名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ラヴェルのイメージビジュアル
ラヴェルRavel
Ravel

ラヴェル

通算成績17戦3勝

獲得賞金16,594万円

生年月日 2020.02.14(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ラヴェルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 GIII府中牝馬S 東京 芝1800 7人気 津村明秀 1:46.6 上り35.3映像
12 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 10人気 津村明秀 1:32.7 上り34.4映像
11 GI大阪杯 阪神 芝2000 13人気 北村友一 1:56.9 上り34.4映像
9 GII東海テレビ杯金鯱賞 中京 芝2000 5人気 北村友一 2:03.6 上り38.3映像
1 GIIIチャレンジカップ 京都 芝2000 3人気 川田将雅 1:58.2 上り35.0映像
2 GIエリザベス女王杯 京都 芝2200 12人気 川田将雅 2:11.5 上り34.1映像
6 LオクトーバーS 東京 芝2000 5人気 横山和生 1:57.9 上り34.0
5 GIIIマーメイドS 京都 芝2000 11人気 坂井瑠星 1:57.8 上り34.5
11 GIII中山牝馬S 中山 芝1800 7人気 横山武史 1:49.6 上り36.2映像
5 GII京都記念 京都 芝2200 6人気 M.デムーロ 2:12.6 上り35.2映像
11 GI秋華賞 京都 芝2000 8人気 坂井瑠星 2:02.2 上り35.0映像
14 GII関西TVローズS 阪神 芝1800 2人気 坂井瑠星 1:44.5 上り34.7映像
4 GI優駿牝馬 東京 芝2400 10人気 坂井瑠星 2:24.2 上り35.9映像
11 GI桜花賞 阪神 芝1600 10人気 坂井瑠星 1:33.0 上り33.9映像
11 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 4人気 坂井瑠星 1:34.8 上り36.1映像
1 GIIIアルテミスS 東京 芝1600 3人気 坂井瑠星 1:33.8 上り33.0映像
1 2歳新馬 小倉 芝1800 1人気 岩田望来 1:49.5 上り34.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ラヴェルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キタサンブラックKitasan BlackブラックタイドサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
シュガーハートサクラバクシンオーSakura Bakushin O
オトメゴコロ
サンブルエミューズダイワメジャーDaiwa MajorサンデーサイレンスSunday Silence
スカーレットブーケ
ヴィートマルシェフレンチデピュティFrench Deputy
キョウエイマーチ
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牝馬。父キタサンブラック、母サンブルエミューズ。主な勝ち鞍はアルテミスS・チャレンジC。

才女の生まれた家 ― 名前の由来

母の名はサンブルエミューズ。その響きから連想して、一頭の牝馬にフランスの作曲家の名が与えられた。モーリス・ラヴェル。彼の代表作『ボレロ』は、たったひとつの主題をリズムを変えぬまま延々と反復し、長い時間をかけて頂へと昇りつめていく曲だ。ラヴェルという馬の一生も、どこかその構造に似ることになる。 2020年2月14日、ノーザンファーム生まれの鹿毛。父はキタサンブラック、母サンブルエミューズは芙蓉ステークスを勝った三勝馬にすぎないが、その一族は華やかだった。母の半妹マルシュロレーヌは、海を渡ってアメリカのブリーダーズカップ・ディスタフを制した名牝。半姉ナミュールは、のちにマイルチャンピオンシップを勝つGIホースになる。そして三代母キョウエイマーチは、1997年の桜花賞馬。牝馬の頂点を知る血が幾重にも折り重なった家に、彼女は生まれた。 2022年7月10日、小倉の芝1800m。岩田望来を背に、単勝1番人気の期待どおり新馬戦を勝ち上がる。良血の才女の旅は、順風のなかで始まった。

アルテミスの朝 ― 女王を退けて

2022年10月29日、東京のアルテミスステークス。手綱を初めて託されたのは坂井瑠星だった。 ゲートをやや出遅れ、4コーナーは9番手。だが直線で外に持ち出すと、上がり3ハロン33秒0の切れ味で、逃げるアリスヴェリテを一完歩ごとに飲み込んでいく。ゴール前、1番人気で追いすがる一頭をクビ差だけ抑えて重賞初制覇。抑えたその相手が――翌年、史上七頭目の牝馬三冠に輝くリバティアイランドだった。新馬戦を無敗で勝ち上がってきた女王候補が、生涯で初めて先着を許した一戦。それを、ラヴェルは自らの脚で刻んだ。 坂井は初騎乗のときからこの馬の能力を信じ、いずれGIへ行くべき馬だと思っていた、と振り返っている。この朝、彼女はたしかにGIの頂へいちばん近く見えた。

桜は咲かず ― 届かなかったクラシック

だが、頂は遠かった。 2022年暮れの阪神ジュベナイルフィリーズは4番人気で11着。年が明けても歯車は噛み合わない。三代母キョウエイマーチが制した桜花賞では、10番人気の11着。牝系が知り尽くしているはずの一冠は、彼女には開かなかった。 光が差したのはオークスだった。東京の2400m、10番人気の低評価をよそに末脚を伸ばし、4着まで押し上げる。世代の頂点争いに、たしかに脚は届いていた。しかし秋、2番人気に支持されたローズステークスは14着に大敗し、続く秋華賞も11着。坂井とともに戦い抜いたクラシックの一年は、勝利のないまま暮れていった。良血の才女は、才の証しをどこにも刻めずにいた。

長い反復

四歳になっても、勝ち鞍は増えなかった。京都記念5着、中山牝馬ステークス11着、マーメイドステークス5着、オクトーバーステークス6着。鞍上はミルコ・デムーロ、横山武史、坂井、横山和生と替わり続け、掲示板に載る日はあっても、先頭でゴールを迎える日は訪れない。 アルテミスの朝から、すでに二年が過ぎようとしていた。あの一完歩の切れ味はどこへ行ったのか――そう問いたくなるほど、彼女は同じ場所で足踏みを続けた。ボレロの主題が、まだ頂に達しないまま何度も鳴り続けるように。それでも彼女は毎回きちんとゲートに立ち、脚を使って走り切っていた。

エリザベスの直線

転機は、本命の印がほとんど付かないところからやってきた。 2024年11月10日、エリザベス女王杯。単勝は12番人気。鞍上に川田将雅を迎えたラヴェルは、中団でじっと脚をため、京都の直線で伸びた。勝ったスタニングローズには2馬身及ばなかったが、突き抜けてきたその脚は紛れもなく本物で、2着でゴールを駆け抜ける。アルテミスステークス以来、実に10戦ぶりの馬券圏内。トップカテゴリーの舞台で、彼女は自分の脚がまだ死んでいないことを証明した。 奇縁というべきか、このレースを3着で終えたのは、別の牝馬に乗った坂井瑠星だった。かつての主戦が同じゲートに並ぶ直線で、ラヴェルは彼の前でゴールした。長く鳴り続けた主題が、ここへ来てわずかに音量を上げた。

クレッシェンド ― そして牧場へ

二十日後、彼女は本当に頂へ昇りきる。 2024年11月30日、京都のチャレンジカップ。3番人気。川田を背に道中は中団で脚をため、直線で一気に馬群を割ると、1馬身3/4差をつけて突き抜けた。アルテミスステークス以来、二年一か月ぶりの勝利であり、二つ目の重賞タイトルだった。川田はレース後、「今日はなんといっても久しぶりに勝ったことが大事」[^1]と、勝利そのものより勝てた事実をかみしめるように語った。 明けて2025年、大阪杯やヴィクトリアマイルではGIの壁に跳ね返されたが、それは彼女がずっと一線級の舞台に立ち続けた証しでもあった。同年6月の府中牝馬ステークスを最後に繋靭帯炎を発症。10月、キャロットクラブが引退を発表し、ラヴェルはノーザンファームで繁殖牝馬となった。 ひとつの主題を、リズムを変えずに鳴らし続ける。アルテミスの眩しい朝から、勝てない長い反復を経て、たどり着いた二度目の勝利。ボレロがそうであるように、彼女の物語もまた、地味な繰り返しの果てにようやく頂へ届く曲だった。キョウエイマーチからマルシュロレーヌナミュールへと受け継がれてきた牝の血を、今度は彼女が母として次へ渡していく。次の楽章は、まだ始まったばかりだ。

出典:東京スポーツ「【チャレンジカップ結果&コメント】ラヴェルが突き抜けて重賞2勝目 川田将雅『リズムを大事にしながらの道中でした』」2024年11月30日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/52431、閲覧日:2026年7月18日。

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