名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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パラレルヴィジョンのイメージビジュアル
パラレルヴィジョンParallel Vision
Parallel Vision

パラレルヴィジョン

通算成績23戦6勝

獲得賞金13,898万円

生年月日 2019.02.04(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
パラレルヴィジョンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
6 梅見月杯 名古屋 ダ1500 4人気 渡辺竜也 1:34.9 上り38.5
3 スパーキングマイラー 川崎 ダ1600 2人気 御神本訓史 1:43.2 上り41.0
3 千葉ダートマイル 船橋 ダ1600 3人気 御神本訓史 1:41.2 上り39.3
9 GIII七夕賞 福島 芝2000 12人気 津村明秀 2:02.2 上り36.5映像
11 GIII新潟大賞典 新潟 芝2000 15人気 吉田隼人 2:01.5 上り34.7映像
16 GII中山記念 中山 芝1800 10人気 戸崎圭太 1:46.4 上り35.9映像
6 GIII中山金杯 中山 芝2000 7人気 T.マーカンド 1:58.5 上り35.0映像
16 GII富士S 東京 芝1600 7人気 C.ルメール 1:33.2 上り34.4映像
14 GIII関屋記念 新潟 芝1600 7人気 三浦皇成 1:34.2 上り33.9映像
13 GI安田記念 東京 芝1600 6人気 C.ルメール 1:33.3 上り34.1映像
1 GIIIダービー卿チャレンジトロフィー 中山 芝1600 2人気 戸崎圭太 1:32.9 上り34.0映像
1 LニューイヤーS 中山 芝1600 3人気 C.ルメール 1:32.3 上り34.3
12 OP霜月S 東京 ダ1400 2人気 T.マーカンド 1:24.2 上り36.0
1 JRAアプリ記念 東京 ダ1600 1人気 C.ルメール 1:36.7 上り36.8
4 佐渡S 新潟 芝1800 2人気 北村宏司 1:45.3 上り33.5
3 垂水S 阪神 芝1800 1人気 川田将雅 1:44.8 上り33.6
3 府中S 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:58.1 上り34.0
2 難波S 阪神 芝1800 1人気 池添謙一 1:45.1 上り33.3
3 初富士S 中山 芝2000 1人気 C.ルメール 2:01.2 上り35.5
1 3歳以上2勝クラス 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:59.5 上り33.1
7 GII神戸新聞杯 中京 芝2200 1人気 C.ルメール 2:12.2 上り35.0映像
1 3歳以上1勝クラス 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:58.0 上り33.5
1 3歳未勝利 中山 芝2000 1人気 C.ルメール 2:00.8 上り35.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
パラレルヴィジョンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
キズナKizunaディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
キャットクイルCatequilStorm Cat
Pacific Princess
アールブリュットマクフィMakfiDubawi
Dhelaal
イグジビットワンSilver Hawk
Tsar's Pride
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父キズナ、母アールブリュット。主な勝ち鞍はダービー卿チャレンジ。

四か国を巡った展覧会 ― 名前の話

名は、一つの展覧会から採られている。 1992年秋、ロサンゼルス郡立美術館で「パラレル・ヴィジョン ― 20世紀美術とアウトサイダー・アート」が開かれた。精神を病んだ者、独学の幻視者、美術の制度の外側で描き続けた無名の作り手たち――その「生の芸術(アール・ブリュット)」が、20世紀の近代美術にどれほど深く影を落としてきたかを、並べて見せる試みだった。展覧会はマドリード、バーゼルを巡り、翌1993年秋には世田谷美術館へ渡る。四つの国を旅した「並行する視界」。日本でアウトサイダー・アートが大きく紹介された、最初の機会でもあった。 母の名は、アールブリュット。生の芸術そのものである。2代母イグジビットワン(Exhibit One=陳列その一)はイタリアでG3を二つ勝った牝馬で、その産駒には母アールブリュットのほか、2017年の中日新聞杯を勝った叔父メートルダール(Maîtres d'Art=芸術の巨匠たち)がいる。展覧会、生の芸術、陳列、巨匠――一族の名は、まるごと一つの画廊だった。その牝系に、キズナ(父はディープインパクト、ダービー馬)を父として、2019年2月4日、ノーザンファームに鹿毛の牡馬が生まれる。母の名から連想し、あの巡回展の名が与えられた。パラレルヴィジョン。 デビューから手綱を取ったのは、アーモンドアイを世界へ送り出した美浦・国枝栄厩舎の主戦、クリストフ・ルメール。表通りの、いちばん華やかな一団のなかから旅は始まる。だが名のとおり、この馬が歩くのは、その表通りと並行して少し外れた道になる。

駆け上がる ― 一番人気の躓き

2022年4月、中山の未勝利戦。ルメールを背にしたパラレルヴィジョンは、後続に2馬身半差をつけて勝ち上がった。これがデビュー戦である。続く東京の1勝クラスも完勝し、二戦二勝。上がりはいつも鋭く、血統も鞍上も、期待は十分だった。 秋、初めての重賞へ向かう。菊花賞へと続く3歳の一戦、神戸新聞杯。単勝1番人気に推された。世代の主役たちが集う、いちばん明るい場所に、あと一歩で立てるかに見えた。だが直線で伸びを欠き、7着。人気に応えられず、クラシックの物語の輪には、ついに入れなかった。この日を境に、彼は世代の頂を争う馬たちとは別の道を歩き始める。

芝から、砂へ ― 開かない扉

躓きのあと、暮れの2勝クラスは危なげなく勝った。だが2023年は、長い足踏みの年になる。難波ステークスで2着、府中ステークスで3着、垂水ステークス3着――いずれも1、2番人気に支持されながら、あと半馬身が届かない。勝ち切れない。オープンへの扉は、目の前にありながら開かなかった。 陣営が切ったのは、まったく別の一手だった。10月、初めてのダート。東京の1600mを、ルメールとクビ差でものにして、オープン入りを果たす。芝で開かなかった扉を、砂の上で押し開けたのだ。彼は自分の走る世界を、一つに定めなかった。芝と砂、内と外――名のとおり、いくつもの並行する視界を持つ馬だった。

ダービー卿の日 ― 掴んだ重賞

2024年が明けると、彼はまた芝に戻ってくる。1月のニューイヤーステークス、中山のマイル。ルメールとともに直線で抜け出し、オープン特別を初めて勝った。砂で扉をこじ開けた馬は、芝のマイルという新しい間合いも手にしていた。 そして3月30日、中山のダービー卿チャレンジトロフィー。鞍上は戸崎圭太、2番人気。逃げた8番人気エエヤンが後続を大きく突き放し、そのまま粘り込むかに見えた。だが好位を進んだパラレルヴィジョンは、直線で鋭く伸び、ゴール前でエエヤンをきっちり捕らえる。3/4馬身差、勝ちタイム1分32秒9。デビューから13戦目にして掴んだ、初めての重賞――そしてそれは、生涯ただ一つの重賞になる。表通りではなく、少し外れた道の突き当たりで、彼は自分の頂に立った。

長い下り坂、そして川崎へ

重賞馬となった彼を、陣営は大舞台へ送り出す。6月、安田記念。悲願のGIだった。だが結果は13着。夏の関屋記念14着、秋の富士ステークス16着。年が明けても、中山金杯6着を挟んで、中山記念16着、新潟大賞典11着、七夕賞9着――二桁着順が続いた。掴んだばかりの重賞の勢いは、GIとの高い壁の前で、静かに剥がれていく。表通りへ戻ろうとするたび、道はやはり閉じていた。 2025年7月16日、中央競馬の登録を抹消。パラレルヴィジョンは川崎の内田勝義厩舎へ移り、地方のダートを走り始めた。千葉ダートマイルで3着、スパーキングマイラーで3着。舞台は変わっても、脚が死んだわけではない。彼はまた、別の視界へと歩みを移しただけだった。旅は、まだ続いている。

並行する視界 ― 弟と、その先へ

血は、一つ下の弟へと流れている。 2023年生まれの全弟パントルナイーフ(Peintre Naif=素朴派)。父も母も同じ、キズナとアールブリュットの子で、その名もまた近代美術の一ジャンルから採られている。2025年11月24日、東京スポーツ杯2歳ステークス。兄をデビューから育てたのと同じ男――クリストフ・ルメールを背に、パントルナイーフは接戦をアタマ差で制し、二連勝で重賞を勝った。ルメールは、その先にGIを見据えていると語った。 兄が表通りの一歩外を旅している間に、同じ血が、同じ鞍上を得て、兄の届かなかった大舞台へ駆け上がっていく。展覧会の名を分け合う一族――叔父メートルダールは中日新聞杯を、弟パントルナイーフは東京スポーツ杯を勝った。そして兄パラレルヴィジョンは、重賞をひとつ確かにその蹄へ刻んで、いま川崎のダートを走っている。 生の芸術が、いつも近代美術のすぐ傍らを並んで走り、その流れを内側から変えてきたように――この馬もまた、主役たちと並行する視界で、芝から砂へ、中央から地方へと、自分の道を旅してきた。並び走る二つの世界は、どちらも本物だ。彼の走りは、どこかの直線で、いまも脚を伸ばし続けている。

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