名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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レッドリヴェールのイメージビジュアル
レッドリヴェールRed Reveur
Red Reveur

レッドリヴェール

通算成績18戦3勝

獲得賞金18,158万円

生年月日 2011.02.19(平成23年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
レッドリヴェールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
16 GII札幌記念 札幌 芝2000 10人気 坂井瑠星 2:04.7 上り39.5映像
4 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 8人気 K.ティータン 1:48.2 上り34.1映像
14 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 18人気 石川裕紀人 1:33.5 上り36.0映像
12 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1600 8人気 菱田裕二 1:34.2 上り33.9映像
15 ターコイズS 中山 芝1600 7人気 内田博幸 1:36.7 上り34.8
15 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 15人気 A.アッゼニ 1:33.9 上り33.9映像
15 GII府中牝馬S 東京 芝1800 2人気 戸崎圭太 1:47.4 上り35.2
2 GIIIクイーンS 札幌 芝1800 1人気 C.ルメール 1:47.1 上り34.6映像
4 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 3人気 C.ルメール 1:32.4 上り33.7映像
6 GIIサンスポ杯阪神牝馬S 阪神 芝1400 2人気 C.ルメール 1:21.7 上り34.4映像
16 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 13人気 福永祐一 2:13.9 上り34.7映像
6 GI秋華賞 京都 芝2000 2人気 福永祐一 1:57.6 上り34.4映像
6 GII関西TVローズS 阪神 芝1800 1人気 福永祐一 1:46.8 上り34.1
12 GI東京優駿 東京 芝2400 4人気 福永祐一 2:25.8 上り34.6映像
2 GI桜花賞 阪神 芝1600 2人気 戸崎圭太 1:33.3 上り33.4映像
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 5人気 戸崎圭太 1:33.9 上り34.1映像
1 GIII札幌2歳S 函館 芝1800 2人気 岩田康誠 1:59.7 上り41.3
1 2歳新馬 阪神 芝1600 3人気 C.ウィリアムズ 1:37.9 上り33.3

血統

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レッドリヴェールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ステイゴールドStay GoldサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ゴールデンサッシュディクタスDictus
ダイナサッシュ
ディソサードDesauceredDixieland BandNorthern Dancer
Mississippi Mud
I'm OutLord Gaylord
ダンシングフリーDancing Free
STORY

旅程 — この馬の物語

2011年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ステイゴールド、母ディソサード。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・札幌2歳S。

夢を見る人 ― 千歳の黒鹿毛

2011年2月19日、北海道千歳市の社台ファームで、黒鹿毛の牝馬が生まれた。 レッドリヴェール。JRAの競走馬登録に残るこの名の意味は、「冠名+夢見る人(仏)。華やかな舞台を夢見て」。馬主の冠名である「レッド」を取り除けば、この馬に与えられたのは、夢を見る者、という一語だけだった。 父はステイゴールド。GIで幾度も二着に泣いて「シルバーコレクター」と呼ばれ、初めてGIを勝ったのは通算五十戦目、引退レースの香港ヴァーズだった馬である。母ディソサードは1991年のアメリカ生まれ、現役成績は22戦2勝。向こうで四頭を産んだのち日本へ渡り、千歳で仔を産み続けた。レッドリヴェールは、その母が二十歳になった年の仔である。母の産駒は彼女を含めて十二頭。獲得賞金でこの牝馬に近づいた兄姉はいない。 2013年6月1日、阪神の芝1600m、五頭立ての新馬戦。鞍上はクレイグ・ウィリアムズ、三番人気。馬体重424キロの小さな体は三番手から抜け出し、逃げた馬を捉えて一分三十七秒九で駆け抜けた。上がり三ハロン三十三秒三。管理するのは、栗東の須貝尚介である。

一分五十九秒七 ― 函館の泥

2013年、札幌競馬場はスタンドの改修工事に入っていた。そのため8月31日の札幌2歳ステークスは、函館競馬場の芝1800mで行われている。 馬場は不良。十四頭立ての二番人気、鞍上は岩田康誠。レッドリヴェールは泥の中を追い上げ、ゴール前で先頭を捉えた。勝ち時計は一分五十九秒七、上がり三ハロンは四十一秒三。前年のコディーノは一分四十八秒五、翌年のブライトエンブレムは一分五十秒〇で勝っている。十秒前後も遅い、時計にならない時計だった。 二戦二勝。この日の泥が三か月後に効いてくることを、まだ誰も知らない。 須貝厩舎はこの年、ゴールドシップが宝塚記念を、ジャスタウェイが天皇賞・秋を勝つ。そのゴールドシップの世話をしていた厩務員・今浪隆利が、この小さな牝馬も担当していた。

移ってきた男 ― 戸崎圭太

戸崎圭太は、大井の騎手だった。南関東で年に三百を超える勝ち星を積み、全国リーディングも獲った。それでも中央競馬の騎手免許試験には二度落ちている。三度目でようやく合格し、2013年3月1日付でJRAへ移籍。美浦の田島俊明厩舎に所属した。 地方所属のまま2011年の安田記念をリアルインパクトで勝ってはいた。だが中央の騎手としては、まだ何も始まっていない。六月のユニコーンステークスをベストウォーリアで制して移籍後初の重賞を挙げたあとも、GIの勝ち鞍はなかった。 移籍一年目の暮れ、その男が跨ったのが、四百二十キロに満たない二歳牝馬だった。

ハナ差 ― 二〇一三年十二月八日

第65回阪神ジュベナイルフィリーズ、十八頭。単勝1.7倍の一番人気は、新潟2歳ステークスを三馬身差で圧勝したハープスターだった。レッドリヴェールは単勝14.6倍の五番人気。馬体重は八キロ減って418キロ、ハープスターより五十八キロ軽い。 直線、まず抜け出したのは三連勝中のホウライアキコ。残り二百メートルでフォーエバーモアが外から交わし、さらにその外からレッドリヴェールが脚を伸ばす。そこへ馬群を割ってハープスターが飛んできた。内にフォーエバーモア、真ん中にハープスター、外にレッドリヴェール。三頭が並んでゴール板を通過し、写真判定になった。 ハナ差。二歳女王は、五番人気の小さな牝馬だった。「前走、あの馬場で強いレースをした馬。その根性を見せてくれた」[^1]。函館の泥を見ていた鞍上の言葉である。 無敗での阪神ジュベナイルフィリーズ制覇は2011年のジョワドヴィーヴル以来二年ぶり、札幌2歳ステークスの勝ち馬がこの一戦を勝つのは1995年のビワハイジ以来十八年ぶりだった。ステイゴールド産駒の牝馬がGIを勝ったのも、これが初めてである。須貝尚介は前年のローブティサージュに続く連覇、そして戸崎圭太は、中央へ移って初めてのGIだった。 三戦三勝で年を越し、彼女はJRA賞最優秀2歳牝馬に選ばれる。二百八十票のうち、二百七十九票だった。

出典:日本中央競馬会「阪神ジュベナイルフィリーズ 激しい追い比べを制したレッドリヴェールが2歳女王に輝く」2013年12月8日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/hjf/result/hjf2013.html 、閲覧日:2026年7月28日。

クビ差 ― 二〇一四年四月十三日

桜花賞にはトライアルを使わず直行した。四か月ぶりの実戦、馬体重は418キロで据え置き、二番人気。ハープスターの単勝は1.2倍だった。 十八番人気のフクノドリームが千メートル通過五十七秒〇で大逃げを打ち、直線に入ってもまだ十馬身近い差が残っていた。ハープスターは大外十八番枠から最後方。内でレーヴデトワールが伸び、馬場の真ん中でホウライアキコ、その外にレッドリヴェール。二歳女王が抜け出したかと見えた、その直後だった。大外から、上がり三ハロン三十二秒九の脚が全部をまとめて交わしていった。 クビ差。勝ち時計は桜花賞のタイレコードとなる一分三十三秒三で、レッドリヴェールも同じ時計を刻んでいる。四戦目にして、初めての敗戦だった。 デビューから桜花賞まで、ハープスターの前でゴール板を通過した馬は、あの十二月の阪神のレッドリヴェールだけである。

府中の二千四百 ― ウオッカ以来の牝馬

桜花賞のあと、陣営が選んだのはオークスではなかった。東京優駿――日本ダービーである。牝馬の出走は2007年のウオッカ以来のことだった。1986年以降にダービーのゲートへ入った牝馬は、ウオッカと、この馬と、2021年のサトノレイナスの三頭しかいない。ウオッカもまた、桜花賞二着からの参戦だった。 結果次第では斤量の面で有利な凱旋門賞へ向かう可能性もある、と陣営は語っていた。鞍上は福永祐一に替わる。十二月と四月に彼女を導いた戸崎は、この日、ベルキャニオンで同じゲートに入り八着に終わっている。 六月一日、十三万人を超える観衆。十七頭のうち、彼女の410キロは最も軽かった。次に軽い馬より、三十六キロ小さい。それでも四番人気に支持された。 道中は後方、四コーナーを回っても位置は変わらない。勝ったワンアンドオンリーから一秒二差の十二着。フランス行きの話は、そこで消えた。

四百十二キロの秋 ― 三歳秋から四歳へ

秋はローズステークスから始まった。一番人気で六着。京都の秋華賞は二番人気で六着、勝ったショウナンパンドラから〇秒六差。上がり三十四秒四の脚は使えている。それでも前が遠かった。 十一月のエリザベス女王杯は十三番人気の十六着。この日の馬体重は412キロ、新馬戦より十二キロ軽い。三歳の一年で、彼女の体は大きくならなかった。 四歳になって手綱はクリストフ・ルメールに渡る。冬を越した阪神牝馬ステークスの馬体重は436キロ、二十四キロ増えていた。六着。続くヴィクトリアマイルは三番人気。四コーナーを四番手で回り、勝ったストレイトガールから〇秒五差の四着に粘った。 8月2日、札幌のクイーンステークス。十頭立ての一番人気で、三コーナーから三番手を進んだ。だがゴール前、七番手にいた七番人気のメイショウスザンナに差され、クビ差の二着。タイム差はなかった。 父がシルバーコレクターと呼ばれたのは、こういう負け方を積み重ねたからである。 十月、一年半ぶりに戸崎が手綱を取った府中牝馬ステークスは二番人気で十五着。マイルチャンピオンシップも、新設されたばかりのターコイズステークスも、掲示板は遠かった。

夢の名を継ぐ ― 二〇一六年八月三十一日

五歳の春、阪神牝馬ステークスのパドックに立った彼女は444キロあった。生涯でいちばん大きな馬体である。十二着。ヴィクトリアマイルは十八番人気で十四着だった。 7月31日、札幌のクイーンステークス。八番人気で四着、勝ち馬から〇秒五差。もう一度だけ、彼女は人の目を引いた。 8月21日の札幌記念は、デビュー一年目の坂井瑠星を背に十六着。レースのあと、左前脚に腱周囲炎が見つかった。8月31日付で競走馬登録を抹消。十八戦三勝。三つの勝利は、すべて二歳の年のものだった。 生まれた社台ファームに戻り、繁殖牝馬になった。仔の名には、ルージュレヴール、レーヴジーニアル、アステルリヴェール、ルージュソムニウム――「夢」を意味する言葉が繰り返し並ぶ。JRAに登録されたルージュソムニウムの馬名意味は、「冠名+夢(ラテン語)。母名より連想」である。母に与えられた一語が、そのまま仔へ渡された。 2026年7月10日、園田のC2戦に二番仔のレッドアクトゥールが出走した。16日には浦和の交流戦をルージュソムニウムが走っている。二歳の暮れに阪神で摑んだ夢は、いまもどこかの直線を走っている。

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