名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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クイーンズウォークのイメージビジュアル
クイーンズウォークQueen's Walk
Queen's Walk

クイーンズウォーク

通算成績13戦4勝

獲得賞金29,940万円

生年月日 2021.03.14(令和3年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
クイーンズウォークの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 3人気 西村淳也 1:31.4 上り33.1映像
3 GII東海テレビ杯金鯱賞 中京 芝2000 1人気 川田将雅 1:58.2 上り34.1映像
9 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 9人気 川田将雅 1:59.0 上り32.8映像
GIII新潟記念 新潟 芝2000 川田将雅 映像
2 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 4人気 川田将雅 1:32.1 上り33.6映像
1 GII東海テレビ杯金鯱賞 中京 芝2000 4人気 川田将雅 2:01.3 上り36.3映像
6 GIII小倉牝馬S 小倉 芝2000 1人気 川田将雅 1:58.7 上り36.2映像
15 GI秋華賞 京都 芝2000 3人気 川田将雅 1:59.6 上り36.5映像
1 GII関西TVローズS 中京 芝2000 2人気 川田将雅 1:59.9 上り33.5映像
4 GI優駿牝馬 東京 芝2400 5人気 川田将雅 2:24.4 上り34.7映像
8 GI桜花賞 阪神 芝1600 3人気 川田将雅 1:32.8 上り34.1映像
1 GIIIデイリー杯クイーンカップ 東京 芝1600 1人気 川田将雅 1:33.1 上り33.4映像
1 2歳未勝利 阪神 芝1800 1人気 川田将雅 1:48.3 上り33.7
2 2歳新馬 京都 芝1800 1人気 川田将雅 1:50.5 上り33.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
クイーンズウォークの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キズナKizunaディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
キャットクイルCatequilStorm Cat
Pacific Princess
ウェイヴェルアベニューWavell AvenueHarlingtonUnbridled
Serena's Song
Lucas StreetSilver Deputy
Ruby Park
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの黒鹿毛の牝馬。父キズナ、母ウェイヴェルアベニュー。主な勝ち鞍はデイリー杯クイーンC・関西TVローズS・東海テレビ杯金鯱賞。

女王の遊歩道 ― 名と血

クイーンズウォーク。ロンドンのテムズ河畔、女王の名を冠した遊歩道の名である。 血もまた、海の向こうから渡ってきた。母ウェイヴェルアベニューは、2015年のブリーダーズカップ・フィリー&メアスプリントを制した北米のダート女王。半兄には、英国王室の近衛兵の名を負ったグレナディアガーズ――父フランケルを受けて2020年の朝日杯フューチュリティステークスを勝った快速馬がいる。母の産駒は、英国の由緒ある名を継ぎ、短い距離を弾けるように走る一族だった。 その牝馬の父に選ばれたのが、キズナディープインパクトの血を継ぐダービー馬である。スプリントの母系に、より長く伸びる父の血。栗東・中内田充正の厩舎に預けられたこの黒鹿毛は、生まれ持った速さを、母たちより先の地点まで運ぶために配された。そして最初の一歩から、その手綱をとったのは川田将雅だった。

始まりの一歩 ― クイーンカップ

2023年11月、京都の芝1800m。単勝1番人気に応えきれず、デビュー戦は2着に終わる。だが翌月の阪神で未勝利を危なげなく勝ち上がると、明けて2024年2月、東京のデイリー杯クイーンカップで一変する。 1番人気に推された牝馬は、直線で大外へ持ち出されると、上がり33秒4の脚で前をまとめて呑み込んだ。重賞初制覇。母譲りの瞬発力が、府中の長い直線でこそ活きることを、この一戦が告げていた。女王の名を持つ馬の、最初の勲章だった。

戴冠は遠く ― 桜花賞とオークス

重賞をひとつ手にした勢いのまま、クラシックの春へ向かう。だが頂は甘くなかった。 4月の桜花賞、3番人気に支持されながら末脚は不発に終わり、8着。悔しさを残したまま迎えた5月のオークスでは、2400mという未知の距離を好位から粘り、4着まで押し上げた。桜の阪神では影を潜めた脚が、府中の長丁場ではしぶとく伸びる。距離はこなす、力も足りる。それでも戴冠には、あと一枚が届かない。三歳牝馬の頂は、この馬の手からわずかにこぼれ落ちていった。

大外一気と、躓き ― 秋の三歳

秋、関西テレビ杯ローズステークス。2番人気のクイーンズウォークは、直線で再び大外へ躍り出ると、上がり33秒5の切れ味で突き抜けた。重賞2勝目。誰の目にも、これが秋華賞への確かな足がかりに見えた。 ところが京都の本番で、歯車が狂う。3番人気に押し上げられて臨んだ秋華賞は、スタートで躓いて流れに乗れず、直線でも伸びを欠いて15着。前走の切れ味を知る者ほど、この最下位は信じがたかった。最も高く跳ねた脚と、最も深く沈んだ一戦が、ひと月の間に並んでいた。牝馬三冠の最後の一冠は、掴みかけた手からすり抜けていった。

牡馬の中の女王 ― 金鯱賞

4歳の緒戦、1番人気に推された小倉牝馬ステークスを6着に取りこぼし、評価は揺れた。だがその一戦が、次への伏線だった。 2025年3月、中京の金鯱賞。牡馬混合の中距離重賞に、4番人気で挑む。直線、外から一完歩ずつ差を詰めた牝馬は、1番人気の牡馬ホウオウビスケッツをゴール寸前でハナ差捉えきった。牝馬による金鯱賞制覇は、1995年のサマニベッピン以来、実に30年ぶり。牡馬の群れの中で、この馬は確かに女王だった。鞍上の川田は、伸び始めた瞬間の手応えをこう振り返っている。「〝出たな〟と分かりました」[^1]。母の速さは、牡馬をねじ伏せる武器に育っていた。

出典:東スポ競馬「【金鯱賞結果&コメント】クイーンズウォーク川田将雅はハナ差Vにも「〝出たな〟と分かりました」」2025年3月16日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/56164 、閲覧日:2026年7月16日。

クビ差の頂 ― ヴィクトリアマイル

2025年5月、東京のヴィクトリアマイル。マイルに戻った牝馬は、直線で鋭く追い込み、先に抜け出した1番人気アスコリピチェーノを追い詰めた。届いたかに見えたゴール、その差はクビ。2着。GIの頂に、これ以上ないほど近づいて、また一歩届かなかった。川田は、マイルにも対応して素晴らしい内容で走りきったと、敗れてなお馬を称えた。 そこから、影が続く。夏の新潟記念は、本馬場入場でバランスを崩して放馬し、右臀部を打って競走除外――走ることさえ叶わなかった。秋の天皇賞では、府中の2000mで牡馬の一線級に挑んで9着。速い上がりを使いながら、前は遠かった。頂に最も近づいた年は、同時に、頂の高さを思い知らされた年でもあった。

託された手綱 ― そして、いまも

2026年、5歳。連覇を狙った金鯱賞は1番人気で3着。ここまで、新馬戦から数えて一度も欠かすことなく、この馬の手綱は川田将雅がとってきた。 だが5月のヴィクトリアマイル、その関係が途切れる。川田は同じレースで別の馬カムニャックを選び、クイーンズウォークの鞍上には西村淳也が座った。初騎乗の西村は、状態も雰囲気も良かったが最後は脚色が並んでしまった、と振り返る。結果は3着。皮肉にも、クイーンズウォークのすぐ前、2着でゴールを駆け抜けたのは川田のカムニャックだった。長く連れ添った手綱が、別の誰かの手に渡っていく。それでもこの牝馬は、乗り手が代わってなお、GIの上位で脚を伸ばし続けた。 王冠には、まだ手が届いていない。母のようなタイトルも、半兄のような戴冠も、この馬の名にはまだ無い。けれど女王の遊歩道は、頂の一点ではなく、歩き続ける道の名前だ。クビ差の悔しさも、30年ぶりの快挙も、躓いた一日も、すべてを蹄に刻んで、この牝馬はまだ現役の道を歩いている。再び直線で外へ躍り出る日を、静かに待てばいい。

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