名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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この世代(生まれ年)

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ペルシアンナイトのイメージビジュアル
ペルシアンナイトPersian Knight
Persian Knight

ペルシアンナイト

通算成績36戦4勝

獲得賞金49,058万円

生年月日 2014.03.11(平成26年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ペルシアンナイトの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
14 GI有馬記念 中山 芝2500 11人気 C.デムーロ 2:34.6 上り38.8映像
3 GIIIチャレンジカップ 阪神 芝2000 5人気 岩田望来 2:01.6 上り33.9映像
7 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 13人気 大野拓弥 1:58.7 上り33.1映像
3 GII札幌記念 札幌 芝2000 8人気 横山武史 1:59.6 上り35.2映像
4 GIII鳴尾記念 中京 芝2000 7人気 幸英明 2:01.6 上り34.2映像
10 GI大阪杯 阪神 芝2000 9人気 幸英明 2:04.2 上り38.4映像
8 GII金鯱賞 中京 芝2000 8人気 大野拓弥 2:02.6 上り36.9映像
7 GI有馬記念 中山 芝2500 12人気 大野拓弥 2:35.6 上り36.2映像
7 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 11人気 大野拓弥 1:32.6 上り33.2映像
4 GII富士S 東京 芝1600 9人気 大野拓弥 1:33.9 上り35.2映像
2 GII札幌記念 札幌 芝2000 6人気 大野拓弥 1:59.6 上り34.5映像
15 GI宝塚記念 阪神 芝2200 13人気 和田竜二 2:18.0 上り40.5映像
9 GI安田記念 東京 芝1600 10人気 田辺裕信 1:32.7 上り34.6映像
5 GII中山記念 中山 芝1800 5人気 池添謙一 1:46.9 上り34.0映像
5 GI香港マイル シャティン 芝1600 7人気 O.マーフィー 映像
3 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 6人気 O.マーフィー 1:33.3 上り33.7映像
4 GII毎日王冠 東京 芝1800 4人気 A.シュタルケ 1:44.9 上り34.3映像
5 GII札幌記念 札幌 芝2000 5人気 M.デムーロ 2:00.4 上り35.4映像
10 GI安田記念 東京 芝1600 8人気 M.デムーロ 1:31.8 上り32.7映像
11 GI大阪杯 阪神 芝2000 3人気 M.デムーロ 2:02.0 上り36.1映像
4 GII金鯱賞 中京 芝2000 4人気 M.デムーロ 2:00.8 上り34.7映像
5 GI香港マイル シャティン 芝1600 2人気 M.デムーロ 1:34.1 映像
2 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 3人気 M.デムーロ 1:33.3 上り33.9映像
5 GIII富士S 東京 芝1600 4人気 M.デムーロ 1:32.2 上り33.8映像
6 GI安田記念 東京 芝1600 2人気 川田将雅 1:31.7 上り34.0映像
2 GI大阪杯 阪神 芝2000 6人気 福永祐一 1:58.3 上り33.7映像
5 GII中山記念 中山 芝1800 1人気 M.デムーロ 1:47.9 上り34.4映像
1 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 4人気 M.デムーロ 1:33.8 上り33.9映像
5 GIII富士S 東京 芝1600 2人気 M.デムーロ 1:35.6 上り35.4映像
7 GI東京優駿 東京 芝2400 6人気 戸崎圭太 2:27.4 上り34.0映像
2 GI皐月賞 中山 芝2000 4人気 M.デムーロ 1:57.8 上り34.1映像
1 GIIIアーリントンC 阪神 芝1600 1人気 M.デムーロ 1:34.1 上り34.0
3 GIII日刊スポシンザン記念 京都 芝1600 1人気 M.デムーロ 1:37.8 上り37.5映像
1 こうやまき賞 中京 芝1600 1人気 秋山真一郎 1:35.4 上り33.9
2 OPアイビーS 東京 芝1800 1人気 川田将雅 1:49.2 上り33.9
1 2歳新馬 小倉 芝1800 1人気 川田将雅 1:53.1 上り35.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ペルシアンナイトの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ハービンジャーHarbingerDansiliデインヒルDanehill
Hasili
Penang PearlBering
Guapa
オリエントチャームサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ニキーヤNikiyaNureyev
Reluctant Guest
STORY

旅程 — この馬の物語

2014年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ハービンジャー、母オリエントチャーム。主な勝ち鞍はマイルチャンピオンS・アーリントンC。

東方の名 ― バレエの牝系に生まれて

2014年3月11日、北海道安平町の追分ファームに、黒鹿毛の牡馬が生まれた。父ハービンジャー、母オリエントチャーム、母の父はサンデーサイレンス。 血の話は、母のさらに母から始めたほうがいい。ニキーヤ。1993年にアメリカで生まれたヌレイエフ産駒で、フランスで8戦3勝を挙げ、1997年に日本へ渡ってきた。迎えたのは開場して間もない追分ファームで、この牧場が繁殖牝馬を繋養しはじめた、その最初の顔ぶれの一頭だった。 ニキーヤとは、バレエ『ラ・バヤデール』に出てくる寺院の舞姫の名である。この一族の名づけは、そこから動かない。ニキーヤの娘にはラバヤデール、バレエブラン。ラバヤデールの息子には、舞姫が愛した戦士の名を取ってソロル。孫の代にもルルヴェ、フェッテとバレエの言葉が並ぶ。 そしてニキーヤが日本で産んだ二番仔が、栗毛の牡馬ゴールドアリュールだった。ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、東京大賞典、そしてフェブラリーステークス。サンデーサイレンス産駒でただ一頭、ダートのGIを勝った馬である。その全妹がオリエントチャーム——つまりこの馬にとって、あのダート王は伯父にあたった。同じ母から出た叔父ゴールスキーは2010年のマイルチャンピオンシップで3着に入り、2014年に根岸ステークスを勝っている。伯母ラバヤデールの息子ソロルはマーチステークスの勝ち馬。砂で名を上げた馬の並ぶ一族である。 母の名は「東洋の魅力」。その子に与えられたのは、ペルシャの騎士――ペルシアンナイト。所有はG1レーシング、預けられたのは栗東の池江泰寿厩舎である。 2016年8月21日、小倉の芝1800m。川田将雅を背にした新馬戦は、好位から抜け出して3馬身差の快勝だった。2戦目のアイビーステークスでは、のちに阪神ジュベナイルフィリーズと優駿牝馬を勝つ牝馬ソウルスターリングに屈して2着。年末のこうやまき賞を勝ち、2勝目を手に3歳を迎えた。

二月の七日間

2017年の年明け初戦はシンザン記念。1番人気に推され、鞍上にはミルコ・デムーロを迎えた。だが京都の芝は重馬場で、時計のかかる馬場に脚を取られるように3着。勝ったのはキョウヘイだった。 2月18日、ゴールドアリュールが死んだ。18歳。2002年にジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、東京大賞典を続けざまに奪い、翌年フェブラリーステークスを制した馬である。種牡馬としてもスマートファルコンエスポワールシチーコパノリッキーゴールドドリームを送り出し、日本のダート路線に太い父系を残した。その現役時代、彼を管理した池江泰郎厩舎で調教助手を務めていたのが、いま甥を預かる池江泰寿だった。 七日後、2月25日の阪神。アーリントンカップに1番人気で出走したペルシアンナイトは、中団のやや後ろから直線で一気に加速し、レッドアンシェルに3馬身の差をつけた。重賞初制覇。芝のマイルでの、鮮やかな勝ち方だった。

クビ差の同門

その年の皐月賞は、空前のメンバーだと言われた。出走18頭のうち11頭が重賞ウィナー。残る7頭にも重賞連対馬とオープン特別の勝ち馬が並ぶ。ペルシアンナイトは4番人気だった。 1000m通過59秒ちょうど、緩みのない流れのまま直線へ。馬場の内を突いたペルシアンナイトは、前をまとめて捉えて先頭に立った。中山の坂を上りきり、GIの文字まであとわずか——そこへ外から、力強いストライドで迫ってきた馬がいる。9番人気のアルアイン。同じ池江泰寿厩舎の管理馬だった。 クビ差。勝ちタイム1分57秒8はレースレコードだった。厩舎はワンツーを決め、ペルシアンナイトはその下の側にいた。 続く東京優駿では鞍上が替わった。デムーロは青葉賞を圧勝して1番人気に支持されたアドミラブルに騎乗し、ペルシアンナイトの手綱は戸崎圭太が取る。1000m通過63秒2のスローペースを早めに動いたレイデオロが制し、皐月賞の上位3頭はそろって5着から7着に並んだ。ペルシアンナイトは7着。距離2400mを走ったのは、生涯でこの一度きりだった。

大外十八番

秋初戦の富士ステークスは2番人気に推されたが、不良馬場に沈んで5着。そして11月19日、京都。マイルチャンピオンシップの枠順は、いちばん外の18番だった。 前日までの雨が残り、芝は稍重。外を回される馬には厳しい条件である。それでも鞍上に不安はなかったらしい。「枠順はいちばん外だったけれど、スタートは上手な馬だから」[^1]。その言葉のとおり、ペルシアンナイトはゲートを鋭く出た。 だが、位置を取りには行かなかった。すっと下げ、馬群の中へ潜り込む。落ち着いた追走のまま4コーナーを回ると、狙いは前でひとつに定まっていた。馬場の真ん中を押し切ろうとするエアスピネル、その外から迫るサングレーザー。二頭のあいだを鋭く突いてきたのが、大外18番から下げてきた黒鹿毛だった。 ハナ差。 3歳馬によるマイルチャンピオンシップ制覇は、サッカーボーイタイキシャトルアグネスデジタルに続く史上4頭目、17年ぶりだった。デムーロにとっても池江泰寿にとっても、このレースは初勝利。そしてデムーロはこの一勝で、歴代最多タイとなるJRA・GIの年間6勝目を刻んだ。 母の名が指した東方から、騎士の名を負った馬が、京都の外回りで最初の冠を手にした。伯父が死んだ年の、秋のことである。

出典:日本中央競馬会「第34回 マイルチャンピオンシップ」2017年11月19日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/mile/result/mile2017.html、閲覧日:2026年7月26日。

アタマ差、クビ差 ― 四歳の一年

4歳の始動戦、中山記念は1番人気。だがスタートで後手を踏み、最後方から追ったところで届かず5着に終わる。 4月の大阪杯では、デムーロが1番人気スワーヴリチャードの手綱を取った。ペルシアンナイトは福永祐一を鞍上に6番人気。中団から大外を回して伸び、向正面で早々と動いたスワーヴリチャードを追い詰めたが3/4馬身届かない。2着。そして3着には、川田将雅のアルアインが食い下がっていた。GIの2着と3着を、同じ厩舎の二頭が分け合った。 安田記念は2番人気に支持されながら、直線で何度も前を塞がれた。伸びかけては止められ、開いたときには前が遠い。6着。 秋、富士ステークスはメンバー最重量の59kgを背負って5着。そして11月、マイルチャンピオンシップにデムーロが戻ってきた。今度は1枠2番、最内である。内で脚を溜め、直線も馬群の内を選んだ。同じく内から抜け出してきたのは3歳馬ステルヴィオ。ゴール前は、二頭だけの叩き合いになった。 アタマ差。連覇は届かなかった。3着はまたもアルアインで、京都の掲示板の上のほうに、池江厩舎の二頭がまた並んだ。 暮れの香港マイルは2番人気。現地で4連勝中だったビューティージェネレーションに離されて5着。この年、ペルシアンナイトは六度走って一度も勝てなかった。それでも、一度も六着より下には落ちなかった。

三十二秒七

2019年、5歳。金鯱賞4着から向かった大阪杯で、アルアインが復活の勝利を挙げた。皐月賞以来、およそ二年ぶりのGI。同じ厩舎の相棒がターフを沸かせたその日、3番人気のペルシアンナイトは11着に沈んだ。デビュー以来はじめての二桁着順だった。 6月2日、安田記念。アーモンドアイダノンプレミアムの二強対決に沸いた東京は、しかしゲートが開いた直後に荒れる。外の一頭が内へ寄れ、ダノンプレミアムアーモンドアイ、ペルシアンナイト、ロードクエストの4頭が進路を狭められた。ペルシアンナイトは16頭立ての16番手、最後方に置かれた。 それでも脚は使った。上がり3ハロン32秒7。勝ったインディチャンプの32秒9より速い。だが最後方から届いたのは10着まで。1分30秒9のレースレコードが出た日に、この馬だけが別のレースを走らされていた。 夏の札幌記念は5着。秋の毎日王冠ではドイツの名手シュタルケを迎えて4着。マイルチャンピオンシップではマーフィーと新たなコンビを組み、出遅れながら上がり33秒7で追い込んで3着に入った。勝ったのは安田記念を制したインディチャンプである。1着、2着、3着——京都のマイルで、三年続けて三着以内に入ったことになる。 年の最後は、前年に続く香港マイル。5着で一年を終えた。

六歳、七歳

2020年、6歳。中山記念5着のあとに用意されていたドバイターフへの遠征は、開催そのものが中止となり、出国した馬はそのまま日本へ帰ってきた。 安田記念9着。宝塚記念は2017年の東京優駿以来となる2200m以上への挑戦で、内枠から3番手を進んだが15着。単勝は13番人気まで下がっていた。 8月の札幌記念。大野拓弥との初コンビで後方から脚を伸ばし、ノームコアに1馬身差の2着に入る。2018年のマイルチャンピオンシップ以来の連対だった。続く富士ステークスは9番人気で4着、マイルチャンピオンシップは後方2番手から追い込んで7着、暮れの有馬記念も7着。 7歳になった2021年も、この馬は走り続けた。金鯱賞8着、大阪杯10着、鳴尾記念4着。8月の札幌記念では、桜花賞馬ソダシから0秒1差の3着に食い込む。天皇賞(秋)は13番人気ながら上がり33秒1で追い込んで7着。12月のチャレンジカップでは岩田望来を背に3着に入った。 そして12月26日、有馬記念。11番人気で14着。それが36戦目、最後の一戦になった。 デビューから引退まで、この馬の厩舎は一度も変わっていない。栗東・池江泰寿。かつて父の厩舎で伯父ゴールドアリュールの現役時代を見た男が、自らの厩舎を構えたのち、甥にあたる一頭で芝のマイルGIを獲った。

京都競馬場の貴公子

2022年2月10日、競走馬としての登録が抹消された。36戦4勝。GIはマイルチャンピオンシップ、重賞はアーリントンカップ。2着が5回、3着が4回あり、そのうちのいくつかはハナ差、アタマ差、クビ差だった。際で決まった競馬の多い馬である。 そして同じ年、ペルシアンナイトはふたたび東京競馬場に現れた。今度は誘導馬としてである。翌2023年には京都へ移り、いまも本馬場入場の先頭を歩いている。JRAが与えた肩書きは「京都競馬場の貴公子」。紹介文には、こう記されている。「東京競馬場から移籍しても誘導の仕事だけは誰にも負けられない。」[^1] 競走馬としての名は、東方の騎士だった。いま京都の芝に最初の蹄跡をつけるのは、かつてその同じ芝でハナ差の一勝をもぎ取った黒鹿毛である。これから走る馬たちを、スタンドの前から先導する仕事。急がず、乱れず、後ろの若い馬を連れて。 騎士は、まだ馬場にいる。

出典:日本中央競馬会「誘導馬紹介:京都競馬場」、https://www.jra.go.jp/facilities/race/kyoto/yuudouba/、閲覧日:2026年7月26日。

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