名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

名馬録
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プライドキムのイメージビジュアル
プライドキムPride Kim
Pride Kim

プライドキム

通算成績34戦7勝

獲得賞金16,670万円

生年月日 2002.03.22(平成14年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
プライドキムの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 ゴールドカップ 浦和 ダ1500 11人気 有年淳 1:35.2 上り38.6
12 京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 7人気 有年淳 1:41.9 上り41.2
4 川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 12人気 有年淳 1:40.1 上り39.3
7 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1400 6人気 有年淳 1:28.8 上り38.5
9 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 12人気 有年淳 1:13.5 上り37.4
12 JpnⅢ名古屋大賞典 名古屋 ダ1900 7人気 佐藤裕太 2:09.5 上り44.6
4 OP’10ウインタースプ 大井 ダ1200 7人気 川島正太郎 1:12.3 上り36.7
4 船橋記念 船橋 ダ1000 5人気 川島正太郎 0:59.7 上り37.0
9 JpnⅠJBCスプリント 名古屋 ダ1400 7人気 川島正太郎 1:28.2 上り37.5映像
12 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 10人気 川島正太郎 1:14.3 上り39.1
1 JpnⅢクラスターカップ 水沢 ダ1400 8人気 川島正太郎 1:24.3
12 京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 3人気 酒井忍 1:42.3 上り41.1
4 JpnⅢさきたま杯 浦和 ダ1400 7人気 戸崎圭太 1:27.2 上り38.3
9 東京シティ盃 大井 ダ1200 2人気 町田直希 1:13.4 上り38.8
3(降) 報知グランプリカップ 船橋 ダ1800 2人気 佐藤裕太 1:51.4 上り37.5
2 船橋記念 船橋 ダ1000 2人気 内田博幸 0:59.3 上り35.8
1 報知グランプリカップ 船橋 ダ1800 1人気 内田博幸 1:51.3 上り38.0
1 船橋記念 船橋 ダ1000 5人気 内田博幸 0:58.1 上り35.3
8 OPサウジアラビアC 東京 ダ1600 5人気 池添謙一 1:36.8 上り37.7
6 GIIIアンタレスS 京都 ダ1800 8人気 池添謙一 1:49.9 上り36.9
2 GIIIマーチS 中山 ダ1800 10人気 勝浦正樹 1:51.5 上り37.4
5 OP仁川S 阪神 ダ1800 12人気 本田優 1:52.6 上り39.1
11 OPすばるS 京都 ダ1400 15人気 芹沢純一 1:24.6 上り37.5
14 GIII根岸S 東京 ダ1400 15人気 柴山雄一 1:25.4 上り37.6
6 GIジャパンダートダービー 大井 ダ2000 7人気 池添謙一 2:06.4 上り39.2
5 GIIIユニコーンS 東京 ダ1600 5人気 池添謙一 1:37.8 上り38.5映像
3 GII兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 2人気 池添謙一 2:01.8
15 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 11人気 池添謙一 1:50.0 上り37.7
1 GI全日本2歳優駿 川崎 ダ1600 3人気 池添謙一 1:40.6 上り39.4
1 GIII兵庫ジュニアグランプリ 園田 ダ1400 3人気 池添謙一 1:28.1
13 GIIデイリー杯2歳S 京都 芝1600 10人気 松田大作 1:35.8 上り36.4
1 2歳500万下 札幌 芝1200 4人気 松田大作 1:10.7 上り35.8
1 2歳未勝利 札幌 ダ1000 1人気 松田大作 1:00.4 上り35.8
9 2歳新馬 札幌 芝1200 6人気 本田優 1:12.1 上り37.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
プライドキムの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アフリートAfleetMr. ProspectorRaise a Native
Gold Digger
Polite LadyVenetian Jester
Friendly Ways
ステファーナリアルシャダイReal ShadaiRoberto
Desert Vixen
ダイナコマネチノーザンテーストNorthern Taste
シャダイリーズン
STORY

旅程 — この馬の物語

2002年生まれの栗毛の牡馬。父アフリート、母ステファーナ。

門別の栗毛と、キムという名前

2002年3月22日、北海道門別のヤナガワ牧場に栗毛の牡馬が生まれた。父はアフリート、母はステファーナ。母は中央で4戦して勝てず、2着が二度あっただけで繁殖に上がった牝馬である。名を登録された産駒は12頭。そのうち獲得賞金が1億円を超えたのは、この一頭だけになる。 母の半姉に京都牝馬特別を勝ったシスティーナ、半妹に旭川のエーデルワイス賞を勝ったパラダイスフラワーがいる。祖母ダイナコマネチから伸びた枝は太くはないが、途切れることなく勝ち馬を送り出していた。 馬名の意味は、登録の一行にだけ残っている。「キム(人名)はプライドが高い」。そのキムが誰なのかは、どこにも書かれていない。 2004年8月15日、札幌の芝1200mでデビューして9着。二戦目でダート1000mに替わると1分00秒4で勝ち上がり、続く500万下は芝1200mを制して二連勝した。栗東・池添兼雄厩舎の二歳馬は、砂でも芝でも走った。10月、京都のデイリー杯2歳ステークスで13着に沈んだときには、まだ誰も、この馬の主戦場がどこになるのかを知らない。

園田と川崎 ― 二歳の暮れ

11月24日、園田のダート1400m。兵庫ジュニアグランプリで鞍上が池添謙一に替わると、2着レッドペガサスに5馬身をつけて圧勝した。重賞初制覇である。この騎手は、管理する池添兼雄の息子だった。 12月22日、川崎のダート1600m。全日本2歳優駿は3番人気での出走だった。1分40秒6、2着に0秒8。振り切った相手はシーチャリオットという。ダーレーがアメリカから持ち込み、船橋の川島正行厩舎に預けられた牡馬で、それまで2戦2勝、まだ負けを知らなかった。その最初の黒星をつけたのがプライドキムだった。 二歳の暮れ、この馬は世代のダート王者になった。父の管理する厩舎の馬に乗って、息子がGIを勝った。

白紙になった海図

年が明けると、陣営はケンタッキーダービーとブルーグラスステークスへの遠征を検討し始める。二歳ダート王者を本場の三歳戦に連れて行く——けれど計画は白紙に戻された。 三歳初戦に選ばれたのは、芝のスプリングステークスだった。15着。5月、園田の兵庫チャンピオンシップは3着で、ドンクールとアグネスジェダイに先着を許す。6月のユニコーンステークスは5着、7月のジャパンダートダービーは6着。どちらも勝ったのはカネヒキリだった。同世代のダートには、すでに動かない一頭が立っていた。 そして大井の2000mを走っている最中に、この馬は膝の剥離骨折を発症していた。三歳の夏、プライドキムは競馬場から消える。

見切られる

2006年1月、根岸ステークスで復帰した。14着。すばるステークス11着、仁川ステークス5着。3月26日の中山、マーチステークスで10番人気の2着に粘り、ヒシアトラスとの差は0秒1まで詰まった。これが中央でこの馬が届いた、いちばん高い場所になる。 アンタレスステークス6着、サウジアラビアロイヤルカップ8着。そして9月1日、JRAの競走馬登録が抹消された。 中央で走った12戦のうち、勝ったのは二歳の夏に札幌で挙げた二つだけ。統一GIを勝った馬に、四歳の秋、中央の居場所は残っていなかった。

五十八秒一

拾ったのは、船橋の川島正行だった。中央で見切りをつけられた馬を預かり、もう一度走らせる。その手つきの確かさから、厩舎は川島再生工場という異名を持っていた。年末の能力試験を通り、移籍初戦は年明けすぐの船橋記念に決まる。1000m。 馬場は重。雨を吸った砂だった。パドックに出てきた馬体は、中央での最後の一戦より二十四キロ重い。ゲートが開くと、前に出たのはグローリーウイナー。プライドキムはその背中を見る位置で追いかけた。1000mに、考え直す時間はない。息を入れる余裕も、仕掛け直す余裕もない。内田博幸が動き、栗毛が前の馬の首の横に並び、そのまま前に出た。 時計は五十八秒一。レコードだった。 この一勝で、川島正行は地方通算700勝に到達している。中央から来た馬が、船橋で最初に走った日に、である。

二年越しの二着馬

一か月後の報知グランプリカップは1番人気だった。1800m、1着。2着に退けたのはシーチャリオットである。二年余り前の暮れに川崎で0秒8離した相手は、その後に羽田盃と東京ダービーを勝って南関東の二冠馬になり、いまは同じ川島厩舎の同僚になっていた。それでも、先に出たのはプライドキムの方だった。移籍二戦、二つとも重賞。 そこで、また止まる。戻ってきたのは11か月後の船橋記念で、ディープサマーの2着。翌月の報知グランプリカップは2位で入線しながら、審議の結果3着に降された。前年に自分が勝ったレースで、着順が一つ下がった。続く東京シティ盃は9着、さきたま杯4着、京成盃グランドマイラーズ12着。連覇も、次の勝利も、遠ざかっていった。

水沢の十七歳

2008年8月18日、岩手・水沢。クラスターカップは11頭立てで、プライドキムは8番人気だった。稍重のダート1400m。 鞍上に川島正太郎の名があった。川島正行の四男で、騎手デビューはその年の5月5日。南関東以外の競馬場に乗りに来たのはこの日が初めてで、重賞に乗るのも初めてだった。17歳である。 レースは1分24秒3。2着フェラーリピサに0秒2先着し、時計はまたレコードになった。デビュー3か月の新人が、初めて跨いだ重賞で、ダートグレード競走の史上最年少勝利者になった。 父を師匠と呼ぶ少年に、その最初の一つを渡したのは、父が中央から引き取ってきた六歳の栗毛だった。

行方は分からない

水沢の一着が、34戦の最後の勝利になった。1年余りの休養を挟んで2009年秋に戻り、大井の東京盃12着、名古屋のJBCスプリント9着。2010年は8戦して、船橋記念・ウインタースプリント・川崎マイラーズでいずれも4着。晩年は大井の高橋三郎厩舎に籍を移していた。6月23日、浦和のゴールドカップで6着。7月9日付で地方競馬の登録が抹消され、その後の消息は公には伝わっていない。 生涯7勝。中央で挙げたのは二歳の夏、札幌の二つだけで、残る五つ——園田、川崎、船橋、船橋、水沢——はすべて地方の砂の上だった。中央が見切った馬は、見切られた先で二度、レコードの時計を出した。 同じ2002年の春に生まれ、川崎で初めて土をつけられ、のちに同じ厩舎に並んだシーチャリオットは、引退後に八王子で乗馬となり、2021年に世を去ったことが公にされている。プライドキムには、その一行がない。 それでも、この馬が渡したものは残っている。父の厩舎の馬でGIを勝った池添謙一は、のちに三冠馬の背に乗った。父の厩舎の馬で最初の重賞を勝った川島正太郎は、いまも船橋で鞍にまたがり、千葉県騎手会の会長を務めている。キムが誰だったのかも、この栗毛がどこへ行ったのかも分からないままだ。分かっているのは、渡された側が、まだ走っているということだけである。

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