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ピューロマジック
通算成績20戦7勝
獲得賞金2億4,373万円
生年月日 2021.02.18(令和3年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIIIアイビスSD | 新潟 芝1000 | 1人気 | 田辺裕信 | 0:53.5 | 上り31.7 | 映像 | |
| 1 | GIII函館スプリントS | 函館 芝1200 | 6人気 | 北村友一 | 1:07.4 | 上り34.0 | 映像 | |
| 13 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 17人気 | 北村友一 | 1:07.7 | 上り34.5 | 映像 | |
| 16 | GIIIオーシャンS | 中山 芝1200 | 9人気 | 横山和生 | 1:08.3 | 上り36.3 | 映像 | |
| 10 | GIBCターフスプリント | デルマー 芝1000 | 10人気 | O.マーフィー | — | 映像 | ||
| 8 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 5人気 | 松山弘平 | 1:07.4 | 上り33.4 | 映像 | |
| 1 | GIIIアイビスSD | 新潟 芝1000 | 2人気 | C.ルメール | 0:53.7 | 上り31.3 | 映像 | |
| 5 | GIアルクオーツSP | メイダン 芝1200 | 8人気 | O.マーフィー | 1:08.19 | — | — | |
| 9 | GIIIシルクロードS | 京都 芝1200 | 1人気 | 坂井瑠星 | 1:08.8 | 上り35.7 | 映像 | |
| 8 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 10人気 | 横山典弘 | 1:07.5 | 上り35.4 | 映像 | |
| 13 | GIIセントウルS | 中京 芝1200 | 1人気 | 横山和生 | 1:08.4 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | GIII北九州記念 | 小倉 芝1200 | 3人気 | 松山弘平 | 1:07.9 | 上り35.6 | 映像 | |
| 1 | GIII葵S | 京都 芝1200 | 8人気 | 横山和生 | 1:07.1 | 上り33.9 | 映像 | |
| 2 | LマーガレットS | 阪神 芝1200 | 3人気 | 松山弘平 | 1:09.8 | 上り35.7 | — | |
| 1 | 3歳1勝クラス | 京都 芝1200 | 1人気 | 坂井瑠星 | 1:08.8 | 上り34.1 | — | |
| 2 | さざんか賞 | 阪神 芝1200 | 2人気 | 斎藤新 | 1:08.5 | 上り35.9 | — | |
| 8 | GIIIファンタジーS | 京都 芝1400 | 7人気 | 斎藤新 | 1:21.0 | 上り35.8 | 映像 | |
| 1 | 2歳未勝利 | 札幌 芝1200 | 1人気 | 斎藤新 | 1:09.8 | 上り35.1 | — | |
| 3 | 2歳未勝利 | 札幌 芝1500 | 10人気 | 斎藤新 | 1:33.3 | 上り38.3 | — | |
| 16 | 2歳新馬 | 東京 ダ1400 | 2人気 | 戸崎圭太 | 1:31.3 | 上り41.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父アジアエクスプレス 栗毛 | ヘニーヒューズ 栗毛 | ヘネシー |
| Meadow Flyer | ||
| ランニングボブキャッツ 鹿毛 | Running Stag | |
| Backatem | ||
| 母メジェルダ 鹿毛 | ディープインパクト 鹿毛 | サンデーサイレンス |
| ウインドインハーヘア | ||
| メリュジーヌ 鹿毛 | フレンチデピュティ | |
| メジェール |
旅程 — この馬の物語
2021年生まれの鹿毛の牝馬。父アジアエクスプレス 栗毛、母メジェルダ 鹿毛。主な勝ち鞍は葵S・北九州記念・アイビスSD。
純粋な魔法という名 ― ダートの黒星から
名は、血の物語ではなく、ひとつの願いだった。スペイン語で「純粋な」「聖なる」を意味する『ピューロ』に、「可能にする」という響きを重ねる。ピューロマジック――純粋な魔法。母系にも父系にも、その名の由来は無い。ただ、速さで人を驚かせてほしいという祈りだけが、そこに込められていた。 2021年2月18日、新冠・村田牧場に生まれた鹿毛の牝馬。父アジアエクスプレスは2013年の朝日杯フューチュリティステークスを制した米国産で、その父ヘニーヒューズはアメリカでGIを二つ勝ったダートのスプリンター。母メジェルダはディープインパクトの娘で、自身はJRA1勝、2歳秋のファンタジーステークスで2着に食い込んだ快速馬だった。血の設計図が指し示すのは、ダートの、短い距離。 2023年6月、東京・ダート1400mの新馬戦。2番人気に推されたその初陣で、彼女は最下位に近い16着に沈んだ。純粋な魔法は、いきなり黒星から始まる。血が約束したはずのダートは、彼女の走る場所ではなかった。
芝で見つけた居場所 ― 未勝利、そして西へ
美浦の宮田敬介厩舎は、次走で彼女を芝に導いた。8月の札幌・芝1500mで3着に伸びると、続く芝1200mの未勝利戦を1番人気に応えて快勝する。ダートで見失った居場所を、彼女は芝の短距離で見つけた。 秋、京都のファンタジーステークス。母メジェルダがかつて2着した舞台に、娘が立った。1400mの距離もあってか8着に終わったが、年末のさざんか賞で2着に粘り、明けて2024年1月、京都・芝1200mの1勝クラスを1番人気で危なげなく勝ち上がる。この頃、彼女は栗東の安田隆行厩舎へと移っていた。かつてロードカナロアやカレンチャンを短距離の頂へ送り出した、快速の血が集まる名門である。ほどなく安田隆行は定年を迎え、厩舎は息子の翔伍が引き継いだ。快速の牝馬は、快速を育てる場所に根を下ろした。
伏兵の逃走 ― 葵ステークス
2024年5月25日、京都。3歳スプリント重賞・葵ステークスに、彼女は8番人気の伏兵として臨んだ。鞍上は横山和生。 ゲートが開くと、ロケットスタートからためらいなくハナを切る。前を譲らぬまま、後続を1馬身1/4突き放して逃げ切った。勝ち時計1分07秒1。重賞初制覇であり、同時にこれは父アジアエクスプレス産駒がJRAの重賞を勝った最初の一勝でもあった。 レース後、横山和生の言葉には、手放しの喜びだけではないひとつの注文が混じっていた。この馬は真面目過ぎるほど真面目に走る――力を抜くことを知らず、いつも全力で前へ行こうとする。だから喧嘩をせず、その気持ちを尊重して走らせた、と。もう少しリラックスしてリズムよく運べれば、と彼は課題を残した。真面目さと、リズム。この二つの言葉が、のちの二年間、彼女の走りに影のように付き添うことになる。
夏の小倉、五十三キロ ― 北九州記念
重賞馬となっても、勝ち方は変わらなかった。1か月後の6月30日、小倉の北九州記念。松山弘平を背に、軽ハンデの53キロを味方につけて、また彼女は前へ出た。4コーナーで後続に2馬身の差をつけ、直線でも逃げ脚は衰えない。追い込むヨシノイースターを半馬身だけ残し、稍重の1分07秒9で押し切る。重賞2勝目。 春の京都、夏の小倉。3歳の牝馬が、逃げて、逃げて、二つのタイトルを夏までに掴んだ。純粋な速さを、彼女は隠さない。それが武器だった。
過剰な期待という敵 ― 気分屋の秋
だが、速さを買われすぎると、歯車は狂った。9月のセントウルステークスは、初めて1番人気に推されながら13着の大敗。続くスプリンターズステークスでGIの舞台に立ったが、古馬の一線級を相手に8着まで。明けて2025年のシルクロードステークスでも、単勝1番人気に応えられず9着に沈んだ。 人気を背負って崩れ、伏兵で輝く。過剰な期待は、この馬にとってむしろ敵だった。春にはドバイのアルクオーツスプリントへ遠征して5着。世界の短距離も覗いたが、GIの壁は高いままだった。真面目に走る馬が、勝ちを義務づけられた途端に脆くなる――速さと引き換えのような気難しさが、栄光の隣にいつも影を落としていた。
直線一千の申し子 ― アイビスサマーダッシュ
居場所は、やはり夏の直線にあった。2025年8月3日、新潟・芝1000m。まっすぐな一本道で最速を競うアイビスサマーダッシュに、彼女は2番人気で出走する。手綱を取ったのはクリストフ・ルメール。 この日は、逃げなかった。ルメールは彼女を中団に落ち着かせ、内目を突いて残り300mから抜け出させる。外の激しい競り合いから伸びてきた1番人気テイエムスパーダをクビ差だけ抑え、レコードタイの53秒7で先頭でゴールした。重賞3勝目。前に行かずとも、彼女は最速だった。名手はその聡明さをひとことで讃える。「グッドスチューデント」[^1]。真面目な優等生――横山和生が課題として残した「リズム」に、ルメールは別の答えを出してみせた。 血も、この直線を知っていた。同じ新潟の直線1000mを舞台にする韋駄天ステークスは、彼女の全兄メディーヴァルが制したレースである。母メジェルダの仔たちは、まっすぐな最速の道でこそ本領を発揮する一族だった。 もっとも、秋のスプリンターズステークスは再び8着。晩秋にはアメリカ・デルマーのブリーダーズカップ・ターフスプリントまで遠征したが、芝1000mで10着に終わる。頂の景色は、まだ遠かった。
出典:東京スポーツ「【アイビスサマーダッシュ結果&コメント】ピューロマジック快勝 ルメール「グッドスチューデント」」2025年8月3日配信、https://tospo-keiba.jp/breaking_news/61167、閲覧日:2026年7月16日。
馬のリズムで ― 復活の函館
2026年は、つまずきから明けた。2月のオーシャンステークスは16着。春の最速王を決めるGI・高松宮記念では、17番人気の低評価を覆せず13着。年明けの重賞・GIで、彼女の名は掲示板から遠かった。 それでも、夏がまた巡ってくる。6月13日、函館スプリントステークス。6番人気。鞍上は北村友一。稍重の芝1200mで、彼女はスタートをぴたりと決めると、絡まれることなくハナへ立った。あとは、いつもの彼女だった。後続を1馬身1/4突き放し、エーティーマクフィの追撃を退けて逃げ切る。1分07秒4。約一年ぶりの勝利であり、重賞4勝目だった。 北村友一はレース後、こう言った。「馬のリズムで走れました」[^1]。スタートを決めて前へ行き、邪魔をされずに自分の刻みで駆ける――それが彼女の魔法の発動条件だった。二年前の京都で横山和生が「リズムよく行ければ」と残した宿題を、彼女は自らの逃げで解いてみせた。真面目さは、最後まで武器のままだった。 函館の次に彼女が向かったのは、夏の新潟だった。一年前、レコードに並んだあのまっすぐな一本道である。
出典:デイリースポーツ「【函館スプリントS】6番人気ピューロマジックが復活の重賞4勝目 北村友「馬のリズムで走れた。スプリンターとしての素質がある」」2026年6月13日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/06/13/0020472558.shtml、閲覧日:2026年7月16日。
一本道を塗り替える ― アイビスサマーダッシュ連覇
2026年8月2日、新潟・芝1000m。第26回アイビスサマーダッシュに、ピューロマジックは1番人気で立った。手綱は、当日乗る予定だった松山弘平に代わり、急遽まわってきた田辺裕信が握った。田辺はこの一戦のために、前走で乗った北村友一と、乗るはずだった松山の両方から、この牝馬の癖を聞いている。二人の言うことは、同じだったという。 好スタートを決めると、彼女はそのまま先頭へ出た。1000メートルのあいだ誰にも前を譲らず、14番人気ロードトレイルに3馬身の差をつけてゴールへ入る。時計は53秒5。2002年にカルストンライトオが刻み、二十四年間だれも破れなかった53秒7を、0秒2削り取った。新潟の直線1000メートルのJRAレコードである。前の年、彼女自身がその53秒7に並んでいた。並んだ壁を、一年後に自分の脚で越えたことになる。 田辺は驚いていた。「僕は最後に少し合図を出したくらい」[^1]。ほとんど追わずにその時計が出た、ということである。真面目に、力を抜くことを知らずに、まっすぐ前へ ―― デビュー戦のダートで16着に沈んだ牝馬が持っていた、たったひとつの取り柄が、直線競馬の最速値になった。 アイビスサマーダッシュ連覇、重賞5勝目。田辺にとっても、2019年のライオンボス以来、二度目のアイビス制覇だった。安田翔伍調教師は、この先をサマースプリントシリーズの王座へ向けるか、GIへ向けるかで思案していると語る。派手なGIの称号は、まだ手にしていない。それでも、新潟のまっすぐな一本道には、いまこの牝馬の名前が刻まれている。純粋な魔法 ―― 名づけた人が託したのは、速さで人を驚かせてほしい、というただそれだけの祈りだった。二十四年ぶりに書き換えられた数字は、その祈りへの、いちばん短い返事である。
出典:サンケイスポーツ「【アイビスSD】ピューロマジックがレコードで連覇 田辺裕信騎手『すごいスピードだな…と、びっくりしています』」2026年8月2日配信、閲覧日:2026年8月3日。
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