名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ペプチドナイルのイメージビジュアル
ペプチドナイルPeptide Nile
Peptide Nile

ペプチドナイル

通算成績29戦8勝

獲得賞金35,084万円

生年月日 2018.04.24(平成30年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ペプチドナイルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 11人気 富田暁 1:36.2 上り36.9映像
12 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 12人気 藤岡佑介 1:52.3 上り38.5映像
9 GIII武蔵野S 東京 ダ1600 5人気 藤岡佑介 1:36.2 上り36.2映像
3 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 2人気 藤岡佑介 1:35.6 上り37.3
11 GIIゴドルフィンマイル メイダン ダ1600 2人気 藤岡佑介 映像
4 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 4人気 藤岡佑介 1:35.9 上り35.8映像
5 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 3人気 藤岡佑介 1:50.5 上り37.1映像
2 JpnⅠマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 2人気 藤岡佑介 1:36.0 上り36.6
3 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 3人気 藤岡佑介 1:39.7 上り39.4映像
1 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 11人気 藤岡佑介 1:35.7 上り37.5映像
6 GII東海テレビ杯東海S 京都 ダ1800 3人気 藤岡佑介 1:49.7 上り36.2映像
1 LベテルギウスS 阪神 ダ1800 2人気 藤岡佑介 1:52.1 上り36.9
7 OPカノープスS 京都 ダ1900 2人気 富田暁 1:58.1 上り38.8
4 GIIIみやこS 京都 ダ1800 7人気 富田暁 1:51.5 上り38.0映像
13 GIIIエルムS 札幌 ダ1700 1人気 富田暁 1:45.0 上り38.2映像
1 OPマリーンS 函館 ダ1700 1人気 藤岡佑介 1:43.0 上り36.1
1 L大沼S 函館 ダ1700 3人気 富田暁 1:43.1 上り36.7
7 LブリリアントS 東京 ダ2100 2人気 松岡正海 2:11.0 上り37.9
4 OPアルデバランS 中京 ダ1900 3人気 岩田望来 2:00.0 上り37.4
6 OPカノープスS 阪神 ダ2000 4人気 富田暁 2:04.9 上り39.1
1 赤富士S 東京 ダ2100 1人気 C.ルメール 2:11.0 上り37.1
10 白川郷S 中京 ダ1900 2人気 松田大作 2:01.2 上り39.6
2 横浜S 東京 ダ2100 1人気 武豊 2:08.8 上り35.5
3 鈴鹿S 中京 ダ1900 2人気 武豊 1:58.0 上り38.8
1 鳥取特別 阪神 ダ1800 1人気 松田大作 1:54.3 上り37.2
1 3歳以上1勝クラス 阪神 ダ1800 2人気 岩田望来 1:53.2 上り37.3
1 3歳未勝利 中京 ダ1900 3人気 岩田望来 1:59.5 上り36.4
9 3歳未勝利 阪神 芝2200 10人気 富田暁 2:17.3 上り37.7
8 3歳新馬 中京 芝2000 8人気 富田暁 2:05.1 上り34.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ペプチドナイルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キングカメハメハKing KamehamehaKingmamboMr. Prospector
Miesque
マンファスManfathラストタイクーンLast Tycoon
Pilot Bird
クイーンオリーブマンハッタンカフェManhattan CafeサンデーサイレンスSunday Silence
サトルチェンジSubtle Change
オリーブブランチMachiavellian
ソプラニーノSopranino
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの鹿毛の牡馬。父キングカメハメハ、母クイーンオリーブ。主な勝ち鞍はフェブラリーS。

叩き上げの鹿毛 ― 砂を選んだ良血

2018年、栗東に届いた鹿毛の牡馬は、父にキングカメハメハを持っていた。ダービー馬にして大種牡馬、芝の王道を切り拓いた血。母クイーンオリーブの父はマンハッタンカフェで、配合の見栄えだけなら芝の中長距離を走って不思議のない血統だった。だが現実は違った。2021年1月、中京の芝2000mでデビューした新馬戦は8着。続く芝の未勝利も馬群に沈み、この馬の居場所は芝にはなかった。 陣営はダートへ舵を切る。すると鹿毛は別馬のように動き出した。同年5月、中京ダ1900mの未勝利を岩田望来で勝ち上がると、年内に条件戦を勝ち重ね、ダート中距離の階段を一段ずつ上っていく。良血が約束した華やかな道ではなく、砂の上の地味な叩き上げ。それが、この馬の選んだ生き方だった。馬名ペプチドナイル――雄大な世界の名馬たれという冠名に、悠久のナイルを重ねた名は、まだ本馬の歩幅には大きすぎた。

藤岡佑介と組む ― 師との縁が結んだ手綱

2023年、ペプチドナイルにひとりの騎手が跨る。藤岡佑介。同年7月、函館のマリーンSで初めてコンビを組むと、堅実に勝ち切ってみせた。手綱を託した武英智調教師と藤岡の間には、騎手時代からの古い縁があった。武師にとって藤岡は「騎手の頃から仲が良かった」相手であり、開業して最初の勝ち鞍を運んでくれたのも、この男だった。 だがこの年、ペプチドナイルが頂を狙える馬かといえば、答えは否だった。8月のエルムSは1番人気で13着の大敗。重賞では人気を背負いながら勝ち切れず、12月のベテルギウスS(L)をようやく制したものの、肩書はあくまで『リステッド勝ち馬』のまま。年が明けた2024年1月、東海S(GⅡ)も3番人気で6着に終わる。重賞未勝利、前走6着。とても主役と目される立場ではなかった。

11番人気の戴冠 ― 2024フェブラリーステークス

2024年2月18日、東京ダート1600m。第41回フェブラリーステークス。ペプチドナイルの単勝は、18頭中11番人気に沈んでいた。重賞未勝利の6歳馬に、誰も賭けなかった。 レースは異様な高速で流れた。前半3ハロンが33秒台に入る、フェブラリーS史上2度目の超ハイペース。藤岡佑介はその激流を中団の外から追走し、勝負どころで早めに進出する。「厳しいペースを追走して、早めに先頭に立ったので、何とか踏ん張ってくれという感じで乗っていました」。残り200mで先頭。長い府中の直線で、藤岡は祈るように追った。「直線は本当に長かった」。背後からガイアフォースが迫る。だが鹿毛は屈しなかった。1馬身4分の1の差をつけ、1分35秒7で先頭を駆け抜ける。叩き上げの馬が、ダートの頂に立った瞬間だった。3連単153万500円――フェブラリーS史上最高の波乱。父キングカメハメハ産駒として、初のフェブラリーS制覇でもあった。

よくやったな ― 二人の悲願

ウイニングランで、藤岡佑介はようやく拳を突き上げた。それは6年越しに取り戻した感触だった。2018年のNHKマイルC(ケイアイノーテック)以来となるJRA・GI2勝目。前回は際どい決着で、勝った実感のないままガッツポーズもできなかった。「今回はできて、すごく嬉しい」。 この勝利は、ひとりの男の悲願でもあった。武英智調教師。開業してからGIでは人気になりながら勝てず、「GIの壁はものすごく厚いなと思っていました」と語る。スタンドでは「無我夢中で応援しました」。騎手時代に同じ世界を生きた藤岡が、その厩舎に初めての勝ち鞍を運び、いま二人で初めてのGIに辿り着いた。レース後、藤岡は師に贈る言葉を口にしている。「『よくやったな』と言いたいです」。プレッシャーをかけず、『気楽に乗ってきてくれ』と送り出した師と、それに応えた騎手。良血を約束された馬ではなく、砂で叩き上げた一頭が、二人の長い縁を頂点で結び直した。

頂のその先 ― 王道で戦い続けた背中

頂に立った馬は、そこで満足しなかった。春はかしわ記念3着、秋は盛岡の南部杯で2着と、交流の大舞台でも王道を張り続けた。2024年暮れのチャンピオンズC(GⅠ・中京ダ1800)は3番人気で5着。明けて2025年のフェブラリーSは王者として4番人気に支持され、4着。連覇はならなかったが、超一線級のダート王道で、人気を背負って戦い続けられる地力こそが、フロックではなかった証だった。 4月にはドバイへ遠征し、ゴドルフィンマイル(GⅡ)に挑む。2番人気の評価に応えられず11着と大敗したが、それも頂を知った馬が世界の砂に挑んだ跡だった。秋は再びの南部杯で3着と意地を見せたが、以降は武蔵野S、チャンピオンズCと厳しい結果が続き、2026年2月、富田暁に手綱を託したフェブラリーSの6着を最後に、鹿毛はターフを去る。通算29戦8勝。勝ち星の数より、その大半が砂の条件戦から積み上げた一勝一勝であることに、この馬の価値があった。芝で居場所を失い、砂で叩き上げ、一度だけ頂を掴んだ。雄大なナイルの名は、たった一日、確かに馬に追いついた。

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