男

明けて2008年、エルフィンステークスは3着。続くフィリーズレビューで鞍上が替わった。小牧太である。勝ち馬と同じ時計のアタマ差3着に押し上げ、桜花賞への優先出走権を持ち帰った。 小牧太は1967年生まれ。1985年に兵庫県競馬組合でデビューし、兵庫で十度のリーディングを獲り、地方の全国リーディングも二度手にした。地方通算3376勝を積み上げて2004年3月にJRAへ移籍する。だが中央のGIだけは遠かった。先に笠松から中央へ渡った安藤勝己は、移籍から一か月足らずでGIを勝ってしまった男である。二番手として来た自分にも、周囲は当然のように同じ速さを求めた。 「一時は“もう勝てないな”と諦めかけてた」[^1]。のちに小牧はそう振り返っている。この年の桜花賞は、彼にとって四十八度目のGI挑戦だった。

出典:デイリースポーツ「【波乱G1プレーバック】08年桜花賞レジネッタ」2019年4月2日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2019/04/02/0012206045.shtml、閲覧日:2026年8月1日。

十二番人気 ― 二〇〇八年四月十三日

十七頭。単勝43.4倍の12番人気。1番人気のトールポピーと、同じ3.8倍で二番人気に推されたリトルアマポーラ――支持は割れ、抜けた存在はいなかった。 返し馬の歩様は、鞍上が心配するほどぎこちなかった。ゲートの中では立ち上がってしまい、発走を待たせた。それでも小牧はレジネッタを中団の十番手に置き、じっと脚を溜める。直線、内も外も横一線になったところから、鹿毛の牝馬が抜け出した。十五番人気のエフティマイアに二分の一馬身。三連単の払い戻しは700万2920円に達し、当時のクラシック競走としては史上最高の配当となった。 ゴールと同時に、鞍上が大きなガッツポーズを作った。自らを泣き虫と認めるベテランは、そのあとカメラの前で涙を隠さなかった。「全国のファンの皆さん…おまたせしました!」[^1]。JRA移籍五年目にして、ようやく届いた最初のGIだった。歩様の硬さもゲート内の失敗も、終わってみれば厩舎の仕上げと発走の間合いが自分に味方したのだと、小牧は後年になって笑って語っている。

出典:デイリースポーツ「【波乱G1プレーバック】08年桜花賞レジネッタ」2019年4月2日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2019/04/02/0012206045.shtml、閲覧日:2026年8月1日。

樫と菊 ― 女王の春と秋

一か月半後、府中の2400m。優駿牝馬は五番人気だった。桜花賞と同じように中団から運んだが、最後の直線で不利を受け、長い審議のすえに着順は動かず3着。前でゴールしたのはトールポピーとエフティマイア、桜花賞では従えた二頭だった。距離は問題にしなかった。ただ、桜の日に味方をしたものが、この日は味方をしなかった。 夏の札幌、クイーンステークスは一番人気で2着。逃げたヤマニンメルベイユを捕まえきれなかった。秋のローズステークスも一番人気で3着。そして三冠最終戦の秋華賞は二番人気に支持されながら8着に終わる。続くエリザベス女王杯は12着。勝ったのは、同じ黄と黒の縦縞を背負ったリトルアマポーラだった。 桜の日から、まだ七か月しか経っていなかった。

勝てない二年 ― 入れ替わる鞍上

2009年は八戦して未勝利に終わった。阪神牝馬ステークス5着、ヴィクトリアマイルは16着。函館記念、クイーンステークス、ポートアイランドステークス、どれも見せ場を作れないまま終わった。2009年の夏から暮れにかけて、手綱は小牧太から四位洋文へ、池添謙一へ、後藤浩輝へ、岩田康誠へ、三浦皇成へと渡っていった。 それでも、脚は残っていた。十一番人気まで評価を落とした秋の府中牝馬ステークスでは、後方から追い込んで3着に届いた。年末のターコイズステークスでは出走馬中もっとも重い斤量を背負いながら、最速の上がりで5着まで押し上げた。明けて2010年の中山牝馬ステークスも、最後方から出走馬中最速の脚を使っての5着だった。 勝ち星はない。だが、届く脚があることだけは、毎回きちんと示していた。

福島の桜 ― 二年ぶりの一勝と、ゲートの中

2010年4月24日、福島の芝1800m。五番人気。手綱を取ったのは中舘英二で、この馬に乗るのは初めてだった。中団で脚を溜め、直線で外から追い出す。先に抜け出して勝ちパターンに持ち込んだブラボーデイジーを一完歩ずつ詰め、頭だけ前に出たところがゴールだった。桜花賞から丸二年ぶりの勝利であり、二つ目の重賞だった。 「いつも前に行って他の騎手にいじめられているので、差しても勝てることをアピールできてよかった」[^1]。お立ち台の中舘は、そう言って福島の客を沸かせた。 ただ、この日もレジネッタは発走前にゲートの中で立ち上がっていた。桜花賞のときは、それが結果として味方をした。今度はそうならなかった。レース後に発走調教再審査が課され、陣営が目標に据えていたヴィクトリアマイルへの出走は消えた。 その後は勝てなかった。マーメイドステークス15着、夏の札幌のクイーンステークス4着、秋のエリザベス女王杯11着。年末の愛知杯では他馬の故障のあおりを受けて位置を下げ、9着。それが最後の一戦になった。12月22日、競走馬登録抹消。通算28戦4勝、重賞2勝、獲得賞金2億7390万4000円。

出典:スポーツニッポン「【福島牝馬S】桜の女王レジネッタ2年ぶり復活V」2010年4月25日配信、https://keiba.sponichi.co.jp/news/K20100425Z00001770、閲覧日:2026年8月1日。

追分の丘で ― 名を継ぐ者たち

繁殖牝馬となったレジネッタは、生産者と同じ追分ファームの、安平の牧場に入った。2012年の初仔レジメンタルを皮切りに、産駒は十頭を超える。三番仔のアルトリウスは三十九戦を走って四つ勝った。母が二十八戦で挙げた数と、同じ四つである。 娘たちも母になった。レジーナドーロ、クインオブザシーズ、プレフェリータ。上の二頭の仔は、もう競馬場を走っている。レジーナドーロ、クインオブザシーズ――娘の名にも、女王の響きはきちんと残った。 そして、あの日の鞍上。小牧太は2024年8月、二十年余り携えたJRAの騎手免許を返し、古巣の兵庫へ戻った。地方から中央へ渡った騎手が、再び地方へ戻るのは史上初のことだった。翌2025年、彼は兵庫で229勝を挙げ、二十二年ぶり十一度目の兵庫リーディングに就いている。 中央でいちばん遠かった一勝を運んできた牝馬は、いま北の丘で仔を産んでいる。その一勝がなければ続かなかったかもしれない騎手人生は、いまも西の競馬場で続いている。

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