名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ラムジェットのイメージビジュアル
ラムジェットRamjet
Ramjet

ラムジェット

通算成績17戦5勝

獲得賞金(海外含む・概算)約35,637万円

生年月日 2021.04.04(令和3年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ラムジェットの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 三浦皇成 2:03.6 上り36.8映像
8 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 三浦皇成 1:36.3 上り35.7映像
3 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 7人気 三浦皇成 1:50.6 上り36.9映像
4 GIIIみやこS 京都 ダ1800 5人気 三浦皇成 1:48.0 上り35.3映像
3 GIIIコリアカップ ソウル ダ1800 1人気 三浦皇成 1:51.4 上り38.5映像
6 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 3人気 三浦皇成 2:04.4 上り38.6映像
9 GIドバイWC メイダン ダ2000 6人気 三浦皇成 2:05.32
6 GIサウジカップ KAA ダ1800 8人気 三浦皇成 1:51.84
3 GI東京大賞典 大井 ダ2000 4人気 三浦皇成 2:05.2 上り36.7映像
4 JpnⅠジャパンダートクラシック 大井 ダ2000 2人気 三浦皇成 2:05.5 上り39.3映像
1 JpnⅠ東京ダービー 大井 ダ2000 1人気 三浦皇成 2:06.6 上り37.6
1 GIIIユニコーンS 京都 ダ1900 3人気 三浦皇成 1:58.6 上り37.6映像
1 LヒヤシンスS 東京 ダ1600 5人気 三浦皇成 1:36.3 上り36.1
1 寒椿賞 中京 ダ1400 2人気 三浦皇成 1:26.0 上り36.5
9 オキザリス賞 東京 ダ1400 1人気 J.モレイラ 1:26.1 上り38.1
3 ヤマボウシ賞 阪神 ダ1400 1人気 川田将雅 1:25.8 上り37.5
1 2歳新馬 中京 ダ1400 6人気 北村宏司 1:25.4 上り35.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ラムジェットの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
マジェスティックウォリアーA.P. IndySeattle Slew
Weekend Surprise
Dream SupremeSeeking the Gold
Spinning Round
ネフェルティティゴールドアリュールGold Allureサンデーサイレンス
ニキーヤ
ラヴェリータUnbridled's Song
Go Classic
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの黒鹿毛の牡馬。父マジェスティックウォリアー、母ネフェルティティ。主な勝ち鞍は東京ダービー・ユニコーンS。

エンジンの名 ― 血に刻まれた砂

名は、走る機械から採られた。ラムジェット――空気を前から吸い込み、みずからの速度そのものを推進力に変えるジェットエンジンの一種。止まっていては何も生まず、速く走るほど強く燃える機関の名を、この黒鹿毛の牡馬は背負って生まれた。 2021年4月4日、ノースヒルズの産。父はA.P.インディの血を引く米国のダート種牡馬マジェスティックウォリアー、母はネフェルティティ。そして母の母――祖母ラヴェリータは、ただ血をつなぐだけの繁殖牝馬ではなかった。キーンランドのセリで海を渡ってきたアメリカ生まれのその牝馬は、日本の砂で関東オークスを勝ち、スパーキングレディーカップを三度制し、地方交流のダート重賞を七つ積み上げた女王だった。父の血も、母の母の血も、砂の上でこそ点火する。ラムジェットは、走る場所を生まれる前から決められていた。 馬主は前田幸治、管理するのは栗東の佐々木晶三。走る機械の点火を待つように、一頭の砂の申し子が、静かに時を数えはじめる。

三度目の手綱 ― 待っていた男

2023年7月1日、中京のダート1400m。六番人気という低い評価をものともせず、北村宏司の手綱で後方から差し切り、デビュー戦を勝ち上がる。だが、そこから順風は続かなかった。秋に一番人気へ推された二戦は歯車が噛み合わず、川田将雅を背にしたヤマボウシ賞は三着、モレイラに手綱の渡ったオキザリス賞に至っては、一番人気を裏切る九着に沈んだ。名手たちが入れ替わり跨っても、この機関はまだ本来の推力を出せずにいた。 四戦目の寒椿賞。ここで手綱を取ったのが、三浦皇成だった。 デビューは2008年。新人ながら年間91勝を挙げ、武豊が持っていた新人年間最多勝記録を塗り替えた早熟の天才――そう呼ばれた男は、しかし頂の一つ手前でずっと足踏みを続けていた。2014年の安田記念ではゴール前で先頭に立ちながら、ジャスタウェイに鼻差で捉えられた。そして2016年8月、札幌で騎乗馬が故障して転倒し、肋骨九本と骨盤を折り、肺と副腎まで傷めて、一年近くターフを離れる。戻ってきた男に、大きな主役はなかなか回ってこなかった。 その三浦を背に、ラムジェットは寒椿賞を外から差し切る。噛み合わずにいた機関が、ようやく合う点火装置を見つけた。ここから、待っていた男と一頭の連勝が始まる。

四連勝 ― 砂の女王の孫

明けて2024年。ヒヤシンスステークスを大外から三馬身突き抜け、続くユニコーンステークスでは中団から直線しぶとく伸びて先頭に立ち、二馬身半差で重賞を初めて手にした。この一勝が、東京ダービーへの優先出走権を連れてくる。 この年、南関東の三歳ダート路線は生まれ変わっていた。羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック――大井の三つの一戦が新たにJpnⅠへ格上げされ、「ダート三冠」として束ね直された最初の年である。JRAの馬にも門戸が開かれたその二冠目、東京ダービーに、ラムジェットは無傷の三連勝で乗り込んだ。 6月5日、大井2000m。好位の三番手で脚を溜め、直線で前を悠々とかわして抜け出すと、二着サトノエピックに六馬身。四連勝での戴冠だった。追い出してからも三浦の手はさほど忙しくなく、馬はまだ余力を残したまま、先頭で砂のゴールを駆け抜けた。 その二か月前、2024年4月3日。祖母ラヴェリータが十八歳で世を去っていた。かつて日本の砂を七つの重賞で制した女王は、孫が大井の頂に立つ姿を見ることはなかった。だが、砂の上で燃える血は一代を飛び越えて確かに継がれていた。走る機械の名を持つ孫が、祖母の戦場で、生涯最も大きな一勝を挙げたのだ。

頂の先 ― 世界の砂へ

戴冠は、しかし頂ではなく、壁の入口だった。三冠の最終戦ジャパンダートクラシックは伸びきれず四着。二冠を制した勢いのまま三冠へ、とはいかず、その道は自らの脚で閉じた。暮れの東京大賞典では古馬の一線級を相手に三着まで食い下がり、まだ底を見せない。 2025年、ラムジェットは海を渡る。二月のサウジカップ、四月のドバイワールドカップ――世界の砂の頂点に三浦を背に挑み、六着、九着。世界の壁は厚かった。帰国しての帝王賞も六着に終わる。それでも秋、韓国・ソウルのコリアカップでは一番人気の重圧のなか三着で踏みとどまり、暮れのチャンピオンズカップでは七番人気の下馬評を覆して三着に突っ込んだ。勝ち切れない。だが、掲示板の内から外れない。東京ダービーの覇者は、勝てないなりに、いつも強い馬たちのすぐ後ろにいた。

点火を待つ ― 機関はまだ回る

2026年、ラムジェットはなお現役の砂を走っている。二月のフェブラリーステークスは八着、七月の帝王賞は五着。東京ダービーで見せたあの六馬身の切れは、まだ再びは姿を現していない。 背に跨り続けた三浦皇成は、この馬で大井の頂を踏んだ一年余りのち――2025年9月28日、スプリンターズステークスを別の馬で制し、デビューから十八年目にしてついにJRAのGⅠを手にした。頂の一つ手前で長く足踏みしてきた男は、ようやくその壁を越えた。ラムジェットとの東京ダービーは、長い回り道のなかで確かに灯った一つの火だった。 ジェットエンジンは、速く走るほど強く燃える。米国の砂と地方の砂、二つの血を継いだ黒鹿毛は、まだ走ることをやめない。あの日の推力にもう一度点火する時を、砂は静かに待っている。

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