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パンサラッサ
通算成績27戦7勝
獲得賞金18億4,466万円
生年月日 2017.03.01(平成29年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 12 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 7人気 | 吉田豊 | 2:24.0 | 上り38.7 | 映像 | |
| 10 | GIドバイワールドカップ | メイダン ダ2000 | 2人気 | 吉田豊 | — | 映像 | ||
| 1 | GIサウジカップ | キングアブドゥル ダ1800 | 6人気 | 吉田豊 | 1:50.8 | — | 映像 | |
| 10 | GI香港カップ | シャティン 芝2000 | 3人気 | 吉田豊 | — | 映像 | ||
| 2 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 7人気 | 吉田豊 | 1:57.6 | 上り36.8 | 映像 | |
| 2 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 2人気 | 吉田豊 | 2:01.2 | 上り37.7 | 映像 | |
| 8 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 6人気 | 吉田豊 | 2:10.8 | 上り37.4 | 映像 | |
| 1 | GIドバイターフ | メイダン 芝1800 | 2人気 | 吉田豊 | — | 映像 | ||
| 1 | GII中山記念 | 中山 芝1800 | 2人気 | 吉田豊 | 1:46.4 | 上り37.3 | 映像 | |
| 13 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 8人気 | 菱田裕二 | 2:34.4 | 上り39.1 | 映像 | |
| 1 | GIII福島記念 | 福島 芝2000 | 5人気 | 菱田裕二 | 1:59.2 | 上り37.6 | 映像 | |
| 1 | LオクトーバーS | 東京 芝2000 | 5人気 | 吉田豊 | 2:00.0 | 上り35.9 | — | |
| 除 | GII読売マイラーズカップ | 阪神 芝1600 | 坂井瑠星 | — | 映像 | |||
| 7 | GII中山記念 | 中山 芝1800 | 9人気 | 三浦皇成 | 1:45.7 | 上り34.7 | 映像 | |
| 2 | OP関門橋S | 小倉 芝2000 | 3人気 | 菱田裕二 | 2:00.5 | 上り36.8 | — | |
| 11 | L師走S | 中山 ダ1800 | 1人気 | 戸崎圭太 | 1:53.6 | 上り39.4 | — | |
| 4 | LアンドロメダS | 阪神 芝2000 | 3人気 | 坂井瑠星 | 1:59.3 | 上り35.9 | — | |
| 2 | LオクトーバーS | 東京 芝2000 | 4人気 | 藤岡佑介 | 1:59.6 | 上り35.8 | — | |
| 12 | GII神戸新聞杯 | 中京 芝2200 | 10人気 | 坂井瑠星 | 2:13.9 | 上り37.6 | 映像 | |
| 2 | GIIIラジオNIKKEI賞 | 福島 芝1800 | 7人気 | 三浦皇成 | 1:48.1 | 上り36.4 | 映像 | |
| 1 | 3歳以上1勝クラス | 阪神 芝2000 | 3人気 | 松山弘平 | 2:00.0 | 上り35.8 | — | |
| 9 | GII報知弥生ディープ記念 | 中山 芝2000 | 5人気 | 坂井瑠星 | 2:04.1 | 上り37.5 | 映像 | |
| 4 | L若駒S | 京都 芝2000 | 5人気 | 坂井瑠星 | 2:02.9 | 上り37.3 | — | |
| 6 | GIホープフルS | 中山 芝2000 | 12人気 | 坂井瑠星 | 2:02.7 | 上り37.7 | 映像 | |
| 6 | エリカ賞 | 阪神 芝2000 | 6人気 | 池添謙一 | 2:01.2 | 上り35.0 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 京都 芝2000 | 2人気 | 坂井瑠星 | 2:08.4 | 上り40.3 | — | |
| 2 | 2歳未勝利 | 阪神 芝2000 | 4人気 | 坂井瑠星 | 2:02.6 | 上り34.7 | — | |
| 6 | 2歳新馬 | 阪神 芝1600 | 4人気 | 坂井瑠星 | 1:38.0 | 上り34.4 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ロードカナロアLord Kanaloa | キングカメハメハKing Kamehameha | Kingmambo |
| マンファスManfath | ||
| レディブラッサム | Storm Cat | |
| サラトガデューSaratoga Dew | ||
| 母ミスペンバリー | Montjeu | Sadler's Wells |
| Floripedes | ||
| Stitching | ハイエステイトHigh Estate | |
| Itching |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2017年生まれの鹿毛の牡馬。父ロードカナロア、母ミスペンバリー。主な勝ち鞍はドバイターフ・サウジC・福島記念。
唯一の海 ― 名前と血
かつて地球が一つの大陸だったころ、その周りを満たしていたのは、ただ一つの大洋だった。パンサラッサ。原始の海の名を、この鹿毛は与えられた。父ロードカナロアの「カナロア」は、ハワイに伝わる海の神。海の神から生まれた馬に、世界にただ一つの海の名を重ねたのだ。 2017年3月1日、木村秀則のもとに生まれる。父ロードカナロアは香港スプリントを連覇した短距離の王。同じ父からは、芝GIを九つ勝つ女王アーモンドアイも出ている。だが同じ血が、まるで気性の違う仔を送り出すこともある。母ミスペンバリーはアイルランド生まれ、その父は凱旋門賞馬モンジュー。スプリンターの父に、ヨーロッパの中長距離の母。配合だけを見れば、この馬がどこを走るのか、誰にも像を結ばせない血だった。 馬主は広尾レース、預けられたのは栗東の矢作芳人。世界を股にかけて名馬を送り出す厩舎に、名前だけは大きな仔が入った。唯一の海と名づけられた馬が、やがて本当にいくつもの海を渡ることを、このときはまだ誰も知らない。
六着の船出 ― 二年の下積み
2019年9月21日、阪神の芝1600m。坂井瑠星を背に迎えたデビュー戦は、ロータスランドの前に6着だった。翌月の未勝利戦を京都で勝ち上がりはしたが、そこから先が長かった。エリカ賞、ホープフルステークスと二歳の重賞に挑んでは着を外し、明けて三歳の弥生賞は9着。 勝ち味に遅い馬だった。芝の中距離で足りないと見れば、暮れにはダートの師走ステークスにも使われる。1番人気に推されながら11着。神戸新聞杯は12着、菊の季節に世代の谷を越えられない。オープンの壁の前で、パンサラッサは二年近く足踏みを続けた。距離も、馬場も、まだこの馬の居場所ではなかった。答えは、まったく別のところにあった。
逃げるという答え
答えは、逃げることだった。 2021年秋、東京のオクトーバーステークス。吉田豊を背に、パンサラッサはハナを奪ってそのまま帰ってこなかった。後続に脚を使わせず、自分だけのリズムで刻む――大逃げという武器を、この馬はようやく手にする。続く福島記念、鞍上は菱田裕二。1000mを57秒3で飛ばして後続を突き放し、最後の直線も先頭を譲らず4馬身差。重賞のタイトルが、初めてその名の横についた。 手綱を握り直したのは、ベテランだった。吉田豊、1975年生まれ、デビューは1994年。四半世紀前、メジロドーベルという名牝でオークスとエリザベス女王杯を勝ち、GIの頂を知り尽くした男だ。だがその大きな舞台は、いつしか遠ざかっていた。四十代半ばの騎手と、逃げることでしか勝てない馬。年が明けた中山記念から、二人はふたたび組む。1000m57秒4のハイラップで後続を千切り、堂々と押し切って、パンサラッサは重賞を連勝した。海を渡る支度は、整った。
同着の栄光 ― ドバイターフ2022
2022年3月26日、メイダン。ドバイターフの芝1800mで、パンサラッサはいつものように前へ出た。1馬身のリードを保って直線へ。前年の覇者ロードノースが外から並びかけ、ヴァンドギャルドも脚を伸ばして、三頭が横並びのままゴール板を通過する。 長い写真判定だった。掲示されたのは、最内のパンサラッサと真ん中のロードノース――1着同着。分け合った栄光だったが、それはまぎれもなく、海の名を持つ馬が渡った最初の海の勝利だった。吉田豊にとって、これが海外GI初制覇。四半世紀の騎手人生でいくつもの国内GIを勝ってきた男が、四十六歳にして世界の頂に初めて立つ。馬主の広尾レースにとっても、初めてのGIだった。遅れてきた馬と、遅れてきた栄冠が、砂漠の夜に重なった。
五十七秒四 ― 天皇賞・秋2022
秋、府中で、パンサラッサはその生涯でもっとも美しい負けを喫する。 2022年10月30日、天皇賞・秋。スタートから飛び出したこの馬は、前半1000mを57秒4で通過した。1998年、この同じ府中の2000mを逃げて散った名馬サイレンススズカと、寸分たがわぬラップである。大逃げは4コーナーを回っても衰えない。誰もが、今度こそ逃げ切るかと見えた。 だが、後ろから一頭だけ、次元の違う脚が伸びてきた。イクイノックス。上がり3ハロン32秒7という信じがたい末脚で、ゴール寸前、パンサラッサをとらえる。着差はわずか1馬身。イクイノックスの刻んだ1分57秒5は、レコードだった。逃げた馬がいなければ、その記録は生まれなかっただろう。追い込んで勝ったルメールでさえ、後日その大逃げのラップに「57秒4。速っ」と声を上げたほどだった[^1]。負けてなお、パンサラッサの名は、この年の最高の一戦のまん中に刻まれている。
出典:Number Web「『神騎乗です(笑)』“天皇賞・秋”イクイノックスvs.パンサラッサの名勝負…ルメールに『パンサラッサの大逃げが見えていたら』と問うと?」、https://number.bunshun.jp/articles/-/863673、閲覧日:2026年7月22日。
一分五十秒の頂 ― サウジカップ2023
2023年2月25日、リヤド。世界一の賞金を賭けた一戦、サウジカップ。舞台はダート1800m――芝で世界を騒がせた逃げ馬が、砂の大レースに最内枠から出ていく。 好スタートから、パンサラッサはまたしてもハナを切り、ハイペースで隊列を引き連れた。直線、ラスト1ハロンで脚は上がりかける。それでも、後方の大外から追い込んできたカントリーグラマーを、3/4馬身だけ抑え切った。1分50秒8。日本馬として初めて、サウジカップを制した瞬間だった。この一分五十秒八がもたらした1着賞金は1000万ドル、日本円にしておよそ十三億円という途方もない数字である。芝もダートも、国境も、この逃げ馬の前ではただの区分にすぎなかった。
ラストラン、そして海へ
栄光の裏で、逃げ馬はもろさも抱えていた。ハナを譲らぬ相手がいれば、その脚は削られる。サウジカップの一か月後、ドバイワールドカップは大外枠に加え、地元のリモースがハナを譲らず、息を入れられぬまま競り合って4コーナーで飲み込まれ10着。逃げ馬のもろさは、これが初めてではない。前年の宝塚記念は直線早々にタイトルホルダーにかわされて8着、暮れの香港カップも10着だった。逃げるという生き方は、嵌れば無敵で、狂えばあっけない。 2023年11月26日、ジャパンカップ。吉田豊を背にしたその一戦を最後に、パンサラッサはターフを去った。27戦7勝。府中でイクイノックスとレコードの舞台を分け合い、砂漠で世界最高の賞金を掴んだ馬の、静かな幕引きである。翌年1月、登録を抹消され、種牡馬としてアロースタッドに繋養される。 遅れてきた馬と、大舞台が遠ざかっていたベテラン。二人は逃げることだけを信じて、いくつもの海を渡った。唯一の海と名づけられた馬は、いま北の大地に立ち、その走りを継ぐ仔を待っている。原始の大洋のように、どこまでも、ただ前へ。
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